山野の暴れ豚

    作者:幾夜緋琉

    ●山野の暴れ豚
    『……ピィィ……』
     雪の降り積もる山中を、奇妙な鳴き声を挙げながら走り回る獣。
     はぐれ眷属、バスターピッグは、山中を駆け回りながら……獲物を探す。
     しかし雪の降り積もる山中となっては、そこを訪れる人の影は中々おらず……バスターピッグらは。
    『ピィィィ……!!』
     半ば怒りを覚えているかの様な鳴き声を上げて、更に駆け回るのであった。
     
    「……どうやら皆さん、集まった様ですね? それでは説明を始めます」
     集まった灼滅者達に姫子は微笑みつつ、早速説明を始める。
    「今回、皆さんには、東北の山中に現われたはぐれ眷属、バスターピッグを倒してきて欲しいのです。彼らは山中をピィピィ鳴きながら走り回っており、獲物を探して回っているみたいなのです。つまり皆さんには、この雪の中で戦うという……足場が不利な状況下で戦って頂きたいのです」
    「幸い、今の所被害者が居ると言う訳ではありませんが……放置しておけばいつかは被害が出てしまう事になるでしょうから、今の内に倒しておく必要があるのです」
    「ちなみに彼らの特徴は……もう皆様も既に知っているとは思いますが、背中に背負った砲門です。この砲門から放たれる一撃は結構な攻撃力を誇ります」
    「またこのバスターピッグ……数は10匹なのですが、その中の一匹が背負った砲門が、他のに対して攻撃力が高いものの様で、此処に居るバスターピッグ達を統率している様な存在の様ですから、このボス格にはご注意下さいね」
     そして最後に。
    「はぐれ眷属、油断しなければ負けて帰ってくる事は無いと思いますが……でも油断は禁物です。注意して、向かって下さいね」
     と微笑みつつ、送り出すのであった。


    参加者
    大浦・政義(夕凪・d00167)
    李白・御理(外殻修繕者・d02346)
    黒咬・翼(黒い牙・d02688)
    マルティナ・ベルクシュタイン(世界不思議ハンター・d02828)
    遊城・律(炎の大和魂・d03218)
    十津金・旭(桜火転身トツカナー零五・d06921)
    アシリア・カナート(エターナルエイティーン・d08892)
    紅月・瞳(戦闘狂いの白兎・d09522)

    ■リプレイ

    ●寒山
     姫子からの依頼を受けた灼滅者達。
     雪の降り積もる寒山に出現してしまったバスターピッグを倒す為、山中を踏みしめていく。
    「しっかし……さすがに寒いのぅ……」
    「ええ。こんなに寒いのに、バスターピッグ達は相も変わらず元気ですねぇ……」
    「……そうだな。猪ならともかく、豚か……何とも変わった眷属だな」
    「ええ。でもこんな寒い雪山で彷徨い歩いている豚さんを考えると、なんだか可哀想な気もしてしまいますね……まぁ、それがバスターライフルを構えているとなると、そうも言ってられませんけれど」
    「……そうですね。今回は、ちょっと敵が可愛いかもですね……」
     紅月・瞳(戦闘狂いの白兎・d09522)、大浦・政義(夕凪・d00167)と、黒咬・翼(黒い牙・d02688)に頷く李白・御理(外殻修繕者・d02346)と、くすりと笑うアシリア・カナート(エターナルエイティーン・d08892)。
     確かに寒い寒い山の中をとぼとぼ歩くバスターピッグは、ちょっと可哀想かもしれない。
     けど、放置すればいつかは人里に降りてきてしまう訳で、放置しておく事にも出来ないのは確か。
    「ま、はぐれ眷属のバスターピッグと言えども、放っておく訳にはいかないから、油断せずに倒して行かないとね!」
    「……そうだね。こんなところに『はぐれ』がうろついているって何だろう。何かの前触れだったり、誰かの差し金だったりしてたらヤだな……」
    「……まぁな。だが危険の芽は早めに刈り取っておかなければな……寒いし、さっさと片付けて引き上げたい所だな」
    「……うん……被害が出る前に、丸焼きにするとしよ……」
    「そうじゃな。楽しませてくれると良いのじゃがな」
     遊城・律(炎の大和魂・d03218)、マルティナ・ベルクシュタイン(世界不思議ハンター・d02828)、翼に瞳らも、そんな会話を続ける一方。
    「でも今回の戦闘の部隊は雪山、なんだよね? ……足場悪いのかな、やっぱり」
     と、少々不安気なのは十津金・旭(桜火転身トツカナー零五・d06921)。
     確かに雪山だからこそ、足下に注意しなければならないし……一歩間違えれば、足下掬われてしまう可能性だってある。
     だからこそ……と旭は。
    「ボク、今回はサイキックを飛び道具で纏めてみたよ! これならあんまり動き回らないですむし! 今回のボクの役目は、固定砲台ってヤツかな!?」
    「ええ、そうなりますね……宜しく頼みますね」
    「うん!」
     政義に満面の笑みで頷く旭。
     そして。
    「さて、と……それではわしは空から探すとするのじゃ。見つけたらおおきな音を出して知らせるから、宜しく頼むのじゃよ」
    「あ、なら私も空から探しますね。一人だと、地上から砲撃されたら不利になりますしね」
    「そうじゃな。では宜しく頼むのじゃ」
     アシリアと瞳がそう仲間達に断ると、空飛ぶ箒で空へと浮かび、少し先行。
     豚特有のピィピィという鳴き声を手がかりにして、鳴き声の鳴る方へと進んでいき……それを追いかけるように、他の仲間達もついていくのであった。

    ●白き中に映えし銀
     ……そして、灼滅者達が雪山を探索して暫し。
     雪に包まれた山中は、静けさに包まれており……そして。
    『ピィ……ピィィ……』
     そんな獣の鳴き声が、遠くの方から聞こえ始める。
    「……ん?」
     その鳴き声に鋭く反応したアシリア、マルティナを呼び止め、指差した方向へと向かう。
     そうすると、また。
    『ピィィ……』
     そんな鳴き声が、又聞こえ始める。
    「……この近くの様じゃな」
    「ええ……注意していきましょう」
     二人そう小さな声で呟きつつ……進むと、バスターピッグの姿を発見。
     雪山の中をピィピィと鳴きながら、ただ彷徨い歩くはぐれ眷属達に。
    「……まずは、先手じゃ」
     と瞳は言うと、不意を突いてのフリージングデスで爆撃。
     突如の攻撃に、バスターピッグは驚きの鳴き声を上げて、少しダメージ。
    『ピィィ……!』
     痛みを鳴き声で表現する……勿論それと同時におおきな音がその場に鳴り響き、仲間達に対してもその音が聞こえたことだろう。
     とは言え続けてアシリアも。
    「さぁ、行きますわよ。喰らいなさいな!」
     と、同じくフリージングデスを、同じくバスターピッグの群れの中に叩き込んでいく。
     ……対するバスターピッグは、砲門をぐいんと射程に合わせ、ターゲット。
     一斉に10匹のバスターピッグが掃討掃射。
    「っ……見えるのじゃよ!」
    「流石に数が多いと、一斉掃射は厄介ですわね」
     幸い瞳とアシリアは、掠り程度はするものの直撃だけは避ける。
     そして続けてのターン。
     もう一度同様に大爆撃を咬まし、バスターピッグの体力を着々と減らして行く。
     そして3ターン目になると、その音を聞きつけた仲間の灼滅者達も到着する。
    「居た! 転身!」
     声を上げ、即座にスレイヤーカード解除する旭。そしてバスターピッグらに対して。
    「今回は射撃特化でトツカナーラビィスタイル! さぁ、うさうさっと行くよ!!」
     ニコッと微笑みながら、ポーズを決める旭。
    「そうだな……さぁ、豚狩りと行こう……ミッション、開始だ」
    「ふふ、よーし、それでは、派手に行くとするかのう!」
     翼と瞳も、そんな言葉を叫ぶ灼滅者達。
     まずはクラッシャーポジションにたった翼と律の二人がバスターピッグに対峙すると。
    「貫く……止めてみろ!!」
    「……喰らえでござるよ!」
     螺旋槍による壊アップの付加と、月光衝のブレイク付加で、まずはダメージを叩き込む一方、御理、旭の二人は立ち塞がるようにしつつ。
    「ここは通さないよ!」
    「うん。喰らえ、絶とビーム!!」
     御理はソーサルガーダーで自分に盾アップ、旭はごひらがなの「と」が放出される当地ビームで、怒りをこちらに引き寄せるようにする。
     そんな前衛陣の攻撃に対し、中程からはまず一旦アシリアは預言者の瞳で狙いを高める。
     また、スナイパー効果によって命中率が高まっている政義、瞳は。
    「貴方達の砲撃と、私の銃撃……どちらが当たるか、いざ勝負です!」
    「うむ!」
     セイクリッドクロスとマジックミサイルでドンドンと攻撃し、確実な範囲攻撃で着実にダメージを与えていく。
     ……そんな灼滅者達の攻撃に対して、バスターピッグ達は雪の上ながらしっかりと足を踏みしめ動き、そして……砲門で次々と反撃の砲撃をしてくる。
    「……権三郎さん、なんか豚さん軽快だよ……これは負けてられないね……よし、ヒト犬一体の妙技を魅せる時なの……」
     と良いながらマルティナは……何故か霊犬の背に跨がる。
    『……』
     そんなマルティナに向けての意味判らんとばかりの視線を向ける霊犬……でも、マルティナはそれを気にしない。
     とは言え彼女はメディックの立場で敵からの攻撃を見て、仲間の体力の変遷を判断……特に攻撃を受けている旭にシールドリングで回復。
     そして次のターンになると、更に御理はワイドガードでBS耐性を付け加える。
     先ターンで自己強化をしていた者達も攻撃にシフト。
     律は月光衝、翼はティアーズリッパーで服破りを仕掛け、旭はもう一丁ご当地ビームを放出。
     そしてアシリアは、敵の動きを見渡しながら……フリージングデス、斬影刃、バニシングフレアを入れ違いに使用。
     政義もセイクリッドクロス、零距離格闘、フリージングデスと、三つの属性を使い分けながら確実に見切りを外して攻撃を加えていく。
     そんな灼滅者達の攻撃に……まずは一匹、バスターピッグが崩れ落ちる。
    『ピィ……!?』
     仲間の死亡に対し、僅かに怯んだかの様な鳴き声。
    「……やっぱり、あれ、丸焼きにすると美味しそうだよね……でも、倒すと消えちゃうのが難点だなぁ……じゅるり……」
    『……』
     マルティナの言葉に、再度……今度はジト目で答える霊犬。
     ……なんだか二人が仲が良いのか、悪いのかよく分からないが……それはさておき。
     その後も、確実に灼滅者達はダメージを蓄積し、確実に一匹ずつを倒して行く。
     倒れたバスターピッグを一瞥しつつも、一番最後尾にいる……一層おおきな砲門を持ったバスターピッグに向けて、着実に距離を詰めていった。

     そして13ターンが経過。
     既に残るバスターピッグは後2人。
     勿論その内一匹は、強力なボスバスターピッグ。
    「さて、と……そろそろペースを挙げようか」
     と、翼が言うと、周りの仲間らもその言葉に頷き。
    「ええ……狙って、倒します……!」
     真っ直ぐに敵を見つめ、狙い澄まして……前に居るバスターピッグの雑魚の残りを灼滅。
     最後に残る、ボスバスターピッグ。
    「残るは一人……覚悟は、出来てるでござるか?」
     律が、武器を構えながらの宣告。
     その宣告に聞き及んだかどうかは判らないが……ピィィ、とおおきな威嚇の鳴き声を高鳴らせる。
     とは言え……思えば8対1。圧倒的な戦力差であるのは明らかで。
    「さぁいくぞー!! ここの平和は、ボクが護るんだ!!」
     旭は叫び、そして……渾身のバスタービーム。
     その一撃は身体の真中から仕掛けられると……バスターピッグの身体が吹き飛ばされ、雪中に叩き落とされ……動けない。
    「……これで、終わりです。覚悟を」
     そして政義のセイクリッドクロスが、その身体に叩き込まれると……最後の断末魔の悲鳴を上げながら、灼滅されるのであった。

    ●雪轟く砲音
    「……終わったか」
    「そうだね……みんな、お疲れ様だよ」
     翼に頷く律。
     他の灼滅者達も、その言葉に頷き、スレイヤーカードを再度封印する。
     そして平静を取り戻したところで。
    「しかし常々疑問に思ってたんですが、なんでダークネスはよりによって豚を眷属にしたのやら。もっと最適な動物がいたでしょうに」
    「……確かにそうよね……まぁ、何か理由があるのかもしれないし、たまたま近くに居たから眷属にしたのかもしれないし……その辺りは判らないわね……?」
     政義にマルティナが小首を傾げ、そして。
    「ええ。まぁその辺りは今はわかりませんが、いつかは判ることになるでしょう。という訳で……帰りませんか? 流石に動いていないと寒い……」
    「確かに、ね……このままここに居ると、それだけで凍え死んでしまうかもしれません。早々に帰りましょう」
     律に御理が言うと、灼滅者達はさっさと雪山の中を下るのであった。

    作者:幾夜緋琉 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2012年12月27日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 5/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 1
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