水着と河童と尻子玉

    『かっぱ(河童)は、みずの なかに すんでいる ようかい です。
     せなかに こうらが、あたまの うえに おさらが あります。きゅうりと すもうが すきです。
     いたずらずきで、およいでいる ひとの しりこだまを ぬいたり します。いけや かわで およぐ ときは、ちゅうい しましょう』

    「ねえママ、かっぱさんってうちのちかくにもいるのかなあ?」
    「そうねえ。広くて綺麗な水のある場所なら、いるかもしれないわね」
    「ふーん……じゃあ、あそこのおいけにも、かっぱさんがいるかもしれないね」
     
    「……そんな他愛もない童話、民話であっても、ひとたび人の心からサイキックエナジーを受けてしまえば、実体化して人に害をなす。
     まったく、都市伝説ってのは厄介な代物だぜ」
     神崎・ヤマト(中学生エクスブレイン・dn0002)がやれやれと首を振った。
     今回のターゲットは、とある池に現れるという河童である。ヤマトはこともなげに言う。
    「河童を出現させるのは簡単だ。池の水に入ればいい」
     が、その言葉を聞いた灼滅者達は互いに顔を見合わせ、それから教室の窓の外に目をやった。
     お菓子のビニール袋が宙に舞っている。きっと冷たい木枯らしが、あのビニール袋を巻き上げているのだろう。
     ……水に入れ、と?
    「気持ちはわかるが、このままだと新年の寒中水泳参加者に犠牲が出る。
     だから何としても今年中に対処しなければならん。暖かくなってから、という訳にはいかないんだ」
     空気が重くなる。
     誰かが『水に入らず、遠距離サイキックで河童を倒すことはできるか』と尋ねた。ヤマトは首を縦に振る。
    「もちろん可能だ。しかし、水中に誰もいなくなったり、水中の全員がKOされた場合は、河童はそのまま姿を消してしまうから注意しろ。当然ミッションは失敗だ」
     水に入る人間が少ないと、その分失敗のリスクも増えてしまうということか。灼滅者のテンションはさらに落ちていく。
    「河童は合計5体。連中の動きをうまくコントロールしたいなら、ティーパックなどの利用も考えられるな」
     再び灼滅者達は顔を見合わせる。
     紅茶のパックがどうしたというのか?
    「水着は学園からも支給されているよな。だがその水着よりも……下半身の布地が少ない水着を着た、もっと言えば尻の露出が大きい人間を、どうも河童は好んで狙い、尻を撫でようとするようだ。
     加えて、女性を男性より優先して狙うと来た。なんとも厄介というか、嫌らしい相手だぜ」
     ああ、『Tバック』と言いたい訳ですか。
     しかも尻を撫でるって。
     ごく一部の灼滅者の闘志が静かに燃え上がっている。他の大多数のうんざりしたままな灼滅者は、それに気づいているのだろうか。
    「河童は体力も攻撃力も大したことはない。だが、水中の河童は恐るべき素早さを見せる。陸上の感覚で河童の動きを完全に捕捉するのは難しいだろうな。
     しかも、連中に尻を撫でられると、すーっと力が抜けてしまうという話だ」
     いつもは泳ぎが得意な灼滅者であっても、水中で力を奪われた状態では、溺れてしまわないとも限らなかった。『尻子玉を抜く』という伝承も、案外そういった溺れ方をした犠牲者から生まれたのかもしれない。
    「また、男性や後衛、水の外にいる相手などには、激しい水流をぶつけて攻撃してくるぜ」
     濡れたくなくて水に入らなくても、結局は濡れる羽目になるかもしれない。紐で結ぶようなタイプの水着も少し注意が必要だ。
    「とにかく、水中という戦場は俺達にとってアウェーだ。お前達がいかに泳ぎが得意でも、1対1なら河童を蹴散らせる力があっても、水中では何が起こるかわからん。十分に警戒してくれ。
     それではよろしく頼む。それと、風邪も引かないようにな」
     エクスブレインはいいよなあ、自分で水に入らずに済むから……という視線の意味に気づいているのか否か。ヤマトは軽く頭を下げた。


    参加者
    ポンパドール・ガレット(休まない翼・d00268)
    聖刀・凛凛虎(悪食の梟・d02654)
    鈴鹿・夜魅(紅闇鬼・d02847)
    高橋・雛子(はっちゃけ高機動型オチビ・d03374)
    前田・光明(中学生神薙使い・d03420)
    鈴鹿・幽魅(百合籠の君・d04365)
    マリーゴールド・スクラロース(小学生ファイアブラッド・d04680)
    藤柄田・焼吾(厚き心は割れ知らず・d08153)

    ■リプレイ

    ●冬なのに
     厚手のジャンパー、手袋、毛糸の帽子。
     藤柄田・焼吾(厚き心は割れ知らず・d08153)はガチガチに防寒具で身を固めていた。
    「決して下心あって参加した訳じゃないぜ! えーと……ほら、普通の人が被害にあったら大変じゃん。
     だから水に入る人は頑張れよ! 俺も頑張る!」
     しかし彼のような重装備は、今回集まった灼滅者達の中では少数派である。
     それもこれもターゲットが河童であるせいだった。
    「河童の尻子玉とは随分トラディショナルな都市伝説が現れたものだな。だがめでたい筈の新年に犠牲者が出るとなると、放っておくわけにもいくまい」
     前田・光明(中学生神薙使い・d03420)が服の上に着ているのは防寒具ではなく、水流攻撃に備えた雨合羽である。
     加えて服の下には、水垢離修行用の六尺褌を締めていた。もっとも、服の下に水着を準備しているのは焼吾も同じではある。
    「人間の尻からシリコダマを奪う妖怪、河童か……なんと邪悪な、だぜ」
     ポンパドール・ガレット(休まない翼・d00268)はすでに服を脱ぎ、スパッツ型競泳水着を着用していた。
    「俺の心は熱く燃えている……そう、河童を許すなと、俺の闘志が燃えている!」
     台詞だけ聞けば、聖刀・凛凛虎(悪食の梟・d02654)はとても格好いい。
     だが、彼が穿いているのは男子用スクール水着。鮫の形のフロートを脇に抱えている点といい、どう見ても水で遊びたい小学生のスタイルである。
     おまけに凛凛虎はただの小学生ではなく、筋金入りのエロガキであった。
     背後に張られた1つのテントに興味津々、ちらちらと後ろに目をやっている。内心の興奮状態を隠せないのか鼻血中。燃えてるのは本当に闘志なのやら。
     そのテントの中では――今、女性陣が着替えの真っ最中であった。
    「ふにゃぅ…どうして引き受けたわたし。恥ずかしいのあんま得意じゃ……ってか苦手だ!」
     だぼだぼの上着姿で、着替えの予定のない高橋・雛子(はっちゃけ高機動型オチビ・d03374)が、不埒者が現れないようテントの入口で睨みを効かせている。
     なので当然男はテントに入れない。が、入れなくても中の声は聞こえてくる。

    『それはそうと夜魅ちゃん? その程度の食い込みでは、河童が寄ってきませんわよ』
    『や、やめろバカ! 引っ張るなって』
    『ほら、これくらいは食い込ませてあげないと。夜魅ちゃんの綺麗なお尻が可哀相でしょ?』
    『いっ……いい加減にしろっ!(げしっ)』

    「……な、何が中で起きているのだろう……」
    「何も起きちゃねぇよ。ふん、待たせたな」
     テントの扉が開き、鈴鹿・夜魅(紅闇鬼・d02847)が姿を現した。
     中1とは思えないたわわな小麦色の胸とお尻を、夜魅は押さえ込むように六尺褌とサラシで締めつけていた。だが、褌に詳しい光明の目には、彼女の褌が1度締めた後で慌てて手直ししたものであることが一目瞭然だ。
     よく見ると夜魅の肘には、新鮮な血飛沫が飛び散っている。
    「お、お待たせしました……」
     胸に『井の頭5-はす スクラロース』の布。体育の授業で使われるスクール水着を、そのまま着ているのはマリーゴールド・スクラロース(小学生ファイアブラッド・d04680)だ。近くに浮かぶはナノナノの『菜々花』。
     マリーゴールドもまた幼さにそぐわない大人ボディの持ち主だった。スク水は露出こそ少ないが、内側からの圧力でぷっくりとふくらみ、紺色の生地がぱんぱんに張りつめているのを見て取れる。
    「夜魅ちゃんってば照れ屋さんなんだから。うふふ……」
     最後に登場したのは夜魅の双子の姉、鈴鹿・幽魅(百合籠の君・d04365)。
     妹とお揃いの小麦色ボディを、幽魅は魅惑のTバック水着で飾っていた。でもこの水着、Tバックと表現していいものかどうか……お尻以外もいろんな場所がただの紐だし。しかも彼女は普段着からして、この水着と露出があんまり変わらないという。
     幽魅もぽたぽたと鼻血を流している。凛凛虎のと違って明らかに外傷。
     なるほど、これが夜魅の肘との因果関係か。バベルの鎖のおかげでHP減らなくてよかったね。
    「まあ、わたしは後衛だしちっちゃいしセクシーじゃ無いから、多分大丈夫だよな……?」
     3人の水着姿をたっぷりと眺めてから、雛子がため息をつく。そう言えば彼女は中2、女性陣の中では最年長。なのにどう見ても(略)

    ●お尻のお触り、無料
     紐水着のお尻と、褌のお尻と、スク水のお尻が、ちゃぽんと水に沈んでいく。
    「ひゃっ、冷たい……」
     もとい、幽魅と夜魅とマリーゴールドが、河童を出現させる囮として池に入っていく。ポンパドールと凛凛虎が続く。
    「よぉし、女性に仇なす不届き者、これからブッ殺してやるぜ」
     凛凛虎には鏡を渡したい。あと女性3人、君らも奴より後ろにいないと危険だろう。
    「まぁ、今回は色々な意味で頼もしい味方もいる事だし、大船に乗ったつもりで行くか」
     5人を陸上から見送るのが光明、そして雛子、焼吾。
     緑色の影が複数、すぐに近寄ってきた。
    「お、来たぜ」
    「寒いし、河童の目つきもなんか変だし、早く終らせましょう~」
     それはマリーゴールドだけでなく、8人全員の想いだろう。が、河童の素早さは事前に聞いていた通り、またはそれ以上だった。
    「あっ、やん! い、いけませんわ、およしになって」
     ぬるぬるの粘液に覆われた右手が2本伸びて来て、Tバックからはみ出した幽魅のお尻を、くりくりと撫で回した。
     上半身から熱を吸い取られて、腕の力が抜けていく気がする。クラッシャーとして打撃を与えるのが幽魅の任務。なのに、その機能の半ばを殺された形だ。
    「は、早ぇ……ひゃっ!?」
     夜魅も2体の河童に、左手でお触りされていた。
     褌の内側から下半身がすーっと涼しくなっていき、足がもつれそうになる。地上なら千鳥足だろう。
    「あんのエロ河童、尻子玉より尻狙いじゃんか! 羨ま……いや、酷い攻撃だ!」
     焼吾の本音、早くもだだ漏れ。
    「や、夜魅ちゃん、行きますわよ!」
    「おう!」
     同じ対象に向かって、幽魅が日本刀で斬りかかり、夜魅は腕を異形に変えて殴りかかった。それは姉妹の呼吸を合わせた、魔を祓う必殺のコンビネーション……のはずであった。
     だが、力を奪われた幽魅の刀は期待したほどのダメージを与えられていない。へっぴり腰の夜魅の攻撃はよけられた。
     今度はマリーゴールドから悲鳴が上がる。
    「あっ……!」
     スク水だしお尻の露出度は低いから、狙われ難いんじゃないか。そんな油断も少しだけあった。
     が、5体目の河童は確かに、マリーゴールドのお尻を餌食と定めていた。
    「あ……や……やだぁ」
     化学繊維のすべすべ感を堪能し、最後にむにっと一揉みしてから、さっと離脱。
     涙目になるマリーゴールド。が、河童の手が離れて落ち着きを取り戻すとともに、羞恥の心が怒りの炎へと転じていく。さすがファイアブラッド。
    「う~……燃やしてやる、消炭になるまで焼き尽くしてやる……」
     逃げようとする河童を渾身の泳ぎで追いかけ、火をまとわせた護符を叩きつける。水中故に炎が燃え上がる様子は見えない。だが河童は確かに、炎の熱で苦しんでいた。
     すかさず凛凛虎が追い打ちをかける。無敵斬艦刀は、敵を文字通り一刀両断にした。
    「俺の獲物は、テメェらだけじゃ食い足りないだとよ」
     これで河童は残り4体になった。

    ●無料より高い物は
     足止めの効果をばら撒き、水中組を支援する地上組に向けても、水流が飛ぶ。
    「うわー濡れたくなかったのに! やりやがったな……!」
     頭から水を引っ被り、毒づく焼吾。
    「くっ……こ、この!」
     2回目の水流を受けて、雛子は水で重くなっただぼだぼ上着を脱ぎ捨てた。
     十分にスピードが落ちた1体を狙い、両手でオーラを練って、ぶちかます。2体目の河童が粉みじんと化した。
     こんなこともあろうかと、上着の下にはTシャツとショートパンツを準備している。だから脱いでも問題はない、はずだったが。
    「うおっ!? こ、これはヒドイ……!」
    「ひ、雛子さん、下着下着!」
    「えっ? 下着がどうしたの……っ~?!」
     焼吾の喜び方とマリーゴールドの指摘で、雛子も事態に気づいた。
     Tシャツもショートパンツも白であった。それが水で濡れて、ピンクのブラジャーとパンティがくっきりと浮かび上がっているのだ。
    「み、みないでぇ~……ひぁぁぁっ!」
     雛子は両腕で胸を隠し、地面にへたり込んだ。
     普段はまるで性を感じさせない雛子が羞恥心に囚われ、戦えなくなってしまった様は、見る人によっては興奮を呼び覚ますかもしれない。
    「ヒナコ! 急がないと危険だな……ユミは大丈夫か?」
    「だ、大丈夫ですわ……あんっ!?」
     残り3体となった河童は、依然として幽魅へと殺到している。ふらふらとも、くねくねともつかない動きのお尻を撫で上げられ、弱々しく身をよじらせる幽魅。光明や焼吾の回復を受けて、かろうじて持ちこたえている状況だ。
     ポンパドールが彼女に声をかけたのも、万一のことがあれば彼女を助けて陸に上げなければと考えたためである。
     同じく集中攻撃を受ける夜魅も、違うベクトルで危機に瀕していた。
    「ち、ちくしょ……やめろ……」
     ディフェンダーであり、かつ竜の力の顕現でもダメージを軽減している分、夜魅の体力にはまだ余裕がある。
     だが、それは仲間の支援が幽魅に向かい、自分には来ないということの裏返しでもあった。キュアの機会もないまま、いいように力を吸い取られ、手にも脚にも力が入らない。河童が近くに来ても、ろくな反撃もできていない。
     それをいいことに、小麦色ヒップの上では、図に乗ったエロ河童の手が淫靡さを増していく。
    「やめろ……あ、は……や、やめ……てぇ……」
     すりすり、くいくい、むにゅむにゅ。
    「見たままを言うぜ……冬なのに壮絶な光景が、俺の目の前に広がってる!」
    「……メディックで良かった」
     陸の上で焼吾が息を飲み込み、光明は息を大きく吐く。
     ちなみに光明が冷静さを保っているのは、一重に今回の仲間達が彼の守備範囲外なためである。実は光明、「女はクリスマスを過ぎてから」と公言する熟女志向なのであった。
     ともあれ、光明はポケットから緑色の棒らしき物を取り出し、水中へと投げつけた。
    「そら、山田さんちの獲れたて無農薬だ」
     それは河童の大好物、キュウリであった。
     河童の注意が一斉に逸れる。どころかキュウリが1本しかない分、仲間内で奪い合いに発展しそうな勢いである。
     戦いを忘れた3体の河童は、動ける灼滅者達の集中攻撃を受け、ほどなく全滅した。

    ●『おまわりさん、こいつらです!(byポンパドール)』
    「うう、身体温めなきゃ……」
     戦いが終わり、雛子はぶるっと身を震わせた。ぶっかけられた水は上着はおろか、Tシャツとショートパンツ、それに下着の内側までも染み込んで、体温を奪っている。
     そんな雛子に、幽魅がそっと近づく。
    「ええ、わたくしも身体が冷えてしまいましたわ。人肌で温めてくださいまし」
    「えっ、人肌って……きゃんっ!?」
     幽魅は右手を雛子の腰に回し、ぐいっと抱き寄せた。
     唯一河童に撫でられていないショートパンツのお尻を、下から掌で優しく包み込み、すりすりと撫でさする。
    「ま、待ってそれはちょっと……くしゅんっ!」
    「やっ、ゆ、幽魅さん!」
     さらに左手はマリーゴールドを抱き寄せて、こちらはたわわに実った胸をふにふにと揉みしだいていた。
     まさに両手に花。幽魅は至福の表情で、我が世の春を満喫していた。
     テントの入口で、羅刹と化したかのような形相で仁王立ちしている妹に出会うまでは。
    「あ、夜魅ちゃん……はは……」
    「……今度は、頭も冷やしてこい!」
     柔道で言う巴投げ。長ーい放物線を描いて、紐水着姿の幽魅が宙に舞う。ざぱーん、と着水音がして、池に水飛沫が上がった。
    「すまねぇな2人とも。姉様のアレは病気だから」
    「う、うん……」
    「あ、まだテントには入っちゃダメだぜ。その前に……」
     夜魅はつかつかとテントの中に戻ると、そのテントの布の隙間にすっと腕を差し入れた。
    「そっちも、な!」
     いつの間にやら隙間に隠れていた凛凛虎の首根っこをひっ掴む。侵入には成功していたのに、目的を果たせなかったのは残念の極みである。
     そして、2回目の水飛沫が上がった。

     騒動が一段落つくと、灼滅者達は池のほとりで焚き火を囲んで一服した。
    「ほら、ヒナコ」
    「あ、ありがと……」
     熱々の紅茶をポンパドールから受け取った雛子。だが、コップを右手に持ったまま、なかなか口をつけようとしない。左手は身体に巻いたバスタオルの裾を心細げにきゅっと握っている。
     服の着替えは準備していた。だが、下着の奥までぐっしょり濡らされてしまうことまでは予想していなかったのだ。
     なので、雛子はまだ着替えられていない。ピンクの下着が乾くまでの間、バスタオル1枚の下は裸である。それを意識せずにはいられなかった。
    「……あえて私を狙うって、変な趣味の河童なんでしょうか?」
     こちらは光明の持参した番茶を手にしたマリーゴールドも、胸に菜々花をきゅっと抱きしめている。
     1回だけ触られた感触が、お尻によほど残っているのだろうか。
    「まあ一般人の犠牲者は出さずに済んだし、今回は満足すべきだろうか。もっとも変な趣味の奴は味方にもいるのだがな、2人ほど」
     ちらりと池の方に目をやる光明。言い分は正しいけど、自分の熟女趣味を棚上げにするのはいかがかと。
    「……俺は尊敬するよ、凛凛虎のこと」
     一同の目が焼吾に集まる。
    「女子にベタベタするなんて、俺にその勇気は無い……だから彼女できないのかな……」
     うつむいて焚き火に視線を落とす焼吾。夜魅がコホンと咳払いをした。
    「なあ焼吾、勇気があるってのと他人の迷惑を顧みないってのは別だと思うぜ。他人の真似をしなくても、今のままの焼吾がいいって言ってくれる人もきっと見つかるさ」
    「そ、そうかな……」
    「あと、姉様の同類がこれ以上世の中に増えたりしちゃ、おちおち夜道も歩けやしないしな!」
    「ははっ、そりゃ違いない!」
     明るい笑いが、6人の間に木霊した。

    ●名誉の負傷者
     凛凛虎と幽魅の2人は現在、ロープでぐるぐるに縛られている。
     そして、身動きの取れない凛凛虎は鮫フロートの上に放置され、幽魅はぷかぷか動くフロートに延々と水中を引き回されていた。
     寒風に吹き晒されるのと水中に漬け込まされるの、どちらがより辛いのかは悩ましいところである。まあ2人とも寒さで顔色は真っ青だし、歯はがちがち言ってるし、大差はないか。
    「うはははは~、綺麗なお姉さん達がいっぱ~い」
    「あはははは~、可愛い子猫ちゃん達がいっぱ~い」
     どうやら、空中に幻覚まで見え始めたようである。
     せめて夢の中で幸せになってくれることを祈ろう。明日には風邪確定だしね!

    作者:まほりはじめ 重傷:聖刀・凛凛虎(小さな世界の不死身の暴君・d02654) 鈴鹿・幽魅(百合籠の君・d04365) 
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2012年12月27日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 9
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