夜に咲き誇る紅

    作者:東城エリ

     ミッドタウン内のモダンな内装のライブハウス。
     ワンドリンク制の場所であるらしく、入口から直ぐ近くはバーが設置されていた。
     物販のあるホールを抜けると、ライブ会場へと続く扉が3つ並んでいる。
     扉を開き、中へと入ると、会場は熱狂の渦。
     高い天井であるのに、熱気で室温は高い。
     ステージにはゴシックな衣装と濃いめのメイクを施したバンドメンバーが5人。
     退廃的な歌詞と愛を恋うような仕草は観客の心を釘付けにしている。
     煌々とステージを照らし、観客達はバンドが奏でるメロディに酔い、頭を揺らしていた。
     舞台装置は西欧の戦時中の病院がコンセプトらしく、白と赤、喪の黒がアンティークガラスのシャンデリアが照らす。
     ステージの白とライトダウンされた観客席の黒。
     サビの部分はヴォーカルの声に合わせるように声を重ね、深みを感じさせた。
     オールスタンディングのライブであるらしく、椅子などはない。
     会場後方にテーブルが幾つか並んでいる。
     ステージ側からバックヤード、ステージ両脇からホール2階に続く通路。
     どうやら、ステージの一部のよう。
     ステージへと殺到する観客達ほど、入り込んでいない観客達は後方の壁側に背を預けていたり、熱狂的な観客達の後ろ側で奏でられる曲を全身で感じていた。
     三日月連夜は扉を押し開け、間近に見る花火のように、ライブ音は知らずに自身の身体に響いてくるのだと妙に実感した。
     この高揚感は、殺戮の時に感じるものとどこか共通点があると三日月は思う。
    「命を刻むリズムは、殺戮の刃が奏でるものに似ているようです」
     手に持つ男の身長に届きそうな大きな武器と、細やかに切り刻めそうな長目のナイフが、一瞬ステージの明かりが横切って煌めいた。
     三日月はステージへと向かう。
     深紅の絨毯が足音を消し去る。
     ステージに吸い付くようにしている観客達は背後からやってくる三日月に気付くことなく、薙ぎ払われた。
     後ろから断ち切られて、前にいる観客達に降りかかる紅い血。
     飛び散る汗だと思ったのか、まだ気付かない。
     モーゼが海を割るように、血の道を作ってステージへと迫る。
     トランスしてしまっている観客は気付くのは遅く、気付いたのはバンドの演奏が止まって暫くした時だった。
     悲鳴と鳴き声、立ち尽くす者、逃げだそうと扉に殺到する者。
    「逃げられるとでも思っているのでしょうか」
     逃げようとする者の身体を紙を切り裂くような気軽さで断ち切り、僅かに微笑を閃かせる。
    「灼滅者には早く来て貰いたいものですね。このままでは、全員を殺してしまいそうですよ」
     ステージの明かりを浴びながら、三日月は刃の血を払った。
     
    「それでは、始めますわね」
     五十嵐・姫子(高校生エクスブレイン・dn0001)は、集まったメンバーを見ると、話し始めた。
     ダークネスである六六六人衆がひとり、序列五九七位の三日月・連夜が先日現れてから、それほど日にちが経っては居ませんが、彼が再び現れると、未来予測に出ました。
    「彼は、皆さんのことを誘っているようです」
     皆さんには、彼が現れる場所に赴き、彼が行っている殺戮を止めていただきたいのです。
     ダークネスには、バベルの鎖の力による予知がありますが、私達エクスブレインが予測した未来に従えば、その予知をかいくぐり、ダークネスに迫る事が出来るでしょう。
     強力で危険な敵ですが、ダークネスを灼滅する事こそ、灼滅者の役目なのではないでしょうか。
     厳しい戦いになるとは思いますが、皆さんだと大丈夫だと信じています。
     
     今回、彼が現れるのはミッドタウン内にあるライブハウスです。
     オールスタンディングのライブ会場です。
     ライブハウスでライブが始まって、観客が曲に夢中になったころ、三日月連夜が現れます。
     そして、ライブに熱中している観客の背後からステージに向かいつつ、殺戮を始めます。
     事態が起こってから、三日月に接近してください。
     それ以外の状況では、彼が何らかの気配を察知して逃走してしまう可能性がありますから。
     殺戮が始まれば、逃げだそうとするのですが、観客は曲に入り込んでトランス状態の人もいますから、醒めてから行動する人もいるので、観客の行動がやや読みづらいかもしれません。
     ステージ側に三日月が居る以上、三日月の切り開いた場所が戦場となります。
     これ以上の犠牲を出さない為にする方法は、三日月連夜と相対すること。
     そうすれば、殺戮の刃が観客へと向かうのを阻止することが出来ます。
     三日月の目当ては灼滅者の皆さんですから。
     仕留めることは難しいと思いますが、これ以上の殺戮で血を流させないよう。
     
    「お願いします」
     と、姫子は真摯な眼差しを向け、皆を見送ったのだった。


    参加者
    平・等(渦巻き眼鏡のレッドキャバリア・d00650)
    苑田・歌菜(人生芸無・d02293)
    一・葉(デッドロック・d02409)
    立見・尚竹(インフィニットスレイヤー・d02550)
    比良坂・八津葉(死魂の炉心・d02642)
    御神・白焔(黎明の残月・d03806)
    月詠・千尋(ソウルダイバー・d04249)
    水走・ハンナ(東大阪エヴォルヴド・d09975)

    ■リプレイ

    ●ライブ会場にて
     夜になり、ミッドタウン一帯が煌めく宝石箱のように様変わりしはじめた。
     寒々しい夜空も光が地上や階上を満たし、甘やかな雰囲気を感じさせながら歩く人々の姿が見える。
     ショップが並ぶエリアから、ライブハウスへと続く通路を抜けると、ライブを見に来た客が通路を埋め尽くすようにいた。
     入場時間が近いのだろう、観客は男女比が半々といった感じで、ゴシックテイストの衣装に身を包んでいる者が多い。
     開始前のざわめきは、静かな興奮を孕んでいるようだ。
     ライブスタッフのアナウンスが、入口付近から聞こえ、一瞬静かになるが直ぐにざわめきに取って代わる。
     観客の入場が始まったのか、行列が少しずつ前へと進んでいく。
     その様子を少し離れたところで見守り待機することにする。
     ライブハウスへ入る方法は、一・葉(デッドロック・d02409)のプラチナチケットを使って関係者を装い、皆は同行者という扱いで入る予定だ。
     ライブが始まるまではもう少し時間がある。
     ドリンクとパンフレットを手にして、会場入りして行く観客の姿を捉えながら、やってくる三日月連夜を待つ。
     この観客達の幾らかの人々が犠牲になると思うと、心が痛む。
     苑田・歌菜(人生芸無・d02293)は、純粋に音楽を楽しみに来ている人々に降りかかる災いに怒りを募らせる。
    (「何が狙いだか知らないけど、悪趣味にもほどがあるわ。灼滅者をお呼びだっていうなら、堂々と相対してやろうじゃない……全力で、行くわよ」)
     一般の人々の犠牲と、灼滅者を挑発するような行為。
     湧き上がる疑問。
    (「意図的に事件を起こしている……。ならば本当の目的はなんだ?」)
     立見・尚竹(インフィニットスレイヤー・d02550)は、相手がこの疑問に簡単に解答を与えてくれるとは思ってはいないが、もしかしたらと思う。
     気まぐれさを感じさせたなら。
    「無差別殺人……許されたもんじゃないわね」
     水走・ハンナ(東大阪エヴォルヴド・d09975)は呟く。
     だが、関西人であるハンナには突っ込んでおかなければならないと思える事柄がひとつあった。
    (「……ミッドタウンなのに、なぜ序列が五七三位じゃない!? 某音ゲーのお膝元だというのに……!」)
     あと二四位上げておけばいいのに、と気になって仕方がない。
     月詠・千尋(ソウルダイバー・d04249)は、ガラス窓の向こうに広がる夜景から、ライブハウスの入口へと視線を戻す。
    (「目覚しく序列を上げる殺人鬼……か、興味あるね。でも、そう好き勝手にはさせないさ」)
     そのために自分達たち灼滅者が居るのだから。
     大きな渦巻き眼鏡の奥で、理性的な思考をしながら平・等(渦巻き眼鏡のレッドキャバリア・d00650)は内心呟く。
    (「愉快に人を殺めるとは困ったモノだね。暴走した牛は、いずれ力尽きて倒されるもんだぜ? そいつがオレ達の仕事だ」)
     ライブ開始時間になったのだろう、場内アナウンスが耳に入ってくる。
     会場の扉が閉められ、観客の高揚した声が途切れた。
     だが、扉の向こうからは熱気が漏れ出てくるよう。
     待つのも何となく疲れると思いつつ、ハンナはしょうがないと納得する。
    「ま、これも仕事だしね」
     あともう少しだろうかと思い始めた時、三日月連夜が現れた。
     スーツ姿にコートを羽織って、会社帰りといった風。
     比良坂・八津葉(死魂の炉心・d02642)達が待機している方向とは逆の通路からやってくると、緊張した様子もなくライブハウスへと入っていく。
     スタッフに呼び止められなかったのは、三日月に深紅の瞳を向けられ、狂気を孕んだ眼差しに何も言えなかったのかもしれなかった。
     バーエリアと物販ブースを通り抜け、3つ並ぶ扉の内、真ん中の扉を押し開ける。
     扉が開かれたことによって、会場から漏れ出てくるライブ音。
     三日月が中へ入ると、扉は元通りに閉まっていく。
     高い天井のライブ会場を満たす熱狂の渦。
     観客を魅了するゴシックテイストの衣装を纏ったバンドメンバー5人。
     白と赤、喪の黒がライトアップカラーで、曲に合わせて移り変わる。
     バンドが奏でるメロディと退廃的な歌詞は、観客を魅了する。
     曲に酔った観客は頭を揺らして、トランスしているよう。
     オールスタンディングの中、観客の殆どは舞台の方へと寄せ、後方は紅い絨毯がよく見えた。
     一瞬、三日月はそのバンドが奏でるライブ音が身体に響くのを感じて、薄く口角を上げる。
     手に持つ男の身長に届きそうな大きな武器と、細やかに切り刻めそうな長目のナイフ。
     紅い絨毯が三日月の足跡を消す。
     曲に熱中する観客は背後からやってくる凶刃に気付かないまま、薙ぎ払われた。
     絨毯を更に紅く染める。
     断ち切られた身体が転がり、後方の観客が舞台側へと押してきたのだと思うが、汗よりも密度の高い液体と香りに魅入られたまま、何気なく後ろを振り返った。
     血の川のように、断ち切られた人体から流れ出る血はどんどん広がっているのを、現実とは実感出来ないまま、ぼんやりと見つめた。
     異常に気付いたバンドメンバーが演奏をやめ、観客の惨劇に唖然とし、どう行動すれば良いのか分からずに身動きもしない。
     トランスしている状態から目が覚めて、周囲の状況がわかると、とりもなおさずに逃げだそうとする。
     メロディが満たしていた空間は悲鳴に取って代わられ、生み出す場所から命を刈り取る場へと変わった。
    「逃げられるとでも思っているのでしょうかね……?」
     三日月は自身に触れそうになる者が居れば、埃を払うように刃を振るう。
    「灼滅者には早く来て貰いたいものですね。このままでは、全員を殺してしまいそうですよ」
     全て殺してしまっても構わないのだが、メインではないのだからと、やや興味が失せた眼差しを向けた。
     早く刃を交えてみたいと願いながら。

    ●誘う三日月
     三日月がライブ会場の扉へと消えたのを遠目に確認してから、行動に移し始めた。
    「通して貰うぜ」
     葉のプラチナチケットの効果で、入口を通り抜けると急いでライブハウスに繋がる扉へと向かう。
     避難しやすいように3つの扉を全て開放すべく、自然と真ん中の扉を歌菜と尚竹、御神・白焔(黎明の残月・d03806)と千尋が、左右の扉を葉とハンナ、八津葉と等、そして等のサーヴァントでナノナノと煎兵衛が通り抜ける。
     その先に広がる光景に一瞬目を見張るが、逃げようとする観客が扉へと向かってくると、事前に決めていた通りに、行動に移す。
    「死に染まれ――」
     白焔の口から解除ワードが零れる。
     守り強くした歌菜と尚竹、白焔と千尋が三日月に相対している間に、葉たちが避難を促す。
     歌菜は冷静に周囲の状況を把握する。
     すべきことを、常に出来るように。
     今は、三日月の刃が一般人に向かないようにし、自分達へと興味を向けさせること。
    「貴様の所業、俺が許さん。我が刃に悪を貫く雷を……、いくぞ!」
     尚竹が凛々しい眼差しが三日月を見据える。
    「鬼さんこちら、呼ばれて飛び出てきてやったわよ」
     歌菜が、ふふっと余裕のある笑みを浮かべて、満たせたわねと続けた。
    「私の誘いに乗ってくれて嬉しいですよ」
     舞台を後ろに、三日月が出迎える。
    「血の絨毯、綺麗でしょう……?」
     やって来た尚竹たちに満足そうに頷き、その血の道を通ってくるといいと言葉をかけた。
    「サリュ、殺人鬼。悪いけどそこまでだ」
    「おや、フランス語ですね。ごきげんよう、紅い瞳が魅力的なお嬢さん」
     千尋の挨拶に、三日月が笑みを浮かべる。
    (「赫い世界が望みかならば、己が死に染まれ」)
     白焔の鋭い眼光が三日月に向けられた。
     取り囲むようにやってくる4人に向けるは、厚さと長さを兼ね備えた深紅の刀。
     一瞬断ち切られたような錯覚を感じさせるが、守りを堅くしているお陰でそれほど、深刻なダメージではない。
     が、
    「流石は本職、油断したら一瞬で殺られそうだッ!!」
     守りを厚くしておいて良かったと千尋は思う。
     互いの立ち位置が離れすぎないように、仲間の位置に気をつける。
    「避難させるぞ」
     葉が、隣を走るハンナに声をかける。
     ハンナは頷き、
    「出でよ! 灼滅の精霊よ!」
     と、解除コードを唱えた。
    「さて……行かせてもらうわよ、このKY!」
     赤と黒で彩られた鮮やかでありながら、どこか禍々しいデザインのベースギターを手にして、叫び歌うように、そして会場全体に声が伝われと願いながら、割り込みヴォイスを使う。
     一瞬、ハンナに視線が集まったのを上手く利用し、続けて言葉を紡ぐ。
    「ここに留まってると危ないわ! 早く出入口から逃げて!」
     腕を開け放たれた扉へと向け、手振りで大回りするように誘導する。
     ハンナの行動に会場後方近くにいた観客が夢うつつとしか思えないような惨劇の場から解き放たれようと足早に向かっていく。
     一方へと観客が流れ始めると、同じように行動に移す者が増える。
     避難する観客とは逆に、葉は舞台へと走る。色鮮やかなピンク色の髪が、風圧を受けて後ろへと流れ揺れた。
     舞台袖へと引っ込んでいくバンドメンバーを視界に端に捉え、電力の入った機器を使い、目を覚まさせようと考える。
     バイオレンスギターを激しくき鳴らし、アンプを破壊した。
     大きな音が舞台近くに居た観客の目を覚まし始め、様変わりしたライブ会場の様子に我先にと逃げ出していく。
     その様子を眺め、なんとか戦闘での余波などを食らって、犠牲が増えることはないだろうと、安堵する。
    「遊びはここまでだ。お子ちゃま達はとっとと帰んな」
     大多数が等に比べれば年上だが、逃げなければという思考で一杯になっている一般人には、その言葉を発している人物についての突っ込みは沸いてこないものらしい。
     等の言葉遣いが自信に満ちていたせいもあるだろう。
     三日月へと視線を投げかけ、
    「三日月よ、オマエさんは容易く命を刈りすぎるぜ。そんなヤツを許しておけないねえ」
     刃についた血に、等は眉を寄せる。
    「許しを請うつもりなどありませんよ」
     刃から滴り落ちる血が新たな血溜まりを作った。
    「煎兵衛、今日がんばったら、明日のおやつは倍にしてやるぜ。がんばりな!」
     相棒であるナノナノの煎兵衛に檄を飛ばす。
     ナノナノ、と力強く鳴き、主の言葉に応えてみせる。
     八津葉はハンナと葉の行動で注意を惹くことに成功し、誘導が上手くいきそうだと見て取ると、三日月へと歩を進め、言葉を投げかけた。
    「このキザ眼鏡。好き放題にやってくれるわね……。そんなに赤だの血だのが好きなら、キザ眼鏡自身のを見せてやるわ。まさか『自分のは嫌』なんて、言い出さないわよね」
     近づくにつれて鼻腔を刺激する噎せ返るような血の匂いに、忌々しい気分になる。
     八津葉の仕草に三日月は微かに眉を動かして見せるだけに留めた。
     録音機器に気付いているようだが、好きにすればいいと見逃したのだと分かった。
    「好きに出来るのは、強者であるからだと思うのですがね。……ああ、この人達には切れ味と紅の色彩を楽しむ為だけにしたことですが。それと、あなた方を誘い出すための材料、ですね」
     私を傷つけるというのなら、試してみると良いでしょうと、挑発してくる。
    (「……コイツが何か交渉事を考えているのなら、気になるのも確か。世界最強の鬼神変使いを目指す私だけど、別に戦馬鹿では無いので聞くだけは……聞きましょうか」)
     洗いざらい吐かせてみせてやろうじゃないと、八津葉は内心で呟く。
     4人の足並みが揃っているのを見、ちらりと後方に視線を向け、ふむと呟く。
     三日月自身を用心しているのだと悟る。
     一般人の避難に尽力しているのを見て、思うところがあったようだが、口にすることはない。
     灼滅者達が三日月の行動を観察しているのと同様、三日月も灼滅者達を観察してるのだ。
     自分達が考えることを相手が考えないという予想は楽観的に過ぎるだろう。
     尚竹はそんな三日月を見、単独行動は危険だと捉えた。同時に嬉しいと思う。
    「三日月連夜、相手にとって不足無し。腕が鳴るぞ」
     歌菜はWOKシールドで殴りつけながら問う。
    「三日月、貴方の狙いは何? まさか、私たちをおちょくることだけが目的なのかしら?」
     そんな筈はないでしょうと、接敵した状態で見上げ、真意を逃さぬようにする。
    「それは、私を満足させてくれたら、とだけお伝えしておきましょうか」
     歌菜の戦いを楽しんでいる感覚が三日月は分かるのか、微かに目を細めた。
     千尋が、暗器・緋の五線譜から繰り出す封縛糸に合わせて、白焔がWOKシールドで殴りつける。
     尚竹がソーサルガーダーで守りの力を強化した。
     前線を維持し続けて居る内に、戦場で足手まといにならない程度に避難を誘導することが出来た仲間がやってくるのが分かる。
     三日月が、紅い刀身を持つ長目のナイフが毒の霧を後方へと走らせた。等と煎兵衛、八津葉が食らう。
     全員の戦力を図る様な動作。
     歌菜がマジックミサイルを撃てば、尚竹はシールバッシュで殴り、白焔がギルティクロスで切り裂き、千尋が暗器・緋の五線譜に影を宿して当てる。
     葉がブレイジングバーストを撃てば、
    「その運命、浄化するわ!」
     ハンナが、ギルティクロスで切り裂く。
     等がペトロカースを使い、
    「灼滅者を探していた訳は何なの」
     八津葉が鬼神変で殴り掛かりながら、睨み付けるような眼差し向ける。
    「貴方がたの力を図っているのはお判りでは?」
     今日はここで終わりとばかりに、刃を一振りして距離を取る。
    「楽しみをとっておくなんて、トロくせぇこと言うなよ。限界まで殺り合おうぜ。俺達を誘った理由はこれだろ?」
     葉が三日月を挑発する。
    「殺り合うことは好きですが、今回はここまでにしましょう。十分、実感出来ましたからね。次なる戦場で踊れることを期待していますよ」
     三日月は、そう言い置くと舞台袖から退場した。

    「本当に私たちの力を確かめていただけなの」
     八津葉の脳裏に疑問が浮かぶ。六六六人衆は、他の六六六人衆同士での暗闘を繰り返しているのではないのか。
    「六百位を少し超えただけでもこの強さか……。四百三百とかどうなるんだろ?」
     三日月が去った舞台を見やり、ハンナが呟く。
    「命あっての物種、また次があるさ」
     千尋は命を繋いでいれば、巡り会うことがあるだろうと前向きに考える。
     白焔は、残った怪我人に救急の手がまわるように、警報のボタンを探す。
     見つけると、仲間にこの場を離れる準備を促し、惨劇が起こったライブ会場を後にしたのだった。

    作者:東城エリ 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2013年1月31日
    難度:やや難
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 22/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 4
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