どっきり☆はぷにんぐ

    作者:光次朗

    ●乙女の夢
    「へぇ~、こんなのもあるんだ」
     天外・飛鳥(囚われの蒼い鳥・d08035)は、本屋に貼られた巨大なポスターの前で足を止めた。
     ゲームの広告だ。きらびやかな美青年たちが並んでいる。女の子向け恋愛シミュレーションゲーム、いわゆる乙女ゲームの広告らしい。隣に並んだ関連本の多さからも、人気のすごさが伺える。
     それぞれ設定に違いはあれど、ごく普通の女の子が、あれよあれよとモテモテに──というのが、おおまかな内容だ。
    「乙女ゲームね……。ギャルゲーにハマって闇堕ちしちゃった男の子がいたぐらいだから、こっちのパターンもあるかも」
     そして、彼の予感は的中する。

    ●ドンピシャリ
    「飛鳥の危惧したとおりだ。乙女ゲームにハマった少女が、淫魔に闇堕ちしようとしている」
     神崎・ヤマト(中学生エクスブレイン・dn0002)はそういうと、開封済みのゲームを差し出した。局地的に人気の同人乙女ゲーム、『どっきり☆はぷにんぐ』だ。
    「少女の名は愛原モモ、中学三年生。自分がこの乙女ゲームと似た状況に置かれることで、現実とゲームの区別がつかなくなってしまうんだ。そうなる前に彼女に接触し、闇堕ちさせ、倒す──つまり、救い出して欲しい」
     ヤマトは『どっきり☆はぷにんぐ』の説明書を開いた。
    「少しだけやってみたんだが……主人公の家に少年らが居候を始め、主人公がモテモテになるという内容のゲームだ。いわゆる逆ハーレムだな。奇しくも今回、愛原モモの家に、実際に遠い親戚の少年たちがやってくることになっている。そうなってしまってはもう遅い」
     モモは、ゲームの内容さながら、一つ屋根の下でハプニングの数々を引き起こし、やがて少年たちに襲いかかってしまうのだ。お風呂でどっきり、着替え中にどっきり、等々──アグレッシブな行動の果てには、闇堕ちしてしまう。
    「少年たちがやってくるのは、日曜の夜。おまえたちにはそれまでにモモの家に行って、遠い親戚のふりをし、彼女と交流して欲しい。仲良くなって逆ハーレム状態にすれば、闇堕ちするはずだ。そして、夜までにかたをつけてもらいたい。親戚についてモモは詳しく聞いていないし、会ったこともないはずだ。両親は朝からその親戚を迎えに行っていて、夜まで帰ってこない」
     家は郊外の一軒家、親戚を居候させるだけあって大きな家で、部屋も余っているようだ。愛原モモには兄弟もいない。
     全員が居候として訪れれば多少は驚かれるだろうが、ゲームに傾倒している愛原モモならば言いくるめることは可能だろう。全員男性(男装も可)でも、女性が混ざっていても問題はない。
     勝負は、日曜の朝十時ごろから、夕方六時ごろまで。
    「男性にとっては、このゲームをプレイするのは精神的にダメージがあるだろうが……一応、渡しておく」
     ヤマトはかるく額を押さえた。どうやらダメージを受けたようだ。
    「愛原モモの攻撃は、物理攻撃と……セクハラまがいのものが主だ。スピードが速いから、そこは注意してくれ」
     ヤマトは灼滅者たちをまっすぐ見据え、いった。
    「心も身体も、大切にな。健闘を祈る!」


    参加者
    陽乃下・のどか(ぷにたまいちご・d00582)
    蓮華・優希(かなでるもの・d01003)
    天野・白夜(無音殺(サイレントキリング)・d02425)
    斬崎・霧夜(霧の夜は怪しい変態にご注意・d02561)
    高遠・彼方(剣爛舞刀・d06991)
    天外・飛鳥(囚われの蒼い鳥・d08035)
    雨霧・直人(甘党ダンピール・d11574)
    黒洲・厨二(愛に堕ちし片翼の暗黒天使・d12466)

    ■リプレイ

    ●男の子ワンサカ
    (「やばい、やばい、やばい!」)
     愛原モモは階段を駆け上がった。自室に入り、急いで引き出しを漁る。デジカメを取り出して、長いストラップを首からかけた。
    「親戚八人と同居とか! 美形ばっかりとか! やばいもうどうしよう!」
     まさに、大好きな乙女ゲーム、『どっきり☆はぷにんぐ』そのものだ。
     両親不在の日曜朝、突然訪れた見知らぬ八人。今日から居候することになった遠い親戚だという彼らに、モモの目は爛々と輝いた。これから始まる夢のような日々を想像するだけで、よだれと妄想が止まらない。
    「モモちゃん?」
     はっと、我に返る。遠慮がちに声をかけてきたのは、陽乃下・のどか(ぷにたまいちご・d00582)だ。
    「な、なにかな! えっと……のどかちゃん!」
     モモの記憶力は乙女ゲームで鍛えてあった。のどかは貴重な女性キャラ、もう一人と比べてどうやら親しみやすそうだ。仲良くしておくべし。
    「ごめんね、おばさまたちと入れ違いになっちゃったみたいで……」
     という設定だ。のどかの言葉に、モモは首を大きく横に振る。
    「ううん、そんな! ゆっくりしてて!」
     モモはぎゅっとのどかの手を握った。
    「あたしたち、仲良くしようね、のどかちゃん! いろいろ、教えてね!」
    「うん、もちろん」
    (「いきなりカメラ装備……! 想像通り、むしろ想像以上だよ……!」)
     モモの欲望は笑顔から漏れ出ていた。のどかはこっそり引きつつも、乙女ゲームにおける情報提供キャラポジションとしての役割をまっとうすることにする。

    「霧夜くんはね、ちょっとアヤシイ魅力のお兄ちゃんって感じ。さっき二階を歩いてたけど、なにしてたのかな」
     のどかの話を聞いて、モモはさっそく二階を徘徊していた。やがて、窓際に立っているターゲットを発見。斬崎・霧夜(霧の夜は怪しい変態にご注意・d02561)だ。
    「やあ、モモちゃん。どうしたの?」
     笑みを浮かべ、話しかけてくる。
    「霧夜さんこそ、なにしてるんですか? 窓の外、鳥でもいます?」
    「鳥? ああ、そうだね……」
     霧夜は、そっとモモの前髪に触れた。
    「いま、かわいい小鳥に会えたかな。なんて、ね」
    (「う、うわああああああ!」)
     モモは赤面した。この慣れた様子はどういうことだろう。これはキケンだ。そして大変スバラシイ。
    「兄ちゃん!」
     霧夜とモモの間に割り込むようにして、天外・飛鳥(囚われの蒼い鳥・d08035)が現れた。飛鳥は敵意むき出しの目で、モモを見据える。
    (「……出たなブラコン!」)
     モモは思わず飛鳥を睨んだ。自己紹介の段階で、モモのなかで飛鳥の位置づけは『敵』だった。
     設定上、霧夜の妹。ブラコン。しかし実際のところ、飛鳥は男の子だ。というか男の娘だ。
    「兄ちゃん、飛鳥とあっちに行こうよ」
    「はいはい、わかったよ、飛鳥」
     腕を引っ張る飛鳥に、肩をすくめて霧夜が応じる。
    (「あの子は、いらないなー」)
     モモにとっては、情報提供者一人と、あとはイケメンさえいればいい。

    「白夜くんはねえ……怖そうに見えるかもしれないけど、そんなことないんだよ。いまはリビングでお勉強してるみたい」
     のどかの情報を元に、モモは勉強道具を手に天野・白夜(無音殺(サイレントキリング)・d02425)に突撃をかける。
    「いっしょにお勉強しようよ! 宿題手伝って!」
    「……自分でやれ」
     白夜はモモを冷たく一瞥し、すぐに視線を戻してしまう。
    「いいじゃん、一人より二人の方がはかどるよ。ね!」
    「……仕方ないな」
     モモは白夜の隣に座った。
     徐々に徐々に距離を近づけていき──三分後には、密着。
    「ねえね、これってどういう意味だっけー」
    「……近い」
     白夜の顔がちょっと赤い。それを見て、モモのテンションはだだ上がりだ。
    (「かわいい!」)
     一方の白夜は、心中複雑だった。資料として渡されたゲーム、『どっきり☆はぷにんぐ』に似たようなシチュエーションがあったなとか思い出しつつ。
     あれを全部クリアしたという事実は、誰にもいえない。

    「直人くんはね、無愛想っぽいけど実はかわいいんだよ。さっき台所にいたよー」
     モモは台所に急行していた。そろそろ昼食の時間でもある。料理の腕に自信はないので、菓子系を並べてごまかすべし。
    「あ、直人さん! お腹空きましたよね、ちょっと待っててくださいね」
     来客用の高級な菓子類は、戸棚の上段にあるはずだ。ダイニングのイスを移動させ、上に乗った。
    「このイス、だいじょうぶなのか?」
     雨霧・直人(甘党ダンピール・d11574)は眉をひそめた。イスは安定せず、ぐらついている。
    「だいじょうぶですよー」
     ラブイベント目当てで、あえて選んだイスだったりする。
    「……危ないだろう」
     ため息をつき、直人はイスを支えにモモの下へ移動し──
     うっかり見上げて、すぐに赤面した。
    「優しいんですね、直人さ……」
     モモも気づいた。おパンツ丸見え事件。
    「きゃーっ」
    「うわ! モモっ!」
     慌ててスカートを押さえようとしたモモが、菓子箱と一緒に降ってくる。直人はとっさにモモを庇い、結果、モモが馬乗り状態に。
    「……っ!」
    「ごめんなさい……!」
     謝罪しつつ、どさくさにまぎれてさらに抱きついた。

    「お兄ちゃんったら、寝ちゃったみたい。もう、マイペースなんだから」
     のどかのいうお兄ちゃんとは、蓮華・優希(かなでるもの・d01003)だ。優希は女性だが、男装してイケメン衆に加わっていた。寝ているというのも、もちろん演技。
     モモはまんまとそれにノり、毛布を持って駆けつけた。
     和室の窓際で、優希は本を持ったまま眠っていた。その無防備な姿に、モモの胸が高鳴る。
     訪れた最初に、優しく頭を撫でてくれたのが印象的だった。モモは起こさないようにそっと歩み寄り、毛布を掛ける前にとりあえず写真を一枚。二枚、三枚。
    「ここでキスとか……さすがにそれは、ダメかな」
     さすがにダメだと思ったので、そーっと鎖骨が見える程度に服をはだけさせ、あらゆる角度から写真を撮りまくるにとどめておいた。
    (「それもじゅうぶん、ダメだと思う」)
     寝たふりの優希は内心穏やかでない。が、おとなしく撮られまくった。

    「飛鳥く……ちゃんは、ふふ、すごくかわいいよね」
     のどかの意味深なセリフはほとんど脳に届いていなかった。女の子はどうでもいい。
     一度部屋に戻ろうと廊下を行く途中、ふと物音が聞こえ、モモは立ち止まる。空き部屋からだ。
     ドアに耳を寄せた。かすかに、衣擦れの音。
    「これは……」
     着替え中にバッタリ、が可能なのではないだろうか。
    「あ、間違えちゃったー!」
     そんなわけで、バターンとドアを開け放ち、叫ぶと同時にパシャリ。
    「──っ!」
    「え……っ」
     視界に飛び込んできたのは、確かに着替え中の少年だった。しかしそれは、モモの頭に浮かんだだれでもなかった。
     飛鳥だ。
     裸の上半身に女性特有のふくよかさはなく、たくましささえ感じさせた。華奢ではあるものの、まちがいなく、男性のそれだ。
    「お、女の子じゃなかったの? だって……ブラコンでしょ?」
     飛鳥は目を逸らした。
    「……君が、いたからだよ」
    「え?」
     聞き返すと、飛鳥は意を決したように、モモの手を取った。
    「モテる兄ちゃんにコンプレックス感じて、女装始めたんだ。今日も、君のこと取られちゃうと思って邪魔して……でも、君のためなら女装やめる! ちゃんと男として接したいんだ!」
    (「えええっ」)
     モモのテンションはどんどん上がっていく。頬を染めて、逃げるように走り去った。

    「厨二くんはね……え? タイプじゃないからいい? あ、そうなの?」
     のどかの情報提供を丁重にお断りして、モモは部屋に戻っていた。ちゃっかり隠し撮りしまくった写真のデータを確認し、もろもろ妄想し始める。
    「おい、ちょっといいか?」
     そこへ突然、ノックもせず、客が訪れた。
     八人中最年少にもかかわらず、もっとも身体の大きい──要するに肥満体型の、黒洲・厨二(愛に堕ちし片翼の暗黒天使・d12466)だ。
    「ちょ……っ、勝手に入ってこないでよ!」
    「ふん、着替えてないじゃないか」
     厨二は鼻を鳴らした。ついでに態度も一番大きい。
    「君はいったいいつになったら着替えや風呂をするんだ」
     厨二は入浴中に乱入および着替え中に乱入を狙っていた。しかし、自分から仕掛けるならともかく、日中そうそうそんなチャンスはない。
    「な……なにいってんの! 出てってよ、このKOD!」
    「KOD……かっこよくて、オトコマエで、どきどきしてたまらないって? ふふん、わかってるじゃないか」
     キモ、オタ、デブ。しかし厨二は得意げに自ら脱ぎ出す。
    「なら、ボクが脱ぐだけさ」
    「なんでっ?」
    「何してるのかな?」
     そこへ、霧夜が通りかかった。すでに半裸の厨二の肩をぽんと叩き、モモに笑いかける。
    「二人っきりなんて、妬いちゃうなぁ。モモちゃん、一階で彼方くんが呼んでいたよ」
     そういって、ウィンク。モモは急いで部屋から飛び出した。

    「彼方くんは、クールだよね。でも面倒見いいとこあって、優しいよ」
     のどかの言葉を思い出すまでもない。妹が欲しかったんだよなといってくれた姿を思い出し、モモは急いで一階に駆け下りる。
    「彼方さん!」
    「あ、モモ」
     リビングの窓の前に、高遠・彼方(剣爛舞刀・d06991)は立っていた。
    「家庭菜園やりたいんだけど、庭を案内してもらえないか?」
     スコップや肥料の類が置いてある。もちろんですと笑って、すぐにモモは目を見開いた。
    「ちょっと暑いな……少し汗臭いか?」
     彼方が脱ぎ始めたのだ。なんというシャッターチャンス。モモは堂々とカメラを構える。
    「暑いですよね! 脱ぐしかないですよね!」
     パシャパシャパシャ。もはや隠す様子は微塵もない。
    「家庭菜園、なにを植えるんですか? あたしも手伝います!」
     モモはそういって、窓を開けて庭に出た。
    「俺もやろうかなー」
    「……俺も」
     他の面々も、徐々に集まってくる。
     庭に集結する、イケメン衆。
     モモの胸の高まりは、だんだん常軌を逸していった。
     突然の出会い、度重なるラブイベント。これは現実、けれどまるでゲームみたいで。
    (「あたし……もしかして」)
     心の声は、やがて空気を揺らす。
    「もしかして、ヒロインなんじゃないのっ?」
     モモのなかで、なにかがはじけた。

    ●ヒロインになりたい
    「もっとたくさん、はぷにんぐしようよ!」
     狂喜の笑みを顔面に張り付かせ、モモが木のてっぺんまで飛び上がる。値踏みをするように全員を見渡した。
     すでに、霧夜の殺界形成と優希のサウンドシャッターが発動済みだ。彼らはこうなることがわかっていて、また、こうなるように仕向けたのだ。
    「抹茶粉末ビーム! ほろ苦い初恋の味っ」
     先手必勝、のどかがご当地ビームを仕掛ける。モモはそれを正面から受け、しかし失速せずにのどかに迫った。
    「乙女の恋は二次元だよのどかちゃん! 紅一点、さてはヒロイン狙いねっ」
    「残念だけど」
     振りかぶるモモの目の前に躍り出て、優希がシールドバッシュを見舞う。
    「のどかは紅一点じゃないよ、モモ」
    「──っ」
     モモは跳躍し、距離を取った。それぞれ戦闘態勢に入る面々を見る目が、先程までとは変わっていた。
    「……そういうこと」
     事態を察する。舌なめずりをした。
    「ヤる気満々ってことね」
     着ていた服を脱ぎ捨て、ブラとパンティ姿になる。モモは女性陣二人と、戦闘開始と同時にプリンセスモードになった飛鳥は視界から外し、地を蹴った。
    「なら、力ずくで、落とす!」
    「ヤる気満々さ! その身に現実って奴を教えてあげるよっ」
     自分のもとに来ると信じて疑わない厨二が、やはり戦闘モード──誰がなんといおうとパンツ一丁──で斬影刃を仕掛ける。
     激突する、パンティとパンツ。わずかな隙を突かれ、平手打ちを喰らったのは厨二のほうだ。
    「なんて戦い……! でも、俺が相手だよ!」
     ちょっとすごい光景に若干引きつつも、飛鳥がシールドバッシュでモモを殴りつける。
    「もーう! イケメンにぎゅってしたいのにっ!」
     力いっぱい振りかぶり、モモの拳が飛ぶ。その直後、モモの身体に逆十字が出現した。
    「さぁ、仮とはいえ……妹を返してもらうぞこのエロスめ」
     彼方のギルティクロスだ。彼方はモモではなく、モモを蝕む淫魔を睨みつけていた。
    「うう……イタイけど、でも彼方さんなら、気持ちいいよっ」
    「……都合良い夢物語は此処で終わりだ」
     白夜の鏖殺領域が炸裂する。ダメージを受けながらもモモはさらに唇の端を上げた。
    「イタイの! もっとちょうだい!」
     モモは唇を噛みしめ、たたみかけていく。
    「イタイのがイイのも、いつまでかな」
     戦況を見据えつつ、霧夜のシールドリング。その霧夜に、モモは力の限り抱きついた。骨が嫌な音をたてる。
    (「い、淫魔……は、凄いな……。色んな、意味で……」)
     冷静にヒーリングライトで仲間を回復しつつ、直人は悶々としていた。メディックではあるが、心の殺傷ダメージまでは回復できない。スマンと心で謝罪する。
    「ここまで楽しめているのに、何故現実との区別があいまいになる?」
     攻防を繰り返しながらも、優希が説得を試みる。
    「ねえ、知ってる? 画面の中の男の子って、ちゅーしても冷たいし硬いんだよ。やっぱり、現実の方がいいと思うな、私は」
    「重要なのは、現実と趣味の世界を上手に区切る事だよ。実物の異性を玩具にしてちゃボコられるだけさ……過去のボクのようにね」
     のどかと厨二の説得に滲むリアリティ。
    「現実……なんて! 中のヒト見なければ良かったって思ったことぐらい、みんなあるでしょっ」
     反論しながらも、モモのダメージは蓄積していた。スキンシップ攻撃の威力も弱まっていく。
    「現実で好きな人作って恋愛するのも、楽しいよ!」
     とどめとばかりに、飛鳥のティアーズリッパー。モモは悲鳴をあげた。
    「うちの妹がこんなにエロい筈がない、ってな」
     倒れゆくモモに彼方がつぶやく。
    「……ゲームオーバーだ。まあ、バッドエンドよりはマシだと思え」
     白夜が、日本刀を拭った。

    ●二次元じゃわからない
     八人は、家庭菜園どころではなくなった庭と、自由に使った家を片付けていた。モモの両親と、本当の親戚たちが訪れる前に、元通りにしなくてはならない。
     ソファでひとり目覚めたモモは、ぼんやりとした頭で思い出す。何が起こって、何をしてしまったのか。
    「現実……」
     彼らはその言葉を何度も口にしていた。現実。二次元ではなく、いまこうして生きている世界。
     いままでのモモには、興味のない世界だった。
     けれど。
     現実でしか、味わえないものもあるのだと、気づく。
    「イタイのって、イイ……!」
    「……っ?」
    「まあ、愛の形は人それぞれだよねぇ♪」
     そのつぶやきを聞いてしまった直人が固まり、霧夜は面白そうに笑った。 
     

    作者:光次朗 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2013年1月24日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 2/キャラが大事にされていた 17
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