百合の花が咲き乱れる花園で

    ●都内某所
    「そもそも、これだけ医学が発展した世の中で、男の存在価値って何? 人工授精さえすれば、女だけで子供だって生めるのよ? だったら、さかりのついた犬のように四六時中ハアハアしているような奴らに、存在する価値なんてないでしょ?」
     体育館に女子生徒達を集め、生徒会長がいかに男が不要なのか熱弁を振るう。
     その考えが非常に偏って歪んでいても、『お姉さま』と呼ばれて女子生徒達の信頼と愛情を注がれた彼女が言うと、まるで魔法の言葉のように聞こえてしまうのだろう。
     まわりにいる女子生徒達がウットリした様子で、その言葉に聞き惚れている。
    「どうせ、結婚をしたとしても、その先に待っているのは地獄だけ。そのうち女遊びに、ギャンブル……働いているのは俺だ、と言わんばかりに好き勝手な事をしてくるわ。挙句の果てにこっちが正論を吐けば、力ずくで抑え込まれるだけ。私はねえ、あなた達の事を思っていっているの。あんな汚らわしい猿以下にも劣るケダモノどもに騙されて、悲惨な未来を歩むなって事よ。いまこそ、奴らを……いえ、奴らの本体であるおぞましいモノをもぎ取るべき! あんなモノが存在しているから、世の中から性犯罪が無くならないのよっ! さあ、レッツハンティング!」
     そう言って生徒会長が何かを握り潰すようにして、拳をギュッと握りしめた。

    「最近、都内で男のシンボル的な何かを握り潰される事件が多発しているらしい」
     何となく内股になりつつ、神崎・ヤマトが今回の依頼を説明する。

     今回、倒すべき相手は、とある女子高の生徒会長に化けた都市伝説。
     コイツは男を不要と感じており、今までにも何人もの命……いや、命にも等しいモノを奪っている。
     都市伝説のモデルになった女性は、この学園の伝説になっており、数々の武勇伝を残した女性だとか。
     そのせいで噂が広まって、都市伝説が生まれてしまったんだが、当の本人は政略結婚に抗議するような形で自ら命を断っている。
     それだけプライドが高かったのかも知れないが、結局は自分の考えを受け入れてもらえず、悲惨な死を遂げてしまっているから、何とも言えないな。
     おそらく、お前達が行く頃にはナンパ男が、彼女達の餌食になっている事だろう。
     まあ、女性に対して酷い事をしたような奴らしか狙っていないようだから、自業自得なところはあるんだが……。
     とにかく、男は注意だ。
     油断すると、もがれる。
     まるでぶどう狩りの如く、もがれて放られてしまう。
     それがどれほど恐ろしい事なのか、男ならわかるはずだ。
     ちなみに女性だと百合百合されてしまうから、それはそれで問題なんだが……。
     とりあえず、迂闊に近寄るなって事だ。


    参加者
    ベルタ・ユーゴー(アベノ・d00617)
    古海・真琴(占術魔少女・d00740)
    加奈氏・さりあ(さりさりぼんばー・d00826)
    高宮・夜宵(誘惑の女狐・d01545)
    峰・清香(中学生ファイアブラッド・d01705)
    本山・葵(緑色の香辛料・d02310)
    一之瀬・準(可憐なる報復者・d07317)
    護宮・サクラコ(大天使サクラエルの光臨・d08128)

    ■リプレイ

    ●もぎたてピチピチ
    「結局、男子は集まらなかったか、みんなビビっちまったかな? 仕方ねえ、今日は女子だけでがんばろうぜ」
     苦笑いを浮かべながら、本山・葵(緑色の香辛料・d02310)が都市伝説の確認された学園にむかう。
     都市伝説は男性を排除すべき対象であると認識しており、見つけ次第シンボル的な何かをもぎ取っていたようである。
     そんな話を聞いたためか、まわりに男の姿はない。
     みんな内股になりつつ、『ちょっと急用が……』と言って、葵の元から去っていった。
    「何か男性に対して嫌な目にでもあったのかしら? ……にしても、危害を加えるとあっては黙ってはおられません。……ところで『百合百合』ってなんでしょうか?」
     不思議そうに首を傾げ、古海・真琴(占術魔少女・d00740)が疑問を口にする。
     女の子同士で仲良くなるという話だが、実際には少し違うような感じがした。
     だからと言って、具体的に何が百合なのか、説明する事が出来ないため、頭の中には沢山のハテナマークが浮かんでいる。
    「確かに、ゆりゆりってなんですかねい? お手て繋いで仲良くするくらいならいいかなーって思っていましたけど、それでは済まない雰囲気でいす。でも、ひとつだけ反応しちゃいます、生徒会長? サクラコも将来は生徒会長になりたいと決めております」
     えっへんと胸を張りながら、護宮・サクラコ(大天使サクラエルの光臨・d08128)が呟いた。
     ゆりゆりについてはよく分からないが、女の子同士で仲良くすると言う事は間違いなさそうである。
    「いまのは……悲鳴!? どうやら、近くにいるようだね」
     テレパスを使って周囲の思考を探り、加奈氏・さりあ(さりさりぼんばー・d00826)が悲鳴の聞こえた方向にむかう。
     そこには股間を押さえるナンパ男と、都市伝説。
     そして、都市伝説に魅入られた女子生徒達がいた。
    「ひいぃぃ! た、助けてくれ」
     怯えた様子で、ナンパ男がさりあの足にしがみつく。
    「あら、いらっしゃい。ひょっとして、あなた達も手伝ってくれるの?」
     無駄に爽やかな笑みを浮かべ、都市伝説が手のひらのクルミを握り潰す。
     それを見たナンパ男が『そ、それだけはやめてくれ』と悲鳴を上げる。
     しかし、女子生徒達も手に握られたクルミを凄まじい握力で粉々にした後、『次はあなたの番よ』と言ってナンパ男に迫っていく。
    「私も、男性には縁がありませんが、そうやって嫌悪するまでは……。その歪んだ考えを……といっても、もう遅いですね」
     深い溜息をつきながら、古海・真琴(占術魔少女・d00740)が都市伝説に視線を送る。
     しかし、都市伝説は『男なんて存在自体が悪! 欲望に手足が生えただけのモノよ』と吐き捨てた。
    「ねえ、お姉さま~。なんで男の子って悪いんか、もっと詳しく教えてなんよ。でも、もぐのは、ちょっとやりすぎ思うんや。もーちょっと、軽いお仕置きでえんとちゃうやろか?」
     都市伝説に語りかけ、ベルタ・ユーゴー(アベノ・d00617)がニコリと笑う。
    「ふっ……、甘いわね。コイツはもがれて当然の事をしているのよ。それに下手に情けを掛けたら……オカズにされるわよ」
     重々しい雰囲気を漂わせ、都市伝説が警告混じりに呟いた。
     その途端、ナンパ男が『い、いや、そんな気持ちは……ちたょっとあるかも』と言って視線を逸らす。
    「ほら、見なさい。だから言ったでしょ」
     嫌悪感をあらわにしながら、都市伝説がゴミを見るようにしてナンパ男を睨む。
     そのため、男も反論しようとしたが、余計な事を言えばいうほど、もがれる可能性が高くなるため、途中で言葉を飲み込むようにして口をつぐんだ。
    「まあ、百合は否定しないし大好きだけど、わざわざ男を殲滅する事もないんじゃないかしら? まあ、気持ちはわかるけど……」
     複雑な気持ちになりながら、高宮・夜宵(誘惑の女狐・d01545)が都市伝説に答えを返す。
    「いえ、何もわかってないわ。コイツらは薄汚い猿よ。奴らがアタシ達を見て、どんな妄想をしているのか知っている? ……まったく、想像するだけでもヘドが出るわ」
     青ざめた表情を浮かべ、都市伝説が口元を押さえた。
     おそらく、話をするだけでも、気分が悪くなってしまうのだろう。
     何となく、このまま男の話をしていれば……、都市伝説を容易に倒せそうである。
    「こ、これ以上、お姉様を苦しめるつもりなら、絶対に許さないわよっ!」
     都市伝説を守るようにして、女子生徒達が前に出た。
     それだけ、都市伝説を尊敬しているのだろう。
     自らの身を犠牲にしてでも守り気満々である。
    「元となった女性には色々と事情があったのだろうけど、今回の相手はあくまでそれを基にした都市伝説。なら容赦する必要はないわね、女同士の恋愛に興味もないし……」
     ゆっくりと眼鏡を外し、一之瀬・準(可憐なる報復者・d07317)が都市伝説をジロリと睨む。
     それでも、女子生徒達が怯む事なくナンパ男を襲おうとしたため、彼を守るようにして陣取った。
    「それじゃ、狩ったり狩られたりしようか」
     すぐさまスレイヤーカードを解除し、峰・清香(中学生ファイアブラッド・d01705)が叫ぶ。
     それと同時に女子生徒達が『望むところよっ! 女の良さを、その体に教えてあげるわ』と叫び、一斉に襲いかかってきた。

    ●ナンパ男
    「な、なあ、お前達が助けてくれるんだろ。俺を助けてくれたら、特別にデートをしてやるからさ。なんだったら、お前を一番にしてやるよ!」
     青ざめた表情を浮かべ、ナンパ男が葵の後ろに身を隠す。
     よほどアレをもがれる事が怖いのだろう。
     最悪の場合は、葵を蹴り倒してトンズラする勢いで、ずっと身構えていた。
    (「うわっ……、絵に描いたような最低野郎だな。まあ、アイドル並みに美形だから、モテるのも分かるけど……」)
     除霊結界を貼りながら、葵が表情を強張らせる。
     その途端、ナンパ男がぺろんとお尻を触り、『後でもっといい事を……』と言っている途中で、葵にボッコボコに殴り飛ばされた。
    「今度やったら、あたしが、もぐ……って、何を言わせやがるゥゥゥゥゥゥ!」
     恥ずかしそうに頬を染め、葵が足元の地面を踏みつける。
     危うく、ナンパ男の股間を踏みつけそうになったが、理性が……ウブな乙女な心が……その邪魔をした。
    「だから言ったでしょ。コイツらは薄汚い猿だって。放っておくと、あなた達まで酷い目に遭うわよ。まあ、それを望んでいるのなら、好きにすればいいけど……」
     勝ち誇った表情を浮かべ、都市伝説が高笑いを響かせる。
    「まあ、確かに……嘘はついていないんだよね」
     テレパスを使ってナンパ男の表層思考を読み取り、さりあが顔を真っ赤にしたまま頭を抱えた。
     ナンパ男の脳内では、さりあ達が18禁な展開になっており、助ける気力など消し飛んでしまうほどの破壊力を秘めていたようだ。
     しかも、ナンパ男の外見からは、想像もつかないほど変態レベルが高いため、だんだん都市伝説の言い分が正しいように思えてきた。
    「ここで迷っちゃ駄目よ。まあ、ナンパ男は救いようがないほど、アレな性格だったようだけど……」
     襲いかかってきた女子生徒を羽交い絞めにした後、夜宵が妖艶な笑みを浮かべて耳を噛む。
     その途端、羽交い絞めにされた女子生徒が『あなたなら、いいわよ』と言ってニコリと笑う。
    「てっきり、男性と勘違いされると思っていましたが、よく私が女性だってわかりましたね。それとも、最初に言った言葉が、引っ掛かったとか?」
     少しずつ間合いを取りながら、真琴が都市伝説に対して問いかけた。
    「強いて言えば、匂いね。男からは犬小屋の匂いがするわ。でも、あなたからは、別の匂いがする」
     含みのある笑みを浮かべ、都市伝説が舌なめずりをする。
    「いや、そう言われても、あまり嬉しくないんですが……。それに別の匂いって。あ、いや、説明しなくてもいいです。どちらにしても、凹むと思うので」
     激しく首を振りながら、真琴が都市伝説の言葉を遮った。
     その間に女子生徒達が真琴達に抱き着き、纏わりつくようにして動きを封じ込める。
    「こ、こら、やめ……ろぉ……」
     必死になって女子生徒達を振り払おうとして、清香がヘナヘナとその場に崩れ落ちていく。
     それでも、何とかして立ち上がろうとしたが、女子生徒達が敏感な部分ばかり狙ってきたせいで腰砕けになった。
    「えーい、さわるんじゃないでいす! これ以上、お付き合いしきれませんので、お眠りなさいでいす」
     しつこく迫ってきた女子生徒を振り払い、サクラコがラブフェロモンを使う。
     その途端、女子生徒達がハートマークを浮かべ、サクラコのまわりに集まってきた。
    「とりあえず、眠ってもらうわよ」
     すぐさま女子生徒達に当て身を放ち、準が抱きかかえるようにして道の端に寝かせていく。
    「な、なあ、お、俺はどうなるんだ? た、助けてくれるんだよな?」
     青ざめた表情を浮かべ、ナンパ男が瞳を潤ませる。
    「ナンパ男はんは、とりあえずこっちに」
     鏖殺領域を発動させ、ベルタがナンパ男を引きずっていく。
    「あっ、良かったら、携帯の番号だけでも! なんなら、今から食事に行こうか。実はこの近くにいい店があるんだよ」
     まったく反省していない様子で、ナンパ男がベルタを口説き始める。
     しかし、ベルタは笑顔を浮かべて軽く流し、まったく興味がない様子。
     それに、こんな男に関わったところで、決して幸せな未来など待ってはいないだろう。
    「一体、何なのよ、あなた達は!」
     信じられない様子で、都市伝説が大声をあげた。
     今までに出会った事のない相手、恐るべき存在。
    「あなたより生徒会長に相応しいサクラコ、とだけ名乗っておきましょう!」
     これでもかとばかりに胸を張り、サクラコが魂鎮めの風を発動させる。
     それと同時に残っていた女子生徒達も、深い眠りの世界に旅立った。

    ●都市伝説
    「それじゃ、覚悟してもらうよ。似たようなキャラは、ふたりもいらないからね」
     都市伝説をライバル視しつつ、さりあがパッショネイトダンスを使う。
    「似たようなキャラ……? まったく別物でしょ。あたしとあなたは。それを今から証明してあげる」
     まるで獲物を狙うように目つきになり、都市伝説が自らの指をペロリと舐める。
    「だったら、お姉さま。ひょっとして、こういうのも好きやろ」
     都市伝説に語りかけながら、ベルタがティアーズリッパーを放つ。
     それでも、都市伝説は怯む事なく、胸元を露出して葵に絡みついてきた。
    「こ、こら! や、やめろ、ひっつくな! ひゃん! ヘンなとこ触んなぁ~」
     困った様子で顔を真っ赤にしながら、葵が都市伝説をポカポカ叩く。
     しかし、都市伝説は気にせず指を忍ばせ、奥へ奥へと入っていった。
     そのせいで、葵は全身の力が抜け、その場にすとんと座り込む。
    「いい加減にしないと怒るでいす。にゃんこの手(黒猫バージョン)をくらえ! でいす」
     予め預言者の瞳で自らを強化した後、サクラコがフォースブレイクを使う。
     それに合わせて夜宵がホーミングバレットを使い、都市伝説をジリジリと追い詰めていく。
    「いいところだったのに……!」
     悔しそうな表情を浮かべ、都市伝説が唇をグッと組む。
     せっかくのお楽しみを邪魔されたせいか、都市伝説も頭に来ているらしく、溢れんばかりに殺気が漂っていた。
    「もうこれ以上、あなたの好きにはさせないわ」
     色々な意味で身の危険を感じ、清香が胸元を隠すようにして都市伝説を睨む。
     先程、女子生徒達に襲われた時の余韻が残っているため、ここで都市伝説に襲われたら……堕ちてしまうかも知れない。
     それが分かっているせいか、都市伝説に近づく事が出来なかった。
    「……あら? 顔色が悪いわね」
     都市伝説もそれに気づいたのか、どんどん清香に迫っていく。
    「させませんよ、絶対に……!」
     すぐさま都市伝説の死角に回り込み、真琴がジャジメントレイを撃ち込んだ。
     次の瞬間、都市伝説が『お、覚えていなさい!』と捨て台詞を残し、その場から逃げだそうとした。
    「一気に勝負をかける」
     都市伝説の逃げ道を塞ぎ、準がレーヴァテインを炸裂させる。
     その一撃を食らった都市伝説が派手に吹っ飛び、『み、認めないわよ、こんな現実!』と叫んで跡形もなく消滅した。
    「どちらが生徒会長に相応しいか、思い知ったか! でーいす」
     都市伝説を消滅させ、サクラコが腰に手を当てる。
     仲間の中に男性がいなかった分、楽勝だった。
     逆に男性達がこの場にいたら、色々な意味で苦戦を強いられていた事だろう。
    「さぁて、被害にあった子を慰めてあげますかねぇ」
     道端に倒れた女子生徒達に視線を送り、夜宵が意味ありげにクスリと笑う。
     そして、夜宵達は女子生徒達を背負い、その場を後にするのであった

    作者:ゆうきつかさ 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2012年12月12日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 1/感動した 0/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 9
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