年忘れ別府の湯~大展望温泉にご招待

    作者:水上ケイ

    ●別府温泉は極楽な感じ
    「みんな、予定はあいてる?」
     鞠夜・杏菜(中学生エクスブレイン・dn0031)がにこにこと集まった灼滅者たちに微笑んで、某温泉ホテルのパンフレットを配った。
     大分県別府市は地獄めぐりと温泉で有名である。その街中の、別府湾を眼下にのぞむ小高い丘に、人気のお宿がある。
    「ここを武蔵坂学園で確保してあるの……」
     男女別和洋室プラン。朝夕食は豪華バイキング。温泉は別府湾一望の展望露天の湯。
    「その他、水着着用で混浴温泉プールもあるし、ホテル周辺の坂道はこの時期ライトアップされて、夜はイルミネーションがロマンチックなのー」
     昼間は少し足を伸ばして地獄界隈に出歩けば、道端のお店に並ぶ温泉卵や温泉プリン。蒸し物がやたらめったら美味しい街だ。
     しかし、なぜこのような行楽が提供されるかというと。
    「皆さん知ってるかもしれないけど、最近イフリートがよく別府界隈に出没しているのよ」
     どうやら鶴見岳のマグマエネルギーを吸収して、強大な力を持つイフリートが復活しようとしているらしい。
    「サイキックアブソーバーがあるから、イフリートの出現は予測可能だけど、強大なイフリートの力の影響なのか、直前になるまで予知できないの」
     このため、普段のダークネス事件のように、予知があってから移動を開始しては間に合わないため現地周辺で待機してもらい、出現が確認され次第すぐに迎撃に向かってもらう必要がある。
    「ということで、まずは別府温泉に向かって貰えるかな?」
     灼滅者達はそれぞれに頷き、宿泊施設のパンフレットを受け取った。
    「これはつまり、イフリートが現れるまでは遊んでいいと……」
     こくん、と杏菜は頷く。
    「そうなの。役得っていうか、この際存分に鋭気を養ってね! 私も一緒に行きたいくらいで……と、とにかく、イフリートの出現がわかったらすぐに携帯電話に連絡をいれるから、長電話とか電源切ったりとか、そういうのだけはナシでお願いなのね」
     詳しくは携帯でお知らせするので、よろしく!
     つまりは、杏菜の言いたいことはそれだけだった。
    「あとはね、イフリートが街中に入る前に撃破をお願いするわけなんだけど、別府にいればきちんと間に合うタイミングで連絡できると思うから、その点は心配しないで。特にこのホテルなら、フロントへ電話一本で必要なら夜中でもタクシー呼んでくれると思うわよ」
     夜中……。
     その言葉に灼滅者達は顔を見合わせた。
    「イフリートがいつ出現するかはまだわからないもの。もしかしたら、本当に夜中に電話で起こしちゃうかもしれないけど、そのときはごめんなさい」
     いつでもどこでも、出動できる心構えでいてくれると嬉しいのと、杏菜はぺこりと頭を下げた。


    参加者
    七咲・彩香(なないろのこころ・d00248)
    蒼月・杏(蒼い月の下、気高き獣は跳躍す・d00820)
    メリーベル・ケルン(中学生魔法使い・d01925)
    小鳥遊・優雨(優しい雨・d05156)
    芹澤・龍治(愛に生きる男・d05256)
    多和々・日和(ソレイユ・d05559)
    リーファ・エア(自称自由人・d07755)
    城戸崎・葵(素馨の奏・d11355)

    ■リプレイ

    ●地獄極楽別府観光
     九州は大分県別府市、某温泉ホテルの最上階。
     展望露天風呂で、武蔵坂学園の女子二人がくつろいでいた。
     小鳥遊・優雨(優しい雨・d05156)と七咲・彩香(なないろのこころ・d00248)である。
    「彩香ちゃん、良い景色ですね」
     温泉ぬくぬく、風がひいやり。
     優雨はほんわり。
     確かにうっとりするほど良い景色なのだが、彩香はもっと身近な何かに気をとられているようで。
    「優雨ちゃん、そこそこお胸おっきいよねー。いいな、ボクもそれぐらい大きいといいのに」
     小学5年生の彩香は自分のお胸をぺたぺた。
     温泉ならでは、定番のごとく浮かんでくるのがバストのお悩みかもしれない。
     高校1年の優雨はサウンドソルジャーでスタイルは良い。にこにこと笑顔を返し、彩香に言った。
    「彩香ちゃん、せっかくだから髪を洗ってあげましょうか?」
    「ありがとーなの。えっと携帯は大丈夫かのー?」
     突如古風になる語尾は彩香の仕様である。
    「まだ連絡はないですね。気をつけておきましょうね」
     いつエクスブレインから連絡が来ても良い様に、二人はスマートフォンを手近な場所に置いていた。もちろん防水には配慮している。
     二人は温泉を満喫し、その後は広々したショッピングフロアを探索した。そこでお目当ての温泉プリン(ホテル仕様)を探し当て、風呂上りに美味しく食べる。
     その間、携帯はずっと静かだった。

     一方、他の6人は観光に繰り出した。
    「さあ、早速観光ついでに警戒……あれ、逆だったかしら? まあいいわ」
     メリーベル・ケルン(中学生魔法使い・d01925)が張り切る。どちらにしろ、携帯を持っておく事以外に今はできる事はない。
     首から携帯を提げた多和々・日和(ソレイユ・d05559)が、観光ガイドをパラパラめくる。
    「やはり別府観光といえば地獄めぐりでしょうか。美味しいものもこの辺りにありそうですしっ」
    「ふむ。大体の周辺地理はこんな感じなのか」
    「地獄めぐりならば、この辺りからスタートだな」
    「こんなコースですかね。もしもはぐれたり、何かあったらこの場所で待ち合わせしましょうか?」
     蒼月・杏(蒼い月の下、気高き獣は跳躍す・d00820)に芹澤・龍治(愛に生きる男・d05256)がおよその地理を確認し、リーファ・エア(自称自由人・d07755)も観光マップを覗き込んでアイデアを出した。
     事前準備はばっちり。おかげで彼等は効率的に観光ルートを周る事ができた。もちろん携帯電話も全員きっちり準備して抜かりはない。
    「観光がてらお土産買ったり、食べ歩きも楽しみだね」
     城戸崎・葵(素馨の奏・d11355)の声も明るい。
     血色、海色、間欠泉。地獄は何ヶ所もあって、団体客で賑やかな場所もあり、それなりに人が少ない場所もある。葵は一般人をむやみに怖がらせないように気を使いながら、ビハインドのジョルジュを呼んでできる限り一緒に見て歩いた。
     龍治はカメラ片手に楽しげで、珍しい場所を撮影したり、時々若い女性にさらりと声をかけてシャッターを押してもらったり。
     そんな地獄観光の傍ら、皆が特に楽しみにしていたのは食べ歩きである。
     嬉しい事に大抵の地獄には食べ物コーナーと土産物屋が併設されていて、皆は食べまくった。
    「温泉卵におまんじゅう……」
     メリーベルが数え上げる。
     サツマイモ、しゅうまい、肉まん。
    「気になったものはとりあえず食べてみる。太っても明日から考えればいいんです」
     リーファの主張に異議を唱える者はいない。
     そして幾つ目かに立ち寄った店で。
    「あっ、温泉プリン発見です!」
     日和が声をあげ、メリーベルも俄然急ぎ足になる。
    「私もこれだけは逃せないわ。お土産にも沢山買って帰らないと……!」
    「そうなんですよ。お土産……」
    「ああ。俺もプリンは忘れないでくれと伝言を貰ったな」
     リーファが続き、杏は伊達眼鏡を光らせる。
     かくして皆で地獄蒸しプリンコーナーに押しかけたが、杏がまずは言う。
    「レディーファーストだな」
     どうぞどうぞと龍治も紳士風に順番を譲り、さらに杏はおもむろに学校へ着払いの配達用紙を取り出した。本当に手際の良い事である。これで急な戦闘が起こっても土産は無事だ。
     というわけで、皆好きなだけ土産にプリンを送り、それぞれ今食べる分も手に入れた。濃厚なプリンは手作り風で味わい深い。
    「これが温泉プリン! 美味しい~」
     メリーベルがすんごく幸せそうな声をあげた。普段の大きな態度はどこへやら。はしゃぎまくってプリンをぱくぱく。
    「温泉の蒸気で蒸すのを地獄蒸しというのか」
    「プリンはやはり格別だね」
     杏と葵も感心し、龍治はプリンを食べつつ下宿先の仲間のためにみやげ物を物色する。
    「あーすみません。何か変わったみやげ物はありますか?」
     さりげなく若い女店員に近づいて愛想よく話しかけたら、濡れたら脱げる不思議な絵美人タオルを紹介されたり。
    「鞠夜にも土産を買わないとな。何がいいと思う?」
    「わたしは温泉の入浴剤を買いましたっ」
    「湯の花とかもいいですよね」
     杏に日和にリーファは楽しくエクスブレインへお土産選び。きっと杏菜は喜ぶに違いない。
    「なるほど。それじゃ俺もこれにしとくか」
     友人や家族への土産に、目に付いた美肌湯の素を加え、杏はまとめて配送手続きをとる。日和は東京の友達にはご当地銘菓を、家族には地獄Tシャツを選んだ。龍治も同じく、仲間の顔を思い浮かべつつ選んだ土産を宅配にしてもらった。
     そうこうしていると、そろそろ夕刻である。
    「さあ~お宿に戻ったら豪華バイキングも楽しみですねえ。大分といえば関サバとかですよね」
     リーファがすっきりと言う。あんなに食べたのに。
    「お宿のご飯は別腹ですともっ」
     日和も言った。
     あんなに食べたのに……。

    ●別府ナイトライフ(?)
     さてこうして一日をたっぷり楽しんだ6人だが、携帯はまだ大人しいままだった。引き続きイフリートを警戒して、夜は交代で寝ずの番である。
    「枕投げしよー!」
     彩香がはしゃぐが優雨がやんわりと言った。
    「私達は一番最後の組だから、早起きして、朝日を眺めましょうか」
    「わかったの。今のうちに寝ておいた方がいいの。でも起きるの、苦手なんだけどなー。ふぁ~あ……」
     ちっちゃなあくびがこぼれる横を。
    「一緒の班だね、宜しく」
     温泉にはいってさっぱりした葵が、声をかけて寝にゆく。
     打ち合わせ通りに最初の待機組、杏、メリーベル、リーファを残して全員就寝した。その中で、リーファはいそいそスマホを防水ケースに入れている。
    「あら、リーファさんどこに行くのかしら?」
    「温泉ですよ! お・ん・せ・ん!」
     行ってきまあす、勿論警戒はします、と携帯を持ってリーファは風呂へ。夜空に浮かぶ月を眺め、頭にタオルを乗せてくつろぐのだ……。
     パタンとドアがしまったあと、杏とメリーベルは顔を見合わせた。
    「ケルン、眠気防止にトランプでポーカーでもやるか?」
    「いいわよ」
     そのうち風呂上りのリーファもゲームに加わり、静かに時間は過ぎる。
     やがて。
    「ほら、起きろよ」
     杏に声をかけられて龍治は交代時間を知った。
    「ああ、もうそんな時間か。異常ないですか?」
    「ああ」
     龍治はするりと起きてくる。いつでも出動できるようにと私服のままでいたのだ。一緒に不寝番をするのは日和とサーヴァントの霊犬だ。
    「知和々ちゃん、何して遊びましょーか?」
     毛布にくるまって日和は麻呂眉豆柴の霊犬に話しかける。知和々は花飾りをつけた頭をきょとんと傾げた。
     龍治は携帯のマナーモードを解除しながら、日和に話しかける。
    「日和さん。眠くないですか?」
    「大丈夫のはずです……けど。そーだ。芹澤君、しりとりしませんかっ? プリン……アラモードッ!」
    「えっ。ド、ドラマ」
    「まんじゅう」
     日和はこの後も食べ物の名前ばかり繰り出して攻めるが。
    「……温泉……たまごぉ、ぉ……」
    「……日和さん?」
    「……はっ。ね、寝てませ」
     ジリリリリーン!
     大音量で黒電話もとい日和の携帯が鳴って、眠気は一気に吹っ飛んだ。

    ●炎の神獣、地獄に現る
     杏菜から連絡を受けると、灼滅者達はもたもたしていなかった。葵が素早く眠気覚ましの清涼菓子を配る。
    「地理把握しといてよかったな」
     龍治が言うとおり、皆はすんなり杏菜が指示した地点に辿り着くことができた。そこは市街地から山の方に入った地点で、白い噴気もとい地獄の煙が上がっている場所は間違い様がなかった。
     日和もすぐに気づいた。
    「鞠夜さんが言ってた場所、あそこですねっ」
    「観光化されてない地獄というか、小さな噴気地帯みたいですね。……あっ!」
     リーファと、他数名が耳を押さえる。
     突如轟音と共に地獄が小爆発を起こしたのだ。
     吹き上がる炎を囲むように灼滅者達は布陣する――否、炎の正体は灼熱のダークネス。エクスブレインの説明どおりである。
     ここに灼滅者達の休日は完全に終わった。
     杏が懐中電灯を脇において力を解放する。
    「俺の影……目覚めてここに力を!」
     杏はファイアブラッドだ。敵の炎を警戒し、まず前衛の仲間にワイドガードを展開する。杏の方が一瞬早かったが、まろぶ様に地を踏みしめた獣は咆哮をあげ、灼熱が彼を襲う。
     名実ともに熱戦が幕を開けた。
    「シルキー、お願いなの」
     彩香がメディックの霊犬に声をかける。大きなピンクリボンがふわと揺れて血の逆十字がダークネスを真っ向から引き裂いた。続いて優雨が放ったどす黒い殺気がイフリートを包み込む。
     この二人はさすがに戦闘でも息が合っていたが彼等だけではない。8人全員が見事に気持ちを揃えて敵に畳み掛けた。ダークネスは強力だが1体のみ、武蔵坂学園は別の戦い方で強敵に挑んだ。
     リーファの胸元にはシャドウの印。前衛で構えるは妖の槍。
    (「この皮のジャケット……お気に入りなんですけどね、駄目になっちゃいますかねえ」)
     そんな考えが脳裏を掠めるのも一瞬のこと。リーファは薄く笑みさえ浮かべてイフリートを穿つ。
     敵の炎の体躯が視界を明々と照らす。
     サイキックが飛び交い、戦いは忽ち加速した。
     周囲の闇はますます深い。
     葵のビハインドは善戦するも、イフリートの攻撃を受けて消滅する。
     前に立たせてしまうけれどお願いね、戦闘開始時にそう声をかけたら、ジョルジュは長い髪を揺らせて「任せなさい」とでも言いたげだったのに。
     やはりダークネス。さすがに一筋縄ではいかない。
    「燃やすばかりでなく、僕の音楽も少しは聞いてよ?」
     ギターを手に葵は後衛から着実に敵を狙ってゆく。
     そして被弾すれば炎の獣は唸り、咆哮した。
    「これがイフリート……戦うのは初めてだけど、なるほど暑苦しそうな敵ね」
     まさに熱気むんむん。
     メリーベルは強気で敵を睨んでみる。何なのこの熱くて図体の大きなケモノ……別にビビッてなんかないわよ? 止まれ足の震え。
     それでも瞳に力を集めて。影業は大鎌のごとく。
     メリーベルはえーいと心の中で掛け声をかけてイフリートに刃を振り下ろした。
     しかし、そんなメリーベルの強気もイフリートが自分に向かって牙を剥くまでだった。
     でかく開いた口からゴバァと噴出する炎の塊。
    「あわわわ!」
     もうだめ、あれってきっとレーヴァテ……おや。
     しゅうーっと炎が去った後には龍治のシルエットが。
     全てのレディーは俺が守る、とは彼の心の声。ディフェンダーとて万能じゃないが今日は上手く庇えてよかったと、「守る」事に拘る龍治は思いつつ――無敵斬艦刀を振り上げる。優雨の援護が届いたのは言うまでもなく。
     彩香のグレネードショットがぶんと飛んでいく。強烈な一撃が決まるとしゃらんと空薬莢が舞い落ちる。
    「知和々ちゃん、やりますよ!」
     日和も俊敏な動きで機を掴む。主の動きに霊犬の知和々も呼応する。
     でや!
     日和は毛むくじゃらの縛霊手を思うさま、イフリートに叩きつけた。
     葵はペトロカースで狙い、気を取り直したメリーベルも殲滅道具をふるった。
     灼滅者達は優雨とシルキーの援護を受け、時には自分自身を癒して奮戦する。
    「頃合なの。もっともっとエフェクト増やすのー」
     えーい!
     彩香が血吸いナイフを握り締めてジグザグスラッシュを撃ち始めた。優雨も回復の合間に妖冷弾で攻撃する。ビシビシとイフリートが凍りつき、一瞬の後にパアンと煌く華が散る。
    「イフリートでも、凍るのですね。氷付けにするのは大変そうですけど……」
     炎を吐きまくるダークネスに対し、灼滅者達は手数で押した。
     時に何かに掴まれた様にイフリートが攻撃を弱める。今や状況は武蔵坂学園に有利だった。
     リーファはEquilibrium、ガンナイフを手に零距離格闘を仕掛けた。
    (「ま、不謹慎ですけど前衛の攻防って気分が高揚して楽しいですよね」)
     イフリートが躍動する。その巨体の懐に飛び込んでリーファは殲滅道具をふるう。
     飛び散る炎。
     咆哮が夜をゆるがす。
    「地獄にお引取りください!」
     でやーっ!
     日和はがしっと手負いの獣を掴むと投げ飛ばした。奇妙な角度に獣の体が折れ曲がる。
     しぶとく立ち上がるも、グラリと揺れる敵の巨体。
     そこに杏が日頃の鍛錬の成果を発揮して見事な紅蓮斬を放つ。見切られぬ様手は打ってあった。
     そして葵は契約の指輪を瀕死のイフリートに向けた。スナイパーの彼は最後の一手でも狙い過たず、石化呪を放つ。
     攻撃が命中した瞬間、イフリートは金色の閃光となって散り、一瞬の後には影も形もなかった。

    ●再び別府の街
     日付はとうに変わっていた。
     省エネか、イルミネーションもすっかり消えた道を灼滅者達はホテルへ戻った。
    「ふう……まあ、いい汗かけたんじゃないかしら。目的は達成したし、帰る前に温泉を堪能していきたいわね」
     メリーベルに優雨が同意した。
    「ええ。温泉で汗を流すとしましょうか」
     確か風呂は早朝営業しているはずである。
    「地獄蒸しプリンをおみやげに10個ぐらい買って帰るのー」
     彩香が宣言する。これは、帰る間際に売店で購入すればよいだろう。
    「温泉いいですね。警戒等は任せましょう」
     リーファも賛成し、女子達は賑やかに部屋へ撤収する。
     龍治も男湯へ向かうのだが、一方。

    (「全く、温泉でのんびり疲れを取りたいところだが」)
     杏はイフリートが消えたあとの噴気地帯に警戒に残り、付近を周回していた。
    (「まあこれで怪しいものを発見したらそうはならないだろうがな」)
     もう休みたいと思う傍ら、別の展開も期待してしまう自分がいる。
     俺も平穏な暮らしには戻れなさそうだ……杏は薄く口の端をあげ、伊達眼鏡の奥で瞳が鋭く煌く。
    (「イフリート、俺のなりうるもう一つの姿……忘れるな、その姿を、戒めとして」)
     見上げれば星座が静かに瞬いて、とりあえず今は。
     別府の街は平和なまどろみの中。

    作者:水上ケイ 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2012年12月26日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 3/感動した 0/素敵だった 2/キャラが大事にされていた 7
     あなたが購入した「複数ピンナップ(複数バトルピンナップ)」を、このシナリオの挿絵にして貰うよう、担当マスターに申請できます。
     シナリオの通常参加者は、掲載されている「自分の顔アイコン」を変更できます。
    ページトップへ