●白に見出した欲望
「ねぇ? 白って、染めたくならない?」
女は言った。目前に立ち並ぶ3人の男達は、その言葉に頷きで返す。
男達の焦点の定まらない瞳は、ただただ目の前の女の蠱惑的な真紅の瞳に注がれている。女は満足そうに微笑むと、じゃあ……と、その真紅の爪の美しい指で、通路の先を歩く女性を指差した。
「……見て、白いマフラーよ。染めたくて染めたくて、仕方が無いの……」
指を口元へと運び、女は憂いすら浮かぶ悩ましげな表情で俯いた。それを見るや、男達は鼻息も荒く、競う様に白いマフラーの女性へ猛然と向かっていく。
その裏路地に、悲鳴が上がるのは間も無くのこと。
「私の為に……今日も、美しく染め抜いて」
男達を見送る女の顔には、憂い等既に微塵も感じられない血色を好む歪んだ笑顔が、その欲求を満たす瞬間を待っていた。
●血染めのウェディングドレス
「……まぁ、そういうわけで人へ害をなす淫魔の動きを予知したわけだが」
苦々しげに、神崎・ヤマト(中学生エクスブレイン・dn0002)は呟いた。
ヤマトがその全能計算域で導きした絶対予測。白いマフラーの女性が、淫魔に従う3人の男達によって、首を刈られ殺害される。
しかしそれは、既に今からでは救出が間に合わない程直近の未来予測だ。
「……いずれ、淫魔が動いているのだということがはっきりした。お前達に、救出と灼滅を頼みたい」
え、と灼滅者達は声をあげた。今しがたヤマトは、直近の未来過ぎて『救出は間に合わない』と口にしたばかりではなかったか。
「白いマフラーの女性は、確かにそうだ。口惜しいが、……間に合わない。だが、サイキックアブソーバーは、同じ淫魔の引き起こすもう1つの未来予知を俺に齎した……!」
ちょうど、一週間後だ。淫魔は、白を血色に染めんと再びある場所に現れる。純白に身を包んだその女性は、白を欠片も残さないほどずたずたに斬りつけられ死亡する。
「身寄りが無い男女が、教会で二人だけで行う神聖な儀式。たまたま、女性が一人佇んでいる所に淫魔が訪れ、祝福するふりをして近付いて――攻撃を指示するようだ。お前達に戦闘準備の時間は十分にあるが、教会周辺は路地が多く、つまりは逃げ場が多い。取り巻きの3人の男も、どうあっても淫魔を守ろう逃がそうと動くので、教会内へ入れずに仕掛ければ立地的に淫魔に逃げられてしまう可能性が非常に高い。それだけは避けなければならない」
確実な勝算を見込むためには、教会内へ誘き寄せて仕掛けるのが理想――それには、純白に身を包んだその女性が、開戦の時点で確実に戦場に居るというリスクが伴う。
「取り巻きの3人の男は、力を分け与えられただけでそれほどの脅威ではないが……淫魔は現状灼滅者10人分の力と言ってもいい、決して油断はできない。それでも……血に塗れた欲望に命狩られる人が在って良い謂れは無い」
これから起こる悲劇を知りながら救出適わない命を悼みながら。
灼滅者を送り出すヤマトの瞳には、ダークネスの所業を許さない強い光が宿っていた。
「俺達が拾い切れていないダークネスの所業が、日々そこかしこで限りなく起こっている筈なんだ。数多のそれらの中で救えると察知できた以上、惨劇を見逃すことはできない。淫魔を倒して―――晴れの日の花嫁、お前達なら、必ず助けられる。任せたぜ」
参加者 | |
---|---|
月之瀬・華月(天謡・d00586) |
風巻・涼花(ガーベラの花言葉・d01935) |
星野・えりな(スターライトメロディ・d02158) |
姫条・セカイ(黎明の響き・d03014) |
穂村・元児丸(鬼焔・d07338) |
アルベルティーヌ・ジュエキュベヴェル(ガブがぶ・d08003) |
有馬・由乃(歌詠・d09414) |
睛・閏(ウタワズ・d10795) |
●赤い女
ざり、と、石畳の地面を踏みしめる音が、虚空へ消えた。
空は快晴。冬の空気は肌が痛むほど冷たいけれど、逆に教会を一層厳粛なものとして瞳に映す。
教会の屋根の頂上に輝く金色の美しき聖十字を見上げて、アルベルティーヌ・ジュエキュベヴェル(ガブがぶ・d08003)は不思議な感覚に捉われた。ヴァンパイアと同じ力を使う自分が、何ら影響受けることなく教会に立っている。
十字架と聖なる光、ダークネスたるヴァンパイアにも、効果を齎したら良いのに―――そんな風に過った所で、気持ちは今日対するダークネス・淫魔へと移行する。
今日降す敵は、白を血に染めることに悦びを見出した、見目麗しくも醜き悪魔。
これもまた、聖堂たる教会には相応しくない存在だ。
エクスブレインの予知に従い、教会を訪れた8人の灼滅者達の視線が、確かな勝利の為に教会の至る所へと走る。確実に淫魔を打倒するためには、淫魔を教会内部、礼拝堂へと誘き寄せなくてはならない。身を隠す場所、効果的な配置、礼拝堂までの距離。知っておくべき情報は、数多くあった。
事前の下見は、未来予測の範囲外。そう判断したから、行えるのは当日の僅かな時間のみ。
後は身を隠し待ち構えていれば、淫魔は確実に礼拝堂へと踏み込むのだ。清純なる白に身を包んだ女性――神の祝福を受け幸せになる筈の花嫁を、血に染めるために。
(「これ以上の犠牲は出しません。必ず……食い止めます」)
今日の淫魔によって、救出間に合わず散った命があることは、エクスブレインから齎されていた情報だ。解ってはいてもその死は灼滅者達の心に暗い影を落とした。有馬・由乃(歌詠・d09414)は心に強く誓い瞬間無意識に強く握った手を、不意に緩めた。
そっと耳元へと手を伸ばし、触れるは薄氷色の美しい石のピアス。
亡き兄の様に在りたい。猛る心を静かに落ち着かせ、再び伏せていた顔を上げれば、青い瞳に教会の真白の壁が眩しく飛び込んだ。
花嫁が居るという礼拝堂は、正面にそびえるこの扉の向こう。横へと視線動かせば、恐らく花婿が居るだろう、やや遠くの離れに扉が見えた。
8人が扉近くの物陰に身を潜める中、礼拝堂の扉近くの巨大な石柱に身を隠した月之瀬・華月(天謡・d00586)は、呼吸と心静かに、ただ果たすべき役を思う。
(「幸せを不幸へ変えるなんてしちゃいけない事……必ず止められる様に、出来る事を頑張るの」)
胸へ手を当て、己が信念を体に染み渡らせる。遠くからコツ、コツ、と響く硬質な足音の存在にも、もう気付いているから。
「……ねぇえ? やっぱり白って、染めたくなるわね」
一面の白壁をきょろきょろと見回し、どこか甘ったるい声音で女は微笑んだ。従える屈強な3人の男は、その笑みにだらしなく口を開けて頷いている。
血の様に赤い瞳に、赤い爪。女は、身に纏うすべてが赤く、ただその肌だけが、まるで人形の様に血の気無く真っ白だ。
扉の隙間から覗いたその姿と笑みには、底知れない悪意が潜む。星野・えりな(スターライトメロディ・d02158)はぞくり、とその華奢な体を震わせた。
「だからね、今日は……全身悪趣味に真っ白な花嫁さんを、赤に染め抜いたドレスで美しく飾ってあげようと思うの。素敵でしょう?」
ふふ、と愉しそうに笑うその語尾に狂気の声音を感じて、えりなは飛び出しそうになる身をぐっと抑えた。
(「花嫁さん……絶対に護ってみせます!」)
灼滅者達が見守る中、女は、正面の扉に、ゆっくりをその手をかけた。
●花嫁を救え
「お待ちなさいッ!」
静粛なる礼拝堂に駆け抜けた、凜なる声。その身に白を纏った姫条・セカイ(黎明の響き・d03014)は、漆黒の双眸に純白と真紅、2人の女性を捉えた。
手前に淫魔、奥に花嫁。赤い女が礼拝堂へ踏み込むと同時、灼滅者達も一斉に仕掛けた。淫魔を囲む3人の男へと対峙し、真っ直ぐに花嫁へと声を張ったのは、風巻・涼花(ガーベラの花言葉・d01935) 。
「宣誓台の下に隠れて!」
声と共に届いたパニックテレパスによって、花嫁は混乱に陥る。視線がおろおろと右往左往するが、『隠れて』の指示は伝わった様だ、最も近い物影である宣誓台へと移動を始めた。
しかし、長いドレスを翻すその歩は鈍い。
「『燃え上がろうぜ』!」
「『リバレイトソウル』!」
解錠の文言と共に手に現れた巨斧・奔火の守りを自身へと宿した穂村・元児丸(鬼焔・d07338)は、同じく指にコウモリの指輪を宿したアルベルティーヌと共に、花嫁を目指し飛び出した。目的を達するために生じるリスクに、花嫁を巻き込まぬために。
「な、何?」
突然の乱入者に、動揺露わな淫魔へは、先ず由乃が肉薄する。
「『今を春べと咲くやこの花』」
一瞬で赤い女の懐へと飛び込み、魔力の言葉で展開するは、梅を模した美しい盾。突撃の勢いそのままに、淫魔へと障壁の衝撃をぶつける。
交わしきれず受けたその一撃。ぐらりと揺らぐその身に走った赤い線に、淫魔の目がぐわっと、恐ろしいまでに大きく見開かれる。その瞳に宿ったのは、乱入者への怒りだ。
「こいつらを嬲り殺してっ、今直ぐに!!」
礼拝堂中に反響する強い叫びと共に淫魔が齎した歌声。正面からその音を受けたセカイが、一瞬ぐらりとその身を揺るがした。
やはり、甘くは無い。ならば――黒目がちの大きな瞳を長い睫毛に隠して、睛・閏(ウタワズ・d10795) は元児丸を襲おうとする淫魔の虜囚へと、その動きを害する石化の呪いを送る。先ずは、配下たる男達の動きを止めるのだ。
「人の幸せを邪魔するの、良くない……」
ぼんやりとした虚ろな瞳に、確かに敵を捉えて。抑揚の無い声の中には、確かな情を込めて。
無表情でも、閏の心は真っ直ぐと敵を見据え為すべきことを理解している。戦いへ赴く決意は、誰のものでもない彼女の意志。
「邪魔する子は、サヨナラしよう……」
続けざまに齎された二撃目の呪いに、一人目の男が倒れた。
「悪ぃな、緊急事態だからノーカンにしてくれ!」
宣誓台の前へと辿り着いた元児丸は、未だ混乱する花嫁を有無を言わさず担ぎ上げた。
これから夫と定めた人の元へと嫁ぐ身を花婿以外が抱えて逃げるのは、ドラマチックではあるがこの場合少し申し訳無くもある。しかし、状況を考えれば、致し方ないことでもあった。
「何が何でも、お前さんに傷は付けさせん」
誓って、入り口へと振り返る。外へ花嫁を逃がすため、敵に邪魔をされないルートをと戦場を見渡せば、仲間が総力で3人の敵を抑えている。
灼滅者8人全員の徹底した作戦確認・理解と、戦場把握。明確な役割分担は、花嫁の安全をより確かなものへと導いた。
出口への道は、バージンロードの逆走一直線。
「花嫁を狙うとはわしの趣味じゃねえ、お前さんは本気で潰すぜ!」
大声で淫魔へとそう宣言すると、元児丸は走り出す。アルベルティーヌと2人、そのまま扉の向こうへ消えれば、花嫁の無事という、完全勝利の為の最初の一手が完成した。
ふわりと愛らしく揺れる白いミニドレスのフリルを翻して、えりなは微笑んだ。戦場に舞う小さな歌姫は、えりなを守るように立つビハインドへお父さん、と語りかけると、透明感のある声で、高らかな賛美歌を歌い上げる。
立ち上がる力を齎す、華やかな中にも力強い戦慄は、たちまちに灼滅者達の傷を癒していく。
「あんたたちっ……何とかしなさい!」
狂った様に淫魔が叫ぶ。主の指示に従順に従う2人の男達は、低くもどこか洗練された重低音の声で、音の攻撃を生み出した。しかし、それはさしたる威力を持たない。
「よりによって女性にとって人生最良の日を狙うなど…許せません!」
叫び、男達の歌が齎した催眠を打ち消すセカイの風が、戦場を吹き抜ける。淫魔の意識引く様にと纏った白い衣装は、セカイだけではなく、由乃、えりな、華月も。
風に揺れる白は、淫魔の赤い瞳にどう映っているのか。
「貴女方の狙う白い衣装の女性はこちらにもおります。この白、朱に染められるものならばやってごらんなさいッ!」
「……ッ、生意気に……!」
舌打ちして、淫魔の赤い爪が指し示したのは、間近に迫る涼花だ。従う様に、配下の1人がのそりと、その視線を涼花へと向けた。
「幸せになれる人から、幸せを取り上げようとするなんて許せない!」
ライトブルーの優しい瞳が、キッと男の視線を迎え撃つ。しかし、彼も一般人だと知るから――繰り出すのは、致命に至らぬ加減の一撃。
小さな体で豪快に振り下ろした無敵斬艦刀は、上手く急所を外し男を仕留めた。
残るは、淫魔と男、1人ずつ。勢いは、確実に灼滅者達にある。
「……あんたたち、あたしを怒らせたわね……?」
淫魔の纏う空気が、ざわりと不穏に揺らいだ。有利の中にあっても、戦いはまだ終わってはいない。
●聖堂に響く鎮魂歌
ふわり、と、花嫁を離れの一室に降ろす。
元児丸の肩から地へ降り立った花嫁は、ESP『ラブフェロモン』によって、うっとりとその視線をアルベルティーヌへと向けていた。混乱のまま置いていくことはできない――晴れの日の花嫁、この1日を、幸せの内に終えて欲しいから。
その仕上げに、アルベルティーヌはそっと花嫁の頬へと手を添え、蠱惑的に微笑む。
「大丈夫、怖くない怖くない。……ふふっ」
元児丸の見守る中、カプリ、とその白い肩口に浅く噛み付き吸うは、アルベルティーヌを支える生命維持の捕食の血。そして、花嫁が幸せな1日を送る為必要な、記憶操作だ。
甘く芳醇なその血は、花嫁が懸命に生きてきたことを物語る。その味に満足したアルベルティーヌは、ご馳走様、と言わんばかりの微笑みで花嫁を見つめた。
焦点の定まらぬ瞳で虚ろに佇む花嫁。恐らくは、これで戦闘の記憶は曖昧になる筈だ。
花嫁を部屋の椅子へと座らせると、アルベルティーヌは元児丸と共、踵を返して戦場へと向かう。
今日を、良き日にしなければ――そう、心に誓いを新たにして。
激昂した淫魔の猛攻は、灼滅者達を圧倒する苛烈なものだ。
声なのか、歌なのか。それすら惑う音の波は、しかし甘美な響きで灼滅者達の脳内へとダイレクトに響き渡る。
幾度目かのえりなの癒しの旋律が再び戦場を包む中、3人目の男が華月の歌声に沈むのを見送り、涼花は改めて淫魔へと向き直った。
(「マフラーの女性のこと、本当に悔しい…!」)
涼花の心にふと、知りながら救えなかった命が過った。
気付かぬ内に、日常に潜むダークネスの影。今こうしている間にも、何処かで知りえぬ命がダークネスによって闇に葬られているのかもしれない。
(「あたしが幸せに過ごしている陰で、こういう哀しい出来事があるなら……!」)
ぎり、と強く握り締めるは、龍骨すら断裁する強靭なる斧の柄。
荒くも鋭いその刃が、戦う決意の下に、その一断で淫魔の右腕を斬り落とす。
「っぎゃああああああああああああああ!!!!」
耳を劈くその悲鳴と同時、涼花とは逆位置から、左腕を同じように斬り払ったのは、礼拝堂へと戻った元児丸。鋭く光る、それは太刀・篝による居合いの一撃。
「……そんなに赤が好きなら、自分の血で着飾りな」
すらりと抜き放った太刀の美しい軌道が、歌声重なる戦場に音も無く奔ると、両の腕から鮮血を噴き出した淫魔は、よくも、よくもと途切れ途切れに恨みがましい呪言を放つ。
その響きにすら潜む魔力の因子。打ち消す様に折り重なるは、後方から響く、ローレライの如き力強くも凜なる神秘の歌。
(「傷付けるなんて許さない」)
紡がれた華月の歌声が、聖堂にどこまでも響き渡る。伝説の歌姫の歌を現代に再現するその声に、淫魔が顔を苦痛に歪ませ胸を押さえた。
そこへ合わせて飛び出したのは、元児丸と共に礼拝堂へと戻ったアルベルティーヌ。意志持つ様に自在に伸びた影は、痛みにもがく淫魔の死角から、急所を貫く斬撃の嵐を見舞った。
「……そんなっ……あたしはっ……あたしはぁ…………!」
痛みに崩れ息も絶え絶えに叫ぶ淫魔の耳へ、最後に届いたのは鎮魂歌。
「………ばいばい」
頬に自然溢れる涙を伝わせ、閏がレクイエムを歌い上げた頃には、己が血に赤く紅く染まった淫魔が、聖堂の空へと跡形もなく消えていた。
●晴れの花嫁
「心配しただろ。あんな所で何してたんだ?」
グレーのタキシードに身を包んだ男性は、労わるように花嫁の腰に触れ、礼拝堂へと導く。
「それが……よくわからないの。何だか、ぼんやりとしてしまって」
首を傾げながら導きに従う花嫁は、ふと、礼拝堂の前に立つ8人の人影に気付いた。男性も気付いて首を傾げれば、その中の女性が1人、歩み出て優雅に微笑む。
「教会を見学しに来たのですが……婚礼が行われると聞いて。これも何かの縁ですので、宜しければお2人をお祝いさせてください」
にっこりと、穏やかに微笑んだセカイに、花嫁と花婿は、きょとんとした表情の後、照れくさそうに笑顔を交わした。その様子に、灼滅者達にも笑顔が浮かぶ。
―――静謐なる聖堂に、婚礼の鐘が鳴り響く。灼滅者達を除いては参列者も聖歌隊も無く、それは本当に質素なものではあったけれど。
この晴れの日に咲く花嫁の笑顔は本当に美しくて。守りきれた充足感、そして幸せに立ち会えた幸福に、華月は祈るように瞳を閉じて、思う。
(「花嫁さんの白は、幸せ色に染める為の色なのよ」)
悲劇の赤に染まる、そんなことがあってはならない。ゆっくりと瞳開いたその時、華月の手にポンっと収まったのは、真っ白なブーケ。
花嫁からの幸せのお裾分け、その温かな風景に、閏の口元にもほんのりと愛らしい笑みが浮かんだ。
セカイとえりなの歌声が、聖歌隊に代わって二人の門出を祝えと響く。嬉しそうに微笑む新郎と新婦の笑顔の眩しさに、由乃は羨望の眼差しを送り、微笑んだ。
二人の門出が、幸せなものであるように。そう誓いの十字に祈りながら。
聖堂を出て吹き抜けた風にふんわり流れる蜂蜜色の髪を揺らして、涼花はふと、自分の未来へと思い馳せる。
(「あたしもいつか好きな人の隣でああいうドレス着ることが出来るのかなぁ」)
女の子ならば、誰もが抱く憧れ。いつか、傍らの愛する人と共に、幸せなこの日を迎える純白の美しき花嫁に。
未来は確定していない。だからこそ、生きることは愛しい。
灼滅者達が守り抜いた無垢なる純白が、幸せに染まります様に―――祈り見上げたフラワーシャワーの舞う空はどこまでも晴れ渡り、まるで花嫁達の未来を映し出すように輝いていた。
作者:萩 |
重傷:なし 死亡:なし 闇堕ち:なし |
|
種類:
公開:2012年12月26日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
|
||
得票:格好よかった 0/感動した 1/素敵だった 10/キャラが大事にされていた 7
|
||
あなたが購入した「複数ピンナップ(複数バトルピンナップ)」を、このシナリオの挿絵にして貰うよう、担当マスターに申請できます。
|
||
シナリオの通常参加者は、掲載されている「自分の顔アイコン」を変更できます。
|