地鶏怪人シャモ・ハン・キン・ポー!

    作者:池田コント

     太った男が頭部に鳥のかぶりものをしている。
     この男茨城県は大子町のご当地怪人、シャモ・ハン・キン・ポー。こと、金宝軍鶏次くん。
     奥久慈しゃもを守護する怪人である。
     県内からも陸の孤島呼ばわりされることのある、大子町を振興するために、今飲食組合が目玉にしようとしているとかいないとかいわれる奥久慈しゃもを推しているのだが、奥久慈しゃもは他の地鶏にネームバリューでも劣っているのはいなめない。
     全国特殊鶏品評会で一位を獲得したのにもかかわらず、である。
     大子町は数年前とあるテレビ番組で『笑ってはいけないスパイ24時』の舞台になったが、そんなことで過疎化はとまらないのである。
     若い者はいなくなり、統廃合で学校は減り、町中は爺婆がいるばかり。
     この原因はもう、地鶏のネームバリューの弱さとかじゃないことは明らかだが、シャモ・ハンは薄々それに気付きつつも、愛するしゃもでなんとかできるんじゃないか、と思っているのだった。
     
     現在『一般人が闇堕ちしてダークネスになる』事件が発生しようとしている。
     通常ならば、闇堕ちしたダークネスは、すぐさまダークネスとしての意識を持ち人間の意識はかき消えるのだが、彼は、元の人間としての意識を残しており、ダークネスの力を持ちながらも、ダークネスになりきっていない状況なのだ。
     もし、彼が、灼滅者の素質を持つのであれば闇堕ちから救い出して欲しい。
     また、完全なダークネスになってしまうようであれば、その前に灼滅をお願いする。
     シャモ・ハンは現在、闇堕ちが進行してはいるものの、別段活動らしい活動はしていない。
     しゃもの写真を撮ったり、美味しく食べたりしているだけだ。
     けれど、十何年後かに大子町から牛肉豚肉を駆逐し、町民は地鶏しか食べられない町へと大改革を行うかも知れないという未来予測が出ている。
     しゃもは決して美味しくないわけじゃない。むしろ美味しい。だが、それしか食べられないのは、どうかと思う。
     大子町のみなさんの食の自由を守るためにも、彼の闇堕ちは断固阻止せねばなるまい。

     それにはまず、彼をおびき出さなくてはならない。
     夕方、常陸大子駅前にロータリーがあるのでその辺で、彼の気をひくようなことをすれば現れるのではないかと思われる。
     どんなことをすれば彼の気をひけるか、ということに関しては特に予測は出ていない。
     常識の範囲内で、しゃもに関して悪口や褒め言葉を言ったり、大子町の悪口を言ったり、しゃものコスプレしてみたり、そういうことをすればいいのではなかろうか。
     その点に関しては灼滅者たちにお任せする。
     また、うまく説得することで闇堕ちの進行を遅らせたり、戦闘能力を一時的に下げたりできている事例もあるので、積極的に会話して欲しい。
     説得に関しては過疎化についての悩みや、彼がわりと田舎者であることのコンプレックスを抱いていることに関してうまく突けば効果的になるかも知れない。

     シャモ・ハン・キン・ポー。
     本名、金宝軍鶏次。高校生。
     しゃもが大好きで郷土愛にあふれている。大食漢で、かなりのデブだが、身のこなしは意外とよい。
     というのも、カンフー映画の大ファンでもあり、ある俳優をリスペクトして動けるデブになるべく自主トレーニングをしている模様。
     将来は公務員になりたい。
     他のダークネスに比べれば戦闘能力は劣るが、それでも灼滅者数人分の力を有するので気をつけたし。

     ちなみに、彼は同じ県民であるにもかかわらず、土浦や水戸の人間には敵愾心を抱いている。
     大子町が過疎化していることの逆恨みであろう。
     君達の中にたとえば水戸のご当地ヒーローなどがいるとわかった場合、そいつにばかり攻撃をしてくることになるだろうから注意してくれ。
    「へ?」
     夏虎は自分の顔を指さした。私? 私のこと?
    「まさかばらしたりしないよねー、大子でしょ? 日本一大きいっていう気持ち悪いカラフル地蔵のある大子でしょ?」
     つまり、夏虎が水戸のご当地ヒーローであることを明かせば、攻撃を彼女に誘導できるということか。
     うまく使えば戦いやすくなるかもしれない。
    「え、ばらさないよね? ばらしたりなんかしないよね?」
     灼滅者達の善戦に期待する。

    「ばらしたりなんかしないよね? ね!?」


    参加者
    シルビア・ブギ(目指せ銀河ヒーロー・d00201)
    神楽・慧瑠(戦迅の藍晶石・d02616)
    赤鋼・まるみ(笑顔の突撃少女・d02755)
    千葉・命(剣姫・d04018)
    四月一日・メリー(背後のメリーさん・d04104)
    エデ・ルキエ(樹氷の魔女・d08814)
    雨宮・恋(獅子心刃・d10213)
    姫乃川・火水(ドラゴンテイル・d12118)

    ■リプレイ


     東京駅から約三時間。
     特急スーパーひたちと水郡線に乗り継いで、エデ・ルキエ(樹氷の魔女・d08814)達は常陸大子駅に到着した。
     駅員さんに切符を渡して改札を出る。はじっことはいえ曲がりなりにも関東地方でありながら自動改札やSuicaといった文明の波は押し寄せていない、よくいえば牧歌的な、悪く言えば時代遅れの土地だ。
     駅舎を出ると、すぐにロータリーに出る。左手にそば屋があり、右手にSLが置かれている。
    「やっとついたねぇ」
    「長かったのじゃ~!」
     シルビア・ブギ(目指せ銀河ヒーロー・d00201)は大きく伸びをした。長い移動時間、天気の話題と同じノリで最近のダークネスの話とか、流行りの纖滅道具の話とか、軍鶏の話とか、
    「軍鶏楽しみですね! 昔の料理マンガでも使われてましたし期待できます!」
     ヨーグルトに漬け込んでおくと肉が軟らかくなるらしいと、赤鋼・まるみ(笑顔の突撃少女・d02755)が目や口からビームを放ったり大阪城を破壊したりするマンガの話を振ったり、
    「え、それ料理マンガなの?」
     会話を弾ませてきたけれど、公共の場所で体を弾ませるわけにはいかない。こわばった筋肉をのばしてほぐす。
    「やはり剣客たるもの、食べ歩きは欠かせぬもの。火盗改長官のように軍鶏鍋をつつくのも粋であろう」
     千葉・命(剣姫・d04018)は自身のことを剣客と言ったが、いかにも命の立ち居振る舞いは剣客然とした凛々しさを持ち合わせている。
    「さて、奥久慈しゃもは私達を満足させていただけるのか?」
    「楽しみですねー!」
     と、はしゃぐまるみに対して、
    「来ておいて今更だけど、それだけの価値が本当にあるのかー?」
     と姫乃川・火水(ドラゴンテイル・d12118)が疑問を口にする。わざわざ遠方から軍鶏を食べにきたグループという設定らしい。
    「名古屋とか、宮崎のと違って、あんまり話題にならない、し実は微妙、だったりして……」
     雨宮・恋(獅子心刃・d10213)の言葉に、神楽・慧瑠(戦迅の藍晶石・d02616)も同意する。
    「わたくしも同意見ですわ。お噂が本当なら、せめてもう少し耳に届いてきても良いものと思いますし」
     慧瑠達が疑うのももっともである。例えばファミレスジョナサンに行って阿波尾鶏の字を見つけても奥久慈しゃもの字はないのだから。
    「というか、そもそもほんとーにあるのかな? 土浦や水戸には色々あるけどここ、なんにもない、し」
     悲しいけどここ田舎なのよね。
     駅前なのに人通りもまばら。駅の後ろは山と田んぼ。スギちゃんが番組企画で泊まりにくるくらい田舎。
    「し、自然豊かですよね!」
     まるみが苦しいフォロー。
     と、あくまで軍鶏次を誘き出すための、心苦しい田舎けなしトークを始めていると、着替えをすませてきた四月一日・メリー(背後のメリーさん・d04104)がやってきた。
     いや、それはメリーと言っていいのか。
     小学生くらいの身長をした、ニワトリ。
    「……」
     見ない振り、見ない振り……。
     羽の下から細い腕が伸びていて、手にした携帯電話から、合成音声が流れ出してきた。
    『しゃものコスプレと聞いてネットで衣装をポチポチしたメリーちゃんが通ります……正直なんでこれ選んじゃったって感じですが……買ってしまったのは仕方ないのです……せめて元を取らないと……あ、シャモさん発見です! マッハガッデム! しゃもなんかあるからこんな悲劇があるんだ! しゃもなんて滅べば良い! ……ってあの水戸ヒーローさんが言ってましたYO?』
     ……。
    「……え?」
     たまたま目のあった恋が小首を傾げた。
     他の人の注目は軍鶏次に集まっている。
     あれだ。
     なんか、こう自分のターンだと思ったのに違ったっていう、居心地の悪いやつだ。二回同じ音声を流すのは気がひけるやつだ。
    「ほほう……」
     いや、聞いている人がいた。久米・夏虎(納豆娘・dn0059)だ。夏虎が不自然な程にこやかな笑みを浮かべて、しゃもメリーさんの首をがっしりホールド。
    「ねぇ、今私の発言捏造したよね? ねぇ、したよね?」
    『HAHAHA、言いがかりはよしてくれよ。なんのことやらさっぱりだよ、ハニー』
    「ハニーじゃないよ! 誰がうさぎさんだよ!」
    「それ、バニーの、間違い?」
     ……。
    「ち、違うよ? わかってる、わかってるんだよ!? 冗談なんだよ!?」
     夏虎の苦しい弁明に勢いがありすぎて、恋は一瞬ビクっとなるが、そういうことにしておいてあげるのが恋の優しさだ。
     そんな風にどうでもいいことでじゃれついている間に、学ラン姿の軍鶏次が軍鶏を疑うことは神への背信だとばかりに、勢い込んでやってきていたのだった。
    「駅前に妙な連中がいるかと思えば! 軍鶏の美味さを知らないとは、人生の半分を損してるんだぞ!」
     どうやら、とさかに来ているらしいことは、見た目にも明らかだった。とさか生えてるし。
    「だって、コルシカには軍鶏なんていなかったもん!」
     フランス出身のエデには日本の軍鶏は縁がなかったのだろう。
     食べたことがないのならば、疑問も当然。
    「じゃあ、待ってろ!」
     軍鶏次は駅の近くの玉屋旅館まで行って、しゃも弁当を買ってきてくれた。
     普通に美味しそう、と表情に出すまるみの前で、シルビアが箸をのばす。
    「軍鶏が美味いとか、どうにも信じられぬのじゃ、本当なのかえ?」
     一口大の肉を、口に運んで、もぐもぐもぐとよーくかんで。
     ……美味い!
     てーれっててー♪
    「食べて美味しい、ねるねるねーるね♪ なのじゃ! 脂身が少なく、味が濃いのじゃ。歯ごたえはあるが、すごく美味しいのじゃー!」
     味の宝石箱やー、とでも言いそうな勢いのシルビアを、軍鶏次は満足そうに頷いている。身銭を切った甲斐もあるというものだ。
     慧瑠とシルビアの殺界形成によって、ただでさえ少なかった人通りが完全に絶えていた。
    「軍鶏次さん! 町の過疎化は軍鶏が悪かったからじゃないですよね?」
    「もちろんだ。なんてことを言うんだ!」
    「だったら、軍鶏の問題じゃないんです! 軍鶏の味は認められてるんです。品評会おめでとうございます」
    「ありがとう!」
     感謝の言葉も出たところで、エデはバイオレンスギターを取り出して、
    「といったところで、さぁ、一曲。タイトルは大子町で、さん、はい」
     なぜか始まる演奏タイム。
    「S・Y・A・M・O、しゃも♪ S・Y・A・M・O、しゃも♪」
    「しゃもはーうまいよー。鶏の王様ー♪ 濃厚♪ 肉厚♪ もりもり食べれる~♪」
    「しゃもっしゃもっ♪」
    「低脂肪なら女子でも安心? 四度のぉ滝見て軍鶏鍋食べよー♪」
    「S・Y・A・M・O、しゃも♪ S・Y・A・M・O、しゃも♪」
    「しゃもはーうまいよー。鶏の王様ー♪ 濃縮♪ 新鮮♪ 卵もおいしい~♪」
    「しゃもっしゃもっ♪」
    「生ゆば、こんにゃく、アユ、りんご。温泉入ってしゃも丼食べよー♪」
    「いえー! ダ、イ、ゴ! ダ、イ、ゴ! 久慈川清流、僕らの大子~♪ ふぅー♪」
     大子町にも、軍鶏にも、魅力は十分あふれている。
     仕事がないとか少子高齢化とか福島原発との距離とか過疎の原因はもっと別にあるのだ。
     それに向き合う努力こそ、軍鶏次のすべき努力だと思う。
    「過疎化が大変難しい問題なのは理解致します。しかし、誇りに思えばこそ困難に立ち向かうべきでございます。地道に勝る近道なし。わたくしはそう思いますわ」
     慧瑠のもっともな言葉に継いで、
    「若者を増やすには住みよい町作りからです! 地元雇用や税金対策とか!」
     まるみの言葉は先日聞いた選挙演説の受け売りで、本人どこまで理解しているのかわからないが、四字熟語を使うとそれっぽく聞こえてくるから不思議である。
    「軍鶏が町を救ってくれるんじゃない。軍鶏次さん自身の力で救っていかなきゃ」
     エデは希望と期待とを込めて言った。
     大子町のヒーローになってよ!
    「お、おお……僕が、大子町のヒーローに……」
     軍鶏次が心と腹の肉を震わせている。
     その様子から、火水は軍鶏次のご当地愛の深さを感じとっていた。愛がなければ、即興で歌ったりもできないだろうし。
    「あんた、地元が好きなんだな」
    「なれる、かな……? ヒーローに」
    「ああ。オレが保証する。あんたなら大子を守っていける……町のヒーローにだって、きっとなれる」
     火水と軍鶏次。目を合わせることで通じ合う友情。
     シルビアはそこで逆転の発想の提案をする。
    「今の時代、コンビニ弁当や冷凍食品が母の味になっておる。そこで、逆に老人達の味を売りにするといいのじゃ! インターネットでな! 無論、B1グランプリでもいいな?」
    「いや、それは……うーん?」
    「……のじゃ」
     軍鶏次が老人の味にピンときてない様子なので、ちょっとしょぼん。
    「いや、考える価値はあるかもね」
     シルビアに軍鶏次は笑いかける。一緒に大子町の問題を考えてくれる存在が、軍鶏次にはなによりありがたかった。段々と町を離れる近しい人達。先輩、友人、親戚。彼を暴走させたのはご当地愛と共に一抹の寂しさもあったのかも知れない。
     しかし、彼の中で一度芽吹いた邪悪なる闇は衰えを見せても、いまだくすぶり続けている。それを発散させる機会を作らねばなるまいと、頃合いを見計らって、命は朗々と声を上げる。
    「頭が高い、控えおろう!」
    「な、なに、急になに!?」
     夏虎の左隣に立って、威圧するように一歩進み出る。
    「この御方をどなたと心得る。恐れ多くも水戸のご当地ヒーロー、久米夏虎殿にあらせられるぞ!」
     どーん!
     右隣に立ったまるみが印籠代わりに生徒手帳を突きつける。
    「夏虎殿の御前である。一同、頭が高い。控えー控えおろー」
     恋も、おおーかっこいいですとパチパチ拍手。
    「やっぱりヒーローには、名乗りこじょーが必須、ですよね」
     こくこく頷く。
    「ふしゅるるぅ~! み、水戸人だとぉ!?」
    「な、なんか変な音してないかっ!?」
     怒りのあまり変な声を出す軍鶏次。顔は真っ赤で怒り心頭。
     バサバサバサッ!
     いつのまにか鶏の羽をデザインしたマントを羽織り、頭部はしゃも。地鶏怪人シャモ・ハン・キン・ポーここに参上!
    「へ、へーい。かかってきなよ……ってなんか、尋常じゃなく怒ってんだけど!?」
     軍鶏次の恨みの強さに、腰がひけてる夏虎を、火水は励ます。
    「久米! お前がやらねば誰がやる! ってやつだ。がんばれよっ!」
    「そんな他人事みたいにぃ!」
     しかし火水の裏表のない態度に何も言えない。
     夏虎だけに苦労させてはなるまいと、シルビアは元気よく軍鶏次に立ち向かい、解除キーワードを告げた。
    「夏虎をいけにえに捧げるのじゃ」
    「ちょっと待てぇえぃ!?」
    「キーワードだから仕方ないのじゃ」
    『なんてことです! 夏虎さんが敵の標的に! どうしてこうなったー』
    「完全に楽しんでるよね!?」
     メリーはお約束を大事にしているだけなのに、ひどい言いがかりである。
    「戦わなければならないんですね。あんなに盛り上がった軍鶏次さんと私なのに」
     と言いつつ、エデは割と楽しげにソニックビートをかき鳴らす。
    「命さん、まるさん、やっておしまいなさい!」
     夏虎のご老公ぶりに従うわけではないが、命は剣の柄に手をかける。
     信念と妄執は紙一重。
    (「私とて、この剣が無くては生きてはゆけぬ。なれど」)
     人が剣を振るうにあらず。
     剣が人を振るうにあらず。
     人と剣は一体になってこそ、その真価を発揮する。その妄執、我が剣にて断ち斬ってくれよう。
    「千葉命、推参仕る……軍鶏の名を冠する者よ、その闘志を見せてみよ!」
     シャモハンは行きがけに夏虎を殴り、命に迫る。その体が、間合いにふれた瞬間。
     斬!
     命の神速の斬撃が閃く。
     シャモハンはぞれをかろうじて避けて……。
     ブシュァッ!
     腹がななめに裂けて血が噴き出す。
     避けきれてはいなかった。
    (「オレにできるのは、とにかく攻める事だぜっ!」)
     火水の雲耀剣が一閃。
     とっさに両腕でかばうも、深々と斬り裂かれシャモハンはたまらず後方へ跳ぶ。それがヒップアタックになって夏虎潰れる。
    『GO! GO! ポチ公!』
     ソニックビートを放ちながら、メリーは霊犬ポチ公に指示を出す。高速で発射される六文銭を、シャモハンはすべてシュババッと両手の平で受け止めて、にやり。
     直後、手で受けた痛みに耐えかねて手をぶんぶん振った。やせ我慢。顔をゆがませながら、その場にドスンと座り、潰れる夏虎。
     その瞬間、恋の燃え盛る影が巨体を貫いた。
     衝撃に体勢を崩すも、シャモハンは器用に受け身をとって転がるように後方へ下がり、その間、恋は夏虎をかばうように前へ立つ。
    「嫉妬で人をこーげきしちゃ、め、です。同じ、県民なんだから、きょーりょくしてがんばったほうが絶対、いいです、みんな、仲良く、です」
     そうだ。同じ茨城県民同士。空には筑波白い雲と、県民の歌を知る同士。
    「水戸人……」
    「大子町民……」
     夏虎の差し出した友好の握手、をすり抜けて決まるボディブロウ。
    「……なにゆえですか」
    「同じ県民だからこそ」
    「だ、大子町民なんか、福島県民だぁ……」
     そして、燃え上がるカンフー、猿拳の連続攻撃。泣き顔の夏虎にシルビアはシールドリングを飛ばす。
    「1枚では足りぬか? ばかな、2枚も突破されたじゃと!? ええい、十枚でどうなのじゃ!」
     その間に、まるみの豪快な戦艦斬りが炸裂!
     衝撃に弾き飛ばされる巨体に、慧瑠のズタズタラッシュ!
     学ランが破けて上半身が露わに!
    「あい、やー」
     とっさに隠す胸元。胸元?
     慧瑠は視線をそらしながら、
    「趣味ではありませんが、防御を穿つのは戦術でございます」
     恋のレーヴァテイン。
    『全然攻撃がきません。夏虎さまさまです』
     余裕のメリーのソニックビートに合わせて、命が斬り上げた。
     すかさず火水が走り込み、
    「これでとどめだ! 奴奈川キィィック!」
     ずどぼおおぉおん!
     演出的な爆炎の中から、軍鶏次に肩を貸し、火水が悠然と歩み出てきた。
    「よろしくな、新ヒーロー!」
    「ああ!」


    「せっかくなので、奥久慈しゃもをいただいていきましょう」
    「うむ。折角参ったのだ。町の案内を頼めまいか。名所には事欠かぬであろう。ああ、軍鶏鍋も忘れずにな」
     待ってましたと軍鶏次。まるみ達に介抱される夏虎の恨みがましい視線は気にせずに。
    「今、お腹の空き具合はどれくらいだい? 近くだとおすすめは鍋か、永福で丼だな。あ、ラーメンもあるぞ。ああ、そうだ。そばも鴨南蛮とはまた違っていい味が出るんだ!」
     また、口直しに露店で買うアップルパイといった選択もある。たまーに王様のなんちゃらとかといった情報番組で紹介されるそうな。
     食事処。サポの村井・昌利と一緒に名産のりんごジュースを掲げて、
    「コルシカと大子町の発展を願って……乾杯!」
     さらりと自分の出身地をすべりこませるエデであった。

    作者:池田コント 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2013年1月12日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 1/感動した 2/素敵だった 2/キャラが大事にされていた 8
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