●恵まれぬ者の列 ~weaken parade~
それは例えるならば、つまみ食いのようなものだった。
もしくは、戯れのような。
クリームタルトを少しだけ舐めとるような、想像以上に甘く、それでいてどこか焦れったい……。
それは例えるならば、つまみ食いのようなものだった。
浮気や借金を繰り返し、妻に愛想を尽かされた男がいる。
男には子供が一人だけいて、これからどうしたら良いのかと途方に暮れている所に接触するのだ。
明日の見えなくなった人間はすぐ刹那的になる。
精神的にも肉体的にも、今現在が満たされればそれでよしと思えるようになる。
だから、彼が人間として完全に堕落するまでに半日とかからない。
彼が、自分の子供をひとり残してどこかへ消えてしまっても良いと、そう思えてしまうまで……。
「こうしてまた、もうひとり」
ガウンを着た女が、窓の縁に腰掛けていた。
眼下には町の夜景が広がっている。小綺麗に整った、それでいて少し狭めのその部屋は、海辺に建った高層ホテルの一室だった。
室内の光景が窓に反射して、ベッドの上で寝息を立てる半裸の男を映し出す。
彼のことは一週間前から調べていた。仕事に失敗して職を失い、急速に荒れたせいで妻が実家へ帰った……そのタイミングだ。恐らく妻は数日間だけ頭を冷やさせるつもりだったのだろう。その数日のうちに彼が何者かにたぶらかされ、己の全てを捨てて奴隷のようになるなどと誰が思うだろうか。
そして残された子供は、いまどんな気持ちでいるだろうか。
「……嗚呼」
ため息に窓が曇り、反射した光景と重なる。
「嗚呼、なんと甘美なこと……」
女はそう言って、頭からはえた耳を撫でた。
ロップイヤーのようなウサギの耳だ。
彼女の名を、一部ではこう呼ぶ。
ダークネス……『淫魔』。
●脱落者たちのハーレム
「これで二十一件。偶然なんかじゃなかったでしょ?」
天咲・初季(ブルームスターマイン・d03543)は新聞の切り抜きやメモの切れ端を束にしてエクスブレインの少年へと手渡した。
今からワンシーズン程前、銀杏の木が色づき始める頃のこと。ひとりの少女が怪獣になろうとしていた。
両親に取り残された少女は生き残るために自らを殺し、闇落ちすることで現実からも逃れようとしていた。
彼女は初季をはじめとする灼滅者たちに救出され、今はひとりの灼滅者として活動を始めていると聞く。
事件はこれで終了した……わけでは、ないのだ。
「おかしいと思ったの。どんな事情があったって、両親がいっぺんに、それも別々に居なくなることなんてある? 子供を残してお母さんが居なくなったなら、なんとかしなきゃって思うでしょ。間違っても『じゃあ自分も置いて行っちゃおうか!』なんて思わないよ、ゼッタイ」
メモの束を机に叩き付けながら、初季は苛立った様子で言った。
「ダークネスが絡んでるんじゃないかって。同じような事件がいくつもあるんじゃ無いかって……それで、ね?」
「はい。初季さんの予測は的中したと言うことになりますね」
眼鏡をかけた慇懃そうなエクスブレインが傾げた調子で頷いた。
「淫魔『スイートスニッチ』。人親を好んで狙い、子供を残して孤独に至らしめることを悦びとしているダークネスです。結果闇落ちした事件は、知る限りあの子供だけのようですが、同じような被害にあった子供は数知れないでしょうね」
『スイートスニッチ』の隠れ家や山の中にある。
人々から忘れられた廃墟寸前の屋敷だが、そこでハーレムを作って次の獲物を選んでいると言う。
「飽きたり用済みになったりした人間は処分して庭に埋めるそうですが、現在も10人の強化一般人を残して休息期間に入っています。狙うなら今でしょう」
屋敷へ襲撃をかけ、淫魔もろとも男達を灼滅するのが、今回の任務だ。
「もっとも、この『強化一般人』たちも人間を踏み外した者たちです。助けることはできないでしょう」
つまり手加減をする必要は無い……と言うことだ。
そこまで説明した上で、エクスブレインは淫魔の『バベルの鎖』をくぐり抜けて襲撃するルートを提示してくれた。
庭の縁側から堂々と突入するコースだ。相手の危険予測をかいくぐっている割には奇襲からはほど遠いルートだが……それしか無いならば仕方ない。
「彼女を放っておけばまた新たな孤独と堕落を生むことになります。皆さん、後は頼みましたよ」
参加者 | |
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始劔・鏡花(割れた鏡・d00001) |
香祭・悠花(ファルセット・d01386) |
鋼・世界(勇壮美麗フルメタルヴィーナス・d02590) |
室本・香乃果(ネモフィラの憧憬・d03135) |
天咲・初季(ブルームスターマイン・d03543) |
四月一日・メリー(背後のメリーさん・d04104) |
綿津海・珊瑚(両声類・d11579) |
アリシア・トウドウ(プラソンソレイェ・d12425) |
●不幸が人を強くするなら、幸せな世界は人を軟弱にするのか?
古い型式のバスなのだろう、硬い椅子からごつごつとした振動が伝わってきて、ろくに肘もつけやしない。
窓に顔を寄せていようものなら、一分に一度は頭をぶつけてしまうだろう。
始劔・鏡花(割れた鏡・d00001)は小さく息を吐いて、窓の内側を曇らせた。
「ため息ですか? いけませんよー、幸せ逃げちゃいますよー」
隣に座った香祭・悠花(ファルセット・d01386)がにこやかに言う。
鏡花は一度だけ彼女の顔を見たが、すぐに車窓の外へと意識をやった。
肩を竦め、身体ごと後ろの席へ振り向く悠花。
「んー、どうして淫魔ってこうタチが悪いんでしょうねぇ。ま、サクサクいっときましょうさくさくー」
「え? ……ええ」
後ろの席できちんと座っていた鋼・世界(勇壮美麗フルメタルヴィーナス・d02590)が眉をぴくりと上げた。
「親から孤立させ、子供の苦しむさまに愉悦する。そんなことが我が家で起こったなら……いえ、起こりそうにはありませんが……」
「…………」
彼女の横には四月一日・メリー(背後のメリーさん・d04104)。
携帯電話を驚くべき速度で操作しているが、仏頂面のまま目線を上げもしなかった。
そのさらに後ろの席で、綿津海・珊瑚(両声類・d11579)が背もたれにドスンと背中を押し付ける。元々揺れの激しいバスのこと、傍目にはあまり変わらないが、珊瑚の身体がガタンと揺れた。前の座席を蹴りつけなかったのは、彼女なりの気遣いなのかもしれない。性別のわかりにくい中性的な声で言う。
「わたしは、この淫魔を許せません。おかあさんをなくす気持ちがどれほど……」
彼女の隣ではアリシア・トウドウ(プラソンソレイェ・d12425)は自らの手を強く強く握りしめていた。
「辛い、ですよね」
伏せられたアリシアの横顔をちらりと見る。
言葉のイントネーションにはシンパシーが含まれていたが、あえて穿り返すことではあるまい。
沈黙に落ちるバス。
二人四列中の最前列で、室本・香乃果(ネモフィラの憧憬・d03135)は小さな声で呟いた。
「捨てられた子供がどんな悲しい想いをするか、どんな辛いことになるか……」
「そうなったとしても、『ダークネスのせいなんだ』なんて言えない。子供たちは親を恨んで生きていくしかないじゃない。そんなのは……」
俯く天咲・初季(ブルームスターマイン・d03543)。
少しばかり振り返って、鏡花の顔を見た。
鏡花は窓の外を眺めたまま、もう一度息を吐いた。
●人は成功を恐怖する。不幸を理由にして、プラマイゼロにしようとする。
山奥にたつ豪邸は、人々の意識から切り離された隠れ家だ。
それは隠者たちのエデンにして、脱落者たちのハーレム。
服を着崩した淫魔スイートスニッチは、脚を組んで革張りのソファに腰掛けていた。
周囲には二十代から三十代程度の男女が群がっている。
彼等の濁った目や仄暗い雰囲気が、退廃した生活の様を如実に表していた。
これは、そんな日常のなかのひとコマに過ぎない。
「……ねえ」
ぼうっと庭を眺めていたスイートスニッチは近くの男に窓の外を指示してやった。
「アレが見える?」
「なんです……子供?」
窓の外には、ゴシック様式のドレスを着た世界がいた。
しゃなりしゃなりと、こちらに向かって歩いてくる。
ポケットから二枚のコインを取り出すと、両手の親指で跳ね上げる。
回転したコインが頂上まで浮きあがり、重力に従って落ちる。
その時には、彼女の様相は一変していた。
「勇壮美麗、フルメタルヴィーナス……出撃」
彼女は白い全身鎧に包まれていた。落ちてきたメダルを両手のグローブに装着。シールドを展開しつつ一気に突入。窓ガラスを突き破って室内へと飛び込んだ。
慌てて立ち上がった男の顔面を殴り倒し、薙ぎ払うようにビームを乱射する。
「敵かっ!」
眼鏡をかけた人のよさそうな男が、その辺の鉄パイプを掴んで飛び上がる。
が、彼の鉄パイプが誰かの身体に命中するより早く、香乃果の掌が顔面へと触れていた。
「どうして」
魔力が渦を巻いて凝縮。矢の形を形成し、男の後頭部へと貫通する。
まるでカタパルトに弾かれたかのように吹き飛ぶ男。
「どうして、子供たちをおいてきて平気なの」
そう言ったきり、ぐっと口を引き結ぶ香乃果。花の髪飾りが、衝撃と反対の方向へ揺れた。一旦遅れて靡くグレーブロンドの髪。
続いて、アリシアたちが屋内へと飛び込んでくる。
その様子を見てスイートスニッチは片眉を上げて見せた。
「なあんだ。病んだ子供がここまでたどり着いたってわけじゃないんだ。ざーんねん」
「…………」
彼女を睨み、刀を抜くアリシア。
側面から襲い掛かって来る女性をデッドブラスターで迎撃。身体を跳ねさせて横たわる女性。しかしアリシアは、スイートスニッチから目を離さなかった。
「どういう、意味ですか」
「だからぁ」
唇を指でなぞるスイートスニッチ。
「子供がここへ入ってきて『パパとママを返して!』て言ったら素敵じゃない? 『なんでこんな酷いことするの、あんまりだよ!』なんて言ったりしたら、もう絶頂ってカンジ。考えただけでもゾクゾクしちゃうでしょ?」
「そんな悲劇……!」
瞬間、十数メートルほどあった彼女との距離が数センチまで縮まった。
息のかかる程のところまで、顔を近づけてくるスイートスニッチ。
「うんそれ、その顔! さっき言ったようなパターンはもう『飽きちゃった』の!」
腕を獣のように変化させ、殴りつけてくる。思わず吹き飛ばされるアリシア。
空中にあるアリシアに追撃をかけようと、周囲の男女が一斉に銃を抜いた。
照準が合わさる。が、彼等の銃はトリガーを引かれることなく次々に跳ね飛ばされていく。
それは、霊犬たちの六文銭射撃によるものだった。
窓の外に列を作り、飛んできたアリシアを援護するように一斉射撃を仕掛ける月、コセイ、ポチ公。
窓ガラスや調度品が砕け散り、強化されているであろう大人たちが人形のように薙ぎ倒されていく。
勘のいい一部の大人たちは身を屈めたり柱の裏に入ったりして射撃を防いだ……が。
「逃がしませんよー」
柱を回り込んできた影の触手が男へ巻き付き、遮蔽物の外へと引っ張り出す。
ヘッドホンに手を当て、サイキックソードを振り上げる悠花。
「ね・ら・い・う・ちっ!」
たった一度振り下ろしただけで、放出された光の刃が男を真っ二つに切断した。
その様子に戦慄する大人たち。だがもう遅い。
鏡花とメリーが彼等の傍まで飛び込み、それぞれの武器を抜いていた。
無表情のまま影業を噴き上げる鏡花。
無表情のままギターの弦を引っ掻くメリー。
背中を合わせると、アシンメトリーに腕を振った。
真空刃と影の刃が発生し、大人たちをパーツ分解していく。
落ちて転がった銃を拾い上げ、恰幅の良い女性が声をあげる。
「何をするの、酷いじゃない! 私たちが何をしたっていうのよ!」
狙いも適当に銃を乱射する。
そのさなかを、初季は一直線に駆け抜けた。
直撃コースの弾を斧で弾き飛ばし、眉間にしわを寄せる。
「何を?」
「仕方ないじゃない! 辛かったの、苦しかったのよ! 逃げたっていいじゃない、すごくすごく、すっごく辛かったの、疲れて、もうダメだったの! ちょっと逃げたくらいで、殺さなくってもいいじゃない!」
「そんな理屈で……!」
数メートルの位置まで接近する初季。その時には既に、珊瑚が女性の背後へ出現していた。大きな鎌を胴体にひっかける。
「御覚悟を」
初季が炎の纏った斧を叩き込むのと、珊瑚が鎌を引っ張るのは同時だった。
下半身と上半身、そして首が分裂し、床に転がる。
ふう、と息を吐く珊瑚。
鎌を肩に担いで、スイートスニッチの方へと振り返った。
美しい声で、彼女は言う。
「言うべきことは、もうみんなが言いました……死んでください」
●死んでない限り人生は終わりではないが、死なないからと言って人として終わらないとは限らない。
「みんな気が立ってますけどー、わたしは別にそんなことないんですよねー」
間延びした口調で剣をくるりと回して見せる悠花。
コセイ(霊犬)が足元までとてとてと寄ってくる。
「よくわからないっていうか、お仕事感覚っていうか? とりあえず、いきますよコセイ」
改めて剣を構えなおすと、悠花とコセイはスイートスニッチを挟むように回り込んだ。
両サイドから同時に飛び掛る。
「ツインスラーッシュ!」
斬魔刀とサイキック斬りがジャストノタイミングで繰り出された。
が、スイートスニッチはその場から動かず、両サイドから高速で迫る刃を素手で掴み取った。破魔の刃と、サイキックエナジーの刃をだ。
「あ、そ」
その場でぐるんと身体を回転させ、コセイと悠花をそれぞれ逆方向へと放り投げる。
コセイは棚に、悠花は柱に身体を叩きつけられる。
「許さないよ……!」
攻撃直後のタイミングを狙って突撃する香乃果。
槍を両手でしっかり掴むと、スイートスニッチ目がけて突き出す。
が、彼女は軽く跳躍し、槍の上に着地。獣化した腕で香乃果の頭を鷲掴みにすると、鋭く突き出た爪で頭部を抉った。
びくんと痙攣し、膝から崩れ落ちる香乃果。
「アハッ、灼滅者ってもろーい!」
ぴょんと飛び跳ね、宙返りして天井に足をつける。
「跳ねまわるのもそこまでだ、逃がさないよ!」
四方から鏡花、世界、初季、メリー、そして霊犬の月とポチ公までもが刀を咥えて飛び掛って行った。
天井を覗き全方位をくまなく囲んだ一斉攻撃である。
拳が斧がギターが刀がスイートスニッチの肉体へと繰り出される……が。
「遅いよ」
彼女は上下反転したまま天井を殴りつける。すると天井裏に仕込まれたと思しき祭壇が急速降下。初季たちを一斉に跳ね除けた。
身を転がすように、ぶらんと祭壇にぶら下がるスイートスニッチ。
わざとらしく眉を上げて口笛を吹いた。
「えー、もう終わり? あんなに格好よく乗り込んで来たのに? つまんなーい。フフッ」
すとんと着地する。
アリシアが身構えるが、今の戦闘を見る限りでは……同じ運命をたどるのは目に見えていた。
瞬きをする珊瑚。
「終わりりませんよ」
胸に手を当て、口を開ける。
すると、珊瑚は複雑に調整された声色を使ってエンジェリックボイスを歌いはじめた。
顔を血だらけにしながらも、綺麗に整った頭を振って立ち上がる香乃果。
アリシアは強く頷いて、胸のクロスを握りしめた。
「癒しの風よ……」
外から吹き込んだ清らかな風が鏡花や悠花たちを撫でる。
「いったー……十倍返しだね、コセイ」
「わう……」
剣を構えなおし、飛び掛る悠花。
迎撃しようと飛び退こうとしたスイートスニッチだが、その腰にアリシアがしがみ付いた。
「逃がしません、あなたはここで滅びるのだから」
「うわ……」
彼女の顔を見下して、ほんのりと笑スイートスニッチ。
だがその直後には、悠花とコセイのクロスアタックが炸裂。胸から盛大に血飛沫が上がる。
「エリーさん!」
「『メリーちゃんの必殺ソニックビートでいえーいですヨゥ!』」
グローブのコインを押し込む世界。
携帯電話のエンターボタンを押し込むメリー。
ギターの音波と世界のビームがまじりあい、スイートスニッチへ直撃。しがみ付いていたアリシアもろとも屋外へと吹き飛ばした。
着地しようと身をひるがえすが、そのタイミングを狙って香乃果が槍を投擲。スイートスニッチの脚を槍が貫通した。
「あっ、やっ!」
着地に失敗して無様に地面に転がる。
「い、痛……いたいっ、なにこれ、痛い!」
獣化した腕を振り上げ……ようとするも、初季の放った魔矢が手首を貫通、破裂。手首から先が回転しながらどこかへと飛んで行った。
「あ、ああ、手、わたしの手が……!」
自由のきかない腕と脚をばたつかせ、よたよたとその場から逃げようとする。
そんな彼女の眼前に回転した斧が突き刺さった。
「わっ、ひゃっ!」
慌てて身を転がし、仰向けになるスイートスニッチ。
表情の死んだ鏡花が、一歩一歩近づいていく。
スイートスニッチは千切れた手首を振り回して後じさりした。
「や、やだっ、死にたくない、ひとりっきりで死にたくないよ!」
「ああ、そう……」
鏡花の影が質量をもち、分厚いコンバットナイフへと変形する。
振り上がる腕。月光に照るナイフ。
「あ、そうだ! あなたにパパとママをプレゼントしてあげる! ね、いいでしょ!? その辺の家族から持ってきて、あなた専用にしてあげる! 何人でもいいよ、十人でも二十人でも用意してあげるから、ね、ね、だから殺さな」
「死ね」
月夜に、スイートスニッチの首が舞った。
●全人類が幸せになるなんて、ありえない。
「あ、あはっ……あははっ、やった、やったよ……やった!」
べっとりと赤黒く染まった手を顔に当て、鏡花はカタカタと笑っていた。
「きょーちゃん!」
背中からしがみ付いて、強く抱きしめる初季。
「そうだよ、勝ったよ、だから……」
笑いながらも膝から崩れ落ちる鏡花を、初季は必死に抱きかかえた。
その様子を黙って見つめる世界とメリー。
悠花はその場に座り込んで、月たちを両手にかかえて撫でていた。
彼女の左右を挟むように立つ、珊瑚とアリシア。
二人は胸に手を当て、瞑目した。
「亡くなった方は、沢山いました……」
「せめて、安らかに眠ってください」
月の光が、やんわりと庭を照らしている。
香乃果は空を見上げて、口をぎゅっと引き結んだ。
「悲劇の連鎖だけは、とめられたよね?」
答えてくれる誰かは、いない。
作者:空白革命 |
重傷:なし 死亡:なし 闇堕ち:なし |
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種類:
公開:2013年1月16日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 7/感動した 0/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 3
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