洋館の悪魔高校生

    作者:君島世界

     森深く、公道からも遥か離れたへんぴな場所に、古ぼけた洋館が建っている。数年前に両親を失い、今は家督を継いだ少年が小間使いとともに住むというその場所に、この夜も真っ白なバンに乗せられた一人の男が、胸に欲深な望みを抱えてやってきた。
     目的は一つ。『魔法』で望みを叶えてもらうこと。
     はめ殺しの窓を透かして、少年はその光景を見ている。灯りをいくつか消し、最小限の明るさに整えた部屋の中で、少年は来客を待ち続けた。
    「ふふ、『こんな夜更けにドアを叩く者がいる』……。さ、入りなよ、スズカ、レイカ」
     今宵の客を案内するのは、側近の双子メイドたちだ。
    「失礼します、マスター。いつものお客様です」
    「では、私どもはいつもの通りに。何かございましたらお呼びください」
     慣れた様子で粛々とエスコートを済ますと、奥の部屋へと消えていく。その後姿がドアの向こうに去った瞬間、連れてこられた男は少年の机へと駆け上がった。
    「ほ、本当にこの館に来れば、なんでも願いを叶えてくれるのか? 本当だろうな!」
    「無論、報酬は忠誠で払ってもらいますがね。さて、『僕はすがる男に必死の頼みごとをされた』……。何が御用なのかい? もしそれが誰かの不幸を踏み台にするものなら、叶えてあげるさ――この魔法でね」
     
    「さて、今回の事件はダークネスの仕業のように見えて、実はそういうことじゃあない。……一般人だ。それも、ダークネスになりかけの、な」
     神崎・ヤマト(中学生エクスブレイン・dn0002)の説明によれば、その少年――天草・天一郎(あまくさ・てんいちろう/高校一年生、休学中)は、ダークネスの力を使って人々の邪悪な欲望を叶え、代償として忠誠を誓うよう取引を持ちかけているという。そうして増やした手下を使って勧誘までしているようだ。
    「一見ではソロモンの悪魔そのものの動きをしているが、実はこいつ、半分眠っているような形だが、まだ心の奥底に人間の意識を残すことができているらしいぜ。
     通常闇堕ちした奴は、その事件でダークネスが完全にそいつと成り代わってしまう。けど、こいつが意識を残してるってことは、もしかしたら灼滅者となる素質があるかもしれない、ってことだよな。ちょっと行ってきて、ブン殴って目を覚まさせてやんな。だが、もし素質がないようだったら、その時は……頼むぜ」
     とはいえ、向こうは手下を数多く抱えており、戦闘の際に実働として動く駒も幾らかはいる。馬鹿正直に正面突破すれば、手下に構っている間に逃げられかねない。
    「ま、その為のエクスブレインの力だな。街を歩く客引きの手下――こいつはすぐに見つけられるはずだ――に、客のフリをして天一郎の所まで引っ張って貰えばいい。でっちあげの『願い』でピックアップを頼むのが手っ取り早いな。
     首尾よく敵の前に連れて来られたら、……まずは自力で目を覚ますことのできずにいる天一郎に、いろいろ話しかけてやってくれ。うまく天一郎の心に言葉が通じれば、目覚めようとするそいつとのバランスを崩されたダークネスの力は激減する。最終的にKOする必要はあるから、好都合だろう。
     戦闘が始まれば、ダークネス天一郎は魔法使いとマテリアルロッドに相当するサイキックで攻撃を仕掛けてくる。ここまで上手くいけば、取り巻きは力を与えられたメイドが二人だけになっているはずだ。そいつらは姉がナノナノ、妹がビハインドに相当する攻撃や回復をしてくるぜ」
     素質があるならば、KOすることで天一郎は灼滅者として目覚めるだろう。そうでなければ、彼は遠からず完全なダークネスなってしまう。
    「ダークネスになっちまえば、なにもかもお終いだ。その前に天一郎を無間の地獄から引きずりあげる事ができるのは、灼滅者(スレイヤー)、お前たちだけだ!
     危険な任務だが、お前達ならやり遂げることができると俺は信じてるぜ!」


    参加者
    アリス・バークリー(ホワイトウィッシュ・d00814)
    宇佐・兎織(リトルウィッチ・d01632)
    御藤・タバサ(中学生魔女・d02529)
    八嶋・源一郎(春風駘蕩・d03269)
    リヒト・シュテルンヒンメル(星空のミンストレル・d07590)
    ワルゼー・マシュヴァンテ(システマ教開祖・d11167)
    高倉・光(羅刹の申し子・d11205)
    ナイン・ドンケルハイト(金翼のエメラルド・d12348)

    ■リプレイ

    ●路地裏の変身学生
    「チワワだ、儂はチワワになるのだ……!」
     八嶋・源一郎(春風駘蕩・d03269)は路地裏で犬になろうとして意識を集中させていた。
     ――誤解しないでいただきたい。彼は大真面目である。
     今回の洋館潜入作戦において彼ら灼滅者が考えた作戦は、ESP『犬変身』や『猫変身』、『蛇変身』を行った者を鞄の中に隠し、内部に運び役の三人プラス五頭の状態で入り込もう、というものなのだ。
     見れば橙色の長毛が特徴的なソマリに変身した宇佐・兎織(リトルウィッチ・d01632)や、願い通りにチワワとなった源一郎の他にも、アリス・バークリー(ホワイトウィッシュ・d00814)とナイン・ドンケルハイト(金翼のエメラルド・d12348)はそれぞれ金毛の美しいシャム猫や山猫の形を選び、御藤・タバサ(中学生魔女・d02529)は『とりあえず蛇!』ということで種類不明の蛇らしい生物になっていた。
    「……にゃう♪」
     耳をぴこぴこ揺らす兎織(猫状態)の一鳴きで、動物組が適当にパッケージへ収まっていく。そんなサーカス顔負けの光景の後、出荷待ちとなった鞄を抱えたのは、残る三人――リヒト・シュテルンヒンメル(星空のミンストレル・d07590)、ワルゼー・マシュヴァンテ(システマ教開祖・d11167)、そして高倉・光(羅刹の申し子・d11205)だ。
     光はトランクの空気穴を確かめ、周囲に言う。
    「それではアリスさんも……アリスさんですよね。他の動物役のみなさんも、ここからはお静かに。――で、御藤先輩はさっそく寝てませんか?」
     返事は無い。その代わり、アリス(猫状態)はその足や尻尾へ寝ぼけて絡みつこうとしているタバサ(不確定名:蛇)の感触に、必死になって口元を抑えていた。これは蛇じゃなくて仲間、これは蛇じゃなくて仲間――ッ!
     そんな攻防はしかし誰にも知られることはなく、数十分後、一行は目的とする白いバンと、その周囲にたむろする手先を見つけ出した。背の低く、下卑た雰囲気を持つスーツの男が言う。
    「へっへっへ、アンタら、ちょっと他人を不幸にするような願い、叶えてみないか?」
     光は内心のスイッチを演技へと完全に切り替える。今から口にする空言を、信じ込ませるためだけに。
     演技のアクセントとして仲間たちと顔を見合わせてから、光はこう述べた。
    「……あのチームは礼儀も知らぬ無法者ばかり。優勝にふさわしくないチームに、どこかの誰かが『指導』してくれないものかと、そう思っていたところです」

    ●館の猫
     蔦草をそのままに、鬱蒼と茂る常緑樹の森へ溶け込んだようなその館は、見える窓全てに生きた人の気配を感じさせないような異様な雰囲気を纏っている。扉の前、ドアレバーを隠すように立つメイドは、バンから降りた一行を前にゆっくりと口を開いた。
    「錫華と申します。お見知りおきを。
     さて、悪魔は願い事を三度口にさせると申します。当家でもそれにならい、この場にてもう一度あなた方の願いを確認したく存じます。――では、どなたか」
     見たところは中学生くらいだろうか。その光薄く生気のない目は、逆に冷徹な管理者としての雰囲気を漂わせている。
    「私たちには勝たなくてはならない試合がある。ライバルチームさえ消えれば優勝は私たちのもの……そのチームが不幸になる願いを、叶えてくれないかしら?」
     答えたのはワルゼーだ。その言葉を聞き、頷いた錫華は分厚い木製の扉を開いていく。
     館内に通されると、正面階段を十数段上がったところの踊り場に、先の錫華と瓜二つな別のメイドがいるのが見えた。名を鈴歌といい、先に応接間に向かった錫華の代わりに案内と先導を勤めるのだという。
    「……どうやら、うまくだましおおせたようですね」
     小声でリヒトが言った。待合室へと案内を続ける鈴歌の姿に、こちらを疑るような気配は無い。
    「……そのようだな。しかし、別人を演じるのは疲れるな……」
     応じるワルゼーの言葉に、ふと、鞄の中に隠れていたナイン(猫状態)がその緑の瞳を開けた。
    「(――館に到着したようね。親の遺産を継いだっていうけど、一体どんな所に住んでいるものかしら)」
     気になって、爪先で鞄のファスナーをクリックする……その直前。
    「! 今……お客様方からそれ以外の物音が?」
     鈴歌がメイド服の裾を翻して向き直った。まずい、と感じた灼滅者たちは、しかし動揺を見せぬよう平時を装う。
    「…………」
    「……あの、何かありましたか?」
    「…………」
    「……にゃーん」
     ――い、今猫っぽく鳴いたの誰だー!?
     一行は背に冷たい汗を総出で流した。まさか発覚かと内心身構えるこちらとは、しかし対称的に鈴歌の雰囲気は元に戻っていく。
    「……なんだ、猫でしたか」
    「にゃー」
     と、気づけば足元を、猫変身した灼滅者たちとはまた別の黒猫がすり抜けていた。廊下の向こうへと去る黒猫を見送り、鈴歌はため息交じりで言う。
    「全く、とんだ失礼をば。錫華ちゃ……いえ、錫華もあそこまで手懐けるのならば、いっそ首輪でもつければよいものを」
     何事も無かったかのように案内を続行する鈴歌を見て、灼滅者たちはほっと胸を撫で下ろした。あの反応でこちらの荷物に言及がないのだから、それこそ隠蔽にミスは無かったということだろうが、もし荷物を開けさせられるようなことになっていたら、一体どうなっていたことやら――。

    ●応接間の闇
     ――それは、天草・天一郎の傲慢に似た自信の現れであることは、部屋に入った瞬間容易に悟られた。すなわち『この部屋に何を持ってこられようと自分は問題なく対処する』と、そういう半ば暴力的な態度が、応接室の机越しに叩きつけられる。
    「『そしてお客様は天草家の応接室に到着した』……。ようこそ諸君、僕は天草・天一郎という。さあ、話を聞こうか」
     両手を広く八の字に構える天一郎に対し、話を始めたのはリヒトだった。他の運び役二人も、感づかれないように鞄を床へ下ろす。
    「話はそう、一つですよ、天一郎さん。……誰かの不幸を踏み台にすれば、いずれその不幸が自分に返ってきます」
     ぴくりと、天一郎の眉が動いた。
    「我らの本当の願いは、貴殿を助けることである! 完全なダークネスとなり、我ら灼滅者が貴殿を殺すまで追い続けるようになる前に!」
     天一郎から見えない角度で鞄の口を全開にしたワルゼーに続き、錠を外したトランクに踵でサインを送った光が告げる。
    「あなたのまわりには、『操り人形』しかいないはずです。人を不幸に導き、自分を孤独に追いやっているこの現状に、あなたは満足しているのですか?」
    「……ッ、スズカ! レイカァ!」
     激昂が部屋を揺らした。血走った目の天一郎は、視線すら向けずに命令を下す。
    「排除するッ! ……そこに在り、義務を遂行しろ!」
    「――ハイ」
     傀儡の少女たちを侍らせた天一郎を前に、灼滅者たちも秘策を開封した。スレイヤーカードから霊犬『エアレーズング』を呼び出したリヒトがリュックサックを放り投げると、その中から出てきたのは一頭のチワワ……ではなく、一瞬でその姿を取り戻した源一郎である。
    「ようやく出番じゃ、長かったのう……。さて妹殿、お主はわしが御相手するぞ!」
    「動物に変身を!? まさか、この鈴歌が犬の気配を二つも見逃すなんて――」
     己の失策に呆然とする鈴歌に、源一郎が放ったオーラキャノンが直撃した。く、とたたらを踏む鈴歌の背に、今度はリヒトの広げた掌が当たる。
    「――あ」
    「痛くはしません。……眠ってください」
     触れた箇所から浄化の衝撃を全身に徹され、鈴歌は意識を失って前に倒れこもうとした。その肩をしっかりと支えて、しかし正義の瞳を天一郎に向ける源一郎が言う。
    「安心せい、わしらは決してお主らを殺しはせん。……だがの、『天草・天一郎』! お主はわかっておるはずじゃな! お主を束縛し、暗闇に閉じ込めて我が物顔に暴れまわる、そのダークネスをこそ殺すべきだとな!」
    「だァァァまァァァレェェェェッ!」
     すると突如、天一郎……否、天一郎の中にいるダークネス『ソロモンの悪魔』が絶叫を始めた。

    ●袋小路の悪魔
    「鈴歌ちゃん! 今、私が――!」
    「お前はやることがあるダロウ! 下ガレ!」
    「――、ハイ」
     傷ついた妹を助けようと飛び出した錫華だったが、天一郎の一喝で表情を失い、その場に立ち尽くす。人の意思を奪い、意のままに動かすダークネス……天一郎が完全に変化してしまう前に、なんとしても止めなければならない。
    「わんわんさんたち、行くのだーっ!」
     兎織は足元の影から形成した猟犬たちを天一郎にけしかける。と同時に、その心への呼びかけも忘れない。
    「天一郎さん、戻ってくるのだ! こんな大きなお屋敷に、一人は寂しいかもしれないけど……それでも!」
     猟犬はその多くが打ち払われるが、一匹だけ、天一郎のむこうずねに食らいつくことに成功する。その隙をついて、ナインが一気に駆け上がった。
    「力はね、他人の願いではなく、自分の願いに使うのが正当よ。ほら、例えば――」
     天一郎の背後に控えていた錫華の周囲に、ナインの鋼糸が張り巡らされる。ナインが結界をわずかに絞れば、それは錫華の袖を柔らかく戒めた。
    「敵の邪魔をするのが、私は好きなのよ。貴方は何を望んだの……、天一郎?」
     その通りです、と光が異形化した右腕を振りかぶりつつ繋げた。狙うのは、苦し紛れに振るわれようとしている天一郎の武装だ。
    「今やっていることは、本当に日常を捨ててまでやりたかったことですか?」
    「コレ以上『天一郎』ニ語リ掛ケルナ、灼滅者ァ!」
     ぎいんと、力と力はぶつかり合ってそれぞれに消滅した。しかし言葉は消されずに、天一郎自身の心へと届いていく。
    「どうか、尊い日常を捨てないで……本当のあなたと、幼馴染たちの『今』を守るためにも!」
     反動と衝撃を一身に受け、床を転がる天一郎に、逃がさぬとばかりにアリスとワルゼーが歩み寄った。
    「Slayer Card, Awaken! ソロモンの悪魔よ……あなたが集めたどす黒い願い、『白願(ホワイトウィッシュ)』の私が吹き飛ばしてあげる」
    「そして天草殿! 貴殿の願いは、我ら『武蔵坂学園』がきっと受け入れて進ぜよう。今は心安らかにして、ぶっ飛ばされるがよい!」
    「小癪ナ人間ドモガアアァァッ!」
     錫華の支援を半ば封じられ孤立無援となった天一郎は、その周囲に膨大な量のマジックミサイルを発生させる。さすがにダークネスというべきか、その全てに致命の威力が込められており……だが、それらは一斉にあらぬ方向へと誤射された。
     チャンスだ。
    「――理によりて命ず。万象に満ちし魔力よ、撃ち抜く矢となりて我が敵を穿て!」
     館が破壊される暴風の中で、アリスは朗々と詠唱を完成させる。天一郎を包囲し、一斉に飛び掛る魔弾に合わせて、ワルゼーは両の拳を重連駆動させた。
    「よく抗った、天草殿。人間らしく生きるという幸福、きっと手に入れられようぞ……!」
     全弾命中、残身を取るアリスとワルゼーの前で、天一郎の体はゆっくりと倒れていく――と。
    「(ク……)」
     意識は、まだ残っていた。わずかに残った余力を、ダークネスは集中させる。
    「(コノ体、オメオメ失エルモノカ……! コンナコトモアロウカトッ!)」
     その指が触れたのは、机の下に仕掛けた館の自爆スイッチだ。逃げるチャンスができればと、一縷の望みを掛けるダークネスに、ふと何者かの影が覆いかぶさる。
    「ふあああぁぁぁ……。ふむふむ? 悪魔ちゃんがやりたかったことって、それ?」
     これまで一体どこにいたのか、それは蛇変身をしていたタバサのものだった。見回す視線は天一郎とかち合い、もちろんその指先にはドクロマークのボタンがあることに気づいている。
    「……アハ」
    「ダメ押し、いこっか」
     ずどーん、と豪快な音を立てて、今度こそ天草・天一郎の中に潜んでいたダークネス『ソロモンの悪魔』は無力化されたのであった。

    ●洋館の魔法高校生
    「テンテン! ほら、起きる! 殴るぞ、全身くまなく!」
    「ったく、趣味じゃない服着せやがってからに……、責任とって新しいの買え、天一郎」
    「――『それは、順にすれば鈴歌、錫華の言葉となる』。嗚呼、僕は長い夢を見ていたようだ……」
    「「たそがれんな!」」
     幼馴染の双子に、文字通りに叩き起こされる天草・天一郎。その瞳には先のような凶暴性はなく、本来の彼自身を取り戻しているようだった。
    「あ、目が覚めたようですね。……いやしかし、天一郎さんは結構長く眠っていたのですが、そちらの双子さんが枕元に行ったとたんに――」
    「いや偶然! 偶然ですよ! ですって!」
     茶化すリヒトの言葉に両手を振り回す天一郎。と、その両肩に、源一郎がその手を乗せる。
    「さてさて、無事に目覚めて儂はほっとしたぞ、天一郎。ところで、妹殿には仕方ないとはいえ手を上げてしまい……」
    「ノーサイドだよ! ナイスパンチ! テンテンもあれぐらいキツいの打てるようになれよなー」
     無理だよ、としり込みする天一郎に、兎織が声を掛けた。
    「パンチ力は無理でも、キミはきっと、今度こそ本当に、誰かの助けになれるはずだよ! その、灼滅者の力で!」
    「すれ、いやー……? 『それは、僕にとっては初めて聞く言葉だ。けれど』……」
    「話を聞いてやれよ、天一郎。たぶんお前にはそれが必要だ」
     背中を押す錫華。そして天一郎が向き合ったのは、真剣な表情で立つアリスたちだ。
    「これからあなたは、その身をもってソロモンの悪魔――貴方についていた悪意の塊を閉じ込める封印になったと思いなさい。
     それから、今までの悪事の罪滅ぼしよ。やれるわね?」
    「具体的には、これから私たちの仕事を手伝ってもらうわ。拒否できないことは、貴方自身がよくわかっているでしょう」
     ナインの鋭い言葉に、しかしタバサの緊張感のない言葉が被さる。
    「大丈夫大丈夫、深く考えなくても、基本それだーって言われたダークネスをぶっ飛ばせばいいのよ!」
    「いやいや大雑把ですね!? ……自分、わりと深めに使命感とか覚えてたんですが」
     いつもの口癖を忘れて突っ込みを入れる天一郎。――大体キャラが掴めてきたなと、彼を眺める灼滅者たちは感じた。
    「ま、なんだ。我らも貴殿と同じく、裡にダークネスを抱える身だ。貴殿の助けとなり、また貴殿の助けを必要としておる。
     人間らしくこの先を生きたいと願う者に、武蔵坂学園はその門扉を全開にしておる! ――如何にせん、天草・天一郎!」
    「――『答えは、決まっていた』。……その、よろしくお願いします、みなさん」
     手を差し出す天一郎に、重なる八つのてのひら。ここに今、新たな仲間が誕生した。

    「……錫華さん、その服、もし趣味でないなら……」
    「ん? 高倉っつったか、部屋に袖通してないのが……」
    「あ、できればご内密に。ふふふ……」

    作者:君島世界 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2013年1月27日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 1/感動した 0/素敵だった 7/キャラが大事にされていた 1
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