打ち立て食べろ!

    作者:柿茸

    ●香川県さぬき市
     結論から言わせてもらおう。
    「うどんのカップ麺!それも3分じゃなく4分立ってちょっと伸びたものが至高!」
    「打ち立て食べろ!」
     巨大な伸ばし棒をフルスイング!
     哀れ、ちょっと伸びた麺が好きな青年は晴天のお星様となってしまった。ふー、と、いい汗掻いたと言わんばかりにうどんで出来た体がてかる。
    「うどんは小麦粉から打ち立てて、1分茹でたものをさっと出汁につけて食べる。皆もこの食べ方をしなくちゃ駄目だぞ☆」
     キラン。と魔法少女のように決め台詞を言い、カメラ目線でポーズを決めるうどん。
     だが悲しいかな、彼(性別が分からないので便宜上彼と呼ぶ)はご当地怪人であり、そしてその頭は塩水の入ったビニール袋であった。
     目、どこだよ。
     
    ●教室
    「あ、うん。今ビビビッて、いるよってサイキックアブソーバーからきた」
    「いるのか……」
     須藤・まりん(中学生エクスブレイン・dn0003)の言葉に原・晶(銀光の旗の下に・d00079)が項垂れる。
     先日、見事香川県高松市にてうどん怪人を黒焦げにした晶。
     だが晶には一抹の不安があった。打ち立てうどん以外は認めないようとしない怪人がでるのではないかという不安が。
     そんなわけでまりんに情報提供して予知してもらったらいたんだよ! 今しがた電波、もといサイキックアブソーバーの予知から打ち立て怪人を発見したまりんはチョークを手に取り黒板に向き直る。
     描かれる棒人間。あれ、デジャヴ。
     胴体部分に、打ち立てうどん(つやつや)、と注意書きが書かれる。頭部は上が縛られた袋が描かれているだけでこの前の怪人とは違い何も乗っていない。
    「今回はなんのおでんの具なんだ?餅巾着?」
    「んーん。おでんじゃないみたい」
     ビニール袋(中身、塩水)。
     は? と言うその場に集まった一同の視線を無視してさらに片手に巨大な伸ばし棒、もう片手に麺打ち台が付けられる。
    「こうして見ると剣と盾をもった勇者のように」
    「見えないから」
     振り向くまりん。ツッコむ晶。
     一度咳払いをして仕切り直し、まりんは説明を続ける。
    「この打ち立て怪人、出没地域は香川県のさぬき市だよ。電車から降りながら麺類の話をするとホイホイ釣られて出てくるみたいだね」
     そしてその話をしていた者に、麺類で食べるなら何で、どのような状態で食べるかを聞いてくるらしい。
    「うどんで打ち立ての茹でたてを食べる、っていう答え以外認めないんだって」
     認めない答えには伸ばし棒での全力フルスイングが待ち受けている。インスタント麺や伸びた麺には威力倍プッシュ。場合によりディフェンダーでも一撃でKOされる威力になることも考慮しておかねばならない。凌駕すればいいとか言わない。
    「でもまぁ、怪人を見つけるには探し回るよりも麺類談義で呼び寄せる方が圧倒的に簡単だと思うよ。駅前なら手ごろな広さの戦闘スペースもあるだろうし」
     そしてバベルの鎖の効果にて、戦闘発生後は一般人は、もしかしたら奇異に満ちた視線を向けるかもしれないが近づこうとすることはなくなる。呼び寄せて直ぐに戦闘に入れば一般人の心配をすることも必要ない。
    「はい、それじゃ続けてこの怪人の使ってくる攻撃を説明するね?」
     攻撃方法は3つ。正確には2つと回復技が1つ。
     先程も述べた、伸ばし棒によるフルスイング攻撃。近くにいる者1人に向けて振るわれる棒は威力が半端なく高く、強烈な一撃に思わず攻撃の手が怯んでしまうのは間違いない。
     そして頭のビニール袋から塩水を噴射する攻撃。遠く、広範囲にまで届くこの塩水を浴びると直ぐに武器が錆びてしまう。オーラのような非実体武器でも容赦なく錆びる。ようは武器封じがかかる。
     最後に、麺打ち台を背中に置き、前から伸ばし棒で自分自身の身体をバンバン叩いたりぐりぐり伸ばしたりすることで回復する技。リフレッシュして強烈な一撃を出しやすくなる。
    「マッサージのつもりなのか?」
    「さぁ?」
     存在自体がなかなか謎な怪人だし。
     先日のうどん怪人の説明と同じような空気が流れるが、吹っ切れたのかまりんは明るい笑顔を一同に向ける。
    「ふざけた姿をしてるけど、1体で灼滅者10人分くらいの戦力になるダークネスだからね、油断しちゃ駄目だよ? 油断しなければ勝てるはず!」
    「まぁ、その。ふざけた姿は確かにしているがこれ以上被害を増やすわけにもいかない。灼滅してくれる人は、お願いする」
     そして晶もまりんの隣で一礼をした。


    参加者
    原・晶(銀光の旗の下に・d00079)
    沢崎・虎次郎(衝天突破・d01361)
    六徒部・桐斗(雷切・d05670)
    文月・直哉(着ぐるみ探偵・d06712)
    惟住・多季(花環クロマティック・d07127)
    百舟・煉火(彩飾スペクトル・d08468)
    千葉魂・ジョー(ジャスティスハート・d08510)
    龍見・鷹山(すごくすごい・d09096)

    ■リプレイ

    ●こんな形で再び香川に来るとは……
    「推理が当たってよかったのか悪かったのか……」
     電車の座席に座って額を押さえている原・晶(銀光の旗の下に・d00079)。
    「いっぺん来てみたかったんだよな、香川。目的もウドンで文句ねぇが」
     一方、沢崎・虎次郎(衝天突破・d01361)。るんるん気分なのだが。
    「……まさか食べるんじゃなくて退治とは」
    「ああ……俺と直哉とジョー先輩は2回目だが。とにかく頑張ろう。怪人であり、人に害を与えてる事は確かだからな」
     苦笑した虎次郎の続く台詞に晶が応じた。うどんを食べたいと思っている人物は他にもいる。虎次郎の隣からグー、と腹の虫のなる音が響く。
    「んー、寝坊したせいで朝ごはん食べ損ねたんですよね……」
     六徒部・桐斗(雷切・d05670)の腹の虫だった。低血圧には朝早いのは辛い。今日の朝早くから東京を出発して香川まで来てるし。
     そんな桐斗の目線は、電車の反対側の座席に座ってガハハと笑っている龍見・鷹山(すごくすごい・d09096)の付近に置かれた、カップうどんが詰められた大量のビニール袋に注がれている。
    「ここに来る前、安かったから買ってきた!! これで2食はもつな!」
     むしろ2食しかもたないんですか鷹山さん。しかも良く見たら隣に座る文月・直哉(着ぐるみ探偵・d06712)の膝の上にもカップうどんを覗かせたビニール袋が2つ。
    「ふっふーん。香川といえばうどん、今から楽しみだな」
     どんな味で美味しさなんだろうか、と今から想像している百舟・煉火(彩飾スペクトル・d08468)のそんな言葉に。
    「この前のうどんとおでんは美味かったなぁ」
     お陰でガイアチャージは万全だぜ♪ と直哉が応じる。いいなー、と羨望の眼差しで煉火が見返した。
    (「伸びた麺は好みじゃないですが、インスタント麺はなかなか美味しいと思うのですよねー」)
     一方、カップうどんを見ているのは桐斗だけではない。惟住・多季(花環クロマティック・d07127)もその一人だ。
    「インスタントうどんはあのペラペラさがまた魅力なんですよね」
     桐斗の視線が向けられる。
    「打ちたてって、いくら食べたくてもチャンスがないと食べられないでしょ。食べたい時に食べられるって言うのも、食事の役割としては大事ですよね」
    「……今食べたいですね」
     腹の虫が響く。鷹山はその音に気がつかない。
    「城の話はこの間したから……駄目だ、他に話題が思いつかん」
     何かネタは、と地図を広げた千葉魂・ジョー(ジャスティスハート・d08510)の目に、ある名前が飛び込んでくる。
    「女体山って山があるらしいぜ! 今回のさぬき市と、前回の高松市に」
     全員の視線が集まった。
     ナイスな響きだよな! と皆を見返すジョーの顔が、あれ? と怪訝に満ちた顔つきに変わる。
    「……って、あれ? 女子の反応がいまいちな気が……お、おい」
    「ないわー」
     煉火の容赦ないツッコミ。多季の目線が物理的に痛い。晶は携帯を取り出して操作開始。少しして、へぇ、と声を上げる。
    「オリーブで有名らしい。意外だな」
     皆に見せられる携帯の画面にはネットで今しがた調べた情報。
     ジョー、精神的に撃沈のお知らせ。
     しばらくして駅に電車が滑り込み停止、灼滅者達が席を立つ。
     扉を最後にくぐる桐斗が誰ともなしに呟いた。
    「……うどん怪人食べたら腹膨れますかね?」
     今回の食べようとする枠が決定した瞬間である。

    ●再びやって来ましたうどん県!
     安心の直哉のタイトルコール。鷹山がずかずかと歩いていく。
    「せっかくここに来たんだからオレサマはうどんを食う!! 県内すべての店を食べつくしてやる!! ぶははは!!」
     直哉がそれに駆け足で追いつき、麺類談義を開始した。だが、改札をくぐってもうどんの姿はまだ見えない。
    「あ、そうそう。パスタやうどんの乾麺を重曹入れて茹でたら、ラーメンっぽくなるんだぜ? これ豆な」
     つやつやうどんとビニール袋、駅の入り口にスライドイン。煉火がうわぁ、とドン引きする。桐斗がそっと口を拭う。
     案の定、駅の外に出たところで打ち立て怪人に声をかけられた。
    「おい、そこのお前」
    「ん?」
     直哉と鷹山の顔がビニール袋に向けられる。
    「麺類で食べるなら何で、どのような状態で食べる?」
    「何で、どのような状態で?」
     質問に対して、そうだな、と直哉の口がニヤリと笑う。
    「ラーメンならバリカタが好みだが、カップうどんのあのうっすい麺も嫌いじゃ無い」
     いや、寧ろ好きだ!
     カッと見開かれる目。その目に写るのは残像と共に迫る伸ばし棒。
    「打ち立て食べろ!」
     直哉の身体がきりもみ回転をしながら宙に飛んだ。
    「「クロネコレッドー!!」」
     晶とジョーが叫ぶ。
    「凌駕だ! 凌駕するんだー!」
     煉火が気合を送る。
    「オレサマのうどんがーー!!!??」
    「いや、直哉の心配をしろよ!」
     そして鷹山は直哉と共に宙を舞ったカップうどんの心配をして、虎次郎にツッコまれていた。

    ●うどんの風上にもおけません
    「うどんに罪はありませんが、一方的な主張をして他の意見を認めず、暴力を振るう怪人さんには罪があると思います」
     そして多季は冷凍うどんにしてしまいそうな目で打ち立て怪人を見ていた。桐斗は完全に食べ物を見る目つきになっている。
     その後ろで直哉が顔面から地面に着地。降り注ぐ回復の嵐。顔面倒立から仰向けにばったり倒れる身体に、回復技が吸い込まれていくところを見ると、戦闘不能にはなっていないのだろう。
    「……ったく。俺達を棒で叩いたって打ち立てにはならねえぞ」
     だが直哉を見てぼやくジョーの視界の端に、逆方向、つまり打ち立て怪人に向かって走る1つの大男の影があった。
    「テメー!ぶっ飛ばすぞ!!」
     バカ、もとい鷹山だった。
    「そうか! お前もカップ麺派か!」
     鷹山が投げ出したビニール袋を見て打ち立て怪人に殺意が宿る。
     鷹山を包むバトルオーラが真っ赤に燃える。打ち立て怪人がお前を飛ばすと棒を構える。
     拳が打ち立てうどんに、棒が鷹山に叩き込まれ、2人同時にぶっ飛んだ。
     地面を凄い勢いで滑っていく鷹山に回復が飛ぶ。集気法で回復しようとした晶、ジョー、桐斗が必死に追いかける。
     さらに、いつの間にか起き上がっていたのか打ち立て怪人がそれを追いかけんと走ってきていた。だが。
    「待てようどん野郎……」
     地面に倒れていた直哉がうどんの足を掴む。盛大にうつ伏せに倒れる怪人。
    「打ち立ては確かに美味いが、うどんの秘めた力はそれだけじゃない筈だ」
     ゆっくりと立ち上がっていく直哉、いや。
    「麺類の未来の為に断固戦おう。クロネコレッド、見参!」
     クロネコレッドが決めポーズをとった。起き上がった打ち立て怪人が構えなおす。
    「なるほど……。ならぶるぉあ!?」
     台詞の途中で横からの重い拳の一撃。
    「あれ? 俺これ殴っちゃいけなかった?」
    「いえ、いいと思いますよ」
     鋼鉄拳を放って問いかけた虎次郎に、多季が全力で肯定しながら怪人の頭を槍で突く。割れるかと思いきや逆に跳ね返さんとばかりの弾力。
    「やめろ! 破裂する!」
     あ、でもやっぱそうなんだ。そんな打ち立て怪人の後ろで、へぇー、と眼鏡が怪しく光る。
    「そう言われると余計に突きたくなるよね!」
     煉火が容赦なく、槍をビニール袋に突き刺す。
    「風船とか見ると針で突きたくなるじゃないか、アレと同じ心理だよ」
     うまく割れたら新しい趣味に目覚めてしまいそうだ……、と呟いたその顔がどう見てもやばい方向にうっとりしているわけで。
     思わずたじろいだ打ち立て怪人の耳に猛獣の足音と、怒号が聞こえてくる。顔をそちらに向ける。
    「うおおおおぶっ飛ばす!!」
     お前はイフリートかといわんばかりに猪突猛進する鷹山。後ろからは先程回復に走っていった3人が必死に追いすがっている。
     走りこんだ勢いそのままに強烈な燃える右フック。避ける怪人だが、その巨大な炎に目を眩まされ、別の炎が見えなかった。鷹山の後ろからジョーのレーヴァテインが叩き込まれる。
    「これが、クラッシャージョーのクラッシュラッシュだ!!」
     さらに、鷹山の頭を飛び越して桐斗が前に躍り出る。攻撃に身構える怪人、だが、桐斗は地面に着地せず空中でもう一度ジャンプした。打ち立て怪人をも飛び越し、裏回る。
    「よそ見している暇は、ない!」
     桐斗を追って後ろへと振り向いた怪人の背後から晶の声。そして閃光百烈拳がその背を叩く。
    「……これダメージ与えてるのか回復させてるのかわからん」
    「ごふぅっ」
    「わかりやすっ!?」
     呻いた隙を狙い、打ち立て怪人の身体を桐斗が黒死斬で切り付けた。打ち立てうどんのかけらが飛んだのを見て、それをつまんで食べてみる。
    「……茹でてないですね」
     打ち立てただけですから。
     囲まれつつも体勢を何とか立て直した打ち立て怪人が辺りを見回す。
    「お前ら、よくもよってたかって!」
    「あなたに言われたくありません。大体道具を攻撃に使うなんて、うどん怪人を名乗る資格はありませんね!」
     その行いがうどんの名誉を傷つけている事に気づかないのでしょうか?
    「なん……だと……?」
    「そうだ、いつでも打ちたてを食べられる訳ではないだろう……。出汁が染みたのを食べたい時もあるだろう……」
     多様な食べ方を否定するとは、貴様怪人の風上にも置けんッ!
     多季と煉火の説教に心底意外そうな声を出す怪人。
    「残念です……『打ち立てはこんなに美味しいんだ!』って実演布教して回る怪人さんだったら良かったのに」
    「いや、怪人の時点で駄目だろ」
     多季の言葉にその手があったかー! と嘆く打ち立て怪人。そして虎次郎が冷静にツッコむ。
    「よし、分かった……お前らを倒してから、私は実演布教をして回る!」
     打ち立て怪人が高らかにわけの分からない宣言して、それに呼応してビニール袋の口から塩水が盛大に噴出した。どこにどれだけそんな量が入っているんだと言わんばかりに辺り一面、水浸しになる。
    「うわああぁシュヴァリエー!?」
     煉火の悲鳴。見ればシュヴァリエと命名して大事にしていた鉄槌(縛霊手)が完全に錆びてしまっている。
    「ば、バトルオーラが、錆びた……」
     そして晶の身を包む黄金色をしていたはずのバトルオーラが見る見るうちに茶色になった。しかも錆の臭いまでする。
     一方、錆びなかった前衛陣が数の暴力に身を任せ一斉に怪人に襲い掛かった。
    「攻撃! 攻撃! 攻撃ィ!!」
     ジョーが拳の連打を浴びせる。くの字に曲がったその身体に向け、拳に力を込める。
    「悪いな怪人。俺はパスタ派なんだ」
     ―――アルデンテ食べろ!
     スマッシュアッパー。宙に浮いた怪人の頭上に、桐斗が2段ジャンプして斬艦刀を振りかぶっていた。
    「他の麺類怪人ほどではないですねー」
     他の麺類怪人に会ったことなどない桐斗、もちろんこれはカマかけなのだが。
    「そんなことはない!」
     分かりやすすぎる反応が返ってきた。遠慮なく剣を振りおろし、地面に叩きつけながら、桐斗はさらにカマをかけてみる。
    「んー、どうしてそんなことがわかるんですか?」
    「ぐふ……『うどん怪人がやられたようだな』『奴は我々うどん様を信仰する中でも一番の小物』というようなやりとりぼほぉああ!?」
    「ぶっ飛ばあああすッ!!」
     台詞の途中で遠慮なく鷹山が殴り飛ばした。桐斗も、あ、もういいですとか言っちゃってる。
    「お前も……やはり知っているのか。うどん様を」
     だけどジョーが興味津々だった。
     涙目になっている煉火に虎次郎が祭霊光を飛ばす。見る見るうちに錆が剥がれつやっつやになったシュヴァリエに、煉火が感極まって涙を零しながら抱きついた。
     そして直哉の麺類食べ歩きビームが怪人に直撃する。一瞬だけ、怪人の脳内を麺類を食べ歩きした走馬灯が流れる。
    「食に好みはあれど優劣は無し。新しい味に出合う感動を思い出せ!」
    「全部うどんだった!」
     怪人の返答に思わずこける。こけるとまでは言わなくとも力が抜けて膝が落ちかけた多季の斬影刃があらぬところを斬る。
     その隙に怪人が、自分の背中に麺打ち台を置いた。バンバン叩かれるうどん。傍から見ても生き返るといわんばかりにヘブン状態になっているのが見て取れる。同時に灼滅者達が其々の構えを取った。
    「お、マッサージするのか? 手伝ってやる必要がありそうだな!」
    「エンチャントは破壊だぁー!」
     ジョーが嬉々としてサイキックソードで切りつけ、晶がヒャッハーとか言いながらバニシングフレアを放つ。
    「冷凍さぬきダイナミック!」
     そして煉火が怪人を叩き付け、反動で宙に浮いたところを多季の螺穿槍が穿った。槍が引っ込むと同時に、跳んだ直哉が怪人の身体を掴む。
    「小倉焼うどんダイナミック!」
     戦後の食糧難から生まれた魂の味だ、敢えて乾麺使用の拘りを舐めるなよ!
     2回目の爆発。それでもまだ倒れない怪人に前後から同時に、虎次郎と桐斗の鋼鉄拳が叩き込まれた。
     ここまで多季を除き全部ブレイク技である。ただし多季はメディックなのでブレイク効果がついている。ついでに虎次郎もそうなのでブレイク倍プッシュである。
     奴の攻撃力は半端じゃない、攻撃される前にエンチャントを解除するんだ! という皆の思いから放たれた綺麗なブレイク連携は、しかしどう考えても過剰ブレイクです本当にありがとうございました。
     あ、いや、1人まだ残ってた。
    「どっごぉぅるああああああ!!」
     鷹山の力に任せ振り上げられた炎の一撃が、打ち立て怪人を天空へと打ち上げる。
     そして青空の星になったまま、帰ってこなかった。

    ●奇異な目で見られてない、ですよね?
     多季が周囲の人目を気にして辺りを見回す。駅の入り口で見ていた人と目が合った。そそくさと建物の中に入られた。
    「打ちたては美味いかもしれんが、人に迷惑掛けたらイカンよ。あ、お土産用のうどんだって。買って帰るか」
     そして虎次郎は駅の構内へお土産を買いに入っていった。
     ジョーは桐斗と香川に一体どれだけうどん怪人がいるのか、うどん様が何か関係しているのかと談義している。
    「……なんかもう……麺類はもういいかな……」
     それらを見渡して、そして、宣言どおり吹っ飛ばした! 流石俺! とガハガハ笑っている鷹山の後姿を見ながら晶が呟く。今日はパスタを食べよう。
    「よし、行こうぜ」
     そう決意する晶のことなど気にせずに。
    「手打ちうどん体験へ!」
     直哉が歯を輝かせんばかりの勢いで、親指を立てて誘ってくる。
    「さて、本場のうどん! 食べたかったんだよな」
     そして煉火もうどんのことしか頭にない。と、煉火が晶、直哉、ジョーへと呼びかけた。
    「そこの先に香川行った3人! いいお店を案内してくれたまえ!」
    「「「えっ」」」
     この間行ったの、高松市なんだけど……。
     固まる空気の中、快晴だというのに雨が降り始める。
     何故か、塩水の味がした。

    作者:柿茸 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2013年1月28日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 2/感動した 8/素敵だった 3/キャラが大事にされていた 3
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