Gatling of the Ded

    作者:空白革命

     北海道某所。
     冬真っ盛り。東京なら余裕で電車が止まるレベルの積雪を割って、一人の男が這い出してきた。
     どこからかと言うならば、それは地面からとしか言いようがない。
     そして男は顔にフルフェイスの仮面を被っていた。金属製のそれは鍵がかけられ、現代人のそれとは大きくかけ離れている。
     しかし最も現代人離れしていたのは……彼の両腕の代わりについた巨大な重機関銃であった。
     それはもはや人間ではない。
     アンデッドという、化け物である。
     
    ●雪夜に響け、ガトリングモーター。
     大爆寺・ニトロ(高校生エクスブレイン・dn0028)はノートパソコンで『重機関銃の威力』なる映像をぼーっと見ていた。机の上にあぐらをかいてである。
    「まーそのなんだ。デカい弾を大量にババーッと撃てるようになって戦場の在り方が変わったとかいう言い方があるんだが、灼滅者業界じゃあ割と普通の武器なんだよなあ。言うなれば、使う奴が強いとヤバイっつー話でさ……」
     ニトロはあなたが教室に入ってくるのを見て腕組みをした。
    「今回はその『ヤバイ奴』が相手だ。気ぃ引き締めて行けよ。ただのガトリングだと言って油断してると蜂の巣だぜ」
     そう言って、ニトロはスケッチ画をスクリーンに表示させた。
     鉄仮面。
     巨体。
     両腕をそのまま改造したような重機関銃。
     それは見るも恐ろしい、巨人のごときアンデッドであった。
    「名称不明だ。数日前から廃墟の大型ガレージの中で待機状態になってる。外に出て暴れる様子はないんだが、どう考えても放っておける奴じゃねえよな。戦力的には……大体灼滅者が束になってぶつかって、漸く勝てるかってレベルだ。見ての通り腕を重機関銃にして射撃するだけじゃなく、パワーと耐久力もかなりある。一応腕を変形させて手の形にもできるらしいが、まあそこは深く考えなくていいだろ。とにかく……こいつが何かの行動を起こす前に倒さにゃならん」
     ニトロは画像を閉じると、資料をあなたに手渡して言った。
    「やることと言ったらバトルのみだ。しかしこいつが一番難しい。重ねて言うが、気ぃ引き締めて行こうぜ!」


    参加者
    スウ・トーイ(黒禁門・d00202)
    紫雲寺・りり(小夜風・d00722)
    西条院・水菜(退魔の姫巫女・d01189)
    高宮・夜宵(誘惑の女狐・d01545)
    七埼・誠(レジーウルフ・d04070)
    六六六式・美空(逸般人・d05343)
    祁答院・哀歌(仇道にして求答の・d10632)
    ジンジャー・ノックス(十戒・d11800)

    ■リプレイ

    ●政治家が言った。死体を絞首台に吊すことに罪過があるか。
     雪の降る土地は窓が厚いと決まっている。
     やんわりと曇ったガラスを振り返って、祁答院・哀歌(仇道にして求答の・d10632)は息を吐いた。
     薄曇りの向こうには件の大型ガレージが見え、左から右へと高速で流れていった。電車内独特のくぐもった振動音が伝わり、こつんと頭をガラスにぶつけた。
    「両腕を改造された巨大なアンデッド」
     ダークネスの力で死体が蘇った、というだけでは説明のつかない化け物だ。
     何のために。
     誰のために。
     いかに、造られたものだろうか。
    「どのみち、戦いは避けられない……か」
    「そうね、相手が何であれ」
     戦いの前だからか、綺麗にそろえた膝の上に手を置いて、紫雲寺・りり(小夜風・d00722)は目を瞑っていた。
     肩を震わせて小さく笑うジンジャー・ノックス(十戒・d11800)。
    「あらやだ、同情してるの? 死体に」
    「んっんー……」
     小さく咳払いをして足を組み替える高宮・夜宵(誘惑の女狐・d01545)。
     向かい側で七埼・誠(レジーウルフ・d04070)が椅子に浅く座り直した。徐々に下がる目線。
    「色々あるのかもしんねぇが、俺は初仕事だしな。小難しいのはナシで行こうぜ」
    「相手も相手で何も考えちゃいなさそうなヤツだしな。あーあ、ワクワクするわ」
     スウ・トーイ(黒禁門・d00202)が言葉とは対照的にうんざりとした顔をした。
    「だな、ドキドキだよな」
     更に目線を下げる誠。
     六六六式・美空(逸般人・d05343)がその首根っこをつかんで引っ張り上げた。
    「そう言えばあの敵、名前が無いんでしたっけ。では僭越ながら美空が、マシンガンジェイソンと命名するのであります」
    「ジェイソン要素どこよ。でも採用、ほれ飴ちゃんやる」
     スウが片手で放って来たキャンディを慌ててキャッチする美空。
     そうこうしている内に、電車は目的の駅へと到着。ゆるやかに停止した。
    「さて……と」
     それまで大人しく座っていた西条院・水菜(退魔の姫巫女・d01189)が、しゃなりとした足取りで列車の扉を開ける。
     一度閉じた目を開く。
     冷たい空気が眼球に振れた。
     異様なアンデッド。
     目的不明の待機状態。
     そしてこの……。
    「では、参りましょうか」
     水菜たちは駅のホームへと降り立った。

    ●宣教師が言った。首の無い異教徒ならば弔ってもよい。
     彼等は正常に駅を出て、沿いの道を歩き、社会から忘れられたかのように鎮座するガレージへとたどり着いた。
     警戒をしながらもスチール扉を開き、中へ踏み入った……その瞬間。眼前の廃車が砕け散った。
     比喩や誇張ではない。古い日本車がフレームもろとも上方から叩き潰され、猛獣のようなモーター音と共に爆散したのだ。
     大量の空薬莢に混じって飛ぶフレーム片を直感で回避するりり。
     尖ったフレーム片が顔の横を通り過ぎ、頬に紅い一本線が刻まれた。
     が、そんな傷に構っている場合ではない。
    「……来る!」
     首を傾けた勢いを更に強め、りりはその場から転がり退く。先刻まで立っていたコンクリート床が無数の銃弾で堀り返され、弾の跡が弧を描く。
    「うぉお、ジェイソン要素これか!」
     スウは咄嗟にシールド展開。大きく広がったシールドがりりたちを覆った。肉体への着弾は防いだものの衝撃に撥ね飛ばされるスウ。
    「スウさんっ」
    「気にしない。女性に優しくがモットーでね。にしてもこりゃ、荒い仕事になりそうだ」
     帽子を押さえて上を見上げるスウ。
     そこには、全身をツギハギだらけにした巨大なアンデッドが仁王立ちしていた。
     両腕は重機関銃。頭は鉄仮面で覆われ、うめき声ともモーター音ともとれぬうなりをあげている。
    「ほんと凄い迫力ね!」
     膝立ち態勢のままオーラキャノンを乱射するりり。オーラの塊が複雑な放物線を描いてアンデッドのボディに集中した。
     ほんのわずかに身を揺するだけのアンデッド。
     だが、その直後に大きく前方向へと身体をぐらつかせた。
     彼の後頭部に赤い逆十字が炸裂したからだ。
    「どこ見てんだデクノボー、こっちだ。精々楽しませろよ!」
     いつのまにか後方に回っていた誠が斬艦刀を担いでにやりと笑う。
     腕の重機関銃を乱射したまま後ろへ振り向くアンデッド。
     その足首に鎖が巻きついた。ただの鎖ではない。先端に巨大な棘鉄球のついた頑丈な鉄鎖である。
     鎖の持ち手を腕にぐるりと巻きつけて固定する美空。
     バランスをとって踏ん張ろうとするアンデッドの力をまんま利用して巨大な両刃斧を引き摺る。
    「行くであります、マシンガンジェイソン!」
    「やっぱその名前でいくのか?」
    「他にいいアイデアが!? それより、夜宵さん手伝ってください!」
    「いいけど、氷のほう? 矢のほう?」
    「氷のほうで!」
     すれ違いざまに斧による斬撃を繰り出す。斧自体でブレーキをかけながら着地する美空。大きくえぐれるコンクリート床。
     一瞬遅れてアンデッドの足元が凍りつき、同時に激しい炎が上がった。
     アンデッドがたたらを踏む。
     腕を振り回し、乱射しっぱなしの重機関銃がガレージの壁や天井を歪ませていく。
     やがて派手に転倒。はずみで誠たちに大量の銃弾が浴びせられた。
    「おっと、やべぇか!?」
    「援護はお任せを! ジンジャー様!」
    「オーケー、ぶちやれええっ!」
     水菜は周囲に飛び交う護符のひとつを掴んでヒーリングライトを発動。
     ジンジャーをきらきらと照らし、その直後にジンジャーは夜霧隠れを発動。周囲を薄い霧が覆った。
     若干身を低くして、目を光らせるジンジャー。
    「戦車に立ち向かう歩兵の気分ね。ドアをノックしてあげるわ、名無しの戦車」
    「名無しの戦車……」
     哀歌は夜霧にヴァンパイアミストを重ねると、斧を顔の前に垂直に構えた。
     目を細める。
    「もしかしたらあなたと私は、似た者同士なのかもしれないな……」
     慎重に狙いを定め、腰を曲げ、膝を屈める。
     さあ飛び掛ろう。
     そう思ってふくらはぎに力を入れたその瞬間だった。
     好き放題に殴られ、振り回され、無様に転倒したアンデッド。
     その腕が、砕けた砂煙の向こうから突き出てきたのだ。
     腕と言っても重機関銃。
     本来航空機に装備され三十ミリ弾を毎分約四千発吐き出すと言う化け物が、視線の先1mまで迫った。
     人の顔ほどある銃口束が哀歌の腹部に激突。悪夢のようなモーター音が腹を通じて伝わってくる。
    「……!?」
     まずいと思った時にはもう遅い。大量の弾頭が回転と共に吐き出され、哀歌は思い切り吹き飛ばされた。
     ガレージの壁に激突。そのままバラックの外壁を破って外へと放り出された。
    「なっ、おい!?」
     目を見開いて振り返るジンジャー。その顔面めがけ、もう一本の腕……否機関銃の射撃が横薙ぎに襲い掛かった。
     反応する一瞬の余裕はある。
     だからジンジャーは腕を全身をオーラで固めてガード態勢をとった。
     だが高速で飛来する弾頭の群は、まるで大気そのものに弾かれたかのように、突然すぎる嵐を受けたかのように、どうしようもなく、慈悲も無く、彼女たちを吹き飛ばしたのだった。
    「マジかよ、ゾンビ野郎……」
     その辺に放置されていた廃車もろとも吹き飛び瓦礫に半身を埋めたジンジャーは、左右非対称に笑った。
     視界に広がるはアンデッド。
     雲を押しのけ立ち上がる巨人の如く。
     赤い眼光を仮面の内より漏らしつつ、うなりをあげた。
     目に見える外傷は……無い。

    ●誰かが言った。死んだら楽だ。
     大型ガレージの天井が吹き飛ぶ。
     青い空が広がり、陽光が容赦なく差し込む。
     床を跳ねまわる大量の空薬莢が光を照り返し、痛みに堪える美空たちの顔を映した。
     ガードしていた斧ごと吹き飛ばされ、ごろごろと地面を転がる美空。
    「いっ……つう……」
    「まだ耐えられますか、美空様!」
     護符を空中に張り巡らせ、庇うように立ち塞がる水菜。後ろ手に集気法を放つが、完全なダメージカバーとはいかない。絶え間なく回復を図っているが、相手が叩き出すダメージの方がいくらか上なのだ。回復しきれないダメージも随分と嵩んできた。
     このままでは、粘り負けるかもしれない。
    「少しでも時間があれば……」
    「へえ、何分くらい?」
     水菜の前に、軽い調子で出てくるスウ。
     帽子に片手を乗せ、ポケットに手を入れている。
     横目に振り向く彼と、水菜の目が数秒だけ合った。
    「……五分です」
    「いいぜ。途中で逃げたらゴメンな?」
     ポケットから取り出したキャンディをいくつか乱暴に放り投げ、スウはグローブに嵌ったコインを撫でた。
    「さ、本領発揮といきますか」
     重機関銃をダブルで構えたまま回頭するアンデッド。
     スウは拳周辺にシールドを発生させると、思い切り相手を殴りつけた。
    「余所見するなよ、妬けるぜ?」
     彼のパンチ程度でアンデッドは揺らがない。しかし注意は逸れた。
     いや、集めたと言うべきか。
    「折角だ、楽しもうぜぇ!」
     ガードを固める暇などない。自分に意識を集中させなければならないのだ。
     スウは両手に展開したシールドで絶え間なくアンデッドを殴りまくった。
     そんな彼を叩き伏せようと腕を振り回してくるアンデッド。巨体のくせに機敏に動き、確実に当ててくる。
     横薙ぎにした一発がスウの脇腹に叩き込まれ、骨と内臓をシェイクさせる。
     更に胸へと突きつけられた銃口から弾頭の嵐が吐き出された。
     もはや防御態勢などとれる状態ではない。好き放題に身体を揺すられ、大量の血肉を吹き散らかし、仰向けにぶっ倒れた。
     目元は帽子に隠れて見えない。
     しかし口元は確かに笑っていた。
    「参ったな……悪いね、脆い壁だったわ」
    「ああ、ベルリン並のな」
     倒れてきた彼を支える誠。もう彼の意識はない。
     それと引き換えに、誠たちの身体には力がみなぎっていた。
    「五分だ。男性陣の意地にかけて、これ以上傷つけさせねえ……いくぜ!」
     大きく斬艦刀を振りかざす誠。燃え上がる炎。
    「はい、仕留めるであります。必ず!」
     アシンメトリーに斧を振り上げる美空。同じように燃え上がる炎。
     同時に飛び出した二人の斬撃が、アンデッドの両足を深く切り裂いた。
     膝をつきつつも反撃に出ようとするが、わずかに頭がかくんと傾く。首を降ってうなるアンデッド
    「出てきましたね。たとえバッドステータスを自動解除できてもそれは三割程度。それ以上の速度で重ねていけば効果が表れるのであります。炎や氷のダメージが無駄打ちになってしまうのは惜しいですが、その分解除のために隙ができる」
     下りた前髪の下で美空は目を開けた。
    「それが最後の隙であります、マシンガンジェイソン」
     叫びをあげ、腕を地面に叩きつけるアンデッド。
     飛び散ったコンクリートと乱射された銃弾が来るが、夜宵とジンジャーはそれを清めの風と夜霧隠れでカバーした。
    「ハッ、余裕ッ! 気合で負けたらお仕舞よ。そうでしょう!?」
    「言いたいこと全部言ってくれてありがとっ!」
     ジンジャーの肩を踏み台に、りりがアンデッドの腕へと飛び乗る。
     腕といっても乗用車ほどもあるドラム状の物体である。そこから先が肘になっているのだ。
     剣を水平に構えて駆けだすりり。それを薙ぎ払わんと横合いから重機関銃を向けるアンデッド。しかし銃弾が吐き出されるより早く、かなたよりそれはやってきた。
    「足りない!」
     大きく跳躍し、重機関銃の銃身を蹴飛ばす哀歌。着地直後、ムキになって腕を叩きつけられるが、それを片手で受け止めた。
    「まだ足りない。痛みを、苦しみを、もっと寄越せ! おまえは……戦うために生まれて来たんだろう!」
    『……!』
     小さくうなるアンデッド。
     その隙に、りりは肘部分より跳躍。
    「今です!」
     水菜が凝縮したオーラを矢の形に変えて弓へ番えた。片目をつぶる。
    「死してなお迷いし者よ、黄泉の国へとお還りください!」
     ギリギリまで絞って射出。フレシェット弾の如き頑丈なオーラ体がアンデッドの右目へ命中。更に貫通。後頭部から矢を突出し、身体を大きくのけぞらせる。
     天を、大空を仰ぐアンデッド。そこには剣をまっすぐに構え、急降下してくるりりの姿があった。
    「ただではやられないのよ、私たちは!」
     螺旋槍炸裂。それはアンデッドの左目を貫通し、巨体の背を再び地面へとつけさせたのだった。

     地響きと砂埃。
     その後に残ったのは、瓦礫の山と静寂だけだった。
     膝をつき、手を合わせる水菜。
    「せめて最後に、祈りを捧げさせてくださいませ」
     みな、目を瞑る。
     なぜこんな事件が起きたのか。
     なぜ彼は戦わなければならなかったのか。
     すべては分からぬままだが。
     今は、祈りを。

    作者:空白革命 重傷:スウ・トーイ(ゲートキーパー・d00202) 
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2013年1月12日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
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