「うんもー。いつまで待たせんのよー」
きらきらと幻想的に輝く公園のイルミネーションは、本日が最終日。ベンチに腰掛けている少女は彼氏と一緒にそれを見ようと待ち合わせしていたのだけれど――彼氏見事に遅刻中。イライラしながら到着を待っていたら。
「やぁ、そこの可愛いヒト」
ちょっぴり声の高い男性が、横から声かけてきて。
「ボクと一緒にこの美しいイルミネーションの中を歩かないかい?」
なんだかキザっぽい口調でナンパされて、ただでさえイライラしている少女は、
「何よ、私、別に一人で見に来てんじゃないわよ。彼氏と待ち合わせ中なの、他あた……」
自分、そんなに寂しい女に見えた? と、不機嫌そうな顔を向けたら、
「フッ……」
なんだかよくわからんが、かっこつけたポーズで意味不明にきらきら光っているナンパ野郎に唖然とした。
「その怒った顔も可愛らしい。まるで小リスの様だよ」
まるで用意されたセリフを歌うように言いながら、芝居がかった身振りを展開するナンパ野郎。いや。喉仏もなければすね毛もねぇ。そのパンパンなおっぱい分厚い衣装で隠してんのバレッバレ。
「ああ、キミのような可愛らしいヒトを待たせるなんて、どんだけ罪な男なんだ……」
嗚呼、不憫過ぎる。と額に手を当て、沈痛な面持ちで語る人。
キザでナルシストな男よりも何かお粗末なのは、このイルミネーションに負けないくらいの電飾華々しい羽飾りのせい。
「……この人何処かに発電機でも仕込んでるわけー……?」
ぼそっと呟く少女。そう思うくらいの電飾の数々。
「つーかアンタ、女ですよねぇ?」
かまうなさわるなつっこむな。こういう脳内くるくるした人間に対して大切な三カ条を頭の中でリフレインしつつも、ついつい尋ねてしまった少女。
「フッ、ボクはよく、女性のように綺麗だと囁かれるのだよ」
ぜんぜんじょせいじゃないですよ。
そんなノリで髪をかきあげる男装の人。
「さぁ、オジョウサン。このボクの手を取りたまえ。キミの知らない世界に連れて行ってあげるよ」
きらーん☆
微笑を浮かべ、ピンク背景に白百合ポンポン飛ばしてくる男装の人。
コイツ、ヤッベー。
失笑通り過ぎ、軽く戦慄すら覚えるほどの意味不明のオソロシサ。知り合いに思われたくないのでさっさと撤退しなければこの身が危険だーと今更ながらに察知した少女は、
「あ、彼氏来たー」
正直来ちゃいないが、離脱!
――したかったんですけれども。
「さぁ、ボクと一緒にきらきらの夜を過ごそうじゃないか!」
ふぁさぁとさっきよりも羽飾りの比率が増えたのは半獣化したせい。
「アーレー」
可哀想に、少女はこんな淫魔にお持ち帰りされてしまったのです。
「そしてそのお持ち帰りの先に待っていたのは、勿論、ゆ……ゆ……ゆゆゆゆゆ……りりり……」
依頼三度目だけれど、未だに灼滅者を前に緊張が隠せないエクスブレインの健全な少年(たぶん)は、あいかわらずうまくことばがだせないようだ……。
そして止めどなく二つの鼻の穴から赤い液体を垂れ流しながら、
「と、とにかくですね。三兎・柚來(小動物系ストリートダンサー・d00716)さんの予想通り、ゆ、ゆゆゆゆり……うぶっ」
「大丈夫?」
鼻血を押さえこもうと必死のエクスブレインの健全な少年(たぶん)へ、鼻血のせいで喋りづらいよね。と、柚來はつっぺを作って手渡し。
「あ、柚來さん。ありがとうございます」
頭を低くして、謹んで受け取るエクスブレインの健全な少年(たぶん) は、つっぺをねじ込むと咳払いし、
「とにかくですね。再び淫魔が現れたんだす! 現れたんだすよ!」
だすというのは彼がコーフンして言い間違っているだけであり、誤字ではない。
「前回凄い楽しいオカマの淫魔がいたから、男装の淫魔もいるかなって思ったんだけど」
まさか本当にいるなんて思わなかったぜと、たぶん一番ビックリしているのは柚來本人。
「その淫魔なんですが……だ、だだだだだんそうしているんですが、ほ、ほほほほほほ豊満な体を包むには明らかに窮屈な燕尾服と!」
すぽーんと抜けた左のつっぺ。
「このへんのくびれとぴっちぴちのしりとふとももを隠すためにふぁっさふぁっさと盛られた孔雀の羽根!」
次は右のつっぺがすぽーん。
「僕の解析では、上から90、58、87です!」
キリッ!
やりましたいでしょう僕。と清々しいまでの達成感を鼻血の止まった顔に出すエクスブレインの健全な少年(たぶん)。
というかそんな解析頼んでねぇ――いや一部の人は聞きたかったかもしれませんが。
そんな解析にはまったく興味を示さず、無邪気な様子の柚來は、
「ところでその淫魔の他の特徴は?」
一番大事な説明要求。
「ええ、その淫魔の名前はユリシーズと名乗っているんですけれどね――面倒なのでユリちゃんとしましょう!」
こぶし握りしめ、勝手に命名するエクスブレインの健全な少年(たぶん)。
「ユリちゃんは、名前の通り女性が好きらしく!」
というか名前関係ない。何故ならユリシーズであって決してユリちゃんではない。
「可愛い恰好の女性にナンパを仕掛ける模様。しかもくるくる縦ロールがお好みで!」
「ふーん。つまり、女の子の灼滅者に、髪の毛を巻いてもらえばいいんだ」
「ええ、更に、ロリータの恰好をすればカンペキです!」
といった後に、何故だか鼻血を再来させるエクスブレインの健全な少年(たぶん)。
「そして女の子が大好きなユリちゃんは、その場に男がいることを許さず――ななななななんんとぉぉぉぉぉ、男の人を勝手に女装させてしまうんです! それを攻撃含む十秒の間にやってのけるという驚異の早技で!」
そう、つまり、『会話する・扉を蹴破る・窓ガラスに突っ込む・エレベーターのボタンを押す』という時間のかからない行動並みの早さで神技を使ってくるのだ!
「つまり、柚來さんがいつもの元気っ子な少年の恰好で赴いた場合、ユリちゃんに強制女装されてしまうのです!」
なんてオソロシイ。
勝手に女装されてしまうだなんて、なんて男の子にオソロシイ敵なんだ!
「ううー見たい! 皆さんの女装姿が! そしてユリちゃんもぉぉぉぉぉ!」
悔しそうにごろごろ転がるエクスブレインの健全な少年(たぶん)。
「それでさ、この淫魔はパッショネイトダンスと、制約の弾丸 と、ペトロカース、龍骨斬りを使ってくるみたいなんだよな」
なんだかさっきからこの人調子悪そうだしと、柚來はとっとと話を進めるため、先に貰っていた解析結果を皆さんにお伝えして。
とにかく、この依頼は、男装淫魔をおびき出すために、人気のない場所でくるくる縦ロールのロリータちゃんの囮を用意し(何人でも可)倒すというもの。
ただし、ノーマルな装いの男性及び男装女子は、龍骨斬りのサイキックが当たると勝手に女装させられちゃうというおまけつき!
覚悟して挑めーーーっ!
「というわけで、女装させられる前に女装してしまえーっという方の為に、衣装を用意してあります!」
急にガバッと起き上がると廊下から衣装小道具引っ張り出すエクスブレインの健全な少年(たぶん)。
「とにかく、行くなら色々用意しなくちゃいけないよな」
戦略的に。
ともあれ、男装淫魔退治宜しくお願いいたします。
参加者 | |
---|---|
三兎・柚來(小動物系ストリートダンサー・d00716) |
西場・無常(第二級殲術実験音楽再生資格者・d05602) |
鳴神・千代(自称萌えの探求者見習い一号・d05646) |
月雲・螢(薔薇の錬金術師・d06312) |
ヴィルクス・エルメロッテ(愛猫家の狼・d08235) |
七篠・神夜(お姫様の為の夜想曲・d10593) |
白山・痲亜(サイレンスエッジ・d11334) |
アリアーン・ジュナ(冬色の記憶・d12111) |
冬ともなれば、ただ寒いだけの公園は人の気配も乏しいものであるが、しかし今日は違う。
まるで花が咲いたように色とりどり、スタンスも千差万別、甘ロリから和ロリまでくるくる縦ロールのロリータちゃんが勢揃い。
白山・痲亜(サイレンスエッジ・d11334)は髪型をツーサイドアップに変えて。白黒モノトーンのミニ丈のゴスロリ服で、淫魔の好みに合ったスタイルで参戦。
いつもはゴシック調のドレスを愛用している月雲・螢(薔薇の錬金術師・d06312)は、白やピンクを基調とした、フリル多用の甘ロリ系ドレスに上機嫌。でも見知った顔がきやがったりしませんわよねと辺りの警戒を怠らず。もちろんその場合は、後頭部殴打による記憶喪失で丸く収める所存。
「男装淫魔とか割りと冗談だったんだが……」
慣れないウイッグとふわふわペチコートの入ったスカート。もともとノリのいい三兎・柚來(小動物系ストリートダンサー・d00716)は囮役としてロリータちゃんに女装済み。動きにくい、ただその一点のみに憂鬱さを感じている模様。
くいくいとスカートの位置を微調整しつつ、
「どうしてこうなったんだろうな?」
「ホント、どうしてこうなったんでしょうねー?」
まさか女装する事になるなんて、世の中ってわからないもんだよなーと呟く柚來に同意するように頷く鳴神・千代(自称萌えの探求者見習い一号・d05646)。水色基調のロリータ服で囮役。だけど、地味に心の中では男の子の女装に興味とわくわくが尽きない様子。もちろん男装女子も萌えますねと、待ち伏せ班のヴィルクス・エルメロッテ(愛猫家の狼・d08235)が、キリリと燕尾服を着こなす姿にもドキドキしちゃったり。
「多数で様々な年齢や容姿を用意したけど……」
囮班をくるりと見回す螢。柚來の容姿の可愛さもさることながら、アリアーン・ジュナ(冬色の記憶・d12111)の年期の入ったロリータ姿は女の子と間違えても不思議じゃない。最初に声を掛けられるのが女装の方なら女として少しショックよねと螢。
囮班が公園のど真ん中で待ち構える後ろで、ベンチや茂みにこっそりと隠れる待ち伏せ班。
「……まさか、この格好で依頼に行く事になるとはな」
和ロリに黒猫耳&黒猫尻尾。淫魔時代に使用していた一着を纏って女装した七篠・神夜(お姫様の為の夜想曲・d10593)は昔の自分がフラッシュバックしてくるようで、ちょっぴり複雑そうな様子。
千代は溜息交じりの神夜の一言を、地獄耳でちゃっかり拾いあげていたらしく、ずささっと隣へとスライドし、
「折角女装したんだし、神夜先輩も私と一緒に囮班に来ればいいじゃないですかー♪」
なんで待ち伏せ班なんですかと、神夜のゴスロリ姿にキュンキュンしながら、これって私得と嬉しそうにしている千代。そんな様子に神夜は、これはあとで、あまり知られたくない人がいるからと口止めしておいたほうがいいなと思ったり。
ともあれ、数名自分をかなぐり捨てて淫魔に挑むわけですけれども。縦ロールのロリータちゃんがこんなに密集していれば、ヤツのアンテナに引っかからないわけもなく。
『やあ、麗しいオジョウサンがた。こんなところで何をしているんだい?』
無駄に羽飾り広げつつ、前髪かきあげながらやってきた変人、もとい淫魔のユリシーズことユリちゃんだ!
きらきら電飾羽飾りに、胸がパッツンパッツンな燕尾服に山高帽。キザな仕草が違和感禁じ得ない。一応それなりの容姿で普通にしていれば何も気にならないのに、キャラが残念過ぎる!
「格好がキモイ……」
「こん……な……」
聞いていたけれど、間近で見た微妙極まりないインパクトに、思わずそう漏らしちゃう痲亜。異性装の嗜みというものを全く以て理解していないユリちゃんに、目眩すら覚えるアリアーン。ブラックアウトせず踏みとどまった自分を褒めてあげたいほどに、こいつはヒドイ。
それにしてもユリちゃんはオナベなのか、それとも男装で単純に女の子をナンパがしたいのか、ただの愉快犯なのか……彷徨える男装の方向性に、西場・無常(第二級殲術実験音楽再生資格者・d05602)は無表情のまま一瞬BGMのチョイスに迷ったけれども、
「主義主張は……まぁ……」
この際どうでもいい。
とりあえずユリは殲術実験音楽の優先対象者であって、運命は終わることが確定しているので、曲だけに焦点当てればロマンチックなのは間違いないので沈没する船のテーマでも流しとけ。
『ボクと一緒に、愛の航海に行かないかい?』
無常が流した曲を意識したかどうかわからないが、ユリはそんなことほざきつつ、くるりと一回転したあとウインク。
ぽ〜っとした顔で「カッコいい(はーと)」とか呟いている千代に気を良くしたユリは、ますます調子に乗ってキザなポーズ。螢はまんざらでもない様子ニッコリ微笑み、
「あら、お上手ね? 私を楽しませてくれるのかしら?」
『モチロンさ、オジョウサンたち。退屈させたりしないよ』
勝手に複数形変換して、ハーレム楽しむつもりのユリ。
「あなたほど綺麗な人は始めてみた、お姉さまって呼んでいい?」
無感情にも等しい声で痲亜が褒めれば、
『フッ……ボクはこれでも男なのさ』
キミにならお姉さまと呼ばれてもいいかなと、ちょっぴり偉そうな態度でのたまりやがった。
今この瞬間一切の躊躇と加減なくその無駄な乳平らにしてやりたいんでけどと、恐ろしいくらいの冷淡さで痲亜が視線を送っているのも、ユリは全く気付かず更にグイッと詰め寄り、
『さぁみんなまとめて、愛の大海原へ旅立とうじ……』
「世間知らずのお嬢様だと思った?」
棒読み無表情で、差しのべられた手を振り払うかのように、いつものロリータ服を脱ぎ捨てて、異性装……というかアリアーン本来の性別の、きりりとした正装姿を披露するなり、
「残念! 女装の灼滅者でした!!」
『ふわっ!?』
とうとう耐えきれなくなって、アリアーンは紅蓮斬一発。華麗なタイミングで入った無常チョイスの戦闘開始SEと、綺麗に決まったアッパーに、エビゾリで飛んでゆくユリ。
「危ないわね、一瞬色々と忘れかけたわ」
鮮やかな弧を描き真横へ吹っ飛んだユリを見送りながら、ついつい遊んでしまったわねと、螢はスレイヤーカードを解除し、追い打ちリングスラッシャー。
「前回といい、今回といい、世の中いろんな淫魔がいるんだな」
柚來は世界の広さに感心しながら、ふわふわペチコートが入った桃色甘ロリスカートを押さえつつ、
「淫魔は可哀想だけど、見つかったからにはご愁傷様ってことで」
「ぜーんぜん見惚れてなんかないんだからね!」
ディーヴァズメロディの響きに合わせる様に放つ、千代のバスターライフルの射撃音。
「久々の狩りだ、楽しませてもらうぞ」
酷薄な笑みを浮かべ、まるで疾風の如き足さばきを披露しつつ龍翼飛翔。翻る龍砕斧が、ユリの二の腕を深く切り込んで。
「……さっきまで言ってたのは嘘。……あなたみたいな残念な格好の勘違い巨乳馬鹿女に憧れる? ありえないのはその無駄な胸だけで十分」
ヴィルクスに負けず劣らずの俊足でユリの懐へと間合いを詰めた痲亜。完全に見下した視線をユリへ落とし、くるりとナイフを弄んだ次の刹那には、鮮やかに乱れるナイフの軌跡。
ぱっくりと裂かれた左胸。ヴィルクスが得物に艶めく血をしなやかに振り払うと、余裕さえ浮かべながら、
「おやおや、ついていないな。最後のナンパがこんな結果とは」
『フッ……何を言ってるんだい? ついてないどころか男冥利に尽きるよ。見たまえ、この燃える様な愛の照れ隠しの数々、類を見ないじゃないか!』
たらたらと血を流しつつ立ちあがるユリ。どうやら囮役の攻撃を、「いやーん、ユリシーズ様ったら!」というセリフと共に放たれる照れ隠しの平手打ちだと勝手に解釈しているらしい。
ぴしーっと、痲亜のコメカミ辺りがひきつったのはたぶん気のせいじゃない。無言で黒死斬、ユリの眉間にザックリ。
「……曲や歌詞にも色々解釈があるとされるが……」
シリアスをことごとく破壊するコイツのセリフの解釈こそ類を見ないなと、鏖殺領域展開しながらやっぱり無表情のまま呟く無常。
「確かに類を見ないな。このおめでたさ」
神夜もソニックビート奏でつつぼそっとツッコミ入れて。
『そもそもキミはオジョウサンなんだから、女らしい恰好をしたまえ!』
「お前が言うか!?」
ヴィルクスへと女装龍骨斬りをお見舞いしたユリヘ、お前どこまで頭がおめでたいんだと、神夜思わず亜高速で振り返りソニックビート早弾きしながらツッコミ。
そしてその神技で、黒を基調にしたレースをふんだんに使用したふんわりロリータファッションに早着替えさせられて。ヴィルクスは信じられないと愕然としながら、ふりっふりのスカートに戦慄さえ覚え。
「わ、私は負けん……! このような恥辱になど、負け……負けんぞっ!」
恥ずかしさに顔から火が出そうなうえ、あまりの屈辱に号泣しそうだけれども。涙目ながらも必死に顔に出さぬよう取り繕い、完全八つ当たりのフォースブレイク。
「十分サマになってるんですがねー」
「わんっ」
惜しい、と指鳴らす千代。もちろん眼福ばかりでなくユリへの攻撃も忘れていません。バスタービーム一発。霊犬の千代菊も可愛らしく吠えて、ヴィルクスの傷を(できれば心の傷も)癒そうと浄霊眼。
「あら、想像以上の早業ね」
ユリの無意味だが素晴らしき技に感嘆し、敬意を表しながらフォースブレイク繰り出す螢。
学生服姿の無常を見て、ふふんと笑うユリ。華麗なる手さばきで、女装龍骨斬り。
一瞬何が起こったかわからず、固まる無常。しかし次の瞬間くわっと目を見開き、
「俺に……雑音を聞かせたな!」
劇画チックな形相を醸し出す勢いで、ヘッドフォンを外された怒りに燃える無常。縦ロールのヅラとマリー・アントワネットの如き豪奢なドレスを身に纏ったままヘッドフォンを装着し直すと、世紀末を彷彿させるBGMと共にディーヴァズメロディ。
アリアーンはゼーハー肩揺らしつつ、
「……異性装を愛する者として……君は許せない……異性装する者は、理由は何であれ、少しでも異性に近付く努力するべきだ! にも関わらず君はその努力を少しもしないで人に迷惑ばかりで全く紳士的じゃないっ!!」
呪いでも植え付けそうな据わり切った目でユリを睨みつけながら制約の弾丸。マジ痺れて動かないでくれ、だ。
『フッ、何を言ってるんだい。ボクはもともとオトコさ! というか』
キミこそ女の子の方がお似合いだったよと、血をだらだらと流しながらも腹の立つことにパラライズ回避して、必殺女装龍骨斬り炸裂!
「こうやって実際に依頼に行くとなると、色々と思う事があるもんだな」
神夜は誰にも聞かれないような小声で漏らしたあと息を吸ったものの、闇堕ち中を含めた昔の事を思い出して、少し躊躇ったように目を曇らせたけれど。
「オレの歌に聞き惚れな?」
すぐにそれを消してディーヴァズメロディを歌いだせば、
『そんなにボクを振り向かせたいのかい?』
ウインクとともに投げキスという名の制約の弾丸送られて、背筋に寒いものが駆け抜けた神夜はパラライズ。
神夜先輩大丈夫ですかーと千代菊に浄霊眼お願いして、千代はバスタービームロックオン。
「大人しく私たちに灼滅されちゃってね☆」
『フッ、キミを前に大人しくなんてなれないさ!』
「くそっ……! 覚悟していたとはいえ……! 貴様、絶対に許さん!」
そのまま大人しく喰らえばいいのに回避したユリ目がけ、ヴィルクスは滲む涙を押し止め、悔しさに歯噛みしながら龍翼飛翔。
『フッ、そんなにツンツンしないで素直になりたまえ』
覚悟は女装じゃなくて惚れることで、許さないのは屈辱ではなく惚れてしまうほどの美しさだと、ユリはあっぱれなほど自己中心的に誤変換しながら植え付けられた怒りに任せてペトロカース。
『いま、ボクが心の扉を開けてあげよう』
調子に乗りまくったツラで手を差し出すユリ。白目剥きつつ背後に稲妻はしせら、あまりの気色悪さに、固まるヴィルクス。
ところで。
(「この人俺が男なのわかってんのかな」)
なんとなく他のメンバーは男女の区別付いているようだけれど、自分は何にも触れられていないことに、ちょっぴり不満の柚來。バレなかったらそれはそれで何か困るんだけどと、真顔で疑問に陥る柚來。ならばと男の子らしくやんちゃなアクションでユリの後ろへ詰め、
「えっと……ごめんね?」
とりあえず鬼神変で思いっきりぶん殴る。
たとえスカートが全開になろうとも。
たとえズラが明後日の方向に吹っ飛ぼうとも。
『ふっ……全く照れ屋なオジョウサンだ……』
頭からぼたぼた血を落としながらも立ち上がり、あくまで照れ隠しだと信じて疑わないユリ。
「コイツ何故わからないんだ!?」
もしやコイツ俺も女だと思いきってるんじゃないかと、再び闇落ち時の過去に流される神夜。
「えーっと……俺、男なんだけど」
正直ショックで、柚來は思わず少し拗ねた顔でユリを睨むように見上げて。
『ハハハ冗談を。キミはオジョウサンに決まってるじゃないかー』
自分男ですの理屈で、女性の性別柚來へと押し付けるユリ。嗚呼、何かが末期。
「押し付けは良くないわよ?」
現実を認めなさいと螢のリングスラッシャー。ざっくり切り裂かれ、ユリの体力も末期。
「その腐った認識、全て貴様に返す!」
無常はひらひらと縦ロールたなびかせ、ふりっふりのドレスの裾翻しながら、強烈なまでの戦闘SEに合わせ、ディーヴァズメロディを叩きこめば、したたかにとどめを狙っていた痲亜がそのすきに肉薄。
「……消えるといいよ」
ついでにその無駄な乳もねと、痲亜はナイフ閃かせながらユリの目の前を横切って。
『きゃあぁぁぁぁんっ☆』
バッチリ決まったティアーズリッパー。最後の最後で女の子っぽい絶叫上げつつ、ユリちゃんは灼滅されたのでありました。
南無。
「はぁ、終わったなー!」
「ふざけた相手だった……」
動き慣れない服装に疲労も倍増。ちょっぴりぐったりしながら、地面に座りこむ柚來。くるくる縦ロールの向こう、無表情のまま踵を返す無常。
「早く着替えよう。動きづらくてかなわん」
なぁ無常そのまま帰るつもりかとツッコミ入れて。とっとと着せられた衣装脱ぎ捨て、うーんと背筋を伸ばすと、凛とした声で帰還を促すヴィルクス。
「可愛い女の子の為にとクラブの男性に女装龍骨斬りを試してみたいわね。あの技伝授して欲しかったわ……」
ちょっぴり天を見上げながら、本気で技を盗めば良かったと螢。そうすればあのこにあんな格好やこんな恰好で楽しめたのにと悔しそうにして。
ともあれ、めでたくおかしな淫魔を灼滅し、一部の人はちょっぴりトラウマ抱えつつ帰還したのでありました。
作者:那珂川未来 |
重傷:なし 死亡:なし 闇堕ち:なし |
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種類:
公開:2013年1月25日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 2/キャラが大事にされていた 13
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