予言は当てるためにある

    作者:るう

     二〇一二年一二月。
     説によって数日のずれはあるにせよ、古代マヤ文明がこの時期に人類の滅亡を予言している、というオカルト理論は世間を席巻していた……が、滅亡予定日を過ぎた今も、人類が今までと変わらぬ日々を過ごしているのはご存知の通り。
     まことに喜ばしいことではあるのだが、しかしここに、人類が滅亡しなかったことを嘆く者がいた。
    「くそっ! 予言が外れたせいで、俺の諭吉さんが……!」
     彼の名はシン、とある中学に通う普通の少年だ。ただし、クラスメイトと人類が本当に滅亡するかどうかの議論をした際、彼は滅亡に一万円という大金を賭けてしまった、という経緯がある。
     どうにか支払いを逃れられないかと悩む彼。そんな彼の脳裏にその時突如、天才的なひらめきが生まれてしまう。
    「数日だけなら誤差かもしれない。今から人類が滅亡すれば、ひょっとしたら賭けは俺の勝ちなんじゃなかろうか?」

    「全然、天才でも何でもないと思います」
     ばっさりと切り捨てる五十嵐・姫子(高校生エクスブレイン・dn0001)。が、その口ぶりは少々楽しそうに聞こえる。
    「シンさんは人類を滅亡させるための方法を、今ごろ必死に研究してるところのようですね。けれど、その努力が報われることはありません」
     未来予測によると、彼が手に入れることになるのは人類を滅亡させるなどという大それた力ではなく、人を効率的に殺すための殺人術……そう、近い将来、彼は六六六人衆として覚醒してしまうのだ。
    「今のシンさんは、自身に宿ったダークネスの力の使い方を、自らの意志で試行錯誤している段階です。もしかしたら、完全に闇に呑まれる前に、正しい力の使い方を示してあげることができるかもしれませんね」
     闇の力を持ちながらも、自らの意思を失わない。これは普通では、考えられない現象なのだ。
    「シンさんが得た力は、ひとつは六六六人衆の殺人術。そしてもうひとつは、シンさんが無意識のうちにサイキックエナジーをつぎ込んで作った、咎人の大鎌」
     彼は冬休みのある日、賭け金を支払うよう電話で近所の公園に呼び出された際に、その力を友人たちに振るってしまう。
    「その電話を受けた時、シンさんは、人類を滅ぼせば儲かるのは自分だ、滅亡の手始めに、まずは賭けの相手を……、という考えを強く意識するようになります。公園に向かう五分の間にそれを止めることができれば、シンさんは闇を抑えられるかもしれません」
     もっとも闇も、そうはさせまいと彼を乗っ取り、惨劇を止めようとした灼滅者たちに襲い掛かってくる。が、その闇はある程度、シン自身が押さえ込んでくれるであろう。その状態で闇を倒せば、彼は正気を取り戻すはずだ。
     一方で説得が上手くゆかず、彼を怒らせるだけであった場合、彼は全てを闇に委ねることとなろう。そうなれば決して、彼を救うことはできない。
    「大きな目標のために頑張るところだけ見れば、きっといい子なんでしょう。間違った方向に頑張らないように、道を示してあげませんとね」
     姫子の楽しげな口調は、そんな良い未来を期待してのことだったようだ。


    参加者
    大松・歩夏(影使い・d01405)
    神代・紫(宵猫メランコリー・d01774)
    赫絲・赫絲(隠戀慕・d02147)
    清浄院・謳歌(正義の中学生魔法使い・d07892)
    咲坂・絵莉羽(ナチュラルボーンキラー・d09169)
    佐藤・角(高校生殺人鬼・d10165)
    倉田・鉄生(倉田さんちの殺人鬼・d10399)
    ユエ・アルテミア(書物蒐集狂・d10468)

    ■リプレイ

     閑静な住宅街。しばらくの間、人が通りかかることもなくなった一角で、灼滅者たちは少年がやってくるであろう方向に目を向ける。
    「……説得、できる、と、……いい、な」
     暖かなケープを纏い、革装丁の魔道書を大事に抱きかかえて、ユエ・アルテミア(書物蒐集狂・d10468)が呟く。
    「緊張するなぁ……でも、頑張らなくちゃね!」
     不安を吹き飛ばすかのように、咲坂・絵莉羽(ナチュラルボーンキラー・d09169)が気合いをいれる。人そのものではなく、その心に巣食う闇を『殺す』。それが彼女の、灼滅者としての心得だ。
    「ん、あの子がシンくん……?」
     神代・紫(宵猫メランコリー・d01774)の視線の先には、常人は近付こうとすら思わぬはずの空間を、真っ直ぐにこちらへ向かってくる少年の姿。七人の無言の頷きを待つまでもなく、彼の他にはいるまい。
     そんな、自分を救ってくれる人たちが待っているともつゆ知らず、少年シンは一歩一歩、着実に歩みを進める。その手には、薄曇りの空を映して光る、抜き身の大鎌。
    「今日は、人類が滅亡するには良い日和すねぇ」
     既に、自らの纏うバベルの鎖の力を、おぼろげながら理解しているのであろう。大鎌を隠すこともなく灼滅者たちの傍を足早に通り過ぎようとする少年に、倉田・鉄生(倉田さんちの殺人鬼・d10399)が声をかける。
     少年ははたと足を止め、見知らぬ同世代の少年の口ぶりから彼が人類滅亡を片時も信じちゃいないことに気付くと、露骨に不機嫌な顔を見せる。
    「人類滅亡されちゃ、困るんすよね。自分まだやる事あるんすよ、色々と」
     だが少年は、鉄生のそんな言葉にも、自分にはもうない、とだけ返す。目つきは剣呑なものになり、邪魔をするなら容赦はしない、と訴えかける。
    「……人類、滅亡、したら、……家族も、おともだちも、いなくなっちゃう、よ?」
     必要ない。一呼吸できるほどの時間を置いての手短な言葉が、少年からユエへの回答であった。意を決して強引に歩みを進めようとするシンの行く手を、ライドキャリバーを操って佐藤・角(高校生殺人鬼・d10165)が阻む。
    「邪魔をしないでくれ。予言の成就には、必要なことなんだ」
    「一人、また一人と減ッて行くだけたァ、地味な滅亡もあッたもンだ」
     初めてシンの方から先に発せられたその言葉を聞いて、赫絲・赫絲(隠戀慕・d02147)は興味深そうに思案する。赫絲の言葉を嘲笑と取ったか、抗弁しようと口を開くシンに先んじて、彼の隠しきれぬ焦りを包み込むかのように、大松・歩夏(影使い・d01405)がゆっくりと諭す。
    「あなたがやろうとしてることは、ただの殺人よ、シンくん。そんなことしたって人類は滅びないし、賭けにも勝てない」
     だからどうした、とシンは言う。そんなの、やってみなければわからないじゃあないか。
    「でもさ……」
     そんなシンの様子をじっと見つめていた咲坂・絵莉羽(ナチュラルボーンキラー・d09169)は、ふと思いついたかのように呟く。
    「……でもそれだと賭け金支払う友達も死んじゃって、結局、君はお金もらえなくない?」
    「……あ」
     緊迫した空気から一転、間抜けな声を出すシン。さらに清浄院・謳歌(正義の中学生魔法使い・d07892)の、ダメ押しの一言。
    「それに、人類が滅亡したら、どんなにたくさんお金を持ってても、使う相手がいなくなっちゃうんじゃないかな?」
     言われて、見ればわかるほどにうろたえて赤面。その上。
    「だからシンくん、お願い……。人類滅亡なんて考えないで……! 家族もいなくなったら、お小遣いも……お年玉も貰えなくなっちゃうよ?」
     神代・紫(宵猫メランコリー・d01774)のその一言に、シンは最初は力なく、次第に大きな声で笑い始める。その、憑き物が取れたかのような笑顔を見るに、彼は自分の妄執を吹き飛ばしたに違いなかった。
    「滅亡してもせずとも、どちらにせよアンタは損をする。とりわけ前者に関すれば、とンだ大損じゃア無いですか」
     だったら此処は、たったの一万円で世界を救ったと考えようぜ、と笑う赫絲の言葉に完全に降参し、シンは手にしていた鎌を、その場にポイと――。

     ――捨てるつもりだった。
     ところがそれは結局叶わず、今や少年は鈍く光る大鎌を、両手で一分の隙もなく構えている。その全身からはどす黒い殺気を立ち昇らせており、憎悪の瞳が真っ赤に輝く。
    「あとほんの少しで、このガキを完全に乗っ取れたものを……!」
     シン少年……いや彼の姿をしたダークネスは、忌々しげに灼滅者を睨みつける。
    「待ってシンくん! シンくんは本当に、人類滅亡なんて願ってるの!?」
     紫の叫びに対し、しかし闇に心を封じられた当の少年は、答えることができない。代わりに言葉に応えたのは、彼を封じているダークネス自身。
     疾い! 少年の周囲に渦巻く殺気が錐となり、風よりも速く、灼滅者たちを貫く!
    「ヒャーッハッハ! あれだけの事を言っておいて、結局その体たらく!」
     苦悶の表情を浮かべる灼滅者を眺め、可笑しそうに哄笑するダークネスに、紫の霊犬『久遠』が向かってゆく! が、斬りつけた刀はダークネスに傷こそつけるものの、逆に邪魔だとばかりに蹴飛ばされてしまう。久遠のお返しとばかりに紫自身も斬りつけるが、元より戦闘能力の高い六六六人衆にとっては、それもかすり傷に過ぎない!
     それらに続く幾つもの攻撃を受けてもなお怯むことなく、灼滅者たちを嘲笑するダークネス。手玉に取るとは、まさにこの事か。
     ところがそんな彼を労わるかのように、鉄生は優しく諭して見せる。
    「たかが八人程度に梃子摺るようじゃ、諦めた方が良いすよ。流石に、六十億人超はしんどいでしょう」
     おっと『九人』すね、と訂正しつつ、大鎌同士の戦いを繰り広げる鉄生の真意は、一体どういうことか? さしもの闇も、全身を切り刻まれつつも彼が抱く、圧倒的な差を覆すとの確信に、未知のものでも見るかのような表情を浮かべる。
     とはいえ当然、ただ驚愕した程度のことで隙を作るような六六六人衆ではない。ところが彼は次の瞬間、この場に戦いの趨勢を左右するような、恐るべきジョーカーが潜んでいたことを思い知らされる。
    「戻っておいでよシン君! 友達を殺すなんてダメ、ダークネスなんかに負けないで!」
     絵莉羽の呼びかけに、凍てついたはずの魂が、どくん、とひとつ鼓動する。思わぬ振動にぶれた切先を制して、彼女の刀はシンの体に纏わりつく闇を切り裂いていた。
    「無駄さ! そんな綺麗事が、一体何の力になる!?」
     そんな言葉を、敢えて口に出さねばならぬということが、ダークネスがその『綺麗事』を恐れていることの、明白な証左であったろう。元々この戦いは大差に見えて、実のところは少しの差でダークネスが優勢を保っているに過ぎない。
    「……がんばって、ね。だれも、いないのは、……さびしい、よ」
     ユエが両手を重ね、シンの心が取り戻されるよう祈ると、その指輪からは、闇を呪縛する別の闇が飛び出す。先ほどまで手にしていた本は今、腰のベルトの金具にぶら下がり、ただ静かに、彼女の願いに耳を傾けている。
    「うるさい奴らめ! 黙れといったら黙れェェ!」
     どくん、どくん。心の奥底まで届く雑音を排除するため、死の力が、ユエに向けて振り下ろされる……が、その悪意は、彼女には届かない! スロットルを全開にした角の愛機が二人の間に割り込み、それが振るわれるのを妨げたのだ。
    「歴史を紐解けば、末世思想は常に存在しますが……それに恐怖しながらも楽しむことができるのが人間だ、と私は思いたいですね」
     ゆえに、いたずらに恐怖だけを振り撒くだけの六六六人衆など、終末論の尻馬に乗せる価値もない。駆動部を損傷し、エンジン音が途切れ途切れになってゆく愛機を撫でながら、角は手裏剣を投じ、闇を制する毒を的確に敵の急所に注ぎ込んでゆく。それでも闇は、少年を堕落させ、灼滅者たちを滅ぼさんとすることを止めない。
    「馬鹿馬鹿しい! お前たちの力とオレの力の間に、一体どれほどの差がある!?」
     その叫びと共に、少年の体を包む闇の力が、より一層強まる。お前たちだって、ほとんどの奴が『殺人鬼』じゃないか。力の根源は、オレ達と同じだ。
     それでも。
    「教えてあげなくっちゃね。同じ力であっても、私たちの力は、人を殺すためのものじゃなくて、自分を、他人を、守るためのものだって。決して、誰かを傷つけるためのものじゃないって」
     敵に向かって、一歩一歩、ゆっくりと近付いてゆく歩夏。
     どくん、どくん、どくん。心の中で対峙する少年の、内なる鼓動を感じて立ち尽くすダークネス。その全身から一枚また一枚と、彼女は闇のベールを剥ぎ取ってゆく。
    「アンタみてェな奴は、嫌いじゃアねェ……だから、手荒な真似したッて引き戻す」
     闇を切り裂きながら赫絲が促すのに従い、彼の傍らにいた少女『雪白雪』が、ダークネスの目の前までやってくる。微かに笑ったように見える彼女は、まるで少年から穢れた魂を抜き取ろうとしているかのよう。振り払おうと、もがくダークネス。
    「救済の方が、格好ェぞ」
     赫絲の言葉に呼応するように、謳歌は杖を構え、自信と慈愛に満ちた微笑みと共に癒しの力を仲間たちに与える。灼滅者は決して、ただ闇を討つことしかできない、無力な存在ではない。
    「わたしはシンくんを助けられる方に賭けるけど、シンくんは、どっちに賭ける?」
    「助ける!? そんなもの、まやかしだ!!」
     どくん、どくん、どくん、どくん。ダークネスは自らの中の敵を無理やり押さえ込むため、殺戮の力をがむしゃらに振るう……が、その動きは当初の、冷徹な殺戮機械が見せていたような精緻さとはかけ離れている。鎌は、空を切るほどのことはないにせよ明らかに威力を欠き、軽々といなせるはずの一撃すら弾き損じる。
     内よりの衝動を幾度となく抑えつけ、新たな闇を纏おうとするダークネス。その闇はしかし纏った分だけ、いやそれ以上に、灼滅者らによって剥ぎ取られてゆくのだ。
    「こんな奴らは放っておいて、おさらばしてやるぜ!」
     前後を塞がれ、逃げ道を失ったダークネスは、道端の家の塀をひょいひょいと登り、逃走を図る……!
    「おっと。そうは、させませんよ」
     逃がすまいと、角は最後の力を振り絞るマシンに跨り空中に跳ぶと、敵の頭上に覆い被さる。払い除けようと振るわれる、大鎌の刃! それでも角は、敵をこの場に足止めすることは、辛うじて成功した……既にほとんど限界を迎えていた、自らの愛機と引き換えに。
    「……決して、逃がさない、だから」
     ユエの放つ魔力の枷は再び、蠢く闇を縛る。逃げようともがくダークネスは、纏わり付いて霊気を奪ってゆく雪白雪に、恐慌状態に陥っている。
    「見苦しいすよ。いい加減、諦めて灼滅されたらどうすか?」
     もちろんそんな鉄生の言葉を素直に聞くような、物分りのいいダークネスはいない。せめてもの抵抗をと、大鎌を振るうが……。
     危険も恐れず、勇猛にも大鎌に噛みついた霊犬は、刃に頬まで切り裂かれながらも、主人の仲間を護る!
    「馬鹿な犬っころめ!」
     しかし大鎌が、次こそ完全に切り刻もうとするよりも早く、謳歌から放たれた優しい光が久遠を照らす。
    「優しさの力を知らないダークネスなんかに、わたし達は決して負けない」
     謳歌の決意の後を引き取って、歩夏もダークネスに引導を渡す。
    「言ったでしょ? 力の使い方を『教えてあげる』って」
     それでもまだ何やら喚くダークネスであったが、目の前に立った絵莉羽の姿に、最早自身の思惑は遂げられぬとを悟る。
    「咲坂の十三、斬殺の絵莉羽! 君の心に巣食う闇、あたしが『殺す』!」
     一筋の光が閃いて、シン少年を支配していた闇は、今や跡形もなく、その存在を失った。

    「大丈夫?」
     冷たい路上に大の字になり、ぼーっと空を眺めていたシン少年の耳に、誰かの声が飛び込む。
     雲の切れ目から差し込む太陽に、反射的に目を瞑った少年は、直後、その光が何者かに遮られたのに気付くと上体を起こす。
    「ほら、立って」
     差し伸べられた手を握って立ち上がったところで、彼はその手の主――声の主でもある――に気付き、慌てて何もなかったように装う。同じ年頃の謳歌と手を繋ぐなんて、どうしてもどぎまぎする体験だ。
     シンはその後、突如手に入れた自分の力とその意味を教わって、再び赤面することになる。まさか自分の間抜けの尻拭いを、女の子たちにもさせてしまったなんて……。
    「でもシン君は、真面目な頑張り屋さんなんだね」
     もう、怒られても、馬鹿にされても仕方ないと思っていたシンは、突然絵莉羽に褒められて、びっくりして言葉に詰まらせた。
    「だって、踏み倒したりその場で喧嘩して払わなかったりする方が簡単なのに、そうしなかったでしょ?」
     まったくだ。どうしてそんな簡単な方法を思いつかなかったのかと、シンは我ながら呆れてしまう。けれど約束を違えるのは好きじゃないし、自分の不思議な才能も知ることができたしで、まあ、悪くないのかな、と思わないでもない。
    「もう、人類滅亡なんて願わないよね?」
    「そもそも信じただけで、別に望ンだ訳じゃねェだろ?」
     紫と赫絲の言葉に、もう願わないよ、と素直に答えるシンだったが……まだ一つ残っていた懸案事項を思い出して、頭を抱える。
     予言の話なら、と、角がこっそりとアドバイス。
    「予言の舞台となったメキシコはメリダの観光協会が、計算ミスだったとして滅亡を二〇一五年に延長しましたよ」
    「でも、賭けは今年どうなるか、なので……」
     おっと失礼、と謝る角の後から、歩夏がポンとシンの肩を叩く。
    「口車に乗せられただけなんだから、ごめんなさいって謝って、払えないって伝えればいいのよ。昼でも奢ってあげれば、きっとそれで許してくれるわ」
     本当かな? と半信半疑のシンに歩夏は、でも感情的になってはだめ、と念を押す。
    「……きっと、うまく、いく、……はず」
     ユエの言葉にも背中を押され、シンは今度こそ、自分の問題は自分でつけようと決意する。
     だがその前に。もう一つだけ、決着をつけなければならないことがある。
    「シン君の力は、人を殺せる。だけど、力の使い方を勉強すれば、灼滅者として人を護ったり助けたりすることもできるんだよ」
     灼滅者と、なるかどうか。
     ただ、灼滅者であるということは、絵莉羽の言葉ほど単純な話でもない。生まれつき灼滅者として育てられた彼女の言葉を、鵜呑みにしてよいものかと鉄生は思う。もっとも彼女には、後天的な灼滅者には思いもよらぬ苦労があるのだろうが。
    「まァ、決着が付き次第、明日にでも祝杯と行こうぜ。奢るぞ、負け分」
     祝杯の待ち合わせは武蔵坂学園でな、と手を振る赫絲たち、灼滅者たちの姿を振り返ることなく、シンは公園に向けて駆け出した。

    作者:るう 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2013年1月1日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 4/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 8
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