水走・ハンナ(東大阪エヴォルヴド・d09975)は、こんな噂を耳にした。
『病みつきになるほど美味い肉を提供する焼肉屋がある』と……。
焼肉界の三種である鶏、豚、牛を中心に、羊、ダチョウ、ワニ、ヘビ、犬等々。
どの肉も、美味い。サイコーッ!
そこは魂の安息所。肉食べ放題。天国そのもの。腹いっぱい。
だが、一度食べたら、店から出る事は、ほぼ不可能。
肉の味に魅了され、食って食って食いまくる!
そして、最後は自分が焼かれて、ぱっくんぺろり。
何だかよく分からなかったため、エクスブレインにも確認を取ってみたが情報は正しく、都市伝説が絡んでいる事は間違いない。
都市伝説は焼肉屋に迷い込んだ者達を催眠状態にさせ、幸せな気持ちで肉を食べさせた上で、頭から丸かじり。
しかも、都市伝説の牙は刃物の如く鋭く、何でも噛み砕いてしまう。
都市伝説を倒す方法はただひとつ。
わざと焼肉店に迷い込み、肉を食って食って食いまくり、都市伝説が現れたところでズンバラリン。
ただし、店内には一般人がいる可能性もあるので要注意。
参加者 | |
---|---|
護宮・マッキ(輝速・d00180) |
神宮寺・琴音(金の閃姫・d02084) |
八嶋・源一郎(春風駘蕩・d03269) |
火澄・蓮(中学生ファイアブラッド・d03998) |
成宮・杏里(ペトルーシュカ・d08273) |
水走・ハンナ(東大阪エヴォルヴド・d09975) |
八重垣・倭(狂える熱風・d11721) |
遊亀・夜弥亜(沼底の鉄処女・d12450) |
●焼き肉
「まさか本当にこれが来るとはなぁ。いい店はその反動で噂が立ちやすい……か」
都市伝説が確認された焼き肉屋の前に立ち、水走・ハンナ(東大阪エヴォルヴド・d09975)が口を開く。
この店は安くて美味い肉を取り揃えており、その種類も豊富であった。
しかも、どの肉も美味しく外れがなかったため、かなり評判が良かったようだ。
だが、店主がサービス心旺盛な性格で、利益を優先しなかったせいで、赤字が続いてしまい廃業してしまったようである。
「人を魅了する焼肉……、きっと最高の味なんだろうなぁ」
店内から流れる焼き肉の匂いに魅了され、成宮・杏里(ペトルーシュカ・d08273)が幸せな気持ちに包まれた。
既に廃業しているとはいえ、都市伝説が生まれるほどの噂が広まっていたのだから、美味い事は間違いない。
その上、店主が利益を度外視して提供していたほどの肉。
……これでマズイ訳がない!
「でも、マジで美味しいのかな? 特に犬とか不味そうだけど……」
納得のいかない様子で、護宮・マッキ(輝速・d00180)が首を傾げる。
ちなみに犬の肉は食用に飼育された子犬を使っており、臭みなども少なく、それでいて食べ応えがあったらしい。
ただし、あくまで噂の域を出ないため、ほとんど注文されていない可能性が高かった。
その上、愛犬家達からかなり不評で、一時期には抗議の電話が殺到していたようである。
「まあ、どれも美味いと評判だったようじゃが、やはり3種が一番じゃろ」
事前に入手した情報を踏まえた上で、八嶋・源一郎(春風駘蕩・d03269)が答えを返す。
それだけ、良い肉を使っていたため、評判が良かった事は間違いないが、それでも犬肉だけは食べたいとは思わない。
「都市伝説との戦いも気になるが…やはり件の焼肉の味が如何程かというのは、なんとしても確かめんとな」
険しい表情を浮かべながら、八重垣・倭(狂える熱風・d11721)が自分自身に言い聞かせた。
その時点で相手の術中に嵌っているようにも思えたが、たぶん……気のせいである。
「ううっ……、私のような下等な存在が、他者の肉を喰らって良いのでしょうか」
どんよりとした雰囲気を漂わせ、遊亀・夜弥亜(沼底の鉄処女・d12450)が溜息をもらす。
「まあ、今回は依頼で食べる訳だし、遠慮をする必要はないと思うわよ。ただ、焼き肉をすると服に匂いがつくのよね。しかも匂いが取れないし、次の日まで残るから、それだけは気を付けた方がいいかも」
苦笑いを浮かべながら、火澄・蓮(中学生ファイアブラッド・d03998)が呟いた。
どちらにしても、食べなければ始まらない。
それがどんな肉であろうとも……。
「それじゃ、皆さん。……覚悟はいいですか」
仲間達に確認を取った後、神宮寺・琴音(金の閃姫・d02084)が店内に入っていく。
その途端、腰砕けになるほど濃厚な焼き肉の匂いに包まれ、ほんの一瞬だけ依頼の事を忘れてしまいそうになった。
●焼き肉ッ!
「お肉は好きだけど、あまり量は食べられないのよね。でもせっかくだし好物のタン塩とハラミは食べたいわ。あと、珍しいところでカンガルーとクロコダイルね。ジャーキーは食べた事があるけど、焼肉にするとどうなるのかしら」
テーブルに案内された蓮は、皿に並べられた肉を箸でつまみ、網の上へと運んでいく。
その途端、焼き肉の香ばしい匂いが鼻孔を駆け抜け、胃袋の中で待機していた腹の虫を騒がしくさせた。
備長炭の匂いに包まれた肉の匂いはとても心地よく、タレで食べるか、岩塩で食べるか、自然と頭の中で考えてしまう。
そうしている間にも、仲間達が焼けた肉を本能的に、口の中へと運んでいく。
ここで躊躇えば、それだけ自分で食べる肉の量が減ってしまう。
そんな気持ちがあるせいか、誰一人として躊躇いがない。
「せせりに、はらみ……、うまうまなのです」
幸せそうな表情を浮かべ、琴音が焼き肉の味を堪能する。
口の中に広がる焼き肉の旨みが、次第に理性を奪っていった。
まさに肉を食らうケモノ。そうなるだけの味と量。
「いつもは我慢しがちなお肉だけど、今日はいっぱい食べちゃう!」
とうとう理性のリミッターが外れ、杏里が大好きなハラミやタンを口の中に運んでいく。
まるで頬袋のようになっているが、それでも幸せ、ほんわか気分。
「とにかく、たらふく焼いて食うわよ! ……そう、これよ! 私の体はまるで製鉄所! 胃袋が溶鉱炉のようだわ! 正に今の私は人間火力発電所よ! もう何も怖くない!」
念のため、殺界形成を使った後、ハンナが一心不乱に肉を食べ始める。
だが、お客達も肉を食らう獣と化しているため、その程度は退かない。
それどころか、最後の晩餐の如く、勢いで肉を食べて頬張り、ご飯をおかわり!
「確かに、病みつきになるほど美味いのじゃ」
納得した様子で、源一郎が焼き肉を食べていく。
牛、豚、鶏はもちろんの事、羊やダチョウの肉も美味かった。
「ううっ……、私のようなものが……他者の肉など……。でも……、美味しい……美味しすぎます……」
源一郎から借りたスーツの上着を羽織り、夜弥亜が複雑な気持ちになりつつラブフェロモンを使う。
その途端、まわりにいたお客達が焼き肉の盛られた皿を持ち、入り口の近くまで歩いて行った。
それに気づいた都市伝説が険しい表情を浮かべて、厨房からヒョイッと顔を出す。
一見すると、気のいいおじさんに見えるが、おそらく都市伝説なのだろう。
見た目で騙されると、痛い目に合う典型的な都市伝説のようにも思えた。
「それは俺が自分用に丹念に焼き育てた肉(ヤツ)だ……。貴様に喰わせる義理は無い……っ!」
次の瞬間、倭がマッキに肉を取られ、殺気に満ちた様子でジロリと睨む。
その途端、マッキが『うひゃー!』と声をあげ、ビックリした様子で後ろに飛びのいた。
「こらこら、喧嘩は駄目だよ」
都市伝説が物腰柔らかく、倭の肩をぽふっと叩く。
それと同時に仲間達がまわりを囲み、都市伝説の逃げ道を塞ぐ。
最初は何が起こったのか、分からなかった都市伝説も、ようやく状況が飲み込めたのか、悔しそうに唇を噛み締めた。
「皆さんが楽しみにしている焼肉を用いてまでのご狼藉、許されるものではありません。ここで成敗させていただきます」
都市伝説と対峙しながら、琴音がスレイヤーカードを解除する。
それと同時に都市伝説がすべてを悟った様子で、にゅうっと牙を剥き出した。
●焼き肉ゥ!
「焼肉のカロリー、いっぱい歌って消費しないとね!」
ファーで飾られたふわふわイヤホンマイクを装着し、杏里がガールズロックを想わせる激しい曲を唄う。
それに合わせて夜弥亜が鏖殺領域を展開し、都市伝説をどす黒い殺気で覆い尽くす。
「私はただお客に喜んでほしかっただけなのに……。まあいい。お客は関係ないだろ。逃げるまで、待ってやってくれ」
まるで自分が正義の味方の如く振る舞い、都市伝説がお客を店の外まで誘導する。
おそらく、都市伝説にとって、お客に喜んで焼肉を食べてもらう事が、存在する理由なのだろう。
故に、邪魔するモノは全力で排除するという考えに至っているという訳だ。
「神宮寺琴音、推して参る」
自ら名乗りを上げながら、琴音が都市伝説に雲耀剣を放つ。
すぐさま都市伝説が後ろに飛び退き、琴音達を威嚇するようにして鋭い牙をガチガチさせた。
「とりあえず、スライスだ。……喰えるかどうかは後で判断してやる」
一気に間合いを詰めながら、倭が都市伝説に神薙刃を叩き込む。
その一撃を食らっても都市伝説は怯まず、『ならば、こちらも容赦はしない』と言って、倭の腕に鋭い牙を突き立てた。
「無論、覚悟の上じゃ」
都市伝説の背後から迫り、源一郎が神薙刃を炸裂させる。
それと同時に都市伝説が倭の傍から離れたが、そこにはマッキが……。
「オラオラオラオラー!」
都市伝説に反撃をする機会すら与えず、マッキが閃光百烈拳を撃ち込んだ。
それでも、都市伝説はマッキに噛みつこうとしたが、それよりも早くハンナが懐に潜り込んでいく。
「悪く思わないでよ。これも仕事なんでね……」
都市伝説に語り掛けながら、ハンナが紅蓮撃を炸裂させる。
次の瞬間、都市伝説が焼き肉の匂いを撒き散らし、断末魔をあげて消滅した。
「……はっ! 私は何を?」
都市伝説が消滅した途端、夜弥亜がハッと我に返る。
覚えているのは……、肉の味。
思い出すと……、ちょっぴり幸せ。
「これだけおいしい焼肉屋なら、また来てもいいかも。次は都市伝説なしで来たいわね」
苦笑いを浮かべながら、蓮がボソリと呟いた。
だが、都市伝説が倒された今、ここは廃業。
もう二度と、営業する事もないだろう。
(「さがりにりーどぼー、ぼんじりも食べたかったです。でもでも食べ過ぎ、カロリーの摂り過ぎは乙女の天敵です……」)
そんな事を考えながら、琴音がしょぼんと肩を落とす。
「……しまった。〆の冷麺とアイスクリーム、喰っておらん」
悔しそうな表情を浮かべ、倭がその場に崩れ落ちる。
その途端、仲間達から『違うだろうが!』と総ツッコミを食らうのだった。
作者:ゆうきつかさ |
重傷:なし 死亡:なし 闇堕ち:なし |
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種類:
公開:2013年1月6日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 3/キャラが大事にされていた 7
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