甘い甘い休日に

    作者:篁みゆ

    ●甘い誘惑
     ケーキバイキング。
     それは魅惑の呪文だ。
     定番のいちごショートからちょっと手の込んだケーキまで。好きに取って食べていいよと言われれば、そこは楽園。
     チョコレートケーキにチーズケーキ、フルーツタルトにクレームダンジュ。りんごのシーブストにフレジェ。オペラにモンブランに抹茶を使ったものまで。プリンやゼリーにムースも!
     挙げだしたらきりがないほどのスイーツの楽園。
     制限時間内ならどれを取ってどれだけ食べてもOK。ただし一度皿に取ったものは食べ残しをしないのがマナー。取るのは食べられるだけに。
     付き合わされたけれど甘いモノが苦手だ、そんな人には数種類のサンドイッチや甘さ控えめのビスケットやクッキー、ピラフにパスタなども置かれているから誰でも楽しめるに違いない。
     飲み物はセルフサービスのドリンクバー。ケーキと一緒にどうぞ。
     休日のひととき、こんな甘い時間はいかがですか?

    ●休日の過ごし方
    「おや……あけましておめでとう、ユリア君」
    「あ……瀞真さん、あけましておめでとうございます」
     冬休みが終わって少し経った。教室から出ようとしていた神童・瀞真(高校生エクスブレイン・dn0069)は入り口で道を譲るように避けてくれた下級生に目を留めて。見覚えがあったものだから声をかけた。
     その下級生、向坂・ユリア(中学生サウンドソルジャー・dn0041)は相手が顔見知りだと気がつくと、笑んで挨拶を交わす。
     ひらり……瀞真が抱えていたファイルから、一枚のチラシが落ちた。
    「あっ……」
     彼が拾おうとするより早く、ユリアがしゃがんでそのチラシを手に取る。それは、鮮やかなスイーツがたくさん載っているチラシだった。
    「ケーキバイキング……? 瀞真さん、行かれるのですか?」
    「いや……チラシを貰ったから、興味のある人にあげようと思って持って来たんだよ。……ユリア君はどうかな?」
    「はい、私、行ってみたいです!」
     ユリアがチラシを良く見てみれば、それは高層ビルに入っているレストランが行っているケーキバイキングの案内であった。時間は90分。口直しや甘いのが苦手な人のために、スイーツ以外も置いてあるという。値段もディナーなどに比べればお手頃で、学生でも手が届く。
    「カップルシート……」
    「ああ、それは新しい試みらしいよ」
    「瀞真さん、ご存知なんですか?」
    「い、いや、チラシに載っていたからね」
     今回から新しい試みで、カップル向けの座席が用意されているらしい。
     前面はガラス貼りで、高層階にあるレストランからは景色がよく見える。並んで座れるソファは二人がけで、ソファの前にテーブルが置かれている。
     サイドのみパテーションで仕切られていて、ふたりきりの空間だ。ただし背面はパーテーションが置かれていないのであまり暴走することはできない。
    「ひとりで行っても大丈夫でしょうか……」
    「大丈夫だと思うよ。カウンター席もあるし、ひとりのお客さんもいるから」
    「なら、行ってみようと思います。折角の情報ですから、他の人にも声をかけてみますね!」
     ありがとうございますと頭を下げて軽い足取りで去っていくユリアの後ろ姿を見つめながら、瀞真は小さくため息を付いた。
    「……参ったな」
     今度の休日にこっそりと店を訪れるつもりだったが、この分だと武蔵坂の生徒も訪れるに違いない。
     思案顔の瀞真とは打って変わって、ユリアは楽しそうに声をかけて回っていた。
    「休日に、ケーキバイキングはいかがですか?」


    ■リプレイ

    ●甘い誘惑
     思い出をひとつ作ろうと訪れた杏里と八雲。いつの間にかお皿に山盛り。
    「アンリ、こっちもおいしーよ!」
    「八雲ちゃんの、くれるの?」
     甘い欠片をお互いに交換して。照れくさいけれどちょっとほっこりする甘い思い出に。
    「疲れてる? 疲労には甘いものがいいよ♪」
     共に訪れた右京が疲れているようなので詩音(d12982)は自分の皿の上の甘いケーキを指す。
    「い、いやいや。オレはこっちでいいよ」
     だが右京は顔を引きつらせて甘さ控えめのケーキにフォークを刺す。
     開始早々カオス気味なのは【卓上競技部】の面々。
    「彩希のケーキ、ちょっともらっていい?」
     誕生日に用意したい鷲司はお返しにと彩希にあーんとケーキを差し出して。
    「美味しいね」
     ぱくりと食べた彩希はきらきら満面の笑みを返す。
     リア充な雰囲気を無視した彰二は全制覇とばかりに沢山乗せたケーキを頬張っていた。
    「あー……幸せだなぁ」
     こういう所に来るのが夢だったのだ。
    「おいしい……」
     背景に花が見えそうなほど幸せオーラを発している都璃は向かいの詩音(d13352)の視線に気がついて表情を引き締める。でも暫くしたらまた緩んでしまうのは仕方がない。だって甘いもの大好きだもの。
    「椿さん、はい、あーん」
     朱梨が椿の口にケーキを運んでいる。それだけなら微笑ましい光景で済むのだが、なんだか様子が変だ。次々に詰め込まれるケーキに、溢れんばかりのジュースを流し込まれて意識はブラックアウト。心配する店員に詩音(d13352)が食べ過ぎただけで問題はないと説明している声が響いた。
    「やっぱり、乙女心が惹かれてやまないのよ。ケーキバイキング、って響き」
     幸せそうに笑いながら、伊澄は苺をぱくり。
     祝い損ねた誕生日のプレゼントにとセティアートに奢りに訪れた亮。だが周囲の視線が痛い。
    「ほら、亮も少しは食べたらどうだ?」
    「う、うん……じゃあ、いただきます」
     幼馴染が山脈の如き量のケーキを優雅に平らげていくからである。見ているだけでお腹がいっぱいになりそうだ。
     甘くないものから甘いものという順に食べていく芥。そんな彼を見る真魔は自分のペースで。苺を使ったケーキが好きだと言われて頷く。
    「今日はお付き合いGrazie,芥。苺を使った物が好きなンだな……了解。今度色々作ってみるで……良かったら食べてくれな?」
     一口ずつケーキを食べさせあって笑むのはイヅナ、深愛、ひふみの三人。深愛がお土産に頼まれたスイーツデコの話題が出ると、ひふみが吃驚な発言をする。
    「以前私が間違えて食べたスイーツデコは、精巧で本物同様でした」
     味と食感以外は、と告げた彼女にイヅナは目をまん丸くして。でも気持ちはわかると声を上げる深愛とひふみだった。
     クラブの皆で食事会。【パンドラ】の皆の過ごし方はそれぞれだ。乃愛は少しにしておこうと思いつつも皆がモリモリ食べている姿を見るとやっぱり食べたくなって。シャルトリアは昨日から絶食を続けていたらしく、細い体に続々とケーキを消していく。ケーキに囲まれる幸せ。
    「皆でマナーを守って楽しくお食事、だよ!」
     部長らしく声をかける江夜。宿名はどれから食べようか迷いに迷って。普通の料理もしっかりと手に取る。対照的に夜弥亜はケーキでタワーを作ってしまっていて。けれども全部食べるらしい。ルールは守るようだからいいのか? 江夜はちょっと首を傾げるけれど。一足先にお腹が一杯になった大輔は許可を得て仲間達を撮影する。楽しみにしていた皆だから、素敵な笑顔を撮ることができた。
    「彼女いないの?」
     隅の席で一人でいる瀞真に声を掛けたのは澪。彼氏持ち!? と勝手に盛り上がる澪に瀞真は苦笑気味だ。
    「勝手に決めちゃうぞ? せいまは彼氏募集中って」
    「……こら」
     軽く告げられて脱兎のごとく逃げ去る澪。次に声をかけてきたのは冬舞だった。許可を求めて隣へ座って。闇堕ちから救われて編入してきた冬舞は仲良くできたらと思ったと告げると、瀞真も嬉しそうに微笑んだ。いくつか会話を交わし、新たな出会いの記憶となる。
    「うーん? このケーキはどう作るのでしょうかねぇ……」
     真剣に研究しながら食べる流希は少し変に映るかもしれない。だが皆自分のケーキに夢中だから。
    「タカさんコレあげるですよ」
     手当たり次第取ったケーキの中に酸味の強いものがあったため、【Promenade】のなこたは涙目になりながら皿ごと隼鷹に差し出した。
    「遠慮なくいただくぜ。サンキュー」
     ぺろりと食べた彼は世界やサリィに視線を移す。
    「世界やサリィはどんなケーキが好きなんだ?」
     後で同じのを作ってみようと思っているから味見をお願いして。
    「苺のショートケーキはどちらになるんでしょう?」
     くすくすと笑いつつ赤い物ばかり食べているなこたに尋ねる世界。高い所が苦手なサリィはこっそりカップルシートを横目で見た。
    「俺が取ってきてやるよ。何がいいんだ?」
     考えていたのは誰かさんの事だけど、気にかけて貰えたからまあよかったかな?
     レアチーズケーキなどを取った玖耀と、ガトーショコラなどを取った忍はユリアと相席しつつ話に花を咲かせている。
    「向坂さん、おすすめのケーキはありますか?」
    「そうですね、カシスのムースタルトが美味しかったですよ」
     話をする二人をよそに、忍はケーキをぱくついていた。
    「ケーキはね……苺だよね、やっぱり。あ、でもマンゴーのムースも捨てがたい」
     【井の頭五の百合】のかえでが挙げるケーキをフーリエが黙々と皿に乗せていく。
    「ちょっとずつ食べ合いっこしない?」
     志歩乃の提案に二人共賛成。折角なのだから、色々な種類のケーキを食べてみたいというもの。こんな日も、たまにはいい。
    「こちらのケーキもとても美味しいですよ。一口如何ですか?」
    「これ美味しいよ。良かったらどうぞ」
    「ではこちらも。青林檎のババロアです」
     セカイとるりかからケーキを差し出され、ユリアは瞳を輝かせて一口ずつ戴き、自分の手にしていたババロアも勧める。至福の美味しさに三人で微笑みあった時、近寄ってきたのは淼だ。混み合いの元凶となったユリアに文句を言うが、実は相席させて欲しいという事らしい。
    「抹茶好きか? 俺が粗方取ったせいでしばらくは食べれないぞ?」
     皿を差し出されたのに甘えて、一つ戴く。
     無理やりあーんさせて月人にケーキを食べさせた桜子は彼の口元に気がついて。ガキみたいだと恥ずかしがる彼の口元を拭う。
    「桜子も俺より自分を気にしろよ」
    「うわ、ちょ……」
     お返しにとさらっと指でクリームを拭われ、照れる桜子。結ぶ次の約束。
    「コレはフランボワーズのタルトだよ♪」
     【絆部!】のはなは紗奈とひよりと一口ずつケーキを交換。
    「あのね、こっちもおいしいよ」
    「ん、美味しい♪」
    「これどの辺りに有ったのー?」
     分けっこすれば色々食べられるのがやっぱり嬉しい。紗奈は隣の与一にも差し出して。
    「青木ちゃんありがとーな!」
     笑む与一の近くで、皐が悠にシュークリームを食べさせている。
    「俺達も女子に負けないくらい『あーん』ってやっちゃうぞー!」
     ぱくり。悠もそれを美味しそうに戴いて。だが急にペースダウン。こっそり与一の皿からフルーツを……。
    「それ俺のイチゴやんかー!?」
     笑って誤魔化す悠。それを見て皆で笑いあった。
    「共有って大事だと思わない?」
     途中から律嘩と同じ物を取ってきた暁の言葉に、自分のペースで好きな物を食べればいいと告げる律嘩。
    「共有なんて――既に今この時がそうなのだから」
     律嘩の言葉にあら美味し、とぽつり零す暁であった。
     ユリアと歓談しながらケーキを食べていた莉奈の所に、瑠璃羽が瀞真を連れてやってきた。四人でワイワイとフォークを動かす。
    「ユリアさんは特に好きなケーキとかある?」
     ユリアはムースもタルトもが好きだと返した。
    「瀞真君、もっと食べなきゃ♪」
     瑠璃羽と莉奈とユリア、三人が目を合わせて「ね~?」と笑い合うので、瀞真は微笑みつつ一口戴いた。
     密談をしにきた華月と雷歌は隅っこの席で。
    「敷島さんは好きな人、居る?」
    「……は?」
     固まった雷歌を見て華月は息を一つ吐いて聞いてみただけ、と。
    「あー……いや、今はいねえな。つうか最近まで考えたこともなかったわ」
     それなら私にもチャンスがあるのな。
     さらっと全種制覇した【矢野屋】の優雨。好きな物をいっぱい食べられるのは幸せだ。千結にあーんと差し出せば、恥ずかしそうにしながら彼女はぱくりと。その様子を乙女が観察して悶えている。一方虎丸は数個食べて一休みしていたが、差し出されれば喜んで食べていたのだが。
    「ほれほれ! 口開けて!」
     乙女のわんこ蕎麦ならぬわんこケーキ攻撃を受けて完全にダウン。昔の事を思い出しかけていた千結が浸る間もない、楽しい時間。
    「はむ……うん、うん。悪くない」
     ケーキを頬張ってしたり顔なのは義実。ゆったりと取ってきたケーキを楽しんでいく。
    「ねね、一口! 一口!」
    「ん? これ? うっかり後をひく美味しさだよー」
     人が食べている物は美味しそうに見えて。願う狭霧に燐音は一口差し出した。
    「あ、そだ。俺のケーキも一口いかが?」
     お言葉に甘えて燐音もぱくり。笑みが溢れる。
     年少組がはしゃいでいるのを見ると、普段無愛想な【治療研】の直人も表情が緩む。充から皿を受け取って大盛りに盛りつけて。
    「雨霧様はたくさん食べられるのですね、凄いです」
     充の尊敬の眼差しが少しこそばゆい。
    「ニーナはチョコレート?」
    「交換してみよう、か」
     桐とスヴェンニーナは互いの皿を見て、少しずつ交換。ん、美味しい。
    「また来たいよ!」
    「また、こうやってこられたらいいな」
     仲間達との時間は何より味を引き立てる。
     分け合えば美味しいも2倍になるでしょう? オニキスは千鳥の口元にフォークを寄せて。きょとりとして瞬きを二度の後、ぱくりと食べれば広がる甘味に笑みが咲く。
    「美味しいね」
    「美味しいね」
     砂糖より甘いオニキスの笑みに鸚鵡返しにして。流れる時間は心地いい。
     イチゴのタルトは甘みと仄かな酸味が心地よく、生地のサクサク感が式の口一杯に広がっていく。美味しいね、と微笑めば90分なんてあっという間。
    「なんと……今日のカロリーを大幅にオーバーしてしまった……」
     と言いつつも別に減量中とかカロリー制限をしているわけではない公平。甘いものが好物なのだ。食べても太らない体質でよかった。
     麻樹は一番のお勧めをユリアに差し出して、彼女が食べるのを向かいの席で嬉しそうに見ている。女の子がケーキを食べている時の顔はこっちまで幸せになるのだ。
     胸の大きな女性に目が行くけれど、そんな空風の鬱憤もケーキが緩和してくれる。
    「……はぁ、幸せ」

    ●甘い時間
    「いつからそんなに大食漢になったの」
    「ケーキは別腹に決まってんだ!」
     小さい頃はもっと女の子らしかったのにと昔を儚む史明。
    「随分大きい別腹だね」
     思わず出た失言は、嬉々としてケーキをとっている朔之助に聞こえてしまっただろうか。
    「あ~ん、してみせよ。今日誘ってくれた礼じゃ」
     葛之葉の言葉にナナイは従う。2つの意味で彼女を楽しませたいから。
    「鷹くんといるとシアワセ。……こういう時に言う言葉は、アイシテル……でしょ?」
    「あー……、俺も、だ。こういう場所で言わせんなっつの、ばぁか」
     深紅と鷹之の方がケーキよりも甘い。
     どちらが沢山食べられるか対決を制したのは鵺白。内心ソワソワしながら蓮二は彼女のお願いを待つ。
    「今日くらいは甘えさせてね」
     撫でてと胸元に押し付けられた頭に、そっと手を伸ばす。
    「これ一度やってみたかったんだぁ~♪」
     足を広げた黒咲の間に白兎が座る。密着度の高さに照れつつも、内心嬉しい黒咲は撫でたりキスを落としたり。
    「白兎ちゃん……大好きや……」
     あーん、と差し出されたケーキを雪音は小さな口を精一杯開けて食べる。可愛い。
    「つ、次は私の番、ですからね……あ、あーん……」
     恥ずかしがりながらも差し出されたケーキを食べる大破。される方も恥ずかしいのだ。
    「ほれ、お互いシェアしようぜ」
     ちょっと取り過ぎたかもしれないケーキも二人でシェアすれば食べきれるはず。鋼は鷹秋の口元へフォークを運ぶ。
    「はい、あーん♪」
     二人きりの空間だから、ちょっぴり大胆に。
    「えっと、じゃあ次を取ってくるね♪」
    「……あれ?」
     自分よりは遅めだがペースの落ちない菜月を見て、大樹はふと考える。
    「え? 全種完食!?」
     食べきった菜月に負け、密かに消沈気味の彼の横で菜月は笑顔だ。
     長年の夢を叶える為に光流が持って来たのはフォンダンショコラのホール。一人で割って食べようと思ったが、折角なのだから千佳と一緒に。蕩けるように千佳もにっこり笑んで。一人で内緒のおやつも素敵だけれど、大好きな人と一緒ならもっと。
    「クリーム、ついてますよ」
     手で拭ってそのクリームを自分の口に入れる紫信。蘭世は赤くなって「あーんなのです」とケーキをお裾分け。二人の甘い時間。
    「慧杜も好きでしょ、苺。あげるよ」
    「……イイの?」
     向い合って顔を見るのが恥ずかしくてソファにしたのに、怜示の緑色の瞳をじっと見つめてしまう慧杜。意識した顔の近さを笑って誤魔化した。
     瀞真に勧められたケーキを取ってきた澪は、隣の緑樹にフォークを向けて。
    「緑樹お姉ちゃん♪ あ~んです~♪」
     ぱくり、甘さと美味しさに緑樹も笑顔になる。
    「あ、美味しい……。このタルト美味しいですよ。オススメですっ」
     ユニスの言葉に沙雪はあーんと口を開けて。その返しにユニスの顔は真っ赤だ。
    「ユニスの作るケーキも楽しみだなぁ」
     今度は手作りケーキで。
    「私のも半分あげるので遥翔君のも半分ちょーだい?」
     李と半分こ。ケーキを食べている李の笑顔を見るのが楽しい。何よりも、好きな人と好きな物を食べるのは幸せだ。
     お返しにとケーキを差し出した銀河の指は、黒虎の口の中へ。驚きと恥ずかしさと嬉しさで銀河の顔は耳まで真っ赤だ。
    「……あれ。どうした? 銀河さ~ん?」
     目の前で手を振る黒虎は、悪戯っぽく笑っている。
     ケーキを含んだばかりの模糊の唇をサッと奪う一平。固まっている彼女の唇を優しく撫でて。
    「これはバイキングできねぇのか?」
    「残念ながらこれはオーダーメイドなの」
     視線を逸らした模糊。食べ飽きないって意味なら許してあげる。
    「ふふ……美味しい?」
    「……ん、美味しい」
     紫が差し出したケーキを食べた殊亜はお返しにケーキを差し出して。悪戯心で頬にクリームを付ける。メッと注意する彼女も可愛い。
     お互いお勧めのティラミスとタルトを食べて微笑み合う紫桜と柚姫。甘い物は人を幸せにすると実感。
    「また、こうやって何処かにでかけような」
    「是非」
     結ばれる新たな約束は甘い香り。
     甘い、幸せ。

    作者:篁みゆ 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2013年1月22日
    難度:簡単
    参加:107人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 6/キャラが大事にされていた 19
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