ゾン美少女の雪中要塞(かまくら)ができたって!?

    作者:旅望かなた

     札幌市東区民センターから現れた、大きな鞄を持った一団は、とりあえず目当ての食事処へと歩を進める。
    「いやぁ、やっぱりゾンビの美少女ものはいいですねぇ」
    「んー、今日も見事に吹っ飛んだなぁ。あとでパーツ足したいなぁ」
    「ボスはいい狂気でしたね。女の子らしい葛藤だったというか」
    「このゲームは女性マスターがなかなかいないんですよね、ありがたい」
    「恐縮ですよー、皆さんのキャラが良かったからです!」
     口々に語り合いながら、歩む彼らの2m先の――、
    「でーらっしゃぁぁぁ!」
     雪が一気に弾け飛んだ!
    「な、どうしたんですか!?」
    「きゃああ!?」
    「け、警察!」
     慌てる彼らの前に、雪煙の向こうの開いた穴から飛び出してきたのは――身体のあちこちが腐敗し、けれどそれでも可愛らしい死体、いや肢体を軍服に包んだ美少女ゾンビ!
    「さぁ殺戮の宴を準備しよう! 拠点を探せ! なけりゃぁ作れ! 幸いここにゃぁ材料はいっぱいあらぁ!」
     ぶんとライフルを振り回し、ゾンビ美少女は続けて這い出すゾンビ達に号令を与える。
    「未練を狂気で、命を仮初で埋めたヤツだけがアタシの隊に入れるのさ! さぁ野郎ども、雪遊びといこうじゃないか!」
     叫び声にゾンビ達がおー、というかあー、みたいな声を上げ拳を突き上げる。
     ――その間に、最初に遭遇してしまった男女はとっとと逃げ出しているのであった。
     
    「野郎どもゾンビが出たぞー!」
    「おー!」
     嵯峨・伊智子(高校生エクスブレイン・dn0063)が元気いっぱい拳を突き上げる。
     二番煎じ(しかもセルフ)というのは置いといて欲しい。
    「ちなみに今回はゾンビの美少女! しかも軍服! 略してゾン美少女!?」
     びしぃ、と両手の親指を立てる無茶なテンションの伊智子。
    「彼女は軍曹って名乗り5人の取り巻きを連れて、札幌のとある雪捨て場に拠点として要塞を作ってるんだってばよ!」
    「要塞!?」
    「雪でね! ドーム型で中に入ってちょっとぬくいやつ!」
    「「「かまくらじゃねーか!」」」
    「YESよくわかったじゃん! 偉いぞみんな!」
     ちなみに割とこてこてと大砲つけたりなんかつけたりしてるらしい。
     もちろん雪なので戦いに特に効果はない。
    「でもかまくらだからって油断しちゃダメなのさ! なぜかってそのゾン美少女ちゃん強いから!」
     なんせバスターライフルと解体ナイフを二刀流して、攻撃回復両用できっちり戦ってくるというからその軍服は伊達ではない。中衛キャスターに位置し攻防に優れた知将なのだ!
    「あとゾンビ達も命令に従って頑張ってるらしいから!」
     彼らは近くの者しか殴れないが、毒の拳とブレイクの拳を使い分け軍曹の命令に従っている。
    「ゾンビ達はそのかまくらから動かないから、まだ被害は出てないけど……一回戦闘になったら、どっちかが死ぬまでそのゾン美少女ちゃん戦おうとするから」
     灼滅車体をまっすぐに見て、伊智子はぎゅっと拳を握る。
    「逃げても追っかけて来るから、だから絶対に今回は勝って戻ってきて。お願いだよ!」
     そして、彼女は灼滅者達に勢いよく頭を下げた。


    参加者
    稲垣・晴香(伝説の後継者・d00450)
    早鞍・清純(全力少年・d01135)
    犬塚・沙雪(炎剣・d02462)
    六連・光(リヴォルヴァー・d04322)
    ジェーン・ホームズ(コズミックライダー・d04640)
    黒岩・いちご(ないしょのアーティスト・d10643)
    唯川・みえ子(心のままに・d10646)

    ■リプレイ

     全てが白い。灼滅者達の第一印象は、それであった。
    「あれが狙うべき相手のようですね」
     その中でもことさら白でいっぱいの雪捨て場。そこに蠢く腐りかけた影を見つけ、ユニス・ブランシュール(淡雪・d00035)がそっと額に手をかざす。
     軍服を着た少女が、あちらこちらへと指示を飛ばしているのが見えて、早鞍・清純(全力少年・d01135)は思わず頭を抱えた。
    「軍服美少女までは素晴らしい……! ぞ……ゾンビはどうか悩ましいぜッ!」
     そう言いながら何だか目が離せない。軍服の胸部をばーんと押し上げるそのたわわな――!
    「予知で見えた人たちの会話がわかりすぎます」
     そしてその隣で黒岩・いちご(ないしょのアーティスト・d10643)が別の意味で頭を抱えていた。
    「ゾン美少女いいですよねぇ……TRPGの中なら」
     私はリプレイ読んだだけで、プレイ経験はないのですけど、と呟くいちご、そして目を逸らそうか見つめようか迷っている清純に、唯川・みえ子(心のままに・d10646)は冷たい――ように見えてぷんすかした目を向ける。
    「ゾン美少女……? 腐っている女のどこが宜しいのかしら。あたくしの方がよっぽど美少女と言えると思うのですけれど」
     ぎりり、と奥歯が噛み締められる音に、まだみんな気付かない。
    「さあてクソったれの死に損ない退治ね」
     どん、とガトリングガンを軽々肩に負い、ジェーン・ホームズ(コズミックライダー・d04640)がニィと笑って作っておいた雪玉を蹴り上げる。そして、その後に続いてライドキャリバーの星屑に跨り一気に距離を詰め――物音に気付いたゾンビが声を上げる!
    「寒いですね……さっさと片付けてしまいましょう」
     ほう、と冷たい息を吐き、六連・光(リヴォルヴァー・d04322)がコートの前を合わせ、後に続く。
     リングコスチュームにリングシューズ姿の少女が、走りながら剥き出しの腕を思わず両手で擦って。
    「確かに、雪中サバゲもかまくら要塞も経験あるわよ。けど、それやってんのがゾンビじゃなぁ……」
     稲垣・晴香(伝説の後継者・d00450)が嘆息しつつ、プロレスラーの闘魂なるバトルオーラを展開。
    「いくら見た目が美少女っつってもツッコまざるを得ないでしょ!」
     そしてツッコむ!
     いや突っ込む!
    「何だとお前達敵襲だ!」
     振り返った少女の顔は、幾分腐敗してはいるが確かに整った顔立ちで。
    「しかもゾンビをディスられた! これが黙って居られるか!」
    「「「オオオオオオオオ!」」」
     バスターライフルからビームをぶっ放して叫ぶ少女軍曹。気勢を上げるゾンビ達。
    「ゾン美少女ね……なんだかなぁ」
     そっと、犬塚・沙雪(炎剣・d02462)が遠い目をした。……恋人と来る依頼かって言うとすごく微妙だと思うんだ、うん。
     けれど恋人であるユニスが幸せそうに寄り添っているから、多分構わないんだろう。
    「よう、アタシの次くらいの美少女。狂気を光で、死に肝を鉛玉で埋めに来たよ」
     ダン、と星屑の座席を蹴って、ジェーンがカードを掲げる。合言葉は「Have a nice death!」、そのまま刃を繰り出し突撃する星屑に合わせ、軍曹に爆炎の弾丸を一気に解き放つ!
     ちなみにみえ子が歯ぎしりギリギリしているぞ!
    「ゲームの中なら萌えてあげたんですけどねぇ……ゾン美少女さん」
     色んな意味で残念です、とため息をついてから、いちごはばしりとスレイヤーカードを両手で前に突き出して。
    「いきますよっ! 『私の歌を聴けーッ!』」
     その言葉と共に、一気に力を解き放つ!
    「悩ましくても北海道の平和を守るんだぜ!」
     清純が煩悩をぶんぶんと振り払い、一気に敵の出鼻を挫くように弾丸を解き放つ。ぎゃん、とゾンビが脚を撃たれて跳ねながらも、近くの敵から殴りつけていく。
    「というわけで、余計な被害が出る前に制圧させてもらうわよ!」
     容赦のない晴香のエルボー抗雷撃が、ゾンビの顎にヒットする。あーと叫んで慌てて外れそうな顎を掴むゾンビ。
    「ま、お仕事と行こうか」
     沙雪が一つ深呼吸し、カードを目の前に掲げて。
    「では、参りましょう!」
     恋人の言葉に、大きく頷いて。
    「いざ……参る!」
     その言葉と共に、一気に力を開放。星も砕かんと名付けられた無敵斬艦刀を握り締め、瞳に宿る光すら変わったと思えるほどの真剣さを宿す。
    「参ります……お相手願いましょうか、可愛い軍曹殿?」
     挑発的に光が笑って、次の瞬間槍を構え突撃する。パァン、とかまくらが砕け、そのまま雪を抜けた光はゾンビの一体へと突き刺さる!
    「っ!?」
     だが、己の被害も大きかった。
     舞い踊った雪が、襟の僅かの隙間から入り込み、慌てて取ろうとしてもすぐに溶けてしまう。……冷たい。
    「なるほど……いくらかマシか」
    「チッ……速い!」
     トン、と沙雪がその軍曹の死角に踏み込んでから、マリンブーツタイプの冬靴の具合に目を細める。斬艦刀を振るう手も、踏みしめる足も、揺らぎはない。
    「貴女の相手は私達です!」
     さらにその腱を斬った一撃に合わせる様に、ユニスの指輪から飛び出した弾丸が軍曹の動きを制約する。すぐさまそれに合わせてバトルオーラを輝かせ、光が素早い連打を決める。
    「気合入れてかかって来い雑兵……男なら女の前で良い格好見せたいんだろうが!」
    「「「ォォオオオオオオオ!」」」
     光の挑発に、ゾンビ達の拳が殺到する。知性はなくとも軍曹わっほいの彼らは彼女を危機から守りたいのだろう。
    「ええいお前等頑張りやがれ! 私なんか守る前に一人でも敵を殴れ!」
     ばしんと流れサイキックを受け流し、軍曹が解体ナイフの魔力を解放し癒しと身隠しの霧を呼び。
    「なんだろう……ゾンビ美少女……悪くない……気がする……!」
     清純が思わず呟き、「しっかりして、俺!」と首をぶんぶん。水が染みない滑らない冬靴と貼るカイロは快適だけど、悩める心は止まらない。
    「おっぱいが大きかったら何でもいい訳じゃないんだぞ!」
     それでも攻撃は当たる。割とスナイパーパワーかもしれないけどちゃんとマジックミサイルがゾンビに向けて飛んで行く。
     ゾンビ達が対象をばらばらに灼滅者達に殴りかかる。そろそろ毒がかなりの灼滅者を蝕み、にやりと軍曹が笑った、その時
     いちごのメロディがみえ子の風に乗り、響いていく。インディーズではあるがプロである、アーティストICHIGOこといちごのギターの素早いテクニックと歌声の伸び、それをみえ子の清浄なる風が増幅し、仲間達の毒を祓っていく。
    「あたくしは後方支援で人を立てます大和撫子ですから、決して前には出ませんことよ」
     ええ、ゾンビなんぞに近寄るのが嫌だからじゃありませんのよ。
     そっと着物の袖で唇を隠しながら言うみえ子に、チッと軍曹が舌打ちして。
    「回復役が2人もいるのかー、やりづらいぜ!」
     けれど楽しげに、今度は螺穿槍使いへのブレイクと重ねての毒の付与を命じた軍曹は己もナイフに刻まれた犠牲者達の呪いを解き放つ。
     その呪いを鋼鉄拳でぶちのめして振り払った晴香が、ゾンビの一体を引っ掴む。そしてそのまま、ぐっと持ち上げて。
    「ガチになったプロレスラーの恐ろしさを教えてあげるわよ。踏み固められていない雪とはいえ――渾身の力をこめて叩きつけられてタダで済むと思う?」
    「ジェロームッ!」
     軍曹の叫び声をものともせず、渾身のバックドロップ!
     ごすん、と雪に埋まったゾンビは、動きを止めたまま掻き消える。
     沙雪がそのまま一気に、WOKシールドを展開。そのままシールドに力をこめ、軍曹を押し潰さんとばかりに迫り行く。「面白いなお前!」と叫んだ軍曹は、沙雪に向かって渾身のビームをぶっ放し、さらに動きを縛らんとユニスが制約の弾丸を重ねていく。
     重ねた攻撃力の幾分かをゾンビにブレイクされながらも、光が再び捻りを入れた槍を突き出す。突き刺した刃を捻ればゾンビが悲鳴を絞り出し、ふらりとよろければ何かがその体を受け止める。
     ――それは、温かい手ではなく冷たい銃口で、真の死への導き手。
    「地獄を楽しみな!」
     押し当てたままジェーンのガトリングガンから連射される弾丸に、ゾンビの体が吹き飛んで転がり消える。「拓真!」と叫んだ軍曹の前には沙雪が躍り出、再びシールドバッシュで注意を引く。
     生と死とが入り混じる戦場。高まる緊張、弾ける鼓動、清純は必死に「逃げちゃダメだ」と呟き続ける。
    「逃げちゃダメだ逃げちゃダメだ逃げちゃ……」
     僕は灼滅しなくてもいいんだ、とは残念ながら脳が結論付けてくれない。
     覚悟を決めて唾を飲み込んだその瞬間、沙雪のシールドバッシュに押されて見事に形を変えつつ弾むおっぱいが目に入る!
    「帰ってきてシリアスさん!」
     悩める中学二年生、それでも頑張って制約の弾丸を軍曹に向かって投げつける。
     決して動きを止めたところを(きゃー)とかそんな妄想をしたわけではない絶対ない。
     ひらり、と五線譜の如き影が伸び、くるくると敵に巻き付く。いちごのギターは激しい音楽を奏で続け、素早いビートも止む事はない。
     ゾンビの攻撃(届かない)からすごく嫌そうに離れようとしたみえ子が、ずべっと滑ってすっ転ぶ。防寒はしっかり考え、靴もしっかりしたものだけれど、慣れない歩き方はどうしようもない。
     雪をぺしぺし払って、その恨みをぶつけるべくみえ子は声を張り上げる。歌姫の優雅な歌が、敵の心に沁み込みついふらりと隣のゾンビを殴りつけさせる。
    「ええい幸雄! 正気に戻れ!」
     ばしんとゾンビの背中をどついた軍曹が、そのまま敵陣の中央に躍り出円盤状の光線を一気に解放する。背後に跳んでその勢いを殺し受け切った晴香が、突き上げるように掌底を入れゾンビの加護を弾き飛ばす。
    「この程度で我が炎、消せると思うなっ」
     吼えるかのように、沙雪のシャウトが雪でも吸い込み切れず響き渡る。ユニスがその背に、闇と契約を交わし癒しを捧げる。
     光の胸に浮かぶのは、漆黒のトランプスート。どくん、と脈打つように、闇に明け渡されたその場所から力が溢れ、傷を癒していく。
     パァン、とジェーンが引き金を引き、ガトリングから無数のビームを撃ち出す。その光は一点に収束し、貫いたのは――闇のマークを浮かべた光。そう、それは殺意ではなく、治癒の力。
     敵と一気に距離を詰めた清純が、絶対命中の距離で一気に魔力を解き放ち、光の矢を敵へとぶつける。胸を華麗に貫かれたゾンビは消え、「ちきしょう、聡美……!」と叫んだ軍曹が怒りに燃えて解き放つは苛烈なるビーム、それを星屑が飛び出してその身で受け止めて雪に転がる。「サンキュ、Baby!」とジェーンがヒーリングライトを照らしてやると同時、ブンとエンジン音を鳴らした星屑はフルスロットルモードへと出力を高め一気に突っ込んでいく。
     いちごの歌が、朗々と響いて仲間を癒していく。指が鋭い伴奏を刻み、天使と賞される歌声はふわりと体に活力を取り戻して。
     そして弾丸や歌が命中しないと悟ったみえ子は、覚悟を決めて軍曹の前に飛び出す。
    「ああ嫌だ、腐臭がしますので近寄らないでくださいまし!」
    「自分から近づいておいてずいぶんな言い草だ!」
     ばし、と零距離で近づけられた銃口と、その時拳が掠ったので、みえ子は思わず悲鳴を上げて急いで手が届く範囲から逃げ出す。そしてずっぽりと転んで雪の上に人型を作る。
     ――本当は、ゾンビでも美少女と呼べる軍曹に、嫉妬の気持ちがある事にはきっと皆気付いていない。彼女自身、可愛らしいと褒められる顔立ちではあるのだけれど、瞳に生気が宿らぬことは気にしていても治らぬのだ。
     そんな葛藤を繰り広げるみえ子を守るように割り込んだ晴香が、ゾンビの脚の間に顔を入れ一気に持ち上げ――しゃがみこみながら振り下ろす。同時に光のティアーズリッパーに切り裂かれ、ゾンビはその姿を消した。
    「幸雄まで……にゃろう!」
     叫んだ軍曹がジグザグにした刃で斬りかかってくるのを、光はしかと槍で受け止める。
     火花が散り、二人が渾身の力で押し合う中、ユニスの彗星の如き矢と沙雪の死を呼ぶ斬撃が共に左右から突き刺さる。がん、と押し切られ、ならばと後ろに跳んだ軍曹の隣で、組みつきガンナイフで格闘を仕掛けた清純の刃がゾンビの首へと突き刺さり、本当の死へと導く。
    「通知表に『集中力が足りません』『緊張感を持って』と書かれるけど攻撃は外さないんだからね!」
    「武文いいいいいいいいい!」
     あぁうんガチバトルなのに締まらないぜ!
     だが、ともあれもはや敵は軍曹一人。
     最後の支えとなるべく、いちごの激しく立ち上がる力を呼ぶ歌声とみえ子の天界で歌われるが如き調べが、見事に調和し仲間達に救いを、癒しを呼ぶ。
     握り拳の下方に力をこめ、一気に晴香が貫けば受け切った軍曹がジグザグのナイフで斬りかかる。けれどその脇を、槍が縫うように貫いた。
    「御覚悟……手下の所に送って差し上げます」
    「けっ……」
     黒ずんだ血を吐き捨てて、槍を引き抜いた軍曹は「お前ら全員黄泉に送ってやれば済む事だ」とバスターライフルを構える。けれどユニスのと清純の弾丸が動きを絡めとり、一瞬の隙が生まれて。
    「Have a nice death!」
     突撃する星屑の後ろから、一気に引いた引き金。弾丸が飛び散るも、全てが軍曹の体を次々に貫いていく。
     そして背後からは、巨大な斬艦刀がその胴体を薙いでいた。
    「一刀、両断っ! ……我が剣に断てぬもの無しっ!」
     その、言葉通りに。
    「チッ……一人も道連れに出来ないなんて、申し訳たたねぇや」
     肩をすくめた少女は、ゆっくりと雪の上に崩れ落ちる。
    「――けど」
     楽しかった。
     最後にそう言って、目を閉じた少女はゆっくりと消えて行った。

    「皆さん、お疲れ様でした。お怪我はありませんか?」
     そう尋ねたユニスに、一同が大丈夫と声を上げる。そして恋人である沙雪は、そっとタオルを差し出して。
    「あ、ありがとうございます……」
     照れ屋な彼女の頬は真っ赤になって、けれどタオルを顔に当てる様子は嬉しそう。
    「今一度、安らかに……」
     戦いのときはさんざん挑発したけれど、素直に光は黙祷し冥福を祈る。
     そしてその場の雰囲気は、達成感に満ちた柔らかいものに。みえ子が「あたくし、こういうの初めてですのよ。わくわくしますわねぇ」と嬉しそうに残っていたかまくらを覗き込んで、けれどすぐに震え出し「早く帰りましょ」なんて言い出して。
    「せっかくの札幌、ラーメン食べに行きたいなぁ……」
     そう沙雪が呟けば、一同から賛同の声が次々に。
    「よければ案内しますよー?」
     にこりと笑ったいちごが、仲間達を先導しながらこちらに向かって。
    「なおアーティストICHIGOは性別不詳です。気にしてはいけませんよ?」
     ――そんなわけで、札幌市東区の雪捨て場には平和が戻ったのだった!

    作者:旅望かなた 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2012年12月30日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 5/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 8
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