モツ、ちゅるん

     花藤・焔(魔斬刃姫・d01510)は、こんな噂を耳にした。
     『人を喰らう寿司が存在している』と……。
     最初は単なる噂かと思って、あまり気にも留めなかったのだが、寿司に襲われた被害者が出た事を知り、都市伝説が絡んでいると確認をした。
     念のため、エクスブレインにも確認を取ってみたが情報は正しく、都市伝説が絡んでいる事は間違いないようである。
     都市伝説は巨大な寿司(トロ)の姿をしており、大好物は人間に肝。
     しかも、相手が生きている状態で臓物を引きずり出すようにして喰らうため、色々な意味でトラウマレベル。
     そんな化け物を放っておいても、被害者を増やしてしまうだけなので、そうなる前に退治してしまおうというのが、今回の依頼のようだ。


    参加者
    鷲宮・密(散花・d00292)
    因幡・雪之丞(ハードラック・d00328)
    不動・祐一(揺るぎ無き守護者・d00978)
    アンカー・バールフリット(宮廷道化師・d01153)
    花藤・焔(魔斬刃姫・d01510)
    鳳・仙花(不条理の破壊者・d02352)
    千条・サイ(戦花火と京の空・d02467)
    イリヤ・ミハイロフ(ホロードヌィルナー・d07788)

    ■リプレイ

    ●スシモンスター
    「ここまで来ると都市伝説なら何でもありだな。噂が事実になるって、昔そんなゲームが無かったか?」
     アンカー・バールフリット(宮廷道化師・d01153)はげんなりとした表情を浮かべ、都市伝説が確認された場所にむかっていた。
     今回、倒すべき相手は、寿司の姿をした都市伝説。
     都市伝説とは噂が形になったモノで、本来存在してはならないモノである。
    「これがホントの人を喰うような話――ってか? ……ってか、人を食う寿司の噂とか、どうやったら出来んだよ……」
     軽く冗談を言った後、不動・祐一(揺るぎ無き守護者・d00978)がツッコミを入れた。
     普段は人間に食べられてしまう側の寿司が、逆に人間を食べてしまう。
     まるでコントか、落語のような話であるが、それが噂になるほど広まって、都市伝説になってしまうとは驚きである。
    「日本に来て一度寿司を食べたけど、ワサビという調味料……鼻が痛くなるし、涙が出るし、何の拷問かと思ったよ。それに、魚の生臭さは苦手だ。生で食べた事もない。そも敵が寿司というのも、あまり想像が出来ない……」
     険しい表情を浮かべながら、イリヤ・ミハイロフ(ホロードヌィルナー・d07788)が口を開く。
     都市伝説は巨大な寿司の姿をしており、人を襲うようなのだが、いまいち想像しづらいというのが本音である。
    「ちなみに、俺は寿司ネタなら、ねぎとろが好きだぜっ! もちろんトロも、好きだけど! でも、人のキモとか食っちゃうトロは、ちょっと……。いや、つーか、キモを食べるトロって、なんだ。殺人トマトとか、空飛ぶスパゲッティとか、そういうアレなのか? トロって、マグロとかじゃなく、切り身のトロ、だよな……?」
     不思議そうに首を傾げ、因幡・雪之丞(ハードラック・d00328)が都市伝説の姿を想像する。
     おそらく、巨大なトロ。それがピョンピョンと飛び跳ね、もしくはカサカサと動いて襲いかかってくるのだろう。
    「……寿司が人を襲う、なんて事もあるのね。まあ、いいわ。何にせよ、やるべき事をやるだけよ」
     気持ちをサッと切り替え、鷲宮・密(散花・d00292)が都市伝説を捜す。
     しばらくして、都市伝説は見つかった。
     噂のあった場所の傍で……。
     人を襲ってモツをちゅるんとすすっている。
     辺りには大量の血と、醤油が広がっており、それが入り混じって奇妙な臭いを生み出していた。
    「うわー……」
     唖然とした表情を浮かべ、イリヤが目を擦って、眼鏡を外して拭き始める。
    「なんやあの細い手足はっ! あんなんで動く事が出来るんか? 醤油はあの口みたいな所から出るんやろうか? そんじゃ、ワサビがあるところに、脳味噌的な何かがあるって事やろうな。まあ、どっちにしても残念な外見やろ。ちょお幻滅するわ」
     生暖かい視線を都市伝説に送り、千条・サイ(戦花火と京の空・d02467)が溜息を漏らす。
     あまりにも残念な外見。しかも安っぽい。
     都市伝説もその気配に気づいたのか、漫画的な驚き方をした後、警戒した様子で唸り声を響かせた。
    「……フン、実に下らん都市伝説だ。見た目も内容も能力も此処までふざけた物は初めて見た。まぁ、被害者が出ている以上、さっさと片付けんとな」
     嫌悪感をあらわにしながら、鳳・仙花(不条理の破壊者・d02352)が都市伝説と対峙する。
     その間も都市伝説は全身の毛(カビ?)を逆立て、仙花達を威嚇しているようだった。
    「モツをおいしそうに食べる寿司……。なんだかシュールですけど、被害が出ている以上は灼滅ですね!」
     警戒した様子で間合いを取りながら、花藤・焔(魔斬刃姫・d01510)がスレイヤーカードを解除する。
     次の瞬間、それを偶然目撃してしまった一般人が、『ぎゃあああああああ!』と悲鳴をあげて腰を抜かすのだった。

    ●最悪のタイミング
    「ここは危険よ。安全な場所に避難……と言う訳にはいかないようね」
     一般人を守るようにして陣取り、密が唇をグッと噛み締める。
     ……間違いない。
     都市伝説は一般人のモツを狙っている。
     その証拠に都市伝説の口から、涎の如く醤油がポタポタと垂れていた。
    「モツならここに8人分ある!」
     覚悟を決めた様子で、イリヤが都市伝説の注意を惹く。
     それに反応した都市伝説が、イリヤめがけてまっしぐら。
    (「……まるで鉄砲玉だな」)
     都市伝説をギリギリまで引きつけ、仙花が指の間に挟んだクナイ状の手裏剣を放つ。
     都市伝説はそれに驚いて飛び退き、怒りに身を任せて醤油を吐いた。
    「ちゅうか、なんでトロなんや。トロは薄いやん! 食感もなにもないやん。しかも、そのネタの状態からして……、回転寿司で流れているなんちゃってトロやん!」
     都市伝説をビシィと指差し、サイが淡々と説教をし始める。
     その間にイリヤが殺界形成を使い、一般人に肩を貸して、安全な場所まで避難した。
    「さて……、都市伝説退治と行きましょうか。相手は生もの。食中毒に気をつけねば……」
     自分自身に言い聞かせ、アンカーがゴム手袋と、マスクを着用する。
     ……間違いない。
     都市伝説の全身から漂うのは、ノロ的な波動。
     例え、都市伝説を倒したとしても、待っているのは、この世の地獄。
     命さえ奪ってしまうそれを、決して軽くは扱えない。
    「……トロのタタキにしてやるぜ!」
     少しずつ間合いを取りながら、雪之丞が都市伝説にティアーズリッパーを放つ。
     その一撃を食らっても都市伝説の戦意は衰えず、細長い舌を伸ばして口元から醤油を垂らした。
    「おいおい、お前はクリオネかよ! シャリの触手プレイとか誰得過ぎんぜ! それに、自律行動する寿司って、なんかキショイな!」
     全身に鳥肌を立たせながら、祐一が都市伝説にツッコミを入れる。
     よく見ればシャリの部分も、水膨れのような塊がギッシリと敷き詰められているような状態なので、かなり……キモイ。
    「余計な事は考えない方がいいですよ。自分自身の為にも……」
     仲間達に対して警告し、焔が都市伝説に黒死斬を叩き込む。
     その一撃を食らって都市伝説のシャリがプチッと潰れ、半透明の液体が辺りに撒き散らされた。

    ●残念なソンザイ
    「ま、まさか、この液体は毒……なのか?」
     半透明の液体を浴び、祐一がダラリと汗を流す。
     何というか……、生臭い。
     明らかにコレは、腐った魚のそれ。
     おそらく、毒はない……と思いたい。
     霊犬の迦楼羅も『気にするな!』と言わんばかりの勢いで、都市伝説に攻撃を仕掛けていった。
     都市伝説もそれに合わせて、変則的な動きで迦楼羅達を翻弄する。
    「動きがまるで読めない……」
     ナイフを逆手に持って構えつつ、イリヤが徐々に間合いを詰めていく。
     まるで川の流れの如く滑らかでいて、当然の如く放たれたナイフが、都市伝説のシャリを切り裂いた。
     それと同時に半透明の液体が辺りに撒き散らされ、都市伝説が身の危険を感じて後ろに下がっていく。
     都市伝説の全身を包むものは、恐怖一色。
     自分が今まで遭遇した事のない脅威を前にして、成す術もなく追い詰められ、絶望すら感じているのだろう。
    「都市伝説風情が……」
     躊躇う事無く都市伝説に突っ込み、仙花が紅蓮撃を炸裂させる。
     それと同時に辺りに漂う臭いが、刺激臭へと変化した。
    「頑張れ、僕……」
     あまりの生臭さにドン引きしつつ、イリヤが都市伝説にジグザグラッシュを叩き込む。
     そのたび、鼻につく臭いが辺りを支配し、戦意がゴッソリと殺がれていった。
    「ううっ……、もう臭いなんて気にしている場合やない!」
     色々な意味で身の危険を感じ、サイが都市伝説に閃光百裂拳を放つ。
     その拍子に腕がモロに都市伝説の身体を貫き、利き腕がネットリとした生暖かいモノに包まれた。
    「……動いちゃダメよ?」
     すぐさま結界糸を仕掛け、密が都市伝説の動きを封じ込める。
     そのため、サイも巻き添えを食らうような形で、身動きを取る事が出来なくなった。
    「斬り潰す!!」
     次の瞬間、焔が戦艦斬りを炸裂させ、都市伝説にトドメをさす。
     その時にサイが浮かべた表情は、焔の脳裏にほんのりと焼きついた。
     あまりの臭さに身悶えるサイと、『地獄の底まで引きずり込んでやる!』と言わんばかりに舌を絡める都市伝説。
     ある意味、トラウマ。夢に出るレベル。
     だが、都市伝説の抵抗もそこまで。時間切れ!
     自らの存在を維持する事が出来ず、肉片すら残す事無く消え去った。
    「とりあえず、うがい手洗いを確実にね!」
     都市伝説が消滅した事を確認し、アンカーが手袋とマスクを処分する。
     おそらく、大丈夫だとは思うが、念には念を入れた方が、身のためだろう。
    「なぁ、雪之丞。寿司、食いたくね? 優しい祐一先輩が奢ってやるぜ? ただし、回る奴だけどな!」
     苦笑いを浮かべながら、祐一が雪之丞を食事に誘う。
    「祐一先輩、ゴチんなりまぁーす!!」
     その誘いに乗って、雪之丞が祐一の後をついていく。
     そして、残された者達は、様々な思いを心に秘めつつ、その場を後にするのであった。

    作者:ゆうきつかさ 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2012年12月30日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 3/キャラが大事にされていた 3
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