闇に誘われし時

    作者:幾夜緋琉

    ●闇に誘われし時
     大阪府は某所、都心からは電車で一時間程度の距離にある、浜辺近くとある大学の合宿場。
     間もなく深夜という時ながらも、その合宿場にいる陸上部の学生達は、半ば真夜中まで懇親会の瞑目で、精一杯盛り上がっている。
    「いやー、なんだか楽しいよなぁ♪ こんなんなら、毎日合宿でいいじゃん!」
    「そーだよな♪ ほらほら、もっともっと飲もーぜー」
     勝手知ったる仲間達と一緒だからこそ、そんな無礼講で真夜中まで起き続けてしまう訳で……。
     ……そんな合宿場に向けて、迫り来る足音が幾つか。
     無論、学生達はその音に気づくこと鳴く、彼らが……合宿場の周囲を取り囲んでいくまで気づかない。
     そして。
    「あー、ちょっと飲み過ぎたわ。ちょっと夜風に当たってくらぁ!」
     と一人の大学生が、合宿場を出る。
     夜空を見上げよう……としたのだが。
    『……ウゥゥ……』
    『……え……うわ!?』
     そんな呻き声に気づいた時にはもう遅く……彼は悲鳴を上げることなく、影……いや、ゾンビの群れに包囲されて、死に至るのであった。
     
    「さて……みなさん、集まっていただけましたね? それじゃ、説明を始めますね」
     五十嵐・姫子は、集まった灼滅者達を見渡しつつ、説明を始める。
    「今回は皆さんに、とあるダークネスが一般人に被害を及ぼそうとしている事件を未然に防いできて欲しいのです」
     と言いながら姫子が差し出した写真。
     大阪府某所の大学の合宿所……という話だが、端から見れば学校の傍らにある、記念ホールの様な建物。
    「ここにどうやら、ダークネスの一つ、ノーライフキングの配下であるゾンビ達が現われるみたいです。ゾンビとは言いますが……ノーライフキングの力を受けた彼らは決して油断ならぬ実力の持ち主達です。その点、まずは認識しておいて下さい」
    「また、ダークネスはバベルの鎖の力による予知がありますが……私の予測した未来にしたがって頂ければ、その予知をかいくぐりダークネスに迫る事が可能です。被害を出さない為にも、皆様のご協力をお願いしますね」
     と、静かに頭を下げる。
     そして、続けて姫子は詳しい敵の情報を説明する。
    「今回、皆さんが相手にするのはゾンビはゾンビですが……強力な力を持つ、所謂ボス格のゾンビと、普通のゾンビとなります。普通のゾンビは体力が多いものの、攻撃力、防御力は並程度……6人という数が問題になるかと思われます」
    「対しボス格のゾンビは他のゾンビよりも一回り大きな身体をして、体力は他ゾンビの2倍程度。またその巨体、重さを活かしての攻撃を嗾けてきます。また噛みついての毒のバッドステータス攻撃にも注意が必要になるでしょう」
    「……尚、戦闘開始時において、合宿所の大学生達で外に出ているのは一人です。皆様が声を荒げて追い返せば、恐れおののいて……出てこなくなると思います」
     そして最後に姫子は。
    「例えこちらに未来予測の優位があったとしても、彼らの戦闘力は決して侮れません。皆様、決して油断なさらぬ様、お願いしますね」
     と言って、優しく微笑むのであった。


    参加者
    大浦・政義(夕凪・d00167)
    殺雨・空音(メイド執事・d00394)
    浦波・梗香(フクロウの目を持つ女・d00839)
    巨勢・冬崖(蠁蛆・d01647)
    唯済・光(さよならフリージア・d01710)
    丹生・蓮二(エングロウスエッジ・d03879)
    長門・睦月(正義執行者・d03928)
    レイネ・アストリア(壊レカケノ時計・d04653)

    ■リプレイ

    ●闇の足音
     姫子からの話を聞いた灼滅者達、彼らが向かうはとある大学の合宿所。
     そこに現われるというノーライフキングを倒すが為、灼滅者達は急ぎ向かっていた。
    「しかしこういうのホラー映画の冒頭でよくあるよね、こういうの。現実に起きたらたまったもんじゃないけどさ」
    「全くです。ゾンビは何度戦っても慣れませんねぇ……外見も武器ですよ、あれは」
     長門・睦月(正義執行者・d03928)と、大浦・政義(夕凪・d00167)の会話。
     確かに二人が言うとおり、ゾンビの外見はおどろおどろしくて……闇夜に出会えば恐ろしい事この上無いだろう。
    「まぁ……しかし死して尚彷徨う者。未練なり、憎悪なりを抱えているのかしらね?」
    「かもしれませんねぇ……ほんとはノーライフキングそのものと戦ってみたいんですけどねぇ、……出てきませんかねぇ、にへ」
    「そうだね。でも……まだ僕達は未熟だ。今……戦う事になっても、恐らく返り討ちに遭うだけだ。だからこそ、今はこうして、小さい敵を倒していかないとね」
    「ええ。まぁ細かい理由はどうでもいいわ。其れが悪夢であるならば断ち切るのみ。歪な夢に無慈悲な幕を下ろすだけよ」「
     レイネ・アストリア(壊レカケノ時計・d04653)、ウルルとクリス・ケイフォード(小学生エクソシスト・dn0013)が会話すると共に。
    「ま、何にせよ被害者は居ないに越したことはないだろうさ」
    「そうだな。敵は取り巻き六体に、本命が一体……と。数の上では我々が優位とは言え、統率の取れた敵は侮れない」
    「……全く。本当ゾンビ共も面倒な場所に出て来るものだな。ほんと、さっさと片付けて帰るぞ」
     唯済・光(さよならフリージア・d01710)、浦波・梗香(フクロウの目を持つ女・d00839)、殺雨・空音(メイド執事・d00394)が言うと共に。
    「……よし、何はともあれ大学生達に被害を及ぼさぬ様、気を入れて行くぞ」
    「おう! 一般人への被害は必ず食い止めるぜ!!」
     巨勢・冬崖(蠁蛆・d01647)に丹生・蓮二(エングロウスエッジ・d03879)が頷きあうとともに、灼滅者達は波打ち際の音色を聞きながら、その合宿場へと急ぐのであった。

    ●影刺して
     そして、空は真っ暗闇に包まれた深夜0時頃。
     灼滅者達がその合宿場へと到着する。
     ……何の変哲も無さそうな場所ではあるが、何処か周りは異質な雰囲気に包まれているような気もする。
     ……そうしていると、灼滅者達の視線の先に……。
    『ふわぁぁ……あー、夜風が気持ちいーぜー』
     飲み過ぎて夜風に当たろうと外に出てきた大学生。
     そしてそんな大学生が出て来るのを待っていたかのように……合宿場の周囲から、7人のゾンビ達がうぞろうぞろと現われる。
    「出てきたぞ」
    「うん。いたいた、B級ホラーでよくありますよね、こういうのって」
    「ええ……さあ、終焉を、此処に」
    「さぁ……やりますかね」
     空音と睦月、蓮二に頷きながら、レイネと共に殺界形成をその場に展開。
     それと共に、すぐさま蓮二を始め、灼滅者達がダークネスを追い越して、学生の元までやってくると。
    「……少し引っ込んでいて貰おうか」
    「おい、中にはいってろ。出て来るんじゃねーぞ!!」
     空音と蓮二がパニックテレパスを使用しつつ、大声で威圧。
     更に睦月、光も。
    「下がって、死ぬよ!!」
    「死にたく無ければ、部屋の中でずっと閉じこもっていなさい!!」
     殺界形成と怒声とあれば、普通の大学生は驚き、恐怖に合宿場の中へと逃げ込んでしまう。
     そして一般人が合宿場の中にはいるのを確認したらすぐさま。
    「さぁ君達の相手は自分だ、瞬着!!」
     睦月が威勢良くスレイヤーカードを解除。
     そしてクラッシャーポジションで、一番手前のゾンビに対し鋼鉄拳で殴りかかる。
    『……グゥ……』
     その一撃に、何処か恨みを込めた呻き声を上げるゾンビ……。
    「死者は墓地で眠るのがあるべき姿。貴方達にはここで眠っていて貰いますよ!」
     政義が威声を上げて、マジックミサイル。
    「……眠れ、真白なる夜の中で」
     レイネがフリージングデスで攻撃する一方、空音、梗香、光の三人はそれぞれ預言者の瞳、高速演算モード、ソーサルガーダーでそれぞれエンチャントを付加していく。
     その一方、ウルルは離れた位置からご当地ビームでゾンビを次々狙い澄まして攻撃連発。
     光のビハインドも顔を見せるを行う。
     対し、灼滅者の動きに対しゾンビ達からも攻撃。
    『ウァァウウ……!』
    『グゥァアア……!』
     声とも突かない呻き声を何度も何度も呻きながら、その手を大きく振り落として攻撃。
     とは言えそれら攻撃を受けるのは冬崖と、ハインドの両者。
     ダメージを交互に受け止め、ダメージの分散を図る。
     とは言え数が多く、そのダメージは多くなる……それに加えて、一際大きな身体のゾンビが、大きな剣を振りかぶって叩き落とす。
    「っ……!?」
     流石にダメージはかなり大きいのだが、二人が分散されたダメージで。
    「クリス、手分けして全部回復するぞ」
    「うん、解ったよ」
    「クリスくん、これを受けて!」
     沙雪がヒーリングライトで癒Up。
    「あ、ありがとう。さぁ……護るよ」
     そして蓮二の言葉に頷きながら、クリスと共に回復を施していく。
     体力の減少状態を見極めて、蓮二が。
    「つん、もういっちょ冬崖に回復だ!」
    『ワゥ!』
     指示をうけてサーヴァントの霊犬も回復を行う。
     ……そして、次のターン。
    「死んでるのなら、素直に死んどけってーの!!」
     そんな威勢の良い声を上げながら、睦月が閃光百裂拳を叩き込むと、冬崖も龍翼飛翔で攻撃。
     又ハインドは霊撃で攻撃。
     更にレイネ、政義のジャマー、キャスターが。
    「狙い撃つ」
    「私の攻撃、避けられますか? 行きますよ」
     と、デッドブラスターとジャッジメントレイでそれぞれ攻撃。
     その攻撃で、まずは一匹のゾンビが倒れる。
    「先ずは一匹……っと。次!」
     睦月が継ぎなるターゲットの指示を飛ばし、周りの仲間達もターゲットを切り替える。
     そして二匹目……空音と梗香、そしてウルルが。
    「……影業に抱かれて死ね」
    「……待っていろ、今、少し風通しを良くしてやる」
     デッドブラスターの集中砲火にオーラキャノンを加えてぶっ放す。
     またゾンビが一匹、その原に風穴を開けて倒れ込むと……残るゾンビは後4匹。
    「……しかし、本当に数が多いよな」
    「うん……だからこそ、僕達の役割が重要なんだろうけどね」
    「全くだぜ」
     ニヤリと蓮二は笑いつつ……敵の攻撃を待って再度回復。
     無論沙雪は、ヒーリングライトと闇の契約を使い癒アップと術アップを付与する事で回復陵を着々と引き上げていく事で、ダメージを後に残さないようにして、戦いを継続するのであった。

     ……そして、数ターンが経過。
     ゾンビ達が一匹、また一匹と倒れていき……残る葉ボスゾンビに加え、既に玄海ギリギリのゾンビが一匹残るのみ。
    「よし……悉く、断ち切らせて貰うぞ」
     鋭くレイネがゾンビを見据え、政義と視線を交しながら……ブラックフォームとジャッジメントレイで撃ち抜く。
     ゾンビの身体に幾つもの穴が開いていくと……残るは後ボスゾンビのみ。
     改めて正対すると、その巨大な身体に威圧感を覚えてしまうのだが……。
    「……アンタで最後だ、覚悟しろよ!!」
     きりっと見据える睦月。
     同じく前衛の冬崖と光のビハインドで、敵の四方を完全に包囲。
     左から、右から、真っ正面から、それぞれ切り込んでいき、着実に体力を削る。
     無論ゾンビの人達は、ぎりぎりで躱したとしてもかなりのダメージとなるのだが、それらダメージをクリス、蓮二の二人でしっかりとサポート。
    「本当大きな身体に凄い攻撃力……だが、其の歪みは、私が断ち切る」
     レイネが穿つ雲櫂剣。
     鋭く放った一撃は、ゾンビの右肩を深く貫き通し……ゾンビは凄まじい叫び声を轟かせる。
     その叫び声に、合宿場の中から同じく悲鳴のような声が聞こえたような気がするが・・それはさておき。
    「ま……いくぞ。これで『サヨナラ』だ!」
     睦月が地獄投げで、その巨体を一気に地面に叩き落とす。
     うううう、と動きが鈍り動けないゾンビ……それに。
    「……感謝しな。冥土の土産だ」
     空音が日本刀に手を掛け、何処か仕方なさげに声を挙げて……居合い斬りを叩き込む。
     そして真っ二つに斬り裂かれたゾンビが、様々な怨念を込めた声が、深夜の闇の浜辺にとどろき渡るのであった。

    ●闇安らかに
    「……ふぅぅ……終わったか」
    「うん……皆、お疲れ様だよ」
     蓮二にくすりと笑いつつ、労いの言葉を掛けるクリス。
     改めて周りを眺めれば、既に灼滅されてゾンビの影は一つも無い。
    「……死後もこきつかわれて、不憫な子とだね。オヤスミ、もう誰も邪魔しないだろうからさ」
    「ああ。ゆっくり、休め」
     光と梗香が、既に居なくなったゴーストに向けて弔いの言葉を捧げる。
     そして。
    「さて、と……大学生達は無事なのかね?」
    「さぁな……ちょっと調べてみるか」
     と蓮二と空音が合宿場を窓から確認する。
     既に窓からその影は見えない。ただ二階の合宿部屋の方には幾つも灯が灯っている……さしずめ怖いから、光を付けたまま布団を被っている、と言う所。
     まぁ、殺界形成が展開されていた訳で、恐怖に身を脅えさせながら寝静まっているのも仕方ない訳で。
    「……ま、悪い夢だと思って、寝て忘れてくれればそれで良いか」
    「そうだな……そう勘違いしてくれれば良いだろう」
     空音と冬崖が肩を竦め合いつつ、合宿場を後にする。
     間もなく朝焼けが始まろうかという頃……海岸線からほんの僅か、灯が灯り始めるのを眺めつつ。
    「しかし最近色々事件が起こっていますよね……」
    「そうですね。ダークネスがなにやら活発に動いているらしいけど……これもその一つなんですかね?」
    「そうですね……まぁ、それらを一つずつ解決して、なんとか路を切り拓いて行きたいですね……」
    「ええ。何が来てもたたきつぶしてやるだけです」
     政義と睦月はそんな会話を交しつつ……灼滅者達は帰路へとつくのであった。

    作者:幾夜緋琉 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2013年1月26日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
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