ゾン美少女の展爛お茶会開催中だって!?

    作者:旅望かなた

     快い、休日のお昼頃である。
     いくら札幌であり気温は5度くらい(氷点下である。道民は冬の温度にマイナスを付けない)であっても、雲が無くて晴れていればそれなりに過ごしやすいのである。
     ましてや、インドアに過ごすならお日様さえ入ってくれば、屋内では暖房が入っているからアイスだって食べれちゃう。
    「よーしボギーやるぞボギー」
     なので一部屋借りた大学の教室に向かうべく、道を歩む男のコンビニ袋にも、アイスが入っていた。
    「先輩いつもボギーですよね」
    「いいじゃん。トリックスターじゃん」
    「それ、どっちかってっとフェアリーじゃ?」
    「俺は心底意地悪いキャラが好きなんだよ!」
    「あ、私持ちこんじゃうね。たぶん次でいなくなる確定」
    「マジで!?」
    「感情結び過ぎたか……」
     と、歩いて通り過ぎたはずの雪が、弾け飛ぶ!
    「「「!?」」」
     驚いて振り向いた数人の男女の前で、ふわんとスカートが舞い踊った。
    「はぁ……それにしても、随分と明るいわね。今、お昼?」
     騎士衣装の少女――ただし、ちょっと腐りかけ――にお姫様抱っこから地上に下ろされ、ドレスの少女が空を見上げて目を擦る。
     懐中電灯を弄んでいたウサギの耳の少女が、「そだよー」と頷いて。
    「では、お茶会と致しましょう」
    「結局朝でも昼でも夜でもお茶会だけどね」
     メイド姿の少女の言葉に、くすとドレスの少女は笑みを浮かべて。
    「でも、構わないわ」
     ――なお、その頃には元いた男女は全力で逃げ出した後だった。
     
    「野郎どもゾンビが出たぞー!」
    「おー!」
     嵯峨・伊智子(高校生エクスブレイン・dn0063)が思いっきり拳を突き上げる。
     このやりとりもそろそろおなじみと言えるのではないだろうか。
    「あ、じゃあ交代頼むねいちごっち☆ つか名前似てるよね!」
    「そうですね。伊智子さん予知とゲスト出演ありがとうございました」
     なんか拳を打ち合わせたりして、伊智子と交代して黒岩・いちご(ないしょのアーティスト・d10643)が教壇に上る。
     そして、綺麗な声を張り上げて。
    「今回は個性豊かなゾン美少女達ですよー」
    「おー!」
    「なんか放置されたちょっとおしゃれな屋敷に立てこもってますー」
    「おー!」
    「特に行動を起こそうとはしてませんが、一般人が迷い込んだら大変なのですよー」
    「おー!」
    「というわけで退治お願いしますー!」
    「おー!」
     ちなみに今回の相手となるゾン美少女は四体。それぞれの実力も高めだが、特にドレス姿のゾン美少女の強さは群を抜いている。
    「騎士衣装のゾン美少女は、WOKシールドのサイキックで戦ってきますよー!」
    「おー!」
    「うさみみのゾン美少女は、懐中時計を変則的ですがハンマーっぽく使いますー!」
    「おおー!」
    「メイドさんゾン美少女は、ガトリングガンですよー! メイド服には機関銃ですねー!」
    「おおおー!」
    「そして期待のドレスゾン美少女は、咎人の大鎌と契約の指輪を強力に使い分けてきますー!」
    「「「うおおおおおお!」」」
     なんというか、こう、イメージ通りじゃないか!
    「強力なゾン美少女達ですし、優雅にお茶会を楽しんでいますし、倒すのはもったいないのですが、もったいないのですが、札幌の平和の為にがんばりましょー!」
    「おー!」
     そんなわけで一同は、伊智子から交通機関の手配済み切符を受け取って、ゾン美少女達に立ち向かうため出発するのだった!


    参加者
    黒瀬・夏樹(錆色逃避の影紡ぎ・d00334)
    墨沢・由希奈(墨染直路・d01252)
    橘・蒼朱(アンバランス・d02079)
    クリムヒルト・ドロッセル(蒼にして森緑・d03858)
    ハイナ・アルバストル(無法たる夢喰い・d09743)
    黒岩・いちご(ないしょのアーティスト・d10643)
    新谷・杏(赤い悪魔・d11158)
    ヒラニヤ・ロイス(ラーズグリーズ・d12254)

    ■リプレイ

    「ゾン美少女とか誰得!? ってか、私得!」
     新谷・杏(赤い悪魔・d11158)さんいきなりどんな宣言ですか。
    「敵は美少女ゾンビどもね。いやあ楽しみじゃないか」
     ハイナ・アルバストル(無法たる夢喰い・d09743)がその頬を少しも緩めることなく言ったので、みんなその真意を測るのに大変苦労した。
    「あっ楽しみっていうのは戦闘的な意味でね」
     ほら僕マンチだから。意味は各自で調べてね。
    「ゾン美……じゃなかった。ゾンビがお茶会って相当シュールですけれど」
     黒瀬・夏樹(錆色逃避の影紡ぎ・d00334)が慌てて言い直してから、ちょこんと首を傾げる。
    「人を襲う訳でもなく館に篭っているのは何か理由があるんでしょうか?」
     確かに最初に会ったグループとか、逃げたからかもしれないが放置である。
     その言葉を噛み締めるように、墨沢・由希奈(墨染直路・d01252)は考え込むように眉を寄せ……、
    「うーん、ゾン美少女かぁ……いちごくんたちとゾンビが主人公のTRPGセッションやったばっかりだから、ゲームの中から出てきたようで変な気分だね」
     あ、うん。全然別のこと考えてたみたいです失礼しました。
    「まさか本当にゾン美少女のお茶会があるとは……」
     前の事件の後に由希奈さんとそんなセッションしたばっかりですよ、と発見者である黒岩・いちご(ないしょのアーティスト・d10643)もこれにはびっくりである。
    「ゾン美少女。うん、なんていうか凄いよね。凄い……」
     橘・蒼朱(アンバランス・d02079)がそっと遠い目をする。
     ぶっちゃけ彼にとっては未知の世界であった。
    「これは……顔は自分の好みを想像しろってことかな……どう思う、ノウン?」
     ビハインドのノウンが肩を竦める。知らんがな、とでも言いたげな様子であった。
    「……でもゾンビなんですょ?」
     思わずクリムヒルト・ドロッセル(蒼にして森緑・d03858)が盛り上がるみんなにツッコミを入れる。
     いくら体型的に大人びていても小学三年生。大人になったらわかるのかは、また微妙な問題だが。
    「騎士やメイドやウサミミのゾンビって一体なんのB級映画か……」
     ヒラニヤ・ロイス(ラーズグリーズ・d12254)も思わず首を傾げていた。日本がアニメのメッカだからという理由で入学したヒラニヤにも、ゾン美少女の精神はあまりよくわからない。
     とはいえ、珍しいからとカメラを持ってきている辺り……染まってる、かもしれない。
    「ま、放置するわけにもいきませんし頑張って萌え……」
     あ、間違えたって顔で、杏は周りを見渡して。
    「灼滅させてきます!」
     言い換えたけど多分もうみんなそーゆー人なんだなって認識したと思われる。
    「まぁ館にいるのも気まぐれなのかもしれませんけど、実力は確かみたいですし」
     油断は禁物ですね。
     夏樹の言葉で一応引き締まった空気をまとった一同は。
    「さようなら」
     思い出した最悪の思い出にまつわる解除ワード。夏樹はそっと目を伏せ、それを自分以外に聞こえぬ小声で呟いて。
    「行こうか、相棒」
     ビハインドのノインにかける声と共に、蒼朱が力を解き放つ。
    「ん、お茶会に乗り込んで殲滅なのですょ。レッツ、キルパーティー」
     祈るように手を組み合わせたクリムヒルトの前で、ハイナが扉を蹴り開ける。さあ遊ぼう、やれ遊ぼうと。
     玄関のさらに向こうに続く扉が開いていて、「あら」なんて優雅にドレスのお嬢様が首を傾げた。
    「あ、お邪魔します」
     ハイナがぺこりと挨拶。けれど武器の数々を展開しての言葉では友好的とは取り難い。
    「ご主人ではないようね?」
     ざっ、とその言葉と同時に、メイドとウサミミ少女と騎士が素早く陣形を作る。お嬢様は、それを微笑ましげに眺めゆっくりと立ち上がる。
    「美少女たちによる優雅なお茶会って素敵……」
     杏がうっとりしながら言葉とは裏腹に戦いの意志をいっぱいに積んだWOKシールドを広げて。
    「でも、ゾンビなんですょ?」
     そうなんだよねぇ。
    「……どっちかというと、お茶会と言うより展爛会って感じかな」
     サイキックソードの刃を放出しながらの、由希奈の素直な感想であった。
    「ああ、展覧会……。そんな感じもしますねぇ」
     いちごがううむと頷いてから、倒すのもったいないですけど仕方ないですね、とギターをかき鳴らすと同時に影業を展開、斬撃。
    「……ゾンビなだけに終わらないお茶会……。なんて『マッド・ティーパーティ』……うさぎもいるし」
     クリムヒルトは大きなため息をついて。
    「でもお茶会はここでお開きですよっ!」
    「とっとと終わらせよう……物理的に」
    「んふっ、できると思ってる?」
     杏とクリムヒルトの言葉にウサミミの少女が笑って、巨大な懐中時計を叩きつけた床から灼滅者達に伝わるは強き振動。
     一気に少女達が、動く。ワイドガードで己とウサミミ少女を覆った騎士少女、メイド服の少女は一気に中衛を狙って雨あられと弾丸を降らせ、同時にお嬢様がブラックウェイブを展開する。明らかに人数の多い場所を狙い、一気に落として行こうという構え。
     けれど杏のシールドバッシュが、その戦略に一石を投じる。
    「ゾン美少女を叩きのめすのはものっすごぉぉく気が引けますけど……皆さんのお姿は私の心のハードディスクに存分に焼き付けておきますので」
     叩きつけたシールドは、ウサミミ少女の正気を奪って。
    「倒されて下さいね♪」
    「誰がっ! ボクを馬鹿にしてるのか!?」
     ウサミミ少女はお嬢様の指示を離れ、無闇に懐中時計を振り回し。その威力は大きいけれど、WOKシールドのパワーを高め杏は必死にそれを受け止める。その陰に隠れて、姑息にハイナが胸にスートマークを浮かべて。
     殺気を一気に放出し、夏樹が騎士少女とうさみみ少女を一気に巻き込む。クリムヒルトが影に大きく口を開けさせ騎士少女を飲み込んで、具現化したトラウマに必死に抗う少女に「主よ。哀れな魂に憐れみを……」と手を組み合わせ祈りを捧げる。
     ぱしゃ、とその様子をヒラニヤが撮影して。「あ、俺も撮ってくれ」と隣の蒼朱にカメラを渡せば、「え、あ、うん」とおろおろしながら蒼朱がカメラを受け取って。とりあえずヒラニヤが派手にブレイジングバーストを決める所を、蒼朱は制約の弾丸を飛ばしてから一枚ぱしゃりと撮っておいた。
    「ノウンに指示だしたらチョップ飛んでくるからね。分かってるだろうけど最初の狙いは騎士だぞ」
     蒼朱の言葉に頷いて、ノウンが騎士少女に霊撃を飛ばす。シールドで受け止めた少女が、素早く盾に魔力のシールドを重ね、その守りの力を高めて。
     その少女をハイナが素早く雨風にさらされ古びた杖に魔力を宿し、そのまま一気に殴りつける。
     そして、そのまま振り向いて。
    「光属性だから特効とかないの?」
     ないない。
     ウサミミ少女がぶん殴りまくってくる中、杏はシールドを一気に広げ守りをハイナにも及ぼしていた。夏樹が牽制を入れながら、心の深淵の思念を漆黒の弾丸と為し騎士少女へと向ける。
    「由希奈さん、攻撃合わせて『殺劇』狙いましょう!」
    「おっけっ、いちごくん、『集中』していこうね!」
     ゲーム用語を全開に、いちごと由希奈が背中を守り合うように武器を構え、一気に光と影の刃を展開して。
    「ごめんね、その綺麗な服は『死の手』で破るから!」
    「『無限解体』いきますよっ! 『のうみそ』も『はらわた』もぶちまけなさーい!」
     一気に鋭い刃を解き放ち、服を体を裂いていく。騎士の少女がぐっと呻けば、その傷を慰撫するかのように闇が彼女の体を包み。
    「しっかりなさい……大丈夫?」
     心配そうに尋ねたお嬢様に、騎士少女は頬を染め「ええ!」と頷く。冥土少女が一つ頷き、ガトリングガンの引き金を引いた。
     標的は、しつこくも中衛。
     ヒラニヤの影が、ウサミミ少女を包み込み。さらにクリムヒルトの足元から伸びた影が、再び騎士少女を包み込む。
    「ずっと思ってたんだけどお召しものは素敵だよな。なんていうかな……男の壷とこう、ぐっとな」
     ちょっと幸せそうに呟いた蒼朱が、制約の弾丸を手の中に作りながら「ノウンも好みあるんだろうか?」とちらと己を守る彼に聞いてみる。
    「うさみみじゃ……」
     べちぃ。
     結局チョップが飛んできた。
    「ないですよね。分かってます」
     たんこぶ一つ作りながら、蒼朱は充分な大きさに育った弾丸を解き放つ。そんな様子をヒラニヤが、ゾン美少女たちが入るようにぱしゃり。
     ハイナが影の刃を鋭く尖らせ騎士の少女へと向かわせる。「服破りも期待できるしね」と頷いてその様子を凝視。
    「あっこれは防御力低下を期待してるって意味ね。他意は無いよ。ほら僕マンチだから」
     意味は自分で調べてね。
    「きゃっ!?」
     そして鎧が僅かに裂けたけど、腐敗しているだけだったのでハイナのテンションは急下降。渋い顔でハイナは力を宿した杖でべちべち騎士少女を叩きまくる。
     だが、そんな中杏はものすごく目をキラキラさせていた。
    「すごい萌える……あ、間違えた」
     思わず本音が出たのでまずは深呼吸。
    「ガンガン燃えちゃってくださいねー!」
     そして一気に引き金を引き、燃える弾丸を放出する!
     蒼朱とノウンの息の合った連係に、夏樹が素早く蛇腹剣の形を取った影業を振るい騎士少女を消滅へと追い込む。
    「お嬢様……ごめんなさい……」
     崩壊とともに口にした騎士少女の言葉に、ぎゅっと唇を引き締めたお嬢様は虚空からギロチンの刃を召喚し一気に引き下ろす。ウサミミ少女は怒りを押さえて大震撃を決め、メイド少女のバレットストームが駆け抜ける。
     人数の多い中衛を狙うのに、今回の敵の布陣はあまりにも適していた。
     由希奈が勢いよくシャウトし、まとわりつく状態異常を一気に吹き飛ばす。クリムヒルトの裁きの光といちごの天使の歌声が優雅に照らし響き、ヒラニヤの清めの風が一気に中衛の仲間達を包み込んで吹き抜ける。
     それでも、一手遅い。僅かに、遅い。
     体力の少なかったクリムヒルトを、メイド少女のガトリングガンが狙う。叩き込まれる弾丸に、その小さな体は耐え抜けるか――耐え抜けぬと判断し、杏は即座に動いた。放たれる弾丸を、その身で全て受け止めて。
    「っ! ……ありがとう、ですょ」
     裁きの光が、杏を優しく照らす。さらに重なったウサミミ少女の攻撃を、杏は一気にWOKシールドを押し付け相殺した。そのまま盾の出力を高め、己の傷を癒していく。
     その様子にも、ハイナは己の流儀を変えぬ。クラッシャーとして、騎士少女が倒れた今は素早くウサミミ少女を狙って。
     昏きトラウマを乗せた拳を、素早く夏樹は振り抜いた。す、といちごが息を吸い、「私の『子守唄』聞いてくださいね♪」と微笑んでから。
     歌姫の渾身と言うに相応しき歌声。それが、少女達の心を侵食していく。
    「いちごくんには及ばないけど、私も『子守唄』行くよっ」
     深く柔らかないちごの響きに、さらに由希奈の高く朗らかな歌声が重なって。懐中時計は彷徨いて、メイド服の少女を打ちつける。
    「全く、世話が焼ける……」
     それをガトリングガンで受け止めて、メイド服の少女は一気に引き金を引いた。何とか倒れずに済んだ灼滅者達を、ヒラニヤが風によって支えて。
    「報復には許しを、裏切りには信頼を、絶望には希望を、闇深きモノには光と救いをっ!」
     クリムヒルトの手の中に、言葉と共に生まれる風の刃。
    「主よ、闇は闇へ。影は影……消えり去り!」
     クリムヒルトの神薙の刃が、ウサミミ少女の命運を断ち切る。「ごめんね、ねーちゃん……」と消えた少女に、「ごめんね、守れなくて」とお嬢様は唇を噛んだ。
     その復讐とでもいうかのように、メイド少女の一撃は、今度こそクリムヒルトの膝を砕き地面へと這わせる。
     けれどハイナの影の刃と蒼朱の死角からの刃、そしてノインの霊障波が、メイド少女を一気に屠る。「ごめんなさい、お嬢様」と言った彼女に、こくりとお嬢様は頷いて、そっと目元をぬぐってから鎌を回し、唯一人と為れど立ち向かう。
    「ええと、一応お聞きしますけど……そのお茶会、何か目的とかはあったりしますか?」
     影の刃をうねらせながら尋ねた夏樹に、お嬢様はひょいと肩をすくめて見せた。
    「お茶会に理由など必要ありまして? だって大切な社交ですもの」
     とぼけたのか、それとも本気なのか、その表情からは探れない。
    「けれど、もし理由があるとすれば……暇つぶし、かしら」
    「暇つぶし?」
    「ええ」
     ふわりと制約の弾丸が舞い、夏樹を穿つ。ぐらり、と崩れた体は、どうしても起き上がれない。
     けれどそれ以上の攻撃はさせまいと、蒼朱の意思を汲みノウンが立ちはだかる。
    「みんな、一気に決めちゃおう!」
     由希奈の号令と共に、一斉に攻撃が集中して。
     最後に杏の焔の弾丸が、お嬢様の胸を貫いた。
    「さよならお茶会はこれにて閉幕だょ」
    「残念ですけど、ものすごく残念ですけど!」
     ゆっくりと上体を起こしたクリムヒルトとシールドの光を消した杏がそう告げる中、天を仰ぐように見上げた最後の少女はゆっくりと、消えて行った。

     ダークネスへと繋がる手がかりは発見できなかったけれど。
     暇つぶし。その言葉の意味を、夏樹は静かに考える。
    「ある意味、最強の敵だったな。ある意味悪夢だ」
     はぁ、と蒼朱が息を吐いて、お疲れ様とノウンを、そして仲間達を労って。
    「そう、女の子はこうでなくちゃ」
     安堵したように、息をつく。ふと目が合ったのは、いちご。
     そう、男なんだよね。
    「うん……世には可愛い男の子もいるもんだ」
    「ははは! こんな可愛い子が女の子なわけないじゃないですかー!」
     杏がにこにこそんな事を言う。褒めてるんだろうけどそれもどうなの。
    「ありがとうございます♪」
     いちごも優雅にお辞儀してるけどそれもどうなの。
    「……ふむ、あれが友人に聞いた萌えというやつか。以上」
     それはそうとヒラニヤさんがゾンビを思い出しながら呟いてるけどそれもやっぱりどうなの。
    「あ、由希奈さん。二人でお茶会しませんか?」
     そういちごが尋ねれば、由希奈がえ、と振り向いて、そのまま耳まで真っ赤になって。
    「……ちゃんとエスコートしてね?」
     ショウ・アップ、関係性の構築は、今の所いちごが上位のようである。
     ラーメンでも食べないか、とのヒラニヤの提案で、他の一同も歩き出すことにして。
    「いやあ美味しい相手だった」
     ハイナがゆるりと武器をカードへと戻して。
    「あっ、これは経験知的意味だからね。他意は無いよ。ほら、僕ってクールなイケメンだから……」
     ふと気が付くと、屋敷の中には誰もいなかった。
     なんか外で待ってるっぽい雰囲気だけど、ハイナはめげる事なんかなく。
    「そして誰もいなくなった」
     格好よくシメたつもりのハイナの背後で、「置いていきますよー」と声がして。慌てず騒がずけれどちょっぴり早足で、ハイナはその場を後にするのだった。

    作者:旅望かなた 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2013年1月11日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 16
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