●新境地
「はあ……女の子にモテたかったアキラちゃんが、今度は新しい世界に目覚めちゃうって……世の中ナニがどーなるかわかんないね~」
先日起こった事件を思い出しながら、殺雨・音音(Love Beat!・d02611)は駅前の通りを歩いていた。
音音にとって想像の域を超えていたのは、事件のその後だった。女の子にモテたいという願望を抱いた少年は、八人の美少女(ただし半数は女装)に言い寄られた結果、新しい世界に目覚めてしまったのだ。
新しい世界──すなわち、オトコノコもスバラシイ。
「これはもしかして……たとえば、女の子が大好きな女の子が淫魔になっちゃうとか、そういうのもあったりしてね」
それもまた未知の世界。百合とかGLとか呼ばれるやつだ。
そんなことを考えながら歩いていると、白とピンクで彩られた看板が目に入った。『カフェゆりゆり』。男子禁制の文字が躍っている。
「たとえば……こぉんなところに、いたりして!」
音音はごく軽い気持ちで、カフェのドアを開け放つ。
待ち構えていた景色に、動きを止めた。
「ごきげんよう、お姉様」
「ごきげんよう、お姉様」
きらきらとした空間。かわいこちゃんたちが笑顔で音音を迎え入れる。
「え、えっとぉ~」
音音が視線をさまよわせると、掲げられたボードに詳細表示があるのを見つけた。姉、妹、先輩、後輩、各種取りそろえております──
「ええっとぉ~……」
これはしまった、早まった。
どうしろというのか。
「こちらへどうぞ、お姉様」
「う、ハ~イ」
勧められるままに、テーブルにつく。
味などほとんどわからないままに、キラキラランチとトキメキティーを食し、店をあとにした。
●予感的中
「音音さんから聞いて、私もちょっと気になってね、調べてみたんだけど……」
須藤・まりん(中学生エクスブレイン・dn0003)は集まった面々を見渡した。
「ビンゴだよ。百合の世界に憧れて、ハーレム形成を夢見る女の子がいることがわかったの。名前は相田サユリ、十四歳。駅前にある『カフェゆりゆり』に通い詰めて、徐々に蝕まれてる状態だね。女の子ハーレムでもできちゃったら、闇堕ちすること間違いなし」
百合の世界とは何か。もっともな問いが投げられ、まりんはちょっと視線を逸らす。
「ええと……女の子と女の子でらぶらぶ、みたいな……GL、ガールズラブともいうよね。私もよくわからないんだけど、お姉様ー! みたいな世界観」
だいぶ適当なことをいった。これ以上つっこまれることを避けるために、矢継ぎ早に続ける。
「とにかく! サユリさんを救ってあげて欲しいの。みんなならきっと、闇堕ちから救い出せると思うから」
続いてまりんは、クローバーの形をしたネームプレートを取り出した。手のひらサイズのそれは、ブローチになっている。
「サユリさんは、毎日中学が終わったあと、『カフェゆりゆり』に通ってるよ。従業員用のネームプレートをつけてカフェに潜入するか、客として入るかは任せるけど、どっちにしても店内での接触が確実だね。それからどこかに連れ出して……女の子ハーレム状態にすれば、確実に、闇堕ち。そこを愛の鞭でドカーン! という流れで」
『カフェゆりゆり』に指定の制服はないらしい。女の子のタイプに多様性があるため、基本的には従業員に任されている。
「攻撃方法は過剰な愛情表現。スキンシップスキンシップ! でつっこんでくるけど、そこは闇堕ちしてるから、怪力だよ。隙を見せたら、うちゅーってくるかも。油断しないようにね」
うちゅーのジェスチャーをして、まりんは少しだけ頬を赤らめた。ええと、と咳払いをして、仕切り直す。
「もちろん、場所は男子禁制の百合喫茶だから……オトコノコには、女装してもらうということで。服なら、ほら、いっぱい用意しといたから!」
ごまかすように、服の山とメイク道具を差し出す。
「みんなでサユリちゃんを助けてあげてね!」
参加者 | |
---|---|
殺雨・音音(Love Beat!・d02611) |
天埜・雪(リトルスノウ・d03567) |
冴泉・花夜子(月華族15代目当主・d03950) |
森山・明(少女修行中・d04521) |
緋薙・桐香(針入り水晶・d06788) |
黒崎・紫桜(葬焔の死神・d08262) |
福楽印・寿(ロスマリン・d10596) |
明姫・リサ(爆乳ライダー・d11693) |
●女の子の楽園
「ごきげんよう、お姉様」
「ごきげんよう、お姉様」
すっかり場に溶け込んだ殺雨・音音(Love Beat!・d02611)と冴泉・花夜子(月華族15代目当主・d03950)が、笑顔で客を迎え入れる。音音は念のためプラチナチケットを使用していたが、二人ともどこからどう見ても『カフェゆりゆり』のベテラン店員だ。
その笑顔からやや目を逸らすようにして、客──黒崎・紫桜(葬焔の死神・d08262)は、どうもと小声で返した。何の因果か、今回の女の園への潜入ミッションにおいて、唯一の男性、つまりは女装状態だ。ロングスカートにポンチョという出で立ちで、隣には妹設定の天埜・雪(リトルスノウ・d03567)が並んでいる。雪とはヘアピンとスカーフをおそろいにするという完璧ぶり。
雪が、紫桜のポンチョの先を軽く引いた。紫桜は慌てて女性らしさを演出する。
「えっと……おほほ。こ、コースはおまかせで」
「かしこまりました。ではお友だちコースをどうぞ~」
「こっちこっち、早くぅ!」
音音がコースを指定して、花夜子がノリノリでエスコート。
「うう、なんでこんな目に……」
『とっても、かわいいです』
上目づかいで紫桜を見て、雪が筆談でフォローした。紫桜は心で泣きながら、ありがとうと礼をいう。
(「う~ん、お客もスタッフも可愛い子ばかり」)
少し離れたテーブルでは、パフェをつつきながら森山・明(少女修行中・d04521)が周囲を観察──というよりは、見とれていた。
明は、つい二年前まで自分を男だと信じていたという複雑な境遇だ。つまり、それまではふつうに女の子が好きだったわけで。女の子として生きると決めたからといって、いきなり趣向まで変わらないわけで。
(「うっわあ……」)
思わず、客の開いた胸元をガン見。いやちがうちがうと慌てて首を振り、パフェを食べ、また見とれ──の繰り返し。
しかし、その胸は見られても仕方がないといえた。窓際の席でトキメキティーを飲む明姫・リサ(爆乳ライダー・d11693)は、店員からも客からも視線を集めていた。
なんといっても胸。都市伝説なみの胸。ほんとうにあったデカイ胸。
それがまた、身体のラインに沿ったライダースーツを着て、胸元を大きく開けているからたまらない。
「私とあなたって、きっと運命で結ばれているんだわ……」
その向こう側では、福楽印・寿(ロスマリン・d10596)が店員を誘惑していた。
「おかわりを、いただける? もう少しあなたと楽しみたいのだけど」
「は、はい、お姉様!」
店員が頬を紅潮させ、飛び上がるようにして返事をする。皆それぞれ、それなりに楽しんでいるようだ。
ターゲットである相田サユリが来店したのは、ちょうどこのときだった。
「こんにちは! お友だちコースで、お願いします!」
相田サユリは慣れた様子ではきはきとコースを指定した。テーブルにつき、トキメキティーとロイヤルケーキセットを注文する。
「こんにちは! 一緒にトキメキティー、しよ♪」
これぞお友だちコース。音音がトキメキティーを二つ運び、隣に座ってフレンドリーに接する。サユリは人懐っこく笑みを返した。
「えっと、よろしく、音音さん」
「ネオンちゃんでいいよー。ネオンって呼び捨てでもだいじょうぶ!」
「じゃあ、ネオンちゃん。ふふ、初めましてですね! 新しい子が入ってきて、嬉しいです」
「ネオンも、嬉しい~♪」
まるで人見知りする様子もなく、ぐいぐい来る。音音も同じテンションでぐいぐい行く。
「あの、よろしければ、ご一緒しても?」
そこへ、緋薙・桐香(針入り水晶・d06788)が接触した。桐香は慣れてない様子を装いながら、サユリに声をかける。
「なんだか、ずいぶん慣れていらっしゃるようなので。手ほどきをお願いしたいのですけれど」
そういって、さりげなくサユリとお近づきになる。
そのままティータイムを過ごすこと、十数分。そろそろ頃合いというところで、花夜子と音音が動いた。
「本日はご来店ありがとうございます。実は今回は、特別イベントを用意しております」
「選ばれたお客様のみの、限定イベントでーす。名前を呼ばれた方は、エントランスへお集まりくださいっ」
花夜子のラブフェロモンと音音のプラチナチケットの効果で、ごく自然に進行していく。 選ばれた客は、紫桜、雪、明、リサ、寿、桐香──そして最後に、相田サユリ。
「え、うそ! 行きます! 参加します!」
全力で、サユリは飛びついた。
●ゆりゆり王様ゲーム
一行は、近場のカラオケボックスを訪れていた。
あらかじめ押さえておいたパーティールームで、すでに一時間強。すっかり盛り上がっている。
「それじゃあ、そろそろ……じゃーん! 王、様、ゲーム!」
しかけるなら、今だった。花夜子と音音はアイコンタクトをかわし、用意しておいたくじを取り出した。
「王様ゲームで、もっとナカヨクなっちゃお♪」
音音が笑う。密室での王様ゲーム──漂うイケナイ雰囲気。
くじ自体に細工はないが、もちろんただ王様ゲームを楽しむわけではない。
「王様、だ~れだ!」
せーので全員──といっても話せない雪以外だが──が声を合わせる。挙手をしたのは、音音だった。
「最初はネオン! どうしよっかなー」
王様以外の全員のくじには、番号がふってあるはずだ。音音は、なにを命令しようか考えるふりをしながら、雪の手元を確認する。
雪は、テレパスでサユリの番号を読み取っていた。その数字を指の動きでさりげなく伝える。3番。
「じゃあ、最初だから、軽めにね。1番と3番が、頬と頬とくっつける♪」
つまりは、ひたすらサユリにイイ思いをして貰おうという作戦だ。
「ええ!」
1番の明が、驚きの声をあげる。
(「頬と頬って……!」)
元男としては軽めどころではない。
「あたし、3番です!」
満面の笑みでサユリが名乗り出て、明も立ち上がる。
「それじゃ、せーの!」
ぎゅっ。
明とサユリは、頬をくっつけ合った。
「きゃー!」
「かわいいー!」
場を盛り上げるためというのもあったが、ほとんど素でギャラリーから声がとぶ。
(「マジか……!」)
一方で、絶賛女装中の紫桜が静かに戦慄していた。軽めでこれ。危険な予感。
『5ばんと7ばんで、ひとつのおかしをいっしょにたべる』
次に王様になった雪はスティック状の菓子を差し出し、いわゆる定番の両側から食べ進めるアレ。5番の音音と7番のサユリは、抱き合う形で一つの棒状クッキーを食べ進め、唇接触寸前で終了した。
「ドキドキしちゃったね~♪」
「楽しいです!」
サユリのテンションは上がる一方だ。
「次は私ですわね。では、1番のかたは、8番のかたにキスを」
にっこり笑って王様桐香。1番は寿、8番はサユリだ。
「仕方がないわねえ」
困った素振りを見せながらも楽しげに、寿がサユリに身を寄せる。
「えっと……ほっぺですよね?」
「どこがいい?」
寿はサユリの髪にそっと触れた。そのまま、彼女の唇に顔を寄せていき──
むちうぅぅぅ
「──っ!」
「わぁお」
それぞれが思い思いの反応をしつつも、ほぼ全員が身を乗り出す。なんだかんだでがっつり観察。
「お口の方がよかったかしらね」
唇を離し、寿は笑んだ。唇のやや右隣、ぎりぎりモロキッスではなかったようだ。
「い、いえ、そんな」
真っ赤になりながら、夢見心地でくじ引き。今度はサユリが王様だ。
「ええと……2番が王様にボディタッチ! させる!」
いかにも思い切ってといった様子で大声を出す。ボディタッチされるという刺激的な要求に、緊張と興奮が高まった。2番は誰だ──全員数字を確認。
「私ね。いいわよ」
名乗り出たのはリサだった。立ち上がる拍子にOカップの胸が揺れる。ボイン。
リサにボディタッチ。もう、ボディ、イコール、ボイン。
「い、いいんですか」
サユリが生唾を飲み込む。
「どうぞ」
リサが胸を突き出す。ナマ乳が半分ぐらい見えている状態のその胸に、サユリはそっと手を伸ばした。
つん。ふよふよ。もにゅん。もみもみもみ。
「……ふああ!」
平然とした顔のリサとは対照的に、顔を真っ赤にしてサユリが悶える。紫桜と明は顔を隠すようにして目を逸らしていた。強すぎる刺激。雪は思わずペンを走らせた。『さわってみたいです』。突如開催される、女子たちによるリサの胸触り大会。
「次はアタシが王様ね! それじゃあ……」
花夜子は目を光らせた。高まっていくなんでもありの雰囲気。らんらんとしてくるサユリの目。
そろそろだ。
「9番が、5番に、熱烈告白!」
くじを引かせる側として、花夜子は9番が誰かもこっそり認識していた。
もちろん目的は見失っていなかったが、これもある意味目的だ。
5番は無論、サユリ。9番は──
「お……あ、あたしね」
紫桜だ。
サユリの前に立ち、咳払いをする。紫桜は覚悟を決めた。やるからには、完璧に。
「サユリ」
「は、はい!」
紫桜は、優しく包み込むように、それでいて力強く、サユリを抱きしめた。
「愛してる」
「……っ! あ、あ、あい……」
演技だ。ゲームの一環だ。そんなことは、サユリにもわかってた。
それでも、許容範囲を超えていく。
「あたしって、あたしって……っ」
もしかして。
モテモテ?
「あああああんっ、たまらない──!」
天井に向かって、サユリは吠えた。
●そこをガツンと
「うおっ」
灼滅者たち全員が、すぐに異変に気づいた。しかし、抱きついた状態の紫桜は、無防備にならざるを得ない。
闇堕ちしたサユリが力の限り紫桜にしがみつき、めきめきと音をたてる。
「あたしもあたしもあたしも、愛してるぅぅぅ!」
「く……っ」
サユリは口を大きく開け、紫桜に噛みついた。接吻的物理攻撃だ。
そこへ、雪がリングスラッシャー射出。サユリがよろめき、その隙を逃さず紫桜が飛び退く。
「助かった、天埜」
演技とはいえ兄弟関係だった二人だ。紫桜には、雪の声が聞こえたような気がしていた。
「ブレイジングバースト!」
音音が先頭に躍り出て、攻撃を打つ。明もダメージを負った紫桜を庇うように前へ出た。次に備え、戦神降臨。
「なんで……イタイことするの、もっと続きしようよ、王様ゲーム! みんなあたしにイイコトしてして──!」
「Erzahlen Sie Schrei?」
ヴァンパイアミストを放つ桐香の表情からは、いつもの柔和な笑みは消えていた。命中した攻撃にサユリが悲鳴をあげると、目を細める。
「私はキスよりお前の悲鳴の方が好きなの」
「もう、遊びはおしまいよ」
寿のマジックミサイルがサユリに襲いかかる。サユリはとっさに跳躍するが、遅かった。直撃を受け、よろめく。
「終わってないもん! あたしには力がある、みんなと仲良くなるための力!」
「わっ、とと!」
両手を広げて突っ込んできたサユリを、音音がぎりぎりでかわす。パーティールームとはいえ狭い室内では、動きも制限されてしまう。
しかしそれは、相手も同じだった。
「ちょっと止まってて! 亀甲縛りの術っ」
花夜子が放った封縛糸が的確にサユリを捉えた。サユリは横に跳ぼうとしたようだったが、そこにはもうスペースがない。
「これで、どう!」
動きが止まったところで狙い澄まし、リサがオーラキャノンを撃つ。
女装したままではあったが、やっと女性のふりから解放された紫桜が、表情だけはオトコマエに日本刀を構えた。
「死神を、みせてあげるわ──!」
でもセリフを間違えた。うっかりクセになった女言葉。それでもめげずに影縛りで追い打ちをかける。
限られた空間を有効に活用し、灼滅者たちは確実に攻撃を放っていった。いま闇落ちしたばかりのサユリは、能力そのものは突出しているものの、それだけだった。次第にダメージが蓄積されていく。
「レーヴァテイン!」
明の攻撃がヒットし、サユリはとうとう膝をつく。しかしそれも一瞬のことで、すぐに反撃をしかけてくる。
「百合百合が楽しいの、分からなくは無いけど! 目を覚まして!」
攻撃をしかけながらも、花夜子が声を投げかけていく。身体へのダメージと、そして確かな葛藤が、サユリの動きを鈍らせていった。
短い時間ではあったが、楽しく過ごしたはずの彼女たちと、いまこうして戦っている──それは、サユリの望むことではないはずだった。
ただ、一緒に、楽しく、仲良く。すぎたことを望んだわけでは、なかったはずなのに。
「最後にいってやんよ……これが、愛の鞭だ!」
それぞれの攻撃の隙間を縫うように床を蹴り、紫桜が飛び上がる。
「八割以上は、俺の恨みだけどな!」
ロングスカート姿で、居合斬り。
「う、ああああんっ」
はじけるように叫んで、サユリは倒れた。
●新しい世界へ
サユリが目を覚ましたとき、心配そうに顔をのぞき込んでいたのは、小さな女の子だった。
「雪……ちゃん」
ぽつりとつぶやくと、雪はほっとしたように笑った。
ソファに寝かされていたことに気づき、サユリは身体を起こす。
「気がついた?」
音音は、まるで最初に会ったときのような、隔てない笑顔だ。
「サユリちゃんは、ちょ~っと我を忘れちゃってただけだよ。もうだいじょうぶ。ちゃんと、仲良くしたいな」
手を差し伸べられ、握り返して良いものかどうか、サユリは躊躇する。
「貴女は、とても魅力的な女の子。きっといつか、百合百合よりずっと素敵な……もっとドキドキ出来る王子様が現れるよ♪」
「ウチに来れば、綺麗なお姉様がいるわよ」
花夜子が微笑み、リサがいう。真剣な面持ちで、桐香はつぶやいた。
「学園に来たら素でハーレムくらい作れる気がしますわ……」
それぞれが、自分を想ってくれているのだとわかった。サユリは破顔する。
「なんで、こうなったのさ……」
「だいじょうぶ! ファイト!」
部屋の隅では紫桜が極限まで落ち込んでいた。その肩を撫でながら、明が懸命に励ましている。明だって、まだ精神面では七割近くが男の子。なんだか他人事とは思えないのだ。
『これからは、しおうおにいちゃんってよんでもいいですか?』
そんな紫桜に、雪が尋ねる。紫桜は力が抜けたようにふっと笑って、雪の頭を撫でた。
その紫桜が、不意に、うしろを向いた。
しっかりと目が合ってしまい、サユリは急いで目を逸らす。
「どうしたの?」
音音に尋ねられ、なんでもないとごまかした。紫桜に抱きしめられたときが一番どきどきしたのは、きっと気のせい。
だって自分が好きなのは、女の子なのだから。
「いいものを見させてもらったわ」
その一部始終を眺め、寿は満足げにうなずいていた。
いろいろ一筋縄ではいかない、これぞ倒錯ロマンス。
作者:光次朗 |
重傷:なし 死亡:なし 闇堕ち:なし |
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種類:
公開:2013年1月19日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 8/キャラが大事にされていた 3
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