禁じられた世界

     白鐘・睡蓮(火之迦具土・d01628)は、こんな噂を耳にした。
     『おなべの都市伝説が現れた』と……。
     その都市伝説は男装の麗人で、目が合った女性を誘惑し、禁断の世界へと誘ってしまう。
     しかも、一度魅了されたら最後。
     男が物凄く汚くてゴミ蟲のようにしか見えなくなり、一生女性しか愛せない体になってしまう。
     そんな恐ろしい噂……。
     念のため、エクスブレインにも確認を取ってみたが情報は正しく、都市伝説が絡んでいる事は間違いない。
     都市伝説に魅了された女性は、男に触れられる事を非常に嫌う。
     逆に女性に触れられると、禁断の世界にまっしぐら。
     どちらにしても、危険で面倒な存在である事は間違いない。
     また、都市伝説は女性を誘惑して虜にしてしまうらしく、言葉巧みに騙して嗾け、逃げるまでの時間を稼ごうとするため、注意しておく必要がありそうだ。


    参加者
    国崎・るか(アンジュノワール・d00085)
    大沼・弥生(千華万蓉・d00238)
    黒洲・智慧(九十六種外道・d00816)
    糸崎・結留(アマテラス様がみてる・d02363)
    乙宮・翡翠(楽園にふれるなかれ・d06304)
    東雲・蔓(求める兎・d07465)
    神楽火・國鷹(彷徨える隠秘学者・d11961)
    藤堂・十夜(中学生ダンピール・d12398)

    ■リプレイ

    ●イケナイ関係
    「男に触れるのが極端に嫌になる都市伝説、だと……? この敵を逃したら、世界の終わりだ……。都市伝説を火急的速やかに殲滅する。……そう、殲滅だ。決して逃しはしない」
     自分自身に言い聞かせるようにしながら、藤堂・十夜(中学生ダンピール・d12398)が都市伝説を探して裏路地に入っていく。
     藤堂十夜14歳、186cm、諸事情により食糧事情に困窮。
     放課後のバーゲンセールで命を繋ぎ、妹と二人暮らしの身の上。
     傍から見れば普通に……だが、恐怖に震えて彼は思う。
     もし、都市伝説に妹が遭遇したら?
     バーゲンセールは容易くなるだろう
     だが、妹に嫌われて過ごす日々……、あり得ない!
     考えたくもない。無理、絶対!
     そんな危険な未来を回避するためにも、都市伝説を倒さねばならない。
     かくして、彼の闘いが始まった。
    「まあ、個人の恋愛に口を出す気はないけど、普通の女の子まで巻き込むのは許せないな」
     険しい表情を浮かべながら、乙宮・翡翠(楽園にふれるなかれ・d06304)が意見を述べる。
     その途端、背後に立っていた十夜が悲鳴をあげた。
     おそらく、想像してはいけない事を考えてしまったのだろう。
     全身からぶわっと汗が吹き出し、体が小刻みに震えている。
    「るかちゃん的には、女の人しか愛せなくなるのより、男の人をまともに見る事ができなくなる方がキツイです……! せっかく仲良くなった人もいるのに……、とんでもないですよぉ、許せませぇん!」
     都市伝説に対して怒りを覚え、国崎・るか(アンジュノワール・d00085)が拳をぎゅっと握りしめる。
     その言葉を聞いた十夜が『その通り』と言わんばかりに、コクコクと力強く頷いた。
    「……全く、禁断の世界に連れて行くのはいいけど、お互いの同意がない状態で無理やり連れて行くのは紳士としてダメだよね。……あれ? この場合は淑女なのかな?」
     キョトンとした表情を浮かべ、東雲・蔓(求める兎・d07465)が首を傾げる。
     その視線の先には、男装の麗人の如く振る舞う都市伝説が立っており、女子高生を口説いている最中であった。
     しかも、口説かれた方の女子高生はまるで心ここに非ずといった様子で、とろんとした表情を浮かべ都市伝説の成すがままになっている。
    「どうやら、都市伝説の方から現れてくれたようですね」
     警戒した様子で物陰に隠れ、糸崎・結留(アマテラス様がみてる・d02363)が都市伝説の様子を窺った。
     囮作戦を実行する前に都市伝説が現れたのは予想外であったが、幸いこの辺りに人気はない。
     そのため、都市伝説を倒すための準備が十分なほど整っていた。
    「やぁ、素敵なお嬢さん。今から少し時間があるのなら、私と一緒に食事でも如何かな? ……ちょっとその前にやらなければならない仕事があるから、先にこのレストランに向かってて欲しいだけど」
     爽やかな笑みを浮かべながら、黒洲・智慧(九十六種外道・d00816)が都市伝説の前に現れてラブフェロモンを使う。
     だが、都市伝説には効果なし。
     傍にいた女子高生も都市伝説に魅了されているせいか、ゴミムシを見るような視線を送っている。
    「悪いけど僕らは愛を囁きあっている最中なんだ。それを邪魔するなんて、無粋じゃないか? いわば、ここは禁断の花園。君には何も見えないのかい? 僕らと君を隔てる厚い壁が!」
     嫌悪感をあらわにしながら、都市伝説が皮肉混じりに呟いた。
     まるで舞台役者の如く演技がかっているせいか、女子高生がさらにウットリとした表情を浮かべている。
     それこそ、瞳に星が浮かんでいても、おかしくない状況であった。
    「まさか、その程度の挑発で引き下がると思ったのか?」
     都市伝説の行く手を阻み、大沼・弥生(千華万蓉・d00238)が冷たい視線を送る。
    「クッ……、僕らはただお互いの気持ちを確かめ合っているだけなのに……。なぜ、邪魔をする!」
     信じられない様子で、都市伝説が弥生達に問いかけた。
     おそらく、都市伝説自身は無意識のうちに、女子高生を誘惑し、自らの虜にしているのだろう。
    「同性同士の恋愛や情交を否定する気はないが、心を歪めてまでその道に引き込もうとするのはいただけないな。さあ、浮世に現れし幻想よ。ここが貴様の終幕だ!」
     すぐさまスレイヤーカードを解除し、神楽火・國鷹(彷徨える隠秘学者・d11961)が都市伝説に言い放つ。
     その途端、都市伝説がナイト気取りで女子高生を背後にやり、『さあ、どこからでもかかって来たまえ!』と言ってファイティングポーズを取った。

    ●女子高生
    「とにかく、彼女を助ける事を優先しないとな」
     少しずつ間合いを取りながら、弥生が女子高生に視線を送る。
     だが、女子高生はすっかり都市伝説の虜になっており、弥生達に対して凄まじいほどの敵意を放っていた。
    「そんな心配より自分達の心配をしたらどうなんだ?」
     弥生達を見下すような視線を送り、都市伝説が含みのある笑みを浮かべる。
     その途端、女性陣の様子が一変し、何やらソワソワし始めた。
    「ふっふっふ、わたしが慕うおねーさまは既にいるのです。誘惑されて、なびいたりは……ん?」
     都市伝説を見た瞬間、妙な感覚が全身を襲い、結留が顔を真っ赤にする。
     例えるなら、愛するおねーさまに耳元で囁かれているような感覚。
     単なる気のせいだと思って自分自身を納得させようとしたが、まるで磁石の如くひきつけられるものがある。
     それでも、何とか理性を保つ事が出来たのは、愛するおねーさまが心の中で微笑んでくれたおかげ。
    「個人的に男装の麗人はナシかと思っていたんですが、るかちゃん的には大いにアリですよ!」
     すっかり魅了された様子で、るかが胸をキュンとさせる。
     普段なら絶対にナシと言えるのだが、都市伝説に魅了されているせいで、何もかもが魅力的に見えた。
    「ううっ……、何だろう、この気持ち……。何だかもやもやする」
     全身が燃えるように熱くなった事に気づき、蔓が恥ずかしそうに頬を染める。
    「ははっ、別に戸惑う事はない。ただ、流れに身を任せればいい」
     まるで見えない糸を操るように、都市伝説が蔓達に優しく囁いた。
    「さすがにこれはマズイかも……」
     予想外の出来事に驚きながら、翡翠が唇をグッと噛む。
     さすがというべきか、女性に対象を絞っているためか、よくわからないが、とにかく強力な魅了である事は間違いなかった。
    「まさか、ここまで強力だったとは……。俺達がいなかったら、どうなっていた事か。考えただけでも寒気がするな」
     警戒した様子で後ろに下がり、十夜が都市伝説に視線を送る。
     だが、男性には全く効果がないのか、女性とは対照的に何も感じなかった。
    「とにかく、一般人を避難させましょう」
     一瞬の隙をついて飛びかかり、智慧が女子高生を助け出す。
     しかし、女子高生は都市伝説に魅了されているため、『触るな、変態、クソ野郎!』と口汚い言葉を吐き捨てた。
     それでも、智慧はめげる事なく、女子高生を抑えつけた。
    「……ふん。それで勝ったつもりかい?」
     ムッとした表情を浮かべ、都市伝説が智慧を睨む。
     その間も女子高生が智慧をポカスカ叩いたり、引っかいたりしていたが、決して離そうとしなかった。
    「俺は、貴様の願いを否定する」
     都市伝説と対峙しながら、國鷹がスレイヤーカードを解除する。
     次の瞬間、都市伝説がやれやれと首を振り、『これだから男は……』と言って溜息を漏らした。

    ●都市伝説
    「さて、俺と踊ってもらおうか、レディ」
     都市伝説に語り掛けながら、國鷹がサイキック斬りを放つ。
     それと同時に、都市伝説がるかを盾替わりにして、『ダンスなら彼女がしたいってさ』と言って逃げる。
    「るかちゃんに近寄らないでくださぁい……!」
     しかも、るかは都市伝説に魅了されているため、嫌悪感をあらわにしながら國鷹を拒絶した。
     だが、油断した都市伝説を狙うようにして、蔓が死角からヴォルテックスを炸裂させる。
    「ば、馬鹿な! 君は確かに魅了されていた……はず」
     信じられない様子で、都市伝説が目を丸くさせた。
    「ボク、すでにそっち系ですから!! しかもご主人様の愛の下僕ですから!! それに体の関係も複数いるよ」
     えっへんと胸を張り、蔓が都市伝説に言い放つ。
    「それじゃ、演技をしていた……という事か」
     唖然とした表情を浮かべ、都市伝説が拳を震わせる。
     確かに、効果はあったはず。
     だが、そう言った事に免疫があったため、何とか理性を保つ事が出来たのかも知れない。
    「さて、行こうか!」
     サッと翡翠に合図を送った後、智慧がナイフで都市伝説の正中線に一閃を放つ。
    「OK、智慧くん」
     納得した様子で答えを返し、翡翠が都市伝説に制約の弾丸を撃ち込んだ。
     それでも、都市伝説はフラつき、女性に助けを求めようとした。
    「もう逃がさん。運命を呪うんだな!」
     都市伝説の行く手を阻み、弥生が雲耀剣を叩き込む。
     次の瞬間、都市伝説が悔しそうな表情を浮かべて逃げ道を探す。
    「空漠たるその魂、討ち砕く!」
     一気に間合いを詰めながら、國鷹がサイキック斬りを放つ。
     それと同時に都市伝説が飛びのき、何とか致命傷を避けた。
     だが、その間に十夜が都市伝説の懐に……。
    「……喰らえ、我が覚悟を籠めし閃光百裂拳。俺を許さなくていい。今は眠れ」
     都市伝説の懐に潜り込み、十夜が閃光百裂拳を叩き込む。
     その一撃を食らって都市伝説が華麗に舞い、キラキラと何かを撒き散らして消滅した。
    「それにしても、禁断の世界って何なのですよ……?」
     都市伝説が消滅した事を確認し、結留が気まずい様子で汗を流す。
     未だに妙な気持ちが消えず……、もやもやする。
    「よろしければ、ご自宅までお送りしますよ。もちろん、学園まででも喜んでご一緒しますが……」
     苦笑いを浮かべながら、國鷹が結留達にウインクする。
     そして、結留達は物陰で呪いの言葉を吐いていた女子高生を無事に届けた後、その場を後にするのであった。

    作者:ゆうきつかさ 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2013年1月10日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 7/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 1
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