武蔵坂の正月~新年を遊ぼう!

    作者:志稲愛海

     年末年始に帰省していた皆も、武蔵坂へとそろそろ戻ってくる頃。
     正月三が日は確かに過ぎたけれども。
     元々松の内と言われている中旬頃までは、まだ正月気分でいてもいいかもしれない。
     ――ということで!
     武蔵坂で過ごす正月休み、貴方は誰と、どう過ごしますか?

    「昨年は皆に大変世話になった。今年もどうぞよろしくお願いする」
     ぺこりんと、そう丁寧に頭を下げて。
     改めて新年の挨拶をした綺月・紗矢(小学生シャドウハンター・dn0017)に。
    「うんうん、今年もよろしくねー! というわけで新しい年になったし、新年会したり遊びに行ったりしよー!」
     いつも通りへらりと笑みながら、唐突に言った飛鳥井・遥河(中学生エクスブレイン・dn0040)であったが。
    「新年を遊ぶ、か。丁度帰省していた皆も、武蔵坂に戻ってくる頃だろうしな。それで、何をするんだ?」
    「うん、全然まだ考えてないよー」
    「……そうだな、折角だし、何か正月っぽいことをしたいかな」
     誘っておいてノープランだという彼の言葉に、紗矢は小首を傾けつつも。
     正月らしいことを一緒に、色々と考えてみる。

    「そういえば、そろそろ今まで正月休みであった店も開く頃か。新年最初の食べ放題などにも行きたいし、初売りもまだやっているだろうから、お年玉を持って買い物にも行きたいな」
    「お年玉かー買い物や食べ歩きもいいね! あ、そうそう、オレ1月4日が誕生日だからプレゼントも大募集中ー!」
    「そうか。だが、2014年の誕生日まではまだ随分と先だな」
    「てか何で2014年のなの!? 今年のはガンスルー!?」
     大胆に来年まで誕生日をスルーした紗矢に、思わず大きく瞳を見開く遥河だが。
     貰ったお年玉を握り締めつつ、買い物や新年の食べ歩きを楽しむのも良いし。
    「新年といえば、やっぱ新年会? 炬燵で今年の豊富とかを語りつつお餅やお鍋食べたりとか? あ、わいわい美味しいもの食べに行ったり、カラオケやボーリングとか皆でするのもいいかもねー。まー特に新年だからって特別なことじゃなくても、いつも過ごしてるように楽しんでもいいんじゃないかなー」
     遥河の言うように、おせちやお餅や鍋などの正月っぽい料理を摘みつつ色々と語り合ったりや、各種新年会やカラオケやボーリング、またいつも通りの仲間といつも通りの過ごし方で新年を楽しむなんていうのもいいだろう。
    「あと、新年っぽいことといえば……古典的だが、羽根突きや凧揚げなどだろうか」
    「井の頭公園やその他いくつかの公園が近くにあるしねー。あと、正月っぽいことといえば、どっちが初詣でおみくじの運勢がいいかの運勢競争とかー?」
    「……おみくじとはそういうものなのか?」
    「それからさー、書初めで熱いパトスを表現してみたりとか、福笑いでいかにイケメンな顔に完成させられるかとか、カルタや双六や駒回しなんかをみんなでわいわいするのもいいかもね!」
     武蔵坂に戻ってきた皆と、正月定番の遊びを一緒に楽しんだり。学園近くにある神社に、改めて皆で、少し遅い初詣に行ってもいいのではないか。
     そして、こう考えるとお正月っぽい事って色々あるねーと、遥河はへらり笑んでから。
    「ね、君はこの武蔵坂でさ、どんな風に新年の休日を楽しむー?」
     改めてそう、皆に聞いたのだった。

     迎えた2013年。
     武蔵坂で貴方は、どんな新年の休日を楽しみますか?


    ■リプレイ


     新年の空を気持ち良さそうに泳ぐ、凧。
     近所の子供達を誘い、凧揚げに来た流希だが。
     あげ方を知らない子達の面倒を見つつ、寂しいものですねと呟いた後、少し離れスポーツカイトを。
     そして休憩しながら、一句。
    「新年に 希望見出す 子の笑顔」
     響くは、カツンとベーゴマが弾き合う音。
     希は紗矢に回し方を教えつつ、遥河と一喜一憂の勝負をして。
    「……傷つく者も死者も出ない戦いというのはいいな、やはり」
     このぶつけ合う感じが何か楽しくて好きなんだよな、と新年を楽しむ。
     慣れ親しむ深大寺で初詣した後、そばを食べてから。
     登は通りかかった井の頭公園で、凧揚げに羽根突き、コマ回しを楽しむ紗矢や遥河から、同じ学園だよね一緒にどう? と誘われて。
     野外の正月遊びを皆と満喫!

     正月に初詣は欠かせない。
     実家の神社で御守渡す神主服姿の迅の手際は流石で、客のウケも上々。
     そして昼、彼に手伝いを申し出た千結だが。
    「こ、これは600円っす、いや、です!」
     慣れぬ巫女仕事に、どもったり慌てたり。
    「600円お納めください」
     迅にサポートされ、情けなさや悔しさを感じて。
     次があれば成功しますように――仕事の後、そう絵馬に。
     そしてそんな千結に迅が渡したのは、薄桃色の御守。
     それが凄く嬉しくて……千結は改めて思う。
     いつか絶対恩返しがしたい、と。

     少し遅れた初詣、友達ができますようになど沢山お願いすべく。
     心は神社へと向かうが、早速迷子に。
     そしておどおどしつつ、通りかかった紗矢と遥河に道を訊ねて。
     じゃあ一緒にどう? と、願う前に、願い事がひとつ成就!

     手を繋ぐのは絵面的にやめておいて。
     清鷹は、無事に新年を迎えられた事と……未だ続く幼馴染との縁にも、こっそり感謝して。
     十織も、春住家や商店街の爺様達の分も健康祈願した後。
    「鮮やかで邪魔にもならんサイズ……よし、これがいい」
     札を納め、清鷹に御守を。安産の文字には気付いていません!
    「……干支ストラップ可愛いな、これ」
     御神木を拝んだ清鷹も、十織の分もストラップを買って。
     やはり晩御飯を食べに来るという彼と、明けても変わらぬ日常に感謝を。
     
     参拝を終え、参道に並ぶ露店を眺めていた雅弥は。
    「明けましておめでとうじゃよ。新年早々に食べ歩きをしてるみたいじゃな」
     お好み焼きを5枚ほど購入している紗矢を見つけ、声を掛けて。
     本殿を見に行く前に、一緒に腹拵えを。

    「えっと、ここで手を合わせるのですね?」
     ヴァンは、智恵美や優希那やサクラコに倣い、手を合わせて。
     1年の始まりに、初詣で皆で願い事を!
     それから出店をぐるり巡って。
    「サクラコ様、綿飴美味しそうなのですよぅ……綿飴……」
     ふわふわ~くるくる~とできる綿飴を、じーっと見つめる優希那やヴァン。
     そんな皆に、智恵美は綿飴を買って差し出して。
    「はい、これどうぞ♪ ふわふわのわたあめですよ~」
     手をベタベタにしながらも、おいしいでいす! と、サクラコもふわり笑顔!
     そして次は、射的に挑戦するも。
    「うわー、当たってるのにびくともしませんねい!」
     当てても倒れなかったりドロップ缶をゲットしたりと、狙う猫ぐるみに苦戦する女子達だが。
    「ふむ、真ん中を狙うよりは端の方を狙って、重心を崩して落とすほうが良さそうですね」
     ヴァンの一撃が、ぱこんっと見事命中! 猫さんはサクラコの元へ。
     智恵美は、新年から皆で楽しく過ごせる事を嬉しく思いつつも。
    「本年もよろしくお願いします」
     改めて皆と、新年の挨拶を。


     買ったクレープを澪と食べさせ合いこし歩く虎鉄は。
     このまま愛情爛漫で居て欲しいと、そう言った後。
     ふと、告白の言葉を、口にする。
    「ただ、僕は澪の一番になりたい。特別な愛が欲しい。付き合って欲し……」
    「あ、クリームついとるえ♪」
     だが澪はそれを遮る様に、ちゅっと彼の唇のクリームを唇ですくって。
    「ウチ、特別な愛とかはよう分からへんど……大好きなみんなん中で、こてちゅ~の事、一番好いとーよ♪」
     思考停止した虎鉄に、甘々やな♪ と、にっこり。

     寒いのです、と。
     冬空は、手を繋ぐ勇気ときっかけをくれて。
    「いつも手、冷たくてごめんね?」
    「うぅん、とてもあったかいの」
     握る陽丞の手から伝わる気持ちは、とても温かい。
     そして足を止めたのは――リスの小径の前。
     中に入れば、クノンはリスと一緒にちょこちょこ追いかけっこ。
     そんな姿を愛おし気に見守る陽丞も、ふと傍のお客さんに気付き、笑顔で手を差し出して。
     リスに逃げられ、とぼとぼ戻るクノンは。
     陽丞が触るリスさんに近づけず、今度はおずおず見つめる番。

     普段より少し着飾った羽翠が楽しみにしていた、初デート。
     そんな彼女の隣で、普段通り冷静な司馬だが。
     握られたその手に、まあ嫌というわけじゃないがなと照れてから。
     喜んで頂けるかしらと羽翠は、アップルパイが美味しいカフェへ。
     そして口にはしないけれど、一緒にいるだけで癒されているから。
     和やかに、穏やかに、満ち足りた時を過ごせたらと……司馬はそう願いつつ考える。
     ……さて、このプレゼントはいつ渡せばいいかな、と。

     初めての都会の初売りは、人が一杯でビックリしたけれど。
     逸れないよう、いいだろうかと。
     繋がれた正嗣の大きな手の感触に、ドキドキする日姫は。
    「何か探し物はありますか?」
    「そうだな、帯を少し見ていいだろうか」
     歩調を合わせてくれる彼と一緒に、帯を見に。
     その後、今度は彼の意見を元に、弟のと自分のパンツ系の服を探しに、店をぐるり巡った後。
     温かい物を飲みながら、ほっこりと。
     楽しそうに話す日姫に少し微笑みつつ、正嗣は彼女の話を聞いている。

     はぐれぬよう、雪緒に貰った紺の手袋を着けた手で、手と手を繋いで。
     賑わう商店街の玩具屋に来た清十郎の目当ては、3人の妹のお土産。
    「こいつ中々良い瞳をしてると思わんか!?」
    「ふむー。わ、それも可愛いですね……!」
     迷子防止にと寄り添い照れつつも、雪緒は彼が手にした、くるりんお目目な犬ぐるみを見つめて。
     夢中で一緒に3匹選び、お買い物デートを互いに楽しんだ後。
     付き合ってくれた礼を言う清十郎に雪緒は、ふふーと笑む。
     一緒にお買い物楽しいのです、と。

     初詣後、明が恥ずかし気に告げた本当の目的地は。
    「クレーンゲームの、クマのぬいぐるみが……欲しくて……」
     そう、ゲームセンター。
     梓はふと、お台場での彼女を思い出しつつも。
     いざ、クマさんに狙いを!
    「ほら、とれたぞ」
     そして見事ゲットしたクマを赤い顔で抱き礼言う明に微笑んで。
     何の気なしに、彼女に初詣の願い事を聞いてみるも。
    「五十鈴君と……仲良くなれたら、良いなって……」
     返る答えに、柄もなく顔が真っ赤に。
     ああ、駄目だ。赤倉を直視できん……と。


     資料集めで微妙に懐が淋しい巧に、初売りはお誂え向き。
     そして遥河と一緒の紗矢を冷やかし、ただの荷物持ちだと慌てる彼女に。
    「この前は……誕生日を祝ってくれてありがとう」
     神妙にそう言った巧だが。すぐに笑って同行しつつ、新年の挨拶を。

     七尾は、お年玉は大切にと、お姉さん風を零犬に吹かせるも。
     食べ放題にクレープにと説得力なし。
     そして遥河に、少し名残惜しげに金平糖を手渡すも。
     じゃあお礼にお星様お裾分けだよーと、遥河は甘い煌きを、七尾とキラキラ半分こ。

     新年らしい御節は勿論、唐揚げやサラダも重箱に詰めて。
     風呂敷に包み、クラスの新年会へ向かう夏槻は。
    「ルカ」
     駅前で、遥河の姿を見つけて。
    「あけ誕おめー。お祝いに何でも好きな物奢るよ」
     ナッキーも一緒にどう、と。二人に声を掛けるのは、七緒。
     だってクラスメイトですから!
     そして3人で新年会の前にちょっとだけ、ケーキを食べに。
     それから遥河は、今日は奢って貰うけど今度はお礼にオレが奢るーと笑む。
     そしたらまた一緒にお出掛けできるもんね、と。

     ゲームセンターで、じゃらりと両替をしつつ。
    「あーあ……UFOキャッチャーで5000円もの大出費しちゃった……けど良いか」
     唯は投資の末ゲットした、お目当てのぬいぐるみを満足そうに抱きながら。
     次は、格闘ゲームコーナーへ。


     正月遊びといえば!
    「羽根つきか、聞いたことあってもやったことはないのぅ」
     【Request部】の皆で遊ぶのは、羽根つきです! が。
     人数が多い方が楽しいと、煉は紗矢や遥河にも声を掛けるも。
     油断すると全身真っ黒なんて事にもなりかねないからな? と、不敵な笑顔。
     そしてまず総当り戦でどうかと提案して。
    「大丈夫ですよ、真っ黒にはしませんから。でも負けが続くとそうなるかも知れません……」
     藍蘭はフォローになっていないフォローを。
     それから、カコーンと。
    「では参る!!」
     軽快に羽根が空に飛び交うが。
    「あまり沢山墨を付けないで下さいね。頬辺りでお願いします」
    「まさかボク達美少女達に墨をぶっかける様な悪逆非道なまねはしないよね? しないよね?」
     ミスした人が墨で軽く描き描きされて。
     遊び慣れた頃……いざ本番!?
    「墨は女の人に塗ったらかわいそうだし男の人を狙っていこうっと♪」
    「皆さんで狙い撃ちにするですよー! 一斉攻撃したら当たるかもですー」
    「ふはははは。ミスしたら容赦なく顔に墨を塗ったくってくれよう」
     こういう運動くらいしか取り柄ないしね~と器用に打ち返す楓に、普段イイ男が墨で汚れる展開が面白いと桜も張り切って。ワルゼーもある人物に目を向ける。
     そう、皆の狙いは――部長の智慧。
    「みんな、目付きが本気なの」
     のんびり和気藹々……ではない空気に、智以子も何気に本気のスマッシュ!
    「智慧、覚悟!!」
     アリシアも、ビシイッと智慧へ打ち込んでいく。
     でも簡単にはやられません!
     何だか不穏な雰囲気を察知し、念のため懐に隠し持っていた羽子板をしゃきんっと出して。
    「ふっ、甘いです」
     襲いくる羽根を軽快なフットワークで次々打ち返す智慧だが。
     しかし、何気に本気で打ってくる灼滅者相手に、多勢に無勢で。
    「決まったのじゃ!!」
     全員でスマッシュを打ち込み、アリシアは勝利の声を上げて。
    「まどろっこしいので、いっそバケツでドバっと行きたいのですよー」
    「ふぅ、流石智慧ちん、きっと墨も滴る良い男なのだ♪」
     墨満タンなバケツを重そうに運ぶ桜を手伝う凪。
     そしてぽろりしかけた凪に気を取られ、何気にミスした遥河に煉は墨を塗りつつも、書くのも書かれるのもどちらも楽しいと笑んで。
    「羽根突きもなかなか難しくて奥が深いですね……。でも楽しいです」
     藍蘭は紗矢とほのぼの、キャッキャはしゃぐ楽しそうな皆を見守るのだった。

     いつもクラブで集まる、桜の木がある和風の家の庭で。
     【蒼桜】の面々のメインはコレ!
     紫桜部長『で』遊ぶ事!?
     いえもとい、古典的に羽根つきです。負けたら墨で落書きです。
     ……が!
    「羽根突きするのはいいけど負けたら俺はコスプレってどういうことだこら!?」
    「そんな訳で私のコレクションから色々衣装を持ってきました」
     何故かサンタ衣装なリーファが並べるは、勿論オール女装!
     部長のみ特別コスプレ罰ゲームです!
     そんなリーファはケーキ購入時に会った紗矢も一緒に新年会に誘って。
    「まあ、今までも散々罰ゲームで着てきたのでいいではないですか」
     にっこりと部長に微笑む、大破。
     でも負けなければいい話ですから!
    「俺は、羽根突きの悪魔と呼ばれていてなっ負けなしなんだぜ!」
     ということで、羽根つき開始!
    「羽根突きの神様はコスプレ見たいってさ!」
    「ほら、もう諦めてゴスロリ服でも着ましょうよ、きっと素敵ですから」
     部長のためにチャイナ服を用意したシュネーとゴスロリ服を持参した雪音は勿論。
     紫桜に振袖を着せてアーレーさせようと画策するエリも、当然本気です!
     そして。
    「ちくしょおおおお!?」
     風に翻弄された羽根突きの悪魔の叫び声が、和風の庭に案の定響いて。
    「ごめんなさい、あまり変なのじゃない方向でお願いします……っ」
    「雪音さんやクラブの皆さんと楽しい時間を過ごす……こんな過ごし方はしたことなかったです。だから、本当に楽しい」
     涙目でミスした雪音に墨で猫ヒゲを描きながら、ええ、本当に面白い、と。
     大破は罰ゲームする部長や楽し気な皆に笑むのだった。


     ……コレがセントー、凄ぇデカいな、と。沢山の湯船を見回すエスに。
    「どーだ、でっけえ風呂だろ?」
     タオルを頭に、マキナはニシシと満足気。
     【葛城家】が新年早々楽しむのは、銭湯!
     銭湯を知らないエスを連れて浸かりにきたのだ。
    「やり方? そうね……走ったりしちゃだめよ? 後は……」
     そしてエスは百花からマナーを聞いて。
    「あ? ベツに入れねーワケじゃねー! 待ってろ、今入ってやるからな!」
     はしゃぎながら勝手にフィーネが始めた我慢大会に参戦!
    「ン、アレ」
    「アレ……? あぁ、はい」
     百花はそんな勝負を微笑ましく思いつつ、阿吽の呼吸で健康ヘチマたわしをマキナへ。
     そして。
    「50……51……あぁ、頭が、くらくら、しますわ……」
    「……ってちょ、ちょっと!?」
     皆との初の銭湯に幸せを感じながら、フィーネはのぼせてぐったり。
     そして――コレがカゾクってヤツなのか、スキで大切でタノシイ……?
     エスはそう楽し気な皆を見つめて。
     オレも少しは笑える……のかな、と。頭にタオルを乗せてみるのだった。

     老人ホームに響くは、弦路の唄声と三味線の音色。
     そして演奏が終われば、歓声と拍手と元気なご老人達の質問攻めが。
     そんな修練を重ね磨き続けた腕を褒められ、嬉しく思う彼に。
     報酬として振舞われた御節は、今までで一番美味しい、真心の味わい。

     新年の挨拶と共に強襲してきた幼馴染を、眉を顰めつつ部屋に入れた史明は。
     ベッド下を覗く朔之助に、びしっとチョップ!
     そして出てきたのは。
    「せっかく忘れてたのに史のバカやろぉ!」
     こんな事もあろうかと仕込んでおいた、冬休みの宿題。
     それから朔之助の部屋にお邪魔した史明は、その女の子らしい部屋で寛ぎつつ、つい口を滑らせて。
    「殺す気……!?」
     飛んできたダンベルを避けるも、それが壁にめりっ。
     母親に見つかる前に、二人ケーキを食べにトンズラです!

     研究所のカフェスペースで大輔手製の正月料理を摘みながら。
    「先日まで切った張ったの戦いをしていたのが嘘みたいです」
    「それが俺達の『日常』であり一般人とは違う『非日常』だしな。新年からやる事は山積みだが、まぁなんだ」
     俺の背中は任せるぜ――そう大輔に焔弥は言って。
    「あはは、それはもちろん。師匠の背中必ずや守ってみせます。あ、でも隣はあの人にお任せしますけどね」
     茶化され茶化し笑い合い、そして拳をぐっと突き合わせる。
     今年もよろしく『相棒』――と。

    作者:志稲愛海 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2013年1月21日
    難度:簡単
    参加:54人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 5/キャラが大事にされていた 14
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