みんなに私の幸せを分けてあげるきゅんきゅん☆

    作者:旅望かなた

     愛野・恋花は超幸せ!
     だって超格好いいテニス部のレギュラー、坂本くんに告白したら、OKもらったんだもん!
    「でも桃子ちゃんに言ったら『リア充爆発しろ』って言われた……」
     恋花幸せなのでまだ爆発したくない!
     なので桃子ちゃんにも恋してもらおうと思って、昼休みにお昼寝してるところをていやーっと脳味噌書き換えちゃいました!
     ついでに隣の家に住む幼馴染も恋したくなるように書き換えちゃいました!
     おかげで二人はラブラブだよやったね!
    「うふふ、みんな、恋しっちゃおー!」
     みんながラブラブになったら、恋花、とっても幸せです!
     
    「なんかこの子悪い子じゃないと思うの! うん!」
    「いや……悪気はなくてもどうかと思うぞ……」
     嵯峨・伊智子(高校生エクスブレイン・dn0063)が手を組み合わせて目をきらきらさせているので、玖珂峰・煉夜(顧みぬ守願の駒刃・d00555)は静かにツッコミを入れておいた。
    「でもってね、そんな愛に満ち溢れた女の子が闇堕ちしてシャドウになりそうだから、助けてあげてはいあと煉夜っちよろ!」
    「あ、ああ、えっとわかった」
     突然話を振られて目を丸くしながらも、煉夜は立ち上がって。
    「あー、というわけで、リア充あるところダークネスの影が存在するんじゃないかと思って調べたら、リア充がダークネスだったんだ……」
     なにそれひどい。
    「愛野・恋花という中学1年の女の子が、恋人が出来たことを親友に話したら微妙に疎遠にされたことをきっかけに、シャドウになりかけてみんなの心を恋愛体質に書き換えてるんだ」
     なにそれひど……い?
    「いやそこ、ちょっとありじゃないかなって顔するんじゃない。ダークネスによって歪められた感情だから。あと、一応堕ちかけだから、灼滅者の素質があったら助けられるかもしれない」
     びしっとちょっとときめいた顔の灼滅者にツッコミを入れながら、煉夜は説明を続ける。
    「で、だ。彼女は中学校に通いながら、昼寝していたり授業中寝ていたり屋上でサボって寝ていたりする生徒のソウルボードに無差別に入り込んで、最初に見た異性に恋しちゃうとかそんな感じに書き換えてるんだ」
     なので囮作戦をするなり、恋花がソウルアクセスするところにいて飛び込むなり、何らかの作戦を考える必要があるだろう。
    「あ、セキュリティとかは制服着てればだいたいスルーらしいし、結構大きい学校だから大丈夫だと思うよ! のでのでこの制服をみんなに授けちゃうぞ~!」
     伊智子が横から口を出し、段ボール箱いっぱいの制服をどん、と取り出す。
    「予知によれば、学校内での行動ならバベルの鎖を掻い潜れるらしいぜ?」
     ソウルボードの外で戦うとシャドウはかなり強いので、ソウルアクセスしてから戦うのがお薦めだ。
     ちなみに恋花はシャドウハンターのサイキックで戦ってくる。あとなんか常時ほわわーんとしてなんか恋したくなるオーラを放っているらしいと、煉夜はそっと目を逸らしながら告げた。
    「……幸いにして救出出来たら、学園に勧誘してやるといいんじゃないかな。幸い、テニス部のナントカくんとは遠距離恋愛にならないくらいの距離だしな」
     そう言って、煉夜は「よろしく頼むぜ」と、やっぱり遠い目で灼滅者達に告げた。


    参加者
    龍宮・神奈(闘天緑龍・d00101)
    玖珂峰・煉夜(顧みぬ守願の駒刃・d00555)
    椎那・紗里亜(魔法使いの中学生・d02051)
    狼谷・十音(炎軌・d02180)
    室本・香乃果(ネモフィラの憧憬・d03135)
    花屋敷・栞(骨董品のワルツ・d03460)
    斉藤・歩(炎の輝光子・d08996)
    神楽・紫桜(紅紫万華・d12837)

    ■リプレイ

     制服にパーカー姿で、斉藤・歩(炎の輝光子・d08996)は堂々と学校に足を踏み入れる。怪しまれないよう軽く一般生徒に挨拶すれば、ちょっと驚いた様子と共に気楽な挨拶が返ってくる。
    (「恋人の居る自分だからこそ、」彼女の助けになれるといいっすけど」 )
     だからこそ、恋するターゲット――恋花の気持ちがわかるだろう、というものである。
    「……違う学校の制服って、少し新鮮かもしれませんね。ウチの方がかわいいかな?」
     くす、と椎那・紗里亜(魔法使いの中学生・d02051)が小さな声で囁いて、笑う。身に着けているのはこの学校の制服――シンプルな、ブレザーだ。武蔵坂学園の中学女子制服は、カラーリングやデザインが華やかだから新鮮。
     屋上の物陰を見れば、仲間達がもう揃っていた。
    「恋慕とは……難しいものを強制してきますね。幸せを分けたい気持ちはわからなくもないですけど」
     狼谷・十音(炎軌・d02180)が首を傾げ、そっとかじかんだ手を紗里亜にもらった携帯カイロで温める。朝からの待機は、この真冬にあっては少々辛い。
    「恋愛って人を変えるって言いますもんね」
     室本・香乃果(ネモフィラの憧憬・d03135)が小さく呟いた。私はまだ恋はよく分からないけど、幸せを沢山呼び起こす感情なのでしょうし、と薄藤色を残した白い髪を、ふわりと揺らして。
    「らぶらぶになったら、みんなしあわせ?」
     ふわんと柔らかな笑みで、きょとんと花屋敷・栞(骨董品のワルツ・d03460)が首を傾げる。ひらひらふわふわ、花冠の花が風に揺れる。
    「なんだか微笑ましい……でもその力を野放しにしちゃ駄目です」
    「……恋慕、ね。とっくに捨てちまったもんだんが」
     どこか苦々しげに、玖珂峰・煉夜(顧みぬ守願の駒刃・d00555)は呟く。一般生徒を退けるべく使った王者の風は、いつもよりどこか棘がある、かもしれない。
    「先輩として、一つ頑張りますか」
     そう、呟く言葉は言い聞かせるように。
     ふと、十音が口を開いた。
    「……妹がもう少し、しっかりしてくれればなぁ……」
     しかし妹の為に家事全般を担当し――ありていに言えば妹に甘いのは、彼自身である。
     そして、彼らから少し離れた、日当たりの良い辺りでは。
    「いい事してるつもりなんだろうが……なーんか気に食わねーな」
     はぁ、と小さくため息をついて、神楽・紫桜(紅紫万華・d12837)はごろりと屋上の床に寝そべる。ひどく冷たいけれど空は青く、空気は澄んでいて――体温が床を温めれば日光のぬくみも感じられて、昼寝をするには、割と悪くないのだけれど。
    「なんか乗り気しないんだよなー……」
     ごろごろごろごろ。
    「勝手に気持ちを書き換えられてたまるかよ」
     ごろごろごろごろ。
    「ま、俺は揺らがない自信があるけど」
     ごろん。
     微妙な苛立ちで、寝付くのには少々時間がかかりそうであった。

     ――結局2時間目が終わった後のちょっと長い休み時間、その頃恋花はようやくやってきた。
     悶々としていた紫桜も、ようやく寝付いたところである。
    「んっふっふ、今日のラブラブターゲット発見!」
     ぴこぴこっと恋花は、足音を殺して紫桜に近づいていく。
    「恋愛なんてもんは、他人にどうこう言われてするもんじゃねーんだってな……」
     龍宮・神奈(闘天緑龍・d00101)が物陰に潜みながら、その様子を見守る。黒い学ランは、暗い場所に隠れるにはうってつけで。
    「若い嬢ちゃんにきっちり教えてやらなくちゃな!」
     その言葉と共に、恋花の体がくたりと崩れ落ちる。ソウルアクセスの代償たる、身体の無防備。
     けれどそれは、今は灼滅者達の味方だ。
     さ、と香乃果の手が紫桜に触れ、ソウルボードへの入り口を呼び出す。仲間達が駆け込み、素早く身を躍らせる。
    「もっと違うやり方があるはずっすよ!」
    「!?」
     歩の叫びに、がばりと恋花が振り向いた。「なんで!?」とその瞳が見開かれ、ひとしきり首を傾げた後ぽむ、と手を叩く。
    「つまりみんな私の力でラブラブになりたい人達!?」
    「違うやり方あるって言ったじゃないっすか今!」
     何なんだろうねこの思い込んだら一直線感!
    「『恋』と言われたから『愛』に来たの!」
     でも恋とか愛って何なのか、栞わからないと首を傾げて。
     そしてまといつく空気のピンク色っぷりに、煉夜はち、と舌を鳴らす。――恋はしないと、決めているのに。
     恋慕と言う感情を強制的に呼び起こされる感触に、そしてそんな感情を抱いてしまう自分に、ひどい嫌悪感。それを振り切るように頭を振って、表情を変えず煉夜は一気にWOKシールドの出力を上げ、盾の力場を広げる。
     そして――それとは対照的に紗理亜は、思いっきり呑まれていた。
    「見るもの全てにきゅんとするような……これが、恋する気分?」
     夢見るように、そっと呟く。男子は格好良くて、女子は可愛くて、そう見えてしまって、ドキドキ。軽い動悸が、止まらない。
     ふわふわと浮つくような光(ヒーリングライト)が、彼女の周りを煌めいて。
    「落ち着け私……落ち着け私!」
     ぶんぶんぶんぶん、紗理亜は首を振る。その隣で紫桜がはー、とため息をつきながら、トラウマを拳に乗せ突っ走る。
     後方の香乃果も、あ、胸キュン、って気分になって。慌ててぶんぶん頭を振り、正気に戻る。
    「恋したい気分?」
     どきどきするのは、たぶん初依頼だから緊張してるだけ。そう言い聞かせて、栞は影を呼び出して。
    「恋したい気分ね」
     十音が同じ癒しの光を手の中に呼び、己を照らしながら呟いた。
    「幸せオーラは出てるけど、そんな魅力感じないのは僕が子供だからかな。それとも……妹の世話でいっぱいだからとか……!?」
     ふと気が付くと、にやーんと笑った恋花が目の前で手を組み瞳をきらきらさせていた。
    「いやそんなことないはず。あいつだってそろそろ家事の一つや二つ……うん、僕が悪かったからその笑顔は止めて」
    「えー! こう、兄と妹の禁断の愛とかお兄ちゃんを挟んで妹と彼女が修羅場とか妹を渡してほしければ俺を一発殴ってから行けとかそういうのないの!? ないの!?」
    「ありません! 全力でありませんっ!!」
     あったらうん、その、なんだ、困る。
    「俺は一向に構わん!」
     多分斧を構えて龍の背すらぶった切る勢いで飛び出した神奈さんは、恋する気分に対して言っているのだろう。
     凄まじいタイミングになって、十音があわあわしてるけど。
    「恋する世界は何色かしら」
     歌うように言った栞は、「でも書き換えられた気持ちで誰かを好きになるのはしあわせなこと?」と真っ直ぐな瞳で尋ねて。
    「幸せをお裾分けしたい気持ちはわかるんですが……貴女の恋が誰かにお膳立てされたものだとしたら、どう思います?」
    「ほえ?」
     栞の問いと重ねるように、魔力と共に放たれた紗理亜の問いに、きょとん、と恋花の瞳が、見開かれた。
    「貴女の彼氏が暗示で貴女を好きになっていたとしたら、どんな気持ちになりますか?」
    「んー……」
     腕を組んで考え込んだ少女は、やがてぽん、と手を叩く。
    「なるほど! 私に魅力ないみたいに感じちゃうね!」
    「多分貴女がやっていたのはそういうこと、だと思いますよ」
     まぁ、僕には恋人なんていないので、想像でしかありませんけど。
     そう言って、十音はすらりと抜いたサイキックソードに焔を走らせて。
    「……妹さんは?」
    「その話引っ張らないでください……」
     若干脱力しながらぶった切る。
    「想像力が足りてないんじゃねーか?」
    「も、ももも妄想力なら!」
    「聞いてねぇ! それは聞いてねぇ!」
     思いっきり焔を乗せて、紫桜はもう一回恋花にぼすんと拳を落としておいた。ダメージを受けているのはダークネス、の、はずである。
    「お前が坂本クンとやらを慕う気持ちが人から与えられたものだったとしたら、それでお前は納得出来んのかよ?」
    「恋花さんも、彼氏さんを好きだと思う感情が、彼氏さんが好きだと言ってくれるその言葉が、誰かが勝手に書き換えた意識の結果だとしたら悲しくないですか……?」
     そう言ってさらにトラウマを追加した紫桜と、魔力の矢を解き放った香乃果の前で、少女が頭を抱える。
    「な、ななな悩ましい! 確かに与えられた感情とかいやかもしれないけど……それって運命!? 運命……!? 繋がれた私達の作られた絆は……!」
     べきょ。
     とりあえず、さらに紫桜はもう一発拳を追加しておいた。
     神奈も思わず、斧フルスイングでツッコミ入れちゃう気分である。
    「書き換え可能な恋なんて都合のいい友達。恋花ちゃんももし今の恋が誰かに書き換えられた気持ちだったら、どう思う?」
     もう一度、栞は仲間達と同じ問いを繰り返す。だって、そんなのつまらないって、栞は思うから。
    「恋は素敵だと思いますけど、誰かが意識を書き換えて始まる恋は、本当の恋じゃない気がします……」
     そっと香乃果が魔力を宿した杖と共に囁けば、うー、と悩ましげに首を傾げた恋花が、けれどうあーと叫んで。、
    「でもでも! なんかみんな幸せじゃなさそうだし、日本の景気は悪くなるって言うし、センター試験の数学は死ぬほど難しかったらしいし、なんか元気になって欲しくって! それに一番いいのは恋かなって!」
     恋花が力を解き放つ。どくん、と胸に浮かんだのは当然のようにハートマーク、さらに彼女は闇の弾丸を、解き放って。
    「っ……痛いのは、好きじゃないんですけどね」
     十音が癒しの光を再び己に宿し、傷を癒して。
     そして、香乃果は負けじと言葉を添える。微笑みと、一緒に。
    「恋は自分で見つけなくちゃって、そう思うから」
     その言葉に、恋花は明らかに動揺した。
     動揺、していた。
    「ふ……教えてやるぜ! この桃色空間でいつも以上に戦えるのはお前だけじゃないってことを!」
     歩がばし、と手を挙げた瞬間、なんということでしょう!
     クールスタイルであった服装が、かっと発光すると同時にアイドルコスチュームへと変貌を遂げる!
    「俺の彼女は日々可愛さ更新パンチ!」
    「あーれー!」
     炎を纏って飛んで行く恋花。ぽかーんとする一同。
    「……誰?」
    「シャイニングアルク、世界一可愛い女の子の彼氏だ」
     決めポーズ!
    「……このピンク色の空間を、完全に我が物にしやがった……!」
     紫桜がまるでスポーツ漫画の解説者の深刻な顔で叫ぶ。
    「ひゃはは面白れぇじゃねぇの!!」
     神奈が爆笑しながら斧をぶん回す。ちょっとこっちもテンション上がって来ちまったぜ、って顔で。
     ピンチといえば、アイデンティティとか大切なもののピンチかもしれない。
     けれどちょっとわくわくして、栞は瞳を輝かせながら仲間達の傷を闇の契約でぽんぽん癒していく。
    「背の低い所を気にしてるとこなんてもはや天使蹴り!」
     スライディングからの跳び上がりキックが大炸裂。もう歩に怖い物なんてない。
    「なんという恋力なの……! 私の作った恋愛空間では、ここまでの恋力は出せないはず……!」
    「そう。出せない」
     静かにそう言って、煉夜が斧に紅蓮の輝きを宿して一気に薙いだ。
    「……皆が仲良くっていうのは、イイ事だとは思う。でも、それが他人に操作された仮初じゃ、意味がないんだよ?」
     そんな事をしたら、君の周りは『人間』じゃなくて『人形』だらけだと。
    「勇気出して告白して。OKもらえるかドキドキして。それは全部自分で見つけた、愛野さんの大切な気持ち。私はまだ物語の中の恋しか知らないけれど、自分の恋は自分で見つけたいです」 
     きっと、恋のお手伝いは別の形で出来るはず、と紗理亜は裁きの光で少女を照らし、その闇を穿ちながら、笑って。
    「考えて見ませんか?」
     そしてそれに、十音が微笑みと共に続ける。
    「友達の話を聞いて相談に乗ってあげたら……貴女と友達も幸せになれそうな気がします」
    「確かにそれは幸福きゅんきゅんだね!」
     瞳をきらんきらんさせる恋花に、十音は頷いて。
    「意識を書き換えなくても恋花さんの幸せな姿を見て、『恋って良いな』と思う人はきっといると思います」
     そっと、香乃果がバベルの鎖を瞳に集め、そのまま予測経路に従ってマジックミサイルを解き放つ。闇から恋する少女を開放する為に。
    「だから、そろそろ目を覚ます時間ですよ?」
     十音の焔が、その闇を、闇だけを、灼滅していく。
    「恋愛なんてーな、一回は散る経験しておくべきなんだぜ?」
     その方がいい女にならぁ、と神奈は豪快に笑って。
     ばし、と引っ掴んだ恋花を投げ飛ばす。
    「でもっ! 私坂本くんと離れたくなっ……」
     起き上がって必死に言い募る少女の頭を、そっと歩が撫でた。
    「恋って嬉しいもんな。皆にも同じ気持ちを知って欲しかったんだろ?」
     しばしの沈黙の後、こくん、と恋花は頷く。
    「でもさ、無理矢理じゃなくても人は恋に落ちる。お前にもわかるだろ」
    「うん……そだね。私の恋は、作り物じゃないもんね」
     だからみんなにも、作り物じゃない恋を体験してほしい。
     そう、少女は花のように笑って。
    「じゃ、反省はきっちりしとけ」
     ぽす。
     軽い頭突きでくてっと崩れた少女は、「ありがとー」と言い残してソウルボードから姿を消した。

     がば、と起き上がった少女が、もう一回照れくさそうに「ありがとう」と言ったのを確かめて。
     先に行く、と言って、煉夜は屋上を去る。
    「反吐が出るな。俺自身の決意の甘さに」
     そう呟いて引き締めた唇は、小さなため息は、ほろ苦い。
    (「恋ってのは『なんか恋したい気分』でするもんじゃねーんだよ、気が付いたら恋してるもんなんだよ! ……言いたかったけど、流石に恥ずかしくて言えなかったな……」)
    「んっふっふー……?」
     そう、空を見上げようとした紫桜の顔を。
     恋花が覗き込んでいる。
    「なんかロマンチストで素敵な事を考えてる気がはうぅっ!?」
     ぴし、ととりあえず一発、デコピンを決めておいた。
     なんかどっと疲れた、と紫桜はフェンスに寄りかかって空を見上げる。
     まだおでこを押さえている恋花に、栞が声をかける。
    「あのね、栞に恋というものを教えてもらえません、か?」
    「ほえ? 恋、を……? まままままさか!」
     自分を指さしてぷるぷるする恋花に、違う違うと首を振って。
    「書き換えられた心じゃなくて、本当に素直な気持ちで好きな人ができたらしあわせだと思うの」
     そう言ってからちょっと迷って、けれど心を決めて栞は口を開く。
    「好きかどうか、わからない人がいる、の。恋する瞳はどんな世界を映すの?」
     その栞の言葉を聞いて、ぱっと恋花の顔が輝いた。
    「うんうん、じゃあ教えちゃう! 一緒に見ちゃう! 恋する世界、本当にきらっきらで何もかも眩しいんだから!」
    「彼氏とはちょっと離れちゃうけど……応援するから頑張って!」
    「うん! 大丈夫家近いし!」
     紗理亜の言葉にも、ブイサインで満面の笑顔で。
     きっと彼女のラブストーリーは、もっともっと膨らんでいく。

    作者:旅望かなた 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2013年1月23日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 0/感動した 1/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 17
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