熱き血潮の如く喰らい

    作者:幾夜緋琉

    ●熱き血潮の如く喰らい
    「ほらほら、このアツアツのがいいんだぞ! 喰え、食え食え!!」
     まん丸の頭と、タコヤキの様なモノが並べられた机。
     そこで腰に手を当てて大きな声で笑うのは……タコヤキかいじ……
    『タコヤキじゃねぇ、明石焼きだ! 間違えるなそこ!!』
     そんな言葉を、怒りの如く誰かへ叫ぶ明石焼き怪人。
     そして彼は、目の前で泣いて食べる子供達に。
    「はははは、ほら食べろ! もっと食べて明石焼き漬けにしてやるぞー!!」
     と、自己満足気に呟くのであった。
     
    「……これで……よし、っと」
     ヤマトの手の内にあるルービックキューブの最後の一面が、カチリと揃う。
     それで何処か楽しげに笑う彼に誰かが声を掛けると。
    「お? みんないつの間に!? まぁいいや、それじゃこの俺の脳に秘められた全能計算域(エクスマトリックス)から、お前達の生存経路を導き出してやるぜ!!」
     そうヤマトが声を上げて、皆に説明を始める。
    「俺が察知したのはご当地怪人のダークネスだ。場所は神戸は明石だ!」
     ずびし、と指さし、そして。
    「このダークネスはタコヤキと明石焼きは違うモノだぁっ、と声を上げながら明石焼きを喰わせるという所業をしてるらしい。これを止めてきて欲しいというのが依頼だな」
    「無論ダークネスは危険で強力な敵だ。しかしダークネスを殲滅する事こそ、灼滅者の宿命……厳しい戦いになるかもしれないが、皆宜しく頼むぜ!!」
     そしてヤマトは続けて詳しい説明へ。
    「ダークネスは明石市のとある商店街の一角の店で、明石焼きを馬鹿にしたり、タコヤキと近藤したりするのを連れ込んでは明石焼きを腹一杯喰わせるという事をしてるらしい。その結果、どうやら連れ込まれてしまうのは子供達が多いみたいなんだが……その真相は良くわからねぇな」
    「まぁ今の所子供を虐める位の事しかしてないが、このままだといつ何かマズイ事をしないとも限らない。という訳で今のうちにこいつをぶっ倒してきて欲しい!」
    「ちなみに彼の攻撃手段だが、その明石焼きを付けるアツアツのだし汁を噴出しての攻撃。また鰹節やらまな板やらをぶん投げての攻撃。あんまりスマートじゃないが……力尽くの攻撃手段しかない様だ」
    「まぁ……その動静、言葉等々から見るとふざけた奴にも見えるかもしれないが、その実力は巫山戯ては無いホンモノだからな……決して油断するんじゃないぜ!」
     そして、最後にヤマトは。
    「何はともあれ、皆の力がなければ子供達が可哀想な目に会い続ける事になる。笑顔のために、皆、宜しく頼むぜ!!」
     と送り出すのであった。


    参加者
    ガム・モルダバイト(ジャスティスフォックス・d00060)
    六六・六(不思議の国のアリス症候群・d01883)
    佐渡島・朱鷺(第54代佐渡守護者正統後継・d02075)
    神楽・慧瑠(戦迅の藍晶石・d02616)
    臼場・陽炎(闇夜に疾る黒マント・d03749)
    南沢・はるひ(おひさま戦隊サンデリオン・d06158)
    水晶・黒那(子供の夢・d08432)
    フィリオル・フリークス(蒼嵐の熾纏死・d09621)

    ■リプレイ

    ●誤解のもとは……
     ヤマトからの、ご当地怪人の事件を聞いた灼滅者達。
     タコヤキ……じゃなく、明石焼きにとてつもない愛情を抱いているそのダークネスは、この明石市でひたすらに明石焼きを喰わせているという。
    「明石焼き……あぁ、あれでございますね。玉子焼とも呼ばれる食べ物でございますね。まぁタコを包んで焼くのですから、タコヤキという名称もあながち間違いでは無い気も致しますし、形の上では似ておりますから間違えるのも無理は無いでございますね」
    「ええ。でもタコヤキと明石焼きの差……明確なんですけどね」
     神楽・慧瑠(戦迅の藍晶石・d02616)と、フィリオル・フリークス(蒼嵐の熾纏死・d09621)の言う通り、明石焼きはご当地明石市では玉子焼と呼ばれる事も多い。
     過去にはタコヤキの元ともなったと言われる食べ物ではあるが……余り明石市近辺でないと、中々食べられる食べ物でもない。
    「しかし明石焼きとタコヤキを間違えたからって、それで子供を襲うなんて許せない……酷い目に遭わせないとな」
    「ええ。子供を怖がらせる様な輩は捨て置くことは出来ません」
     水晶・黒那(子供の夢・d08432)に再度慧瑠が頷く……その一方で。
    「しかし……キノコ、ラーメン、明石焼き、と……どうしてこうも食べ物にかかわるダークネス依頼に縁があるのでしょうかね?」
    「まぁ……そういう事もあるよ。だって私も、関西のご当地ヒーローと対峙するのはこれで二回目だもの。でもさぁ……困った人だよねぇ、同じヒーローとして、ご当地怪人が一般人の人達に迷惑を掛けるのを許しては置けない。しっかりとこらしめなくちゃ!」
    「ガハハ、ああそうだな! 大迷惑なご当地怪人ダークネスは、ウチらが懲らしめてやるぜ!!」
     フィリオルと南沢・はるひ(おひさま戦隊サンデリオン・d06158)の会話に、ガム・モルダバイト(ジャスティスフォックス・d00060)が大きな声で笑う。
     まぁ人に迷惑を掛けるダークネスを懲らしめるのは、灼滅者の仕事。
     今回のダークネスは、少しアレな感じだけど、それは気にしないことにして。
    「まぁともかく……タコヤキと連呼していれば恐らく彼の方からやってくる事でしょう。と……あ、こちらですよ」
     と、佐渡島・朱鷺(第54代佐渡守護者正統後継・d02075)が手を振る先には、に臼場・陽炎(闇夜に疾る黒マント・d03749)が。
     こちらに気づいた陽炎がやってくると。
    「一応、事前潜入してダークネスの事について調べておいた。ダークネスはこの先の明石焼きの店に陣取っている様だ。それと……」
     時計を確認……時間は午後1時を軽く過ぎた頃。
    「もう30分位すれば、一時的にこの辺りは人影もまばらになるみたいだ。だからそのタイミングが恐らくチャンスだ」
    「了解、なんだよ……そうしたら、時間になったら、その店で……タコヤキ……じゃなくて、あかしやき……ください、なんだよ」
     陽炎に六六・六(不思議の国のアリス症候群・d01883)がおぼろげに言うと。
    「了解。なら……それに備えて準備をしておく」
     と、黒那が辺りにご当地の品である水晶を植える。
     そして1時半になったらば、証言買いの入口辺りに陽炎が。
    「撮影中につき、立ち入り禁止」
     という看板を立てて、一般人が入らないように注意を促して。
    「それじゃみんな、行くよ!!」
     はるひの声にみんな頷いて、いざ灼滅者達はダークネスの居る明石焼き屋へと向かうのであった。

    ●明石の心込めて
    『さぁ皆、明石焼きを食べるのだ。タコヤキなんかよりも、明石焼きの方が暖かく、美味しいんだぞー!!』
     とある明石焼きの店内で、店を我が物顔で闊歩し、明石焼きを作ったり裁いたりしているご当地怪人。
     そんなご当地怪人の居る店へ……入店するのは六と朱鷺。
    「ここここ、ここに美味しいタコ焼きがあるんですよ」
    『っ!!! 待てぇそこぉおお!! ここは断じてタコヤキの店ではないぞぉお! 明石焼きの店だ間違えるなぁああ!!』
     凄まじい剣幕……流石にその剣幕に、ちょっとばかり怯んでしまう。
     でも、すぐに気を取り直して……店の一角に向かい、明石焼きを注文。
     ……ジュー、と音がなって、焼きたての明石焼きが二人の前に並ぶ。
    「うん。やっぱり美味しそうなタコヤキですね」
    『だからちがうぅぅう、タコヤキなんてものではなぁい、明石焼きだぁああ!!』
    「はぁはぁ……なるほど、こちらでは『タコヤキ』の事を明石焼きって言うんですね」
    『ちがうっ!! この、理解出来ないのかお前はぁああ!!』
     顔を間近に近づけ威嚇……と、それに。
    「六ちゃん明石焼き食べませんよ! そーい!!」
     明石焼きをぺしっ、と怪人の頬に投げつける
    『おまえぇぇ、明石焼きを侮辱するとは、許さんぞぉおおおお!!』
     怒りの表情を浮かべる怪人……それに挑発するまま六、朱鷺が店を脱出。
    『待てぇええ!!』
     と、追いかける怪人。
     そして彼が店を出たところで、すぐにそこにフィリオル、慧瑠の二人が殺界形成を展開し、アーケード街の人払い。
     そして人払いを済ませた所で、アーケード街の一番真ん中にガム、はるひの二人がすたっと登場。
    「ガハハ、明石焼き怪人現われたな!! ウチはジャスティスフォックス。さぁ覚悟するんだな!!」
    「街の平和を守るためにやってきた、おひさま戦隊サンデリオン、ここに参上! 悪い怪人さんは、ここでしっかりおしおきです!!」
     ガムとハルヒが大きな声で宣言すると……そのタイミングで陽炎、慧瑠の二人が何処かからスポットライトで二人を照らす。
     そして、更に黒那が後ろから出てきて。
    「子供達を虐めて楽しいか? 更に食べ物を粗末に扱うとは、料理を作る資格などない。さぁ、死を持って償うが良いのじゃよ」
     そう言いながら、ズビシ、と指を差す。
     そんな灼滅者達の言葉に、ぐぬぬぬぬ、と唇を噛みしめるご当地怪人。
    『許さん、許せん!! 私は明石焼きを広めるが為に尽力しているだけのこと、それを阻むのならば殺すまでだぁぁ!!』
     気合い一杯……とその口上のタイミングで。
    「ごめんねー、的な? ふそそそそっ」
     不意を突いての六のティアーズリッパー。
    『ぐあっ、この卑怯だぞ!!』
    「ひきょう? そんなのかんけーないよー」
    「そうだ……お前の悪事はそこまでだ、大人しくしろ玉子怪人」
    「元、教皇庁教理聖省異端審問局所属、フィリオル・フリークス。汝の罪を神の名を以て断罪します」
     慧瑠、フィリオルもスポットライトからこちらに移動してきて、宣告する。
     慧瑠のマントはその風にたなびき、大きな身体をごまかしている。
     でも、そんなの頭に血が上りきったダークネスには関係無い。
    『うるさいうるさいうるさいぃぃぃ、こうなりゃしねぇぇ!!』
     そう叫びながら、一直線に突撃。
     その攻撃をディフェンダーで立ち塞がる六と朱鷺。
    「もーー……めんどくさいなーだよ?」
    「全くです。そうして貴方はタコヤキを無理矢理食べさせてきたんですね? そんなの、利用されるタコヤキが可哀想です!!」
     徹底的に明石焼きと言わず、タコヤキと言う朱鷺。
     それは充分、ダークネスにとっての挑発になっていて。
    『まだ間違えるかぁ、絶対、ぜぇったい許さんー!!』
     明石焼きをぶん投げてきたり、あっついだし汁を噴射して攻撃してきたり。
     その一撃一撃事態が結構なダメージを持っているのだが……いかんせん動きが大きい。
    「……ふん、まさかその程度の攻撃しか出来ないのか?」
     と黒那が言い放つ。
     その動きを見越して動けば、直撃は避ける事が可能……減った体力を見ながら。
    「まぁお腹空きそうだけどね! いくぞー!」
     はるひがガイアチャージでエネルギー充填。
     そしてフィリオルが。
    「しかしそもそも明石焼きとタコヤキを間違える事が不思議で仕方ないのですよ。作り方も味も食感も全然違う……貴方はそれをも理解できていないのではないですか?」
    『断じて、ないっ!!』
    「そうですか……まぁ今話し合ってても仕方在りません……ね」
     とフィリオルは言いながらディフェンダーにシールドリングを掛けて強化。
     合わせて慧瑠、陽炎の二人は中瑛一から。
    「何をそんなにいきりたたれているのかは判りませんが、暴れ回られては迷惑でございます。貴方がこのように暴れ回る事で、明石焼きが素晴らしい食べ物であっても悪評が生じます。つまり悪評の流布をするも同然……そこはわかっていらっしゃいますか?」
    「そうだ。お前の相手はここから先、我がお相手する。来い、タコヤキ怪人!!」
     慧瑠がズタズラッシュ、陽炎がペトロカースでバッドステータスの服破りと石化を続けて付与。
     更にガムが。
    「全く五月蠅いだけだな。さぁ、行くぞ平蜘蛛!」
     そんなガムの言葉にグゥォンンと唸り声を上げる彼女のライドキャリバー。
     そして二人合わせてクラッシャーポジション効果を活かしての連携攻撃。
     黒那はブラックフォームで自己強化しつつ、次のターンの頭になればすぐに。
    「さぁ……この一撃を食らえ!」
     と、黒那が斧と巨大な腕を頭上から叩き落とす。
     クラッシャーポジションが主軸のダメージアタッカーとなり、確実にダークネスの体力を削り行く。
     また慧瑠、陽炎は今度は斬影刃と影縛りで更なる石化を追加……確実にバッドステータスの効果に蝕まれていく。
     そしてそれによって生じた隙を。
    「受けてみよ! 必殺、はるひキーック!!」
     とはるひがご当地キックで攻撃。
     無論六、朱鷺のディフェンダーの二人はディフェンダーポジションでダークネスの攻撃を受け止め、受けたダメージはフィリオルがシールドリングで回復していく。
     対するダークネスは、回復する事は無い……ただただ攻撃一辺倒。
     それこそ自分の明石焼きの力を広めようとしている様だが。
    「そんなに押しつけて食べさせられたら、トラウマになって明石焼きを嫌いになるよ普通。あんたの行動が、明石焼きのイメージ壊してるのを判りなさいよ!」
     はるひの言葉に、全く以て異論は無い。
     でも、それを理解出来ない……いや、しようとしないのがダークネスな訳で。
    「もー……しかたないなー。ごー、明石焼き……ばーじょん」
     六がマジックミサイルで頭上から狙い撃ち……朱鷺もご当地ダイナミックで、彼をひれ伏せさせて。
     ……まぁ言ってももう判ろうともしない様ですので、仕方在りません……トドメ、刺させて頂きますよ」
     デッドブラスターを慧瑠が穿ち、そして黒那が。
    「潰れな!」
     全力での龍骨斬りをたたき込み。
    『うがぁあああああああああああ!!!』
     と、断末魔の悲鳴を上げて倒れるのであった。

    ●誤り正し
    「ほんと、こまったさんだよね? でも、これでおいしく、ただきますだよ?」
     何処かその声に嬉しさが混じった言葉を紡ぐ六。
     他の仲間らも、その言葉にそうだねぇ、と頷きつつ。
    「さて……せっかくだし観光でもして帰るか。それか明石焼きでも喰うか?」
    「ガハハ、そうだな。せっかくここまで来たんだ、明石焼きを食べずに帰ればご当地ヒーローとして名が廃るぜ!」
     と、陽炎とガムの言葉。それにフィリオルと慧瑠が。
    「そうですね。では……私が幼い頃にごひいきにしていたお店は如何でしょう? 素朴な雰囲気のお店ですけれど、これぞまさしく明石焼きというのを出して頂けるお店です」
    「あ、わたくしも調べさせて頂いております。如何でしょうか? 数件をはしごして食べ比べていくというのは?」
     二人の提案に、朱鷺とガムが。
    「それも良いですね、色々な明石焼きを食べ比べ、というのも良さそうですし……終わった後にでも明石海峡を眺められる所でガイアパワーを吸収とでも生きましょうか」
    「ガハハ、了解だ! よーし、それじゃ先ずはフィリオル殿の言う店へと向かうぞ!」
     と言いながら、灼滅者達はいざ明石焼きのお店へ。
     寿司の板の様なモノに並べられた明石焼き、それに添えられるは熱いだし汁。
    「さぁ、心ゆくまで味わってくださいね」
     とフィリオルが勧めると、一つ、二つと口に運ぶ。
     ……熱い出汁が口の中に拡がり、とてもおいしい。
    「なかなか美味いな」
    「うん……幸せー……」
    「タコヤキうめぇ」
    「違います、タコヤキではありませんよ」
    「ガハハ。そうだそうだ。まぁタコヤキも美味いが、この明石焼きも充分に美味いぜ!」
     陽炎、六、黒那、ガムらが、そんな会話をしつつ……一人六つの明石焼き位ならすぐに食べ終わってしまう訳で。
     その後何件かの明石焼きを食べて、お腹を満腹にした所で夜景と共に写る明石海峡大橋へと到着。
     そしてイルミネーションの中。
    『……明石海峡ダイナミックッッッッッ!!』
     と各自、ガイアパワーを十二分に吸収するのであった。

    作者:幾夜緋琉 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2012年12月22日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
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