クリスマス~捧げよリア充、今宵はRB団の宴なり~

    作者:相原あきと

     彼らに統率者は無く、全てが同志だった。
     彼らは自然発生し、気がつくと自然へと帰って行く。
     メンバーに誰がいるかは不明、どう連絡を取り合っているかも不明。
     しかし、彼らはリア充が発生するタイミングで確実に自然発生する。
     ある者は覆面を、ある者は三角頭巾を、ある者は素顔で……。
     彼らの名は――RB団。

    『屋上に集まる者たちへ。
     闇堕ちされても困るので、パーティーでもして憂さを晴らして下さい。
     パーティーの資金は学園から出すようにします』

     巨大クリスマスツリーを見下ろす屋上に学園から届けられた手紙。
     屋上に集まっていたRB団は「ひゃっはー! 宴じゃ宴じゃ!」とばかりにはしゃぎ出す。
     しかもお金は学園持ちときたもんだ! こんなに嬉しいことはない!
    「よし、ピザを189人前頼もうぜ!」
    「そこは寿司だろーが!」
    「飲み物も忘れるなよ~?」
     やいのやいの。
     だが、彼らの本質を忘れてはならない――。
    「腑抜けるな同志達よ!」
    「そうだ! 聖夜を汚すカップルどもを放置して良いのか!」
    「否! 断じて否! マラソン大会は準備運動に過ぎない、今日こそ本番ではないか!」
     シートを敷きだした者の手が止まり、お菓子を並べていた者が動きを止め、
     出前を頼み途中だったものは「――で、お願いします」と注文を続ける。
    「だがどうする! せっかくの資金を不意にするのか!?」
     同志の1人がピザ屋のチラシを片手に声をあげる。
    「いや、宴は開く。だからこういうのはどうだ……」
    「おお、それなら……」
    「あ、はい、食べ終わったお皿は明日の朝回収で……」
     聖夜の作戦と共に、宴会準備が進み、そして――。
    「我らの目的はただ一つ!」
    「リア充撲滅! リア充撲滅!」
    「ゆえに! 勘違いしたリア充どもを拉致し、この屋上にて磔にするのだ!」
    「それを肴に俺達は宴会……もとい正しきクリスマスがなんたるかを説教するのだ!」
    「火あぶりだー!」
     そして彼らは異様なオーラを放ちつつ天に吠える。
    「聖なる夜に湧いて出る! リア充達に正義の裁きを!」
    「捧げよリア充!」
    「今宵は」
    『RB団の宴なり!!!』


    ■リプレイ

    ●今宵はRB団の宴なり!
     クリスマスの屋上、RB団達は学園から出た潤沢な資金を背景に豪華な宴を催していた。
    「今宵はRB団の宴なり~♪」
     適当に団員達に合わせて相づちを打つのはサンタガール姿の一子(d04508)だ。
    「そのチキンいただき~♪ こっちのピザもグラッチェグラッチェ♪」
     可愛いのに周りのRB団男子諸君が引く程の食いっぷりだ。
    「残念ガールだな」
    「だな」
    「つまり同志か」
    「だな」
     認められし一子の元へ、次々に料理が運ばれる。
    「で、摩那ちゃんも食べに来たの?」
     もぐもぐしつつ摩那(d04566)に話をふる。
    「失礼ね、私はパーティ目当てじゃナイデスヨ」
     一子はピザと寿司をもぐもぐ。
    「ああっ」
     明らかにピザやら寿司やらが目的デス。
    「ち、違うわ! 私はこうやって双眼鏡を片手にちゃんと襲撃対象たるカップルを見つけて――」
    「はい」
    「あ、美味しい♪」
     渡された焼き鶏は炭火焼きで香りも良く美味かった。
     そんなわけで、RB団の活動……というより宴会主目的なメンバーもいる。
     イギリス人とのハーフである亜理栖(d00497)もその一人。
    「こう、賑やかにお祭りするのって楽しいよね」
     王子様系のフェイスで亜理栖が言うと、なんとなくイラっと因縁付けられたり。
    「ヘイヘイッ、お前もRB団なら思いのたけを叫んじまえYOー」
     叫べば願いが叶うかもよと唆され、亜理栖は屋上の端へ行き――。
    「僕にお姫様をください! 僕にお姫様をくださーい!」
     素直な叫びだった。
    「同志よー!」
    「すまねぇ! まぁ飲め!」
     注がれるジュース、組まれる肩、亜理栖は同志だった。

     フグちりフグ刺しから始まり、フカヒレ、寿司にローストターキーと来た。
     和洋折衷、発電機に炬燵まで持ち込んで豪勢な御馳走を味わっているのは凪紗(d10542)だった。
     だが、そんな凪紗に声をかけてくる男がいた。
    「お譲さん、麗しい瞳のあなた。あなたはこんな所で無為に時間を浪費するべきではありません」
     國鷹(d11961)だった。
    「あなたはとても魅力的です。俺はあなたがとても素敵な女性だと思います。本当に、心の底からそう思います」
     凪紗の瞳を覗きながら言う國鷹。
     凪紗の瞳には運ばれてくるケーキが映っていた。
    「さぁ、こんな活動はやめて、俺と一緒に輝ける学園生活を送りましょう!」
     回り込むように凪紗の前に立つ國鷹、ケーキを運んでいたRB団コックに腰がぶつかりケーキが落下。
     抜き放たれる凪紗の日本刀。
    「ケーキの恨み……」
    「え? ちょっと! 俺はただナンパしてRB団を抜けさせようと――」
     キラーンッ☆
     本日第一号の星は宴会に紛れていた義勇軍だった。

    「クリスマスにカップルだけが優遇されるなんてつまんねー! リアルが充実してるリア充はカップルだけのもんじゃねーだろ!」
     叫んでから宴会の輪に加わったのは和泉(d09685)だ。
    「オレらはオレらでリア充しようぜ!」
    「まったくだな! 俺達もリア充だ!」
     かんぱーい、ともう何度目か解らない号令が繰り返される。
    「っと、同志よ、そろそろ演説開始っぽいぞ」
     和泉が見れば屋上の給水タンクの上でRB団員が演説を行い始めていた。
    「この日本を汚染しているクリスマスとは何か! これは過去、外国のご当地怪人によって行われた洗脳の成功例なのです!」
    「な、なんだってー!?」
    「どういう事だキバ――角(d10165)!」
     角は驚くRB団に事実ですと告げ。
    「我々はこの恐るべき洗脳に屈してはいけません。そして洗脳されてしまった哀れな者達の目を覚まさせ救出するために決起する事をここに提案します」
    「おおー!」
     盛り上がるRB団達。
     さりげなくその光景を録画する蝸牛(d01675)。
     そして演説台(給水タンク)の上から角が降り、代わりに立つのは騎士だった。
    「今日を持って聖夜の悪夢は終わるのだ。そぉ、我らの手で終わらせるのだ」
     ナイト(d00899)だった。
    「立て同志達よ! 我らの心に宿るは正義の剣! 汝らの手に剣を取りて悪しきリア充共に鉄槌を下せ!」
    『おおー!』
     次々に立ちあがるRB団、ナイトの掛け声に導かれるように、蜘蛛の子を散らすように屋上から駆けだして行くのだった。

    ●リア充蔓延るこの行事!
    「俺達の活躍が認められ学園からも多大な支援金が来ています!」
     月や星の形をした大量のイルミネーションが飾られた校舎をバックに演説するのは刑一(d02621)だ。
     周囲にRB団が集まり、いったいどこで売っているのか刑一とお揃いのサバト服を着こんでいる。
    「波は来ている……同志達よ! 聖戦を開始するのです!」
    『うおおお!!!』
     刑一の号令と共にRB団がドドドッと走りだし――。
    『ぎゃーっ』
     先頭集団が吹っ飛んだ。
    「ドーモ、RB団スレイヤー、ニャルラトスバルデス。RB団滅ぶべし、慈悲はない」
     モブを蹴散らしズザッと現れたのは【RB団スレイヤー】の一団だった。
     水戸の御老公のごとく前口上を述べるのは昴(叢雲・d02294)だ。
    「シャルちゃん! レニー君! ディアナ! こらしめてやりなさい!」
     指示を聞いて昴と並んで前線に立つのはレニー(d01856)だ。
    「アインフェアシュタデン! さぁRB団、聖夜の星にしてあげるよ」
    「星って、もう……」
     RB団員が先ほど吹っ飛ばされた先頭集団の仲間(すでに星となった)を見上げる。
    「星にしてあげるよ」
    「いや、だからもう星になって……うぶっ!?」
     もうもうと立ちこめる煙に団員が咳き込む。
     それは刑一の投げた煙玉だった。
     RB団が煙に乗じてスレイヤー達の手をすり抜けリア充狩りへと走る!
    「覚悟しやがれなのです。幸せ者達。寒い空の下でくるしみます、なのだ」
     見バレ覚悟の仮面無しサバト服を着たクロエ(d02109)が煙幕を抜けてリア充へと迫る。
     だが、そこに立ち塞がるは前回丸めこまれた屈辱を果たすべくスレイヤーに所属するシャルロッテ(d05090)だ。
    「ふふふ……サーチアンドデストロイ! さぁ、おとなしくお縄につくのデス!」
     クロエは咄嗟に方向転換しようとするも、クロエに続けとやってきたRB団員達に押されて身動きが……。
     クロエ、お縄。
    「さぁ、これで安心デスヨ」
     一方、刑一を中心に突破を狙う主戦力部隊は善戦するも、じりじりとやられ遺伝子とスレイヤー達の連携に追い詰められていた。
    「今だよディアナ、一網打尽だ」
    「オーケーレニー! 避けてっ!」
     ディアナ(d05023)が投網を放って一気に大量捕縛に成功!
     さらにディアナは網の端をシャルに渡す。
    「シャルお縄の出番よ。思いきりキュキュキュッと絞めちゃってちょうだい」
     シャルロッテがぐるぐる巻きにしそのまま昴へ。
    「さぁ、東京湾に沈めるわよ!」
     RB団よりよっぽど遠慮がありません。だが――。
     ティキーン!
     その時、RB団スレイヤー達は何かを感じて気配の元へと視線を投じる。
     そいつは――。
     無駄に高い場所にいた。
     無駄にポーズを付けていた。
     そのポーズは無駄に無駄がなかった。
     つまり無駄に無駄の無い無駄なスタイリッシュポーズだった。
     ディアナはスタイリッシュに投網を投げた。
     アンカー(d01153)は無駄にスタイリッシュなポーズで捕まった。
    「くっ、勝利の女神すら私をフるのか……これだから女は……」
    「アンカー、貴方までこんな……」
    「聞け、我らは一万組のカップルのいちゃつきを阻んでも、ぼっち1人の闇堕ちを防ぐ正義の活動をしている。つまり――」
    「RB団滅ぶべし、さぁ東京湾行くわよー?」
     RB団第一戦闘部隊、聞く耳持たない昴達によって引ったてられて終了。

     校舎の壁に作られたLED製のトナカイが、パターンが切り替わると共に走っているように見える。
     そんな中、なんでお前はバイクに乗ってないんだ! とマラソン大会の時も思った男が1人。
    「ヒャッハー! マラソンは学校行事、だがクリスマスは年中行事! つまりはそういう事だぜ!」
     三成(d01741)だった。意味はさっぱりわからない。
    「聖なる夜の木偶狩りだぁ!」
     投げ縄を振りまわしながら叫ぶ三成だが。
    「残念だが、君のクリスマスは私が取り上げる」
    「まさか本当に来るとは……というか、部長達と温泉に行ったはず!」
    「捨て置けなかった……ただ、それだけだ」
     三成の前に現れたのは織緒(d09222)だ。
     そして一瞬の交錯。
     倒れたのは……いや、手も足も手錠で固定されて転がされたのは三成だった。
     さらに向上したロープ裁きとトラップで、転がった三成が逆さ吊りに。
    「力を蓄えていたのはRB団ばかりではない……さて、次へ行くか」

    「ひゃっはー! メリークルシメマース!」
     世紀末な叫びで始まる第二弾、それは覆面を被って叫ぶ祐一(d00978)だ。
    「嫉妬かい? 醜いねぇ」
    「誰だ!?」
     祐一に向かって語ってきたのはサンタ姿の女子高生――ディートリヒ(d11677)。
    「メリークリスマス!」
     大きな白いプレゼント袋にさくさくっと祐一を詰めるディートリヒ、袋の中からはやられ遺伝子を発動させた祐一の叫びが聞こえる。
    「我らRB団は消えぬ! 恐れよリア充、第二第三のRB団はすぐに産声を上げるぞ!」
     すぐに……それはいつだろう? 2月の中頃くらい?
     そして祐一は先ほどの世紀末第一弾と同じくクリスマスオーナメントのように釣り下げられるのだった……。

    「ヒャッハァアアア! リア充は消毒だぁ!」
     本日3回目の世紀末です。
     しかも今回はバイク――ライドキャリバー持ち!
    「オラオラオラァ! リア充はケーキをよこ――お、お前ら!?」
     オーナメントの如く吊下がったまま放置された仲間を発見する風(d00691)は、三成と祐一の前でキャリバーを止める。
    「乗りなぁ! 後ろは空いてるぜ同志!」
     だが、2人は吊るされていて乗れなかった。
    「しょうがねぇ」
     風がキャリバーから降り一歩踏み出した所だった。
    「!?」
     残っていたロープトラップが足首に発動、びよーんと3人目のオーナメントが完成したのだった。

     ちゅどーんっ!
     大爆発と共にそのリア充カップルを襲撃したのは六玖(d05666)だ。
    「リア充爆発を掲げるたび、ことごとく爆発させられてきた俺だけど!」
     六玖の周囲でさらに爆発が巻き起こる。
    「今度こそはリア充撲滅のためにリア充を爆発させるよ! そう! リア充は爆発だー!」
     そして六玖の爆発音に惹かれて次々と集まってくるRB団。
     襲撃を受けたリア充――在処(d09913)と哀歌(d10632)はお互い顔を見合わせる。
     明らかにRB団は自分達をリア充と思っているが……。
     兄妹だった。
    「リア充は……爆発だー!」
     掛け声とともに一斉に飛びかかるRB団、そして哀歌に突き飛ばされる在処。
    「なっ!?」
     振りむけばそこにはすでに哀歌はおらず、ヌイグルミ等が釣り下げられた木の影へと避難していた。
    「恩を仇で返す……これが私の宿命ならば、受け入れよう」
     爆発と共に連れて行かれる兄へ、出荷される豚を哀れむような視線を流した後、哀歌はその場をカッコよく去って行くのであった。

    「ぐげ」
     鋼糸にて動きを封じられたRB団がボンレスハムのようになりながらうめき声をあげた。
     さらにそのまま夜空の星へと吹き飛んでいく。
    「さて、見回りを続けましょうかね」
     RB団をガチで屠り、再び歩き出した光(d11205)は図書室入り口に作られたお菓子の家の前でお腹を鳴らすボロい服の少女を見つける。
    「美味しそう……でござるなぁ~」
    「それは食べたらダメだと思いますよ?」
     思わず少女――武士(d09817)に光が声をかける。
    「おお、かたじけない。いやはや、こう、お腹が空いて……」
    「それなら……一緒に屋上の宴会に行きませんか?」
    「そう言えば、RB団になれば屋上で宴会が……とか、なんとか」
     そうして2人は屋上へ。
     光は義勇軍、武士はRB団だったのだが……。
     友情が芽生えるか、結局戦いになるのか、それは誰にも今はわからない。

     学園の中庭。
     大きな3段クリスマスケーキが飾られた場所で、1人のマッチ売りの少女が……いや、抹茶ケーキ売りの少女がいた。
    「ケーキいかがですかぁ~?」
     少女、ワルゼー(d11167)は寒そうなサンタ衣装でワサビたっぷりの抹茶ケーキをリア充に売ろうと画策していた。
     だが開始三分、誰もがワルゼーに見向きもしない。今日はクリスマス、リア充にとって恋人しか目に入らない日。
     だからワルゼーはやった。
     カップルの顔に思いっきり抹茶ケーキを叩きこんだ。
     もう、全力で作戦とかガン無視の強硬手段です。
    「ぐわあああ!?」
    「大丈夫! ジョニー!?」
     苦しむ彼氏、パニくる彼女。
    「何をするのよ!」
     ワルゼーに食いかかる彼女だったが、声は後ろからかけられた。
    「どうも、神威の押し売りサンタっす!」
    「え?」
     振りかえると眼前に構えられていたのは……バズーカだった。
    「イチャラブリア充にバズーカをプレゼントするっす! リア充滅せよ!」
     爆発と共に黒こげになって倒れる彼女。
     そして残るはバズーカを構えたサンタ姿の少女、メアリ(d08383)と、ワルゼーだった。
     見つめ合い、やがてニヤリと笑う2人のサンタ。
     その時だった。
    「良い子にはプレゼントを……悪い子にもプレゼントを……」
     鋭い眼光、傷だらけの手、鈍器のようなプレゼント袋。
     子共が見たら泣きだすようなサンタクロース、淼(d04945)が現れたのだった。
     意気投合したワルゼーとメアリが同時に構える程度には。
     ブンッとごつごつした何かがいっぱい入った鈍器プレゼント袋を背中へと担ぐと、淼はニヤリと獰猛な笑みを浮かべ、2人に突っ込んで行く。
    「おらよ! サンタさんからのプレゼントだ! 受け取りな!」
     咄嗟に左右へ交わす2人の少女、だが淼の追撃はこれで終わらず――……ってか、これはまた少年漫画が4週間引っ張るパターンなのでここで切ります。
     彼らの戦いは今、始まったばかり。

     すでに学園のそこかしこでRB団と義勇軍の戦いは勃発していた。
     学園のプールはフェンスを星の色のLEDで飾りつけられ、水面の反射でよりいっそうロマンチックな雰囲気を醸し出していた。
     そんなプールに2人のカップル。
     と現れるのはもちろんRB団。
     スパーンッ!
     登場いきなりハリセンではたかれました。
    「な、なにすんじゃいッ!」
    「恋人さんの邪魔する人は許さないよ」
     叶流(d04454)だった。
    「っざけんな! 俺達ゃ――」
     スパーンッ!
    「本当に見苦しいよ。もっとやるべき事をやったらどう?」
    「ってーな! だから――」
     スパーンッ!
    「って! じゃあ何しろってんだ!」
    「……勉強、とかかな?」
     スパーンッ!
    「ってか、最後なんで叩いた!?」
     スパーンッ!
     容赦無いです。
    「ちょっと待って下さい」
     そのハリセンにストップをかけたのは同じ義勇軍の流希(d10975)だった。
    「彼らの気持ちはわかりすぎるぐらいわかります。だから」
    「え?」
     ハリセンを構える叶流。
    「いえ、まずは話合いましょう。私は思うのです、いたずらに変な彼女を作るより、じっくり考えて素適な伴侶を探した方が良いと」
    「お、おう」
     半泣き状態で語る流希に気押されるRB団。
    「わかります……私も、私も探している最中ですから」
    「そうか……お前、お前は同志だったのか!」
     スパーンッ!

     ピンクの電飾を中心に雪や動物達のオーナメントで飾られたモミの木の下を、RB団を追って駆け抜けるのは奎悟(d09165)だった。
     そんな奎悟を見つけ声をかけたのは真っ赤なサンタ服を着たなこた(d02393)だ。
    「何してるですー?」
    「RB団ってヤツらを捕まえ……まぁ、鬼ごっこみたいなモンだ」
    「鬼ごっこ? なら僕も一緒に遊びたいです!」
     なこたが合流し、さらに霊犬のたまも一緒にRB団の追い込み漁だ。
    「ちっ、まだリア充を狩って無いってのに!」
    「おい、犬が増えたぞ!?」
     慌てるRB団を余所に、なこたは五芒星や雪結晶などの星飾りがついた校舎の壁、その上の屋根を走り先回り。
    「奎悟さん、そっちいったですよー」
    「よし、なこた! でかした!……お前らの悪徳を見逃すつもりはねぇぞ」
     奎悟の声にRB団達が震える。
    「なめるな! リア充を爆発させる為なら、俺達ゃマローダーにだってなってやる!」
     奎悟が投げた投網は1人が犠牲になり、残りのRB団は一斉に逃げだす。
    「まだ終わりじゃないですー?」
    「そのようだ!」
     鬼ごっこは続く。

    「ねぇねぇお兄さん、そんな事してないで瑞穂と遊んでくださいよー?」
     上目遣いで瑞穂(d00498)に言われたRB団モブ衆の方々はドギマギしながらお互い顔を見合わせる。
    「お、おい」
    「ばか、裏切るのか」
     動揺するRB団に瑞穂がさらに畳みかける。
    「あたしの友達もいるんでーこっち来てくださーい」
     そ、それを先に言ってくれよぅ? とデヘヘと一斉に瑞穂について行くRB団達。
     ついて行った先には寝むそうな目をした少女が――。
    「おお!」
     ――無敵斬艦刀を持って待っていた。
    「ちょっと待てええええいっ! 明らかに違うのいるぞ!?」
    「えー? だからお仕置きして(遊んで)るんですよー♪」
    「なっ!?」
     慌てて逃げ出すRB団だが、無敵斬艦刀を持った少女、眠兎(d03104)がドゴンと大地にクレーターを作って数人を吹き飛ばす。
    「はっぴーくりすますーなのですよ……きゃはっ!」
     慌てて半数を犠牲に逃げ散るRB団だが、とりあえず眠兎は追いかけず、逃げ遅れたメンバーをKOさせる。
    「……それにしても、あんまり寂しさが紛れないね……」
     酷いマッチポンプもあったもんだ。

     眠兎の元から逃げだしたRB団は、校舎裏へと落ちのびていた。
     すでにこの地も電球や電飾によってロマンチックな雰囲気に飾りつけられている。
    「校舎裏までリア充仕様か! おのれ!」
    「だが、ここまでくれば……」
     一息つくRB団達。しかし――。
    「ククク……ココで遭ったが運の尽きだRB団! 我が斬艦刀の錆にしてくれる……」
     巨大な刀を担ぎ、バッドローラー(ライドキャリバーの名)で突撃してくるのは味昧(d05832)だ。
    「ゲゲー!?」
     ――プチプチプチプチ。
     轢かれました。
     やる事を成した男の顔で、味昧は月をバックにマフラーをなびかせる。
    「……奴らがどの様な事を企んでいようが、全て突撃して行くのみ……」
     まぁ、どの様なってかリア充爆発しか考えていないんだけどね?
     兎も角、岡山のご当地ダークヒーローは次のRB団を探してバッドローラーで去って行くのだった。

     さて、クリスマスの武蔵坂学園はイルミネーションも盛んであり、中庭には七色に輝くクリスマスリースが輝いていた。
     そんな中庭の一角で露香(d04960)は何がいけなかったのか考えていた……――。
    「捧げよ大根! 今宵はサツマアゲの宴なり!」
     そう言っておでんを満喫していたのは覚えている、その後、コートを3枚重ね着し、そして雪をまとって雪だるま状態になりカップルを不意打ちしようと……。
     ……――そして今、露香は完全に雪が凍り、雪だるまから出れなく、いや動けなくなっていた。
     固まった雪だるまとなり、春が来るまでこのままなのだろうか。
     そして春はまだ来ない、だって冬だし……という事なので。
     ――そのうち露香は考えるのをやめた。

    ●今ならキスできると思ておる奴は間違っておる!
     クリスマスのイベントで賑わう学生達を余所に、とあるカップルは教室のベランダに出てしっとり二人きりの世界。
     だが、じゃかじゃがバババンとどこからともなく響いて来るバンドの音に、二人は思わず眉根を寄せる。
     そして――パッ! とライトが灯ると向い側の校舎の屋上、なんか端っこぎりぎりにバンド設置され、メンバーが全員こっちを見ているではないか!?
    「明日には質屋に並ぶ~♪ 金のプレゼント~♪」
     サンタ服のボーカル、シルビア(d00201)が明らかにこっちに向かって熱唱している。
     ベンベベンベベベンッ!
     ボーカルからベース……ではなく三味線を夜鈴(d04235)がかき鳴らし。
    「RB団のシャウトに酔いしれるが良いですの」
     と、のりのりだが普通に騒音を奏でる。
     続いてスポットが当たったのはバイオレンスギターの海(d03981)がビートルスキン姿でカップルを指差しながらシャウトする。
    「Hey そこに将来性はあるのかい! 結婚は人生の墓場~! 所詮男は身体が目当て、ロマンスなんてM☆O☆U☆S☆O☆U」
     最後にドラムを演奏しつつバックコーラスとして同志の歌に深みを持たせていた隼(d04291)にライトがあたり、ババンッ! と次の瞬間全員にライトがあたる!
    「あれって……俺達に言ってるの、かな?」
    「……じゃない?」
     思わず見つめ合うカップル。
     再び眼をバンドに戻すと、屋上のドアから現れた義勇軍に4人があたふたしだしたのが見えた。
    「あ、三味線の人とドラムの人が転んで」
    「え? キスしてる!?」
     遠目からはそう見えたかもしれない。
     だが、どこからともなく降って来た雪だるまが、ピンポイントでラブイ空気の裏切り者を押し潰した。
    「お、残ったギターの人が捕まったね」
    「あれ? ボーカルの女の子は?」
     目を離した隙にボーカルが消えていた。
     
     ――きゅるきゅる巻き戻し……リプレイ開始。
     義勇軍が現れ慌てるバンドメンバー。
     メンバーが慌てる中、足を踏み外してペイッと頭から落下していくボーカル。
     ってか屋上だよ!
     ――……リプレイ終了。
      ※この動画は蝸牛の録画を元に後から編集致しました。

     紙皿に乗せたケーキをカップルに配布して周っているのは小学生のディーン(d03180)だ。
     ありがとう、と貰ったカップルも最後まで食べてみると皿底に記載されたケーキのカロリーにぎょっとなる。
     とても地味なトラップだった。
    「ふははは、過剰摂取したカロリーにより体型を崩して微妙な関係になるがいい!」
     しかし、義勇軍に地味も派手も無い、目ざとく見つかったディーンは義勇軍に首根っこを掴まれる。
     ジタバタと連れて行かれそうになるディーン、そこに現れたのは同じく義勇軍に所属しているめぐみ(d01426)だった。
    「ええ、カップルを攻撃していないようですし、成敗は待ってあげて下さい」
     そう言って恐面の義勇軍から、なんとディーンを助けてくれたのだ。
     ミニスカサンタ姿のめぐみは、RB団の占拠している屋上に大量の食事を届ける途中だったため、そのまま料理を乗せた台を押して行く。
    「えっと……」
     敵だけど、思わずお礼を言うか迷うディーンに。
    「そんな事してないで、一緒に屋上に行きますか? そっちの方が楽しいと思いますよ?」
     めぐみはずいぶんと平和的な方法で義勇軍として活躍していたのだった。

     藺生(d01473)と灯夜(d00666)はRB団が騒ぐ屋上で、おでん片手に反省会を行っていた。
    「ラブラブ下校するカップルさんを屋上に引っ張り、あっちゃんが準備したおでんを食べさせカップルディナーの邪魔をするか計画、どうして失敗したのかしら」
    「本当だよね、藺生姉ちゃんの計画がどうして失敗したんだろう」
    『うーん』×2。
     おでんをツツキつつ首をかしげる2人。
     まぁ、屋上に引っ張り込みって所が微妙だったのだが……しかし――。
    「あっちゃん、あっちにケーキもあるよ!」
    「本当だね!」
     反省会と称して宴会を楽しみまくった2人である。
    「うう……食べ過ぎて苦しい……」
    「ちょっと変わった夜だけど楽しかった。でも……」
     来年はロマンチックに過ごしたいなぁ。などと灯夜は思うのだった。

    「俺は無実だーーー!」
     屋上に磔に遭いつつ叫んでいるのは在処だ。
     まぁ、兄妹だから冤罪なのだが、RB団は引かぬ折れぬ謝らぬの精神でカップルと断定して磔の刑を執行していた。
    「兄さん……」
     ちなみに哀歌は宴会に混じって飲み食いしつつ兄を見守っている。
     一方、光画部の腕章をつけて神出鬼没に磔の画を記念撮影しているのは蝸牛だ。
     これもしっかり録っています。
    「今こそ燃え上がれ、我が内なる嫉妬の炎よ!」
     在処の横、本当なら彼女が磔になる十字架に藁人形を縛り付け、さっそうと燃やしているのは和弥(d03497)だった。
     さらに燃える藁人形を竹槍で刺す!
     周りのRB団もそれにならって竹槍で刺す!
    「くたばれアベック!」
    『くたばれアベック共!』
     もう半分以上、怪しい儀式である。
     ふぅ……と炭酸を飲んで一息つく和弥だが、その脇をすり抜けて在処に料理を持って近づくのは泳(d04203)だ。
    「すいませんね、あの人達もそのうち満足してやめてくれるとおもいますんで」
    「満足って……横の人、思いっきり燃やす準備してるんだが……」
    「それは……まぁ……うーん、ピザ食べます?」
    「いや、いらんし」
     とりあえずファイヤーまでカウントダウン開始デス。

     さて、肝練りを御存じか?
     それは火縄銃を使った一種のロシアンルーレットである。天井から装填済みの火縄銃を吊るし火をつけ、それを囲んで発砲まで時間を潰す。そんな行事だ。
    「今宵はクリスマス! 良い肝練り日和じゃ!」
     仕切っているのは十三(d03857)だ。
     なぜか円となって座っているのがRB団の団員なのは御愛嬌。
     そんな肝練り中にも関わらず、RB団員に諦めずにお説教を続けているのは霞(d00967)だ。
    「それだけのエネルギーがあるのなら、もっと他にいかせるはずです!」
     だが、残念ながら肝っ玉の小さなモブRB団員は、肝練りの銃口にばかり目がいって霞の言う事を聞く耳持つ者はいなかった……。
    「もう、ちゃんと聞いてくださーい!!」
     霞の叫び声が響き渡る。
    「義勇軍だー!」
     その時だった、屋上のドアからどやどやとRB団では無い連中――義勇軍がなだれ込んで来た。
     必死に応戦するRB団員もいたが、たいがいは逃げまどうばかり。
    「人の恋路を邪魔する奴は、トナカイに蹴られて雪だるまぁぁぁっ!」
     義勇軍として屋上に乱入して来た1人、巧(d02823)だった。
     なぜかトナカイの着ぐるみを着てドロップキックをかます。
     中には避けるRB団もいるが、くじけず立ちあがり再びドロップキックが!
    「やれやれ、またかよ……はぁ……ほっとけねぇし、潰すか」
     義勇軍と共に来た1人、勇(d08777)が手近なRB団を潰しながら呟く。
    「問答無用でわりぃけど……まぁ、他の奴らよりましだろ。たぶん」
     次々にRB団を屠って行く勇だが、義勇軍からの刺客はまだ続く。
     可愛いスカートのサンタ服を着たアリス(d03765)と、セクシーサンタなミルフィ(d03802)だ。
    「マラソン大会時にあれだけやったのに、今だ懲りもせず活動を再開するとは……アリスお嬢様との素適な聖夜を護る為、RB団は成敗致しますわ!」
     ミルフィが言えば、アリスも思っていた内容を口に出す。
    「RB団の方々も、お寂しいあまりにそんな事をしてしまうんですよね……ちょっと、可哀相かもです……」
    「お嬢様……。そうですわ。キャッキャウフフな展開に見放された貴方がたの心情も、ほんのちょっとだけ察しますわね……」
     アリスとミルフィの唐突な言葉に思わず涙目のRB団(ミルフィにぼこぼこにされてたから一概に感動の涙と言えないけど)。
    「あ、あの、幸福の贈り物と言われるパネトーネを、どうぞ……来年はきっと良いことがありますよ……」

     カカッ! カカカッ!
     プラスチック製の手裏剣がRB団の足元に刺さり、さらに時間差の一撃がコンクリートに突き刺さる。
     RB団が手裏剣の飛んできた方向を「誰だ!」向く。そこには黒いライダースーツの男子高校生がいた。
    「ドーモ、キラーチェーンです。RB団、滅ぶべし」
     そう挑発するのは恢(d03192)だった。
    「ドーモ、フラワードリームタルトです」
     さらにエイティーンまで使って決めポーズをするのは花梨(d02376)だ。
     目隠し仮面にヅカばりの貴族ルック、レイピアを眼前に数えて決めポーズ。
     花梨のレイピアが、なぜがRB団を袈裟掛けに斬り、さらに爆発なんてもしちゃってたり……。
    「またつまらぬものを斬ってしまった……」

     クリスマスの宴も終わりが近い。
     RB団が占拠していた屋上も、今やRB団と義勇軍が入り乱れてかなりのカオスだ。
     そんな中、学園からの支援金をある事に使った男がいた。
    『ウィーーーン、ドドーン……』
     そこに現れたのは全高3mほどのロボットだった。
     もちろん、見た目だけでままならないロボだが、祐士(d10511)はそこに乗り込むとロボ内から宣言する!
    「やるからには例え闇堕ちしようが徹底的に! このロボさえあればリア充なんて、リア充なんて……あ、え?」
     演説の途中だが、ロボの動きが止まり(もともと一歩も進んでないが……)祐士が慌てる。
    「えっ、これで終わ――」
     乗り込んでいた場所が周囲から光が漏れ白光に塗り潰された瞬間。

     ――チュドーーーーーンッ!!!

     潤沢な資金でそれっぽく作り上げたロボは大爆発を起こし、半壊したその身をギギギ……と屋上に倒れさせる。
     爆発と混乱で屋上は大パニックだ!
     磔はいつの間にか逃げてるし、屋上の隅ではサバト服を着た刑一とクロエがこっそり乾杯していたり、義勇軍とRB団は爆発にも関わらず抗争を続けている。
     そんな大混乱の屋上は給水タンクの上で、ナイトが聞かれていなくとも構わないと大声で叫ぶ。
    「リア充ある限り、我らは不滅だ!」
     ドスッ!
    「――ぐはぁ」
     ガクリ。

     クリスマスの夜はまだ終わらない。
     RB団の宴はまだまだまだまだ続きそうであった。

    作者:相原あきと 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2012年12月24日
    難度:簡単
    参加:56人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 1/感動した 4/素敵だった 4/キャラが大事にされていた 36
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