人を食らう家

    ●都内某所
     住んだ人間が必ず不幸に見舞われるという噂の家があった。
     この家の住人はバブル崩壊の影響で仕事を失ってしまい、絶望の中で家族を惨殺したと言ういわくつきの屋敷。
     それからというもの、住む人、住む人が不幸に見舞われ、悲惨な末路を辿ってしまったようである。
     実際には単なる噂で、必ずしも住民達が不幸に見舞われていたわけではないが、その事が原因で都市伝説になってしまったらしい。

    「……噂ってのは怖いな。実際には起こっていなかった事でさえ、事実だと誤認されてしまうんだから……」
     険しい表情を浮かべながら、神崎・ヤマトが口を開く。

     今回、倒すべき相手は、都市伝説になったいわくつきの家。
     もちろん、家自体が都市伝説と言う訳ではない。
     本体は必ず家の中にいる。
     ただし、家の中には都市伝説によって操られた一般人がウロついているから要注意だ。
     彼らはハンマーやチェーンソーを振り回し、狂ったように襲い掛かってくるから、相手をしなければならない。
     それと、都市伝説は癒えの中を自由自在に移動し、鋭い牙を剥き出しにして襲いかかってくるから、くれぐれも気を付けてくれ。


    参加者
    鏡・剣(喧嘩上等・d00006)
    銀嶺・炎斗(シルバーわんちゃん・d00329)
    仲村渠・弥勒(世果報は寝て待てない・d00917)
    朱玉・蓮奈(白牡丹のダンピール・d01227)
    宮瀬・冬人(イノセントキラー・d01830)
    黒咬・昴(叢雲・d02294)
    ファム・フォーディア(武神獣姫・d05723)
    英・蓮次(デュアルブレイズ・d06922)

    ■リプレイ

    ●這いよる胃袋
    「人を食らう家か。……いいねえ、なら逆に喰い散らかしてやるよ」
     都市伝説が確認された家に向かいながら、鏡・剣(喧嘩上等・d00006)が獰猛な笑みを浮かべてボキボキと指を鳴らす。
     都市伝説は家の中に潜んでおり、迷い込んだ人間を襲って、自らの手足として扱っている。ようだ。
    「でも、『人食い家』って、けっこう何処にでもあるよねー、夏の肝試し的な噂でー。ま、今回の都市伝説は実害が出ちゃうからダメだけどねー」
     苦笑いを浮かべながら、仲村渠・弥勒(世果報は寝て待てない・d00917)が答えを返す。
     どちらにしても、一般人が都市伝説によって操られている以上、放っておく事は出来ない。
    「うーん、人を食べる家なんて言われても、パッとイメージが湧かないな……。家そのものが都市伝説ではないみたいだし、どんな姿なんだろう? ゲームとかに出てくる、開けたら襲ってくる宝箱……なんて事はないか」
     都市伝説の姿を思い浮かべ、宮瀬・冬人(イノセントキラー・d01830)が首を傾げる。
     おそらく、意外なモノに姿を変えていると思うのだが、そのせいで都市伝説の姿を想像する事が出来なかった。
    「なにかに化けて攻撃してくるのか……。もし美少女とかセクシー美人とかに化けられたら……く!! なんて恐ろしい都市伝説なんだ!」
     青ざめた表情を浮かべ、銀嶺・炎斗(シルバーわんちゃん・d00329)が拳を震わせる。
     そんな相手に誘惑されたら……、コロッと騙されてしまうかも知れない。
     その上、お色気攻撃などされた日には、操り人形の如く言われたとおりに何でもやってしまう可能性が高かった。
    「でも、こそこそしているようだから、小さいのかも」
     事前に手に入れた情報を元にして、ファム・フォーディア(武神獣姫・d05723)が都市伝説の姿を想像する。
     ある程度、移動が出来る上に、気づかれにくいと言う事は、それだけ小さいのかも知れない。
    「一体、どんな姿なのかしらね! たのしみだわ! それにしても、根も葉もない話が本当のように伝播するから噂って怖いわよねー。とにかくっ! さくっと都市伝説をしまつしてしまわないと!」
     自分自身に言い聞かせるようにしながら、黒咬・昴(叢雲・d02294)が気合を入れる。
     それから、しばらくして……。
     都市伝説が確認された家に辿り着いた。
     その家は建てられてからだいぶ経っているらしく、ところどころ壁が崩れて部分的に塗装も剥げていた。
    「話だけ聞くとまるで心霊スポットみたいな家だね。ホラー系はテレビやネットで見るのは結構好きだけど、実際自分で行ってみたいとはあまり思わないかな……。まあ今回は幽霊の仕業じゃないみたいだし大丈夫! ……出ないよね、幽霊?」
     ほんの一瞬だけ不安になり、英・蓮次(デュアルブレイズ・d06922)が仲間達に視線を送る。
     しかし……、仲間達は無言。
     幽霊ではないにしろ、都市伝説が出るのだから、何とも言えないと言うのが本音である。
    「ふふふ……、僕の朱月で切り裂いてあげますからねぇ~」
     含みのある笑みを浮かべ、朱玉・蓮奈(白牡丹のダンピール・d01227)が家の中に入っていく。
     その途端、操り人形と化した一般人が、唸り声をあげて襲いかかってきた。

    ●暴徒
    「……探す手間が省けな」
     暴徒と化した一般人の攻撃を避け、剣が男達に当て身を放っていく。
     しかし、暴徒と化した一般人は血の飢えたケモノの如く、メキメキと音を立てるようにして関節を鳴らし、傷つく事も恐れず攻撃を仕掛けてきた。
    「……ってゆーか、何人いんのよ」
     奥の部屋から別の男達が現れたため、弥勒が高速演算モードを使う。
     男達は都市伝説に操られているせいか、どんなに傷ついても、恐れる事を知らなかった。
     まるでホラー映画のワンシーン。
     倒れて倒れても立ち上がってくる様は、まさにゾンビ。
    「とりあえず、身を挺してみんなを守るぜ!! 女子優先だ! なぜなら、女の子に怪我をさせるなんて、おとこのやる事じゃねぇからな!!」
     仲間達……、特に女性を守るようにして陣取り、炎斗が一般人達に当て身を放っていく。
     それでも、一般人達は醜く顔を歪ませ、涎を垂らして襲いかかってきた。
    「僕らは人殺しじゃないからね。例え、どんな状況であろうとも、相手の命を奪うつもりはありませんが……。さすがにこの状況は……」
     複雑な気持ちになりながら、蓮奈が一般人達に当て身を放っていく。
     その一撃を食らって一般人達が崩れ落ち、もがくようにして身体をバタバタさせた。
    「無駄な抵抗は止めた方が身のためだよ。うっかり殺してしまうかも知れないし」
     軽く冗談を言いながら、冬人が一般人達に再び当て身を放つ。
     それと同時に一般人達が意識を失い、その場で伸びて動かなくなった。
    「あ、ごめんねー! ちょっとだけ寝ててね!」
     申し訳なさそうにしながら、昴が一般人達に声をかける。
     その言葉は彼らには届いていないが、再び起き上がってくる事もない。
    「とりあえず、ここで眠っていれば、大丈夫……だと思うから」
     一瞬、都市伝説に再び操られたらどうしようと思いつつ、蓮次が一般人達を邪魔にならない場所まで運んでいく。
     何となく嫌な予感がしているのも事実だが、多分……おそらく大丈夫。
     どちらにしても、その時はその時である。
    「この調子で都市伝説も見つけるよ~!」
     仲間達に声を掛けながら、ファムが他の部屋を回っていく。
     都市伝説がこの家のどこかに隠れているのは、確実。
     故に虱潰しに捜していけば、いずれ見つける事が出来るだろう。

    ●都市伝説
    「出たわね、都市伝説! 逃がさないわよ!」
     都市伝説と思しきネズミを見つけ、昴がサッと逃げ道を塞ぐ。
     それに驚いたネズミが物陰に逃げ込んだが、あっという間に追い詰められて、絶体絶命のピンチ。
     まるでアニメの如く大袈裟に驚き、震えるネズミ。
     尻尾の先までカタカタと震えており、ウルウルと涙目になっていた。
    「これが都市伝説……? まあ、牙があるって言っていたし、チョコマカと移動するって話だから、間違いないのかな?」
     キョトンとした表情を浮かべ、弥勒が目の前のネズミに視線を送る。
     ネズミが首を振っている。必死になって振っている。既に命乞いモード。助けてプリーズ状態。
    「あっつあつのローストチキンにしてあげるわ!」
     瞳をキランと輝かせ、昴がネズミに攻撃を仕掛けていく。
     しかし、ネズミも必死。
     飛び跳ね、しゃがみ、物陰に隠れ、隙間を通って、猛ダッシュ!
    「やりにくいな! いじめじゃないか。もっと巨大で凶悪なツラしてたら、ゾンビゲームの敵みたく遠慮なく倒せるのに!」
     深い溜息をつきながら、蓮次がジリジリと迫っていく。
     次の瞬間、物陰から何かが現れ、力任せに蓮次を殴り飛ばした。
    「まさか、都市伝説! やっぱり、俺の予想した通り、ナイスバディの……ネズミ!? おいおいおい、残念過ぎるだろ! むっちゃ、わがままボディで顔がネズミって!」
     色々な意味で納得がいかない様子で、炎斗が都市伝説に駄目出しをしていく。
     だが、都市伝説は怯まない。
     炎斗の中に何となく眠っている獣属性を目覚めさせる勢いで、腕を組んで胸の谷間を作って誘惑ムード。
    「まっ、とりあえず、ぶっ潰しちまえばいいんだろ」
     ホッとした様子で逃げるネズミを見送った後、剣が都市伝説と対峙するようにして陣取った。
     おそらく、顔がネズミでなければ、 多少なりとも攻撃する事を躊躇った事だろう。
     しかし、顔がネズミ。
     いくら、円らな瞳のキュート系であっても、ネズミはネズミ。
     例えナイスバディであっても、顔だけ見ていれば、ネズミ以外の何モノでもない。
    「それじゃ……、殺っちまうか」
     都市伝説の死角に回り込み、冬人がティアーズリッパーを放つ。
     その一撃を食らって都市伝説が物陰に隠れようとしたが……。
    「こっちに来たっていう事は……、覚悟が出来ているって事かしら?」
     都市伝説を迎え撃ち、蓮奈が紅蓮斬を炸裂させる。
     次の瞬間、都市伝説が断末魔を響かせ、消し炭と化した消滅した。
    「さあて、それじゃあ気絶した一般人を介抱して、帰るとしましょうか。ちょっとやり過ぎたから、怪我をしているかも知れないけど……」
     苦笑いを浮かべながら、ファムが今まで気絶していた、一般人達に視線を送る。
     その途端、目を覚ました一般人達が、『痛い、痛い』と言った後、ファム達の方をチラ見した。

    作者:ゆうきつかさ 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2012年12月20日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 6/キャラが大事にされていた 2
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