雪潜りし潜む影

    作者:幾夜緋琉

    ●雪潜りし潜む影
    「……ゥ……ゥゥァ……」
     雪が降る北海道……降り積もる雪が一面を覆い隠し、誰かの残した足跡を、更に降り積もる雪が覆い隠す。
     ……そんな雪の降る中で聞こえるのは、人の呻き声。
     最初は聞き間違いか、とも思ったが、数分後……。
    「……ウゥゥゥ……」
     またも呻き声。
     そして……次の瞬間。
     降り積もった雪の中から現われるのは、死したゾンビ達。
     そして頭の雪をぶるぶる、と身体を震わせて振り落とすと、ぐるり周りを見渡し……。
    「ゥゥ……」
     と、歩き始めるのであった。
     
    「皆、集まったみたいだな? よし、それじゃ早速だが俺の脳に秘められた全脳計算域(エクスマトリックス)から導き出した、お前達の生存経路を説明するぜ!!」
     神崎・ヤマト(中学生エクスブレイン・dn0002)が、集まった灼滅者達にニヤリと笑みを浮かべると共に、事件の説明を始める。
    「今回、皆にはゾンビらを倒してきて欲しいんだ」
    「彼らは腐る身体ながらも、その手に持ったナイフはしっかりとした斬れ味を持っている。彼を討ち払う為に、皆には……北海道へと向かって貰う事になる」
    「そう、このアンデッドは、北海道の地に突如として現われた者達になる。彼らを倒す事件だ、という事をまずは理解しておいてくれ」
     そう言うと共に、ヤマトは写真を見せる。
     とは言ってもこの次期の北海道……雪の降り積もった光景の市街地の写真ではあるが。
    「このアンデッドらは、雪の中から現われた後、その近くにある人気もあまりない公園に巣くってしまっているみたいだ。彼らはその場から決して離れようとしないから、その公園へと向かえば対峙する事は出来る。まぁ人気が無い公園という事は、足場は極悪い……という事に気をつけなければならないだろうけどな?」
    「またゾンビの数は皆よりも多く10匹。その内の一匹は他のゾンビに比べて砲門が長く、強力な一撃を食らわせてくると思う。それを見越した上で、皆も作戦を考えて向かって欲しい所だ」
     そしてヤマトは再度皆を見渡してから。
    「幸い被害は出ていないが、放置しておく事は出来ない。敵は単体こそそこまで強く無いが、集まり徒党を組めば決して油断は出来ない奴らだ。だから油断するんじゃねぇぜ!」
     と、勢いと共に声を上げて送り出すのであった。


    参加者
    九条・風(紅風・d00691)
    七鞘・虎鉄(為虎添翼・d00703)
    乾・舞夢(煮っ転がし・d01269)
    茅薙・優衣(宵闇の鬼姫・d01930)
    藤堂・環(桃色駒鳥・d05693)
    皇樹・桜(家族を守る剣・d06215)
    如月・春香(クラッキングレッドムーン・d09535)
    雁音・夕眞(冷徹の犬・d10362)

    ■リプレイ

    ●雪残る中
     ヤマトの解決依頼を受けた灼滅者達。
     まだまだ雪が深く残る北海道……まず感じるは肌寒さ。
    「北海道ーっ!! 北の国からこんにちわーっ!!」
     と元気いっぱいな乾・舞夢(煮っ転がし・d01269)の一方。
    「……気温が低くなると、眠くて困るな……こういう時は、コタツで晩白柚食べたい……」
    「ほんとう……さぶい。北海道って、こんなに冷えるの?? 空気も凛と冷えてて……」
     七鞘・虎鉄(為虎添翼・d00703)と、藤堂・環(桃色駒鳥・d05693)の二人が溜まらず呟いた様に、寒い。
     そんな札幌の地に現われてしまったのは、沢山のゾンビ達。
     とは言えゾンビ達は、とある公園に巣くい、そこから離れようとしていないという。
    (「……何故ゾンビは公園から離れようとしないのだろう……何か、この公園にあるのかしらね……?」)
     と如月・春香(クラッキングレッドムーン・d09535)が思推する中。
    「ったくよ、こんなクソ寒い中に沸いてきやがって……とっとと片付けて、ラーメンでも喰いてぇもんだぜ、ホント」
    「全くですね。人気の無い公園に集まるゾンビ、ですか。通りがかりでもして、襲われてしまってはたまったもんじゃないですよね」
    「そうですねぇ……冬だったこともまぁ幸いだった、とも言えますよね」
    「うん。ゾンビ退治ばかりだけど、頑張ろうよ♪ その後はこの雪で遊ぶんだよっ!」
    「そうだね。せっかくの北海道だけど、残念ながら汚物は消毒だーっ、のお時間ですっ!!」
     九条・風(紅風・d00691)、茅薙・優衣(宵闇の鬼姫・d01930)、雁音・夕眞(冷徹の犬・d10362)、皇樹・桜(家族を守る剣・d06215)、そして舞夢の言葉に。
    「では早速灼滅するとしましょう……皆さん、心の準備は宜しいですか?」
    「OKだぜ。しっかし……ここまでガトリングガンを武器にしている奴らが揃うとはな……」
     ぐるり見渡してみると、確かにガトリングガンを装備したのが5人と、半数以上。
     そして更に風が。
    「いいよなぁ……ガトリング、ロマンがあるぜ。さぁて、どうせなら気持ちよく一斉掃射を楽しみたい所だな!」
     と同じガトリングガン使いの仲間に微笑むと、環が。
    「ええ、どんどんぶっぱなしちゃうよー!」
     ニッコリと微笑み、構えてみたり。
     得意武器が活きる瞬間は、それはそれで楽しい時間な訳で。
     そして灼滅者達は、暴漢対策と動きやすい靴を装備しつつ、ゾンビ達が巣くってしまった人気の無い公園へと向かうのである。

    ●寒冷の中に写る
     そして公園間近へと到着。
     灼滅者達が注意深く公園へと近づくと……ゾンビ達がうーうー呻きながら、公園の中に巣くっているのが見える。
    「……うーん、寒いところの方が、もしかして快適なのでしょうか? 寒い分身が引き締まるとか、あのダンスを踊っても身が崩れないとか」
    「流石にそういう事は無いと思う……でも、何だか地が滾るのだわ」
     結衣に環が笑いつつ。
     そして再度足下を踏み固めたり、靴が緩んでないかを改めて確認すると。
    「鬼儺」
     静かに夕眞はそう告げてスレイヤーカードを解除、他の仲間らもスレイヤーカード解除すると共に。
    「さぁ、狩りの時間だ!」
     髪飾りに触れた桜、そして身の丈よりも長い刀を左手に、右手には銃を構えて……いざ突撃。
     それに合わせて舞夢も空飛ぶ箒、というか大鎌でふらふらと飛行して。
    「お天気は雪のち鉛玉、時々影ー!」
     そして上空から。
    「がんばっておもーい土の中から出かけてきたのに、残念! きみたちの冒険は終わってしまった! さーさー、らいすしゃわーならぬ、ばれっとしゃわーのおじかんですっ!」
     と先手を撮ったバレットストームの一斉掃射。
     唐突の攻撃に、ゾンビ達はウガー、ウァーと言う呻き声を上げる。
    「よっしゃ、オラオラゾンビ共! 更に死にてェ奴から前に出ろ!! その腐った顔を吹っ飛ばしてやるぜ!」
     威勢良く風が叫び、雑魚ゾンビ達にガトリングガンを掃射。
     そして虎鉄、夕眞、春香の二人も、敵全体の配置、手に持つ武器を把握しながら。
    「いくよ、ちょいと失礼」
    「ゾンビ相手なら、何の気兼ねも無く殴れるな」
    「狙います」
     夕眞がガトリングガン掃射下の地、虎鉄は鬼神変で接近して殴りかかり、春香はセイクリッドクロスの攻撃。
     また、風のライドキャリバー、春香のビハインドの千晶も、それぞれがゾンビへの攻撃を食らわせる。
     そして、その掃射に続き、環、優衣、桜の三人は敵陣容の状況を再確認。
     敵の動き、状況……それら全てを踏まえつつ、敵の持つ武器から判断して。
    「……どうやら、最後尾に居る敵がボス格みたいだね?」
    「そうですね……後ろに居るけど、それで攻撃が通らないとでも思ってるのかしらね? 灰に返してあげる……バニシングフレアっ!!」
     優衣が放つバニシングフレア、そして続けて桜のホーミングバレット。
     対し環も、除霊結界で相手を牽制。
     そしてゾンビからの攻撃……。
     10匹という、自分達の数よりも多く、徒党を組んでうーうーと呻きながら攻撃。
     そんな攻撃はディフェンダーについた優衣、桜が主軸となり、それを補助するようにライドキャリバーと千晶がサポートに当たる。
     ……そして、後尾につけていたボスゾンビは。
    「……ウゥゥァァァ……」
     他のゾンビ達とは違う、一際強い呻き声を上げて、ナイフを投げつけての遠隔攻撃。
     流石にその一撃はかなりの威力を誇る一撃……しかし。
    「ひゃ……っ?! うぅ……痛い……冷たいよぉ……」
     狙った桜が幸か不幸か、雪に足を滑らせて転倒……ゾンビの投げたナイフの一撃が空を切る。
     そして次のターン。
    「ったく、さっき触ったが前言撤回だ。くさってやがる奴に、あんまり触りたくないな」
    「全くだよねー。どんどんいくよー、れっつだんすがとりんぐっ!!」
     虎鉄の鬼神変の一閃に続き、舞夢が笑いながらバレットストームでドンドンガトリングガンをぶっ放していくと、夕眞、風もガトリングガン掃射を次々と放つ。
     流石にガトリングガンの連射の前にまずは二人ゾンビが屠られる。
    「うわぁ、派手ですねぇ」
     優衣がそんな言葉を紡ぐ……勿論その間、最前線には前衛の四人と二体が構える事で、決してその攻撃を後衛には通さない様に動く。
    「あんたの相手は私達、その攻撃は通さないよっ!」
     そう宣告するのは優衣。
     ……ゾンビ達にその言葉を理解する脳は無いが、どうにかして倒そうと前へ前へするが、押さえ込まれていく。
     そして……更に数ターンが経過。
     確実に一匹ずつを屠り続け、残るゾンビは3体。
     だがもう二体は、かなりの瀕死。
    『……うぅぅぅ……グゥゥゥ……』
     何処か恐れているかの様な言葉を紡ぐゾンビ。
    「恐れおののいたか? ……まぁ、例え泣いて請いても、助ける事は無いがな」
     虎鉄が宣告、そして春香も。
    「その通りです。さぁ……くらいなさい!」
     春香が後衛から放つジャッジメントレイ……その一撃が一匹の身体を貫き通し、虎鉄も渾身の鬼神変更で切り捨てると……残るはボスゾンビのみ。
    『うぅ………………』
     どこか虚ろな瞳で見渡すゾンビ。
    「もう逃げ場なんてないんだよ? あきらめちゃった方が心が楽だよ?」
    「そうよ……ほら、炎に包まれて眠れっ、レーヴァテイン」
     舞夢の言葉に続いた優衣のレーヴァテイン。
     ゾンビの鎖し身体が、嫌な焦げた匂いを生じさせると……。
    「私にお任せあれ! いっくよーー!!」
     と、環が仕掛けたガトリング連射に蜂の巣になり、最後のゾンビをも死に至るのであった。

    ●北の幸多く
    「終わったぁー……!」
     環がニコリと笑いながらガトリングガンを降ろす。
     目の前に倒れた、多々なるゾンビ達……数秒のウチに、その死体は煙が如く消え去っていく。
    「……悲しいけど、これって現実なのよね~。倒すものと倒されるもの……貴女達は倒されるモノ、って事なのよ」
     舞夢がそんな言葉でゾンビ達に言い放つ。
     勿論それで何かなる、という事では無いけれど。
    「てかさ、なんか北海道にゾンビ多くない? 匂い散りにくくていいんだか悪いんだか……」
     と肩を竦める舞夢。
     そして……すっかり姿が消えれば、感じるは肌寒さ。
    「……うー……動きがとまったから、さーむいーっ!!」
     改めて感じる北海道の冬の肌寒さ。その言葉を聞いて夕眞も一気に肌寒さを感じた様で。
    「ほんっと、寒いわよねぇ! なんかおいしくて、あったかいもの食べたいですぅ!」
    「そうですよー、無事灼滅出来たのはいいですが、寒いです。皆さん、ラーメンを食べに行きませんか?」
    「ラーメンかぁ……私は塩がいいですねぇー!」
    「あ、前来た時、わたしすっごい美味しいほっけを食べたよ! 北海道、ラーメンも美味しいけど、海の幸も美味しいんだよねー……どうせなら、全部食べちゃわない??」
    「……そう、北海道って、何ラーメンが美味しいのかしら?」
     優衣、夕眞、舞夢と春香の言葉……それにニヤリと微笑みを浮かべる風。
    「んー……基本は味噌だったか? でも塩も醤油も基本的にはあるらしいし、まぁ店に行って考えればいいんじゃねぇ? 一応……ほら。美味しい店をネットからピックアップしてきたんだ」
     そしてリストの中の一店を指し示しながら。
    「その中でもこの店が一番オススメだぜ。テレビでも特集されたらしいしな」
    「おー、それじゃ、そこに行きましょう! 皆さんもいいですよね?」
     風と優衣の提案に、皆も頷き……そしてその店へ。
     美味しそうな匂いが沸き立つ中で。
    「やっぱりここは……俺、味噌チャーシュー大盛りと、チャーハンと餃子で!」
    「私はしょうゆバターラーメン!!」
    「普通に、お味噌のラーメンえをお願いします……」
     と、各自注文する中、一人。
    「……僕は、肉饅で」
     流石にまんじゅうは……と思ったら注文が通って、一緒に出て来る。
    「うっま。やっぱ寒い冬はラーメンだよなァ、っかー! うめェぜ!!」
    「ええ、美味しいですねぇ!」
    「味噌も塩も、醤油も全部美味しいです! ラーメン美味しいですね!!」
     そして……美味しい美味しいラーメンを平らげたら。
    「うーん、お腹いっぱいー♪ さて次は観光だねっ。舞夢の戦いはこれからだっ!」
    「せっかくですし、雪遊びをしましょうよ……きっと楽しいですよ?」
     舞夢と桜が、観光と雪遊びを提案……そして灼滅者達は、北海道の時間を目一杯楽しむのであった。

    作者:幾夜緋琉 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2012年12月23日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 3/感動した 0/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 6
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