鶴見岳の激突~強襲! 悪辣なる宴の狭間

    作者:雪月花

    「みなさん、イフリート達を灼滅して下さって、ありがとうございました」
     園川・槙奈(高校生エクスブレイン・dn0053)は、目尻を下げてにこっと笑う。
     別府温泉の鶴見岳に現れ、日本各地で事件を起こしたイフリート達は、灼滅者達の活躍により目論見を打ち崩された。
    「それを受けて、鶴見岳の調査と、原因解決の為の準備が進められていたのですが……」
     けれど表情を曇らせ、言葉を濁す槙奈の様子に、集まった灼滅者達もどうやら困ったことが起きたようだと察した。
     彼女が語り始めたのは、調査に際してサイキックアブソーバーによって齎された、思わぬ横槍となる存在についての情報だ。
    「鶴見岳の周辺には、ソロモンの悪魔の一派が率いる軍勢が集まっていたんです……イフリート達の作戦失敗をチャンスとして、彼らを攻め滅ぼす為に」
     ――ダークネス同士の争い。
     しかも、かつて自分達が確認したことのない規模の大きな戦いが起ころうとしている予感に、灼滅者達は戦慄を禁じえない。
    「ソロモンの悪魔達は、イフリート達が集めた力を横取りして、自分達の目的に使うつもりなんです」
     悪魔というだけあって、それが邪悪な企みであることに間違いはない。
     そして、彼らの軍勢の中には今までは類を見なかった程の強化を施された一般人の姿もあるというのだ。
    「彼らはソロモンの悪魔から『デモノイド』と呼ばれていて、軍勢の主力とされているみたいです。ダークネスにも匹敵するくらいの強さを持っている……ようなんです」
     深刻な表情の槙奈は、顔色がよくない。
     察知した予測は、彼女にとっても相当なものだったのだろう。
     少女は重い口を開く。
    「もし、この事態に学園が介入せず放っておけば、戦いはソロモンの悪魔側が勝ちます。鶴見岳の力を得た彼らは、もっと強大な軍勢になってしまうでしょう」
     対してイフリートは、一転突破で包囲を破り、鶴見岳から逃走するという。
     狡猾なソロモンの悪魔達は、鶴見岳の力さえ手に入ればわざわざイフリート達を追撃して消耗するような愚は犯さない筈だ。
     とすれば、ソロモンの悪魔の一派が強大な力を得た上に、イフリートもその勢力を多分に残したまま逃げ遂せるという最悪の結果が待っている。
    「そんなことになってしまうのを避ける為に、みなさんにお願いしたいんです……」
     そう言って頭を下げる槙奈自身も、今の武蔵坂学園に2つのダークネス組織と一度にことを構える程の力がないことは分かっている。
     組織同士の争いを利用しながら、最善の結果を見られるような介入を行って欲しい、ということなのだ。
     
    「今回の作戦では、介入の仕方に幾つか方法があります」
     灼滅者達の前に、サイキックアブソーバーによってエクスブレインが導き出した選択肢が提示された。

     1つ目の選択肢は、鶴見岳に攻め寄せるソロモンの悪魔の軍勢を、後背から攻撃すること。
     これは鶴見岳を守るイフリート達と、ソロモンの悪魔の軍勢を挟み撃ちにする形になる為、有利な戦いが期待出来る。
     だが、別府温泉のイフリートを灼滅してきた灼滅者も、イフリートにとっては憎き相手。
     もし戦場でイフリートと出会ってしまえば、最悪三つ巴の戦いになってしまう危険性があるという。
     但し、ソロモンの悪魔の軍勢を壊滅状態に追い遣ることさえ出来れば、イフリート達も連戦での消耗を避け、鶴見岳から脱しようとするだろう。
     この行動に成功してソロモンの悪魔の軍勢を壊滅状態に追い遣ることが出来れば、ソロモンの悪魔に鶴見岳の力を奪われるのを阻止出来る。

     2つ目の選択肢は、鶴見岳の麓にある『ソロモンの悪魔の司令部』を急襲すること。
      司令部にはソロモンの悪魔の姿が多数見られ、その分かなり高い戦力が集中していると言えるだろう。
     普段は表に出て来ないソロモンの悪魔と、相まみえるチャンスでもある。
     ただ、1つ目の選択肢の行動を成功させることさえ出来れば、司令部のソロモンの悪魔達は戦わずに撤退する。
     例え司令部を壊滅しても、鶴見岳をソロモンの悪魔の軍勢が制圧してしまえば、鶴見岳の力の一部はソロモンの悪魔に奪われてしまう可能性もあるが故に、無理に戦う必要は無い。
     尤も、多くのソロモンの悪魔を討ち取れば、彼らの組織を弱体化させることは出来る為、どちらの勢力の力を削ぐことに重点を置くかは、灼滅者達次第だという。

     3つ目、最後の選択肢は、イフリートの脱出を阻止して灼滅すること。
     鶴見岳から敗走したイフリートが、いずれ各地で事件を起こすことは必至。
     新たな事件の火種を絶つ為には、逃走を図るイフリートの阻止は重要になってくる。
     ソロモンの悪魔の軍勢と戦って疲弊している彼らへの攻撃は、イフリート勢力に大打撃を与えるチャンスかも知れない。
     
    「どの選択肢を選んでも、ダークネス同士の大規模な戦いの中に飛び込んでいくというのは同じです。とても危険な作戦になります……」
     前回以上の危険を孕んだ依頼を告げる槙奈は、ちょっと泣きそうだ。
     けれど、ちゃんと灼滅者達の方をまっすぐ見詰めてこう言った。
    「でも……最悪の事態を防ぐには、みなさんにお願いするしかないんです。どうか、よろしくお願いします。そして、お気を付けてくださいね……」


    参加者
    柳・真夜(自覚なき逸般人・d00798)
    叢雲・宗嗣(贖罪の殺人鬼・d01779)
    カーマイン・クロウリー(紅蓮の魔女・d03812)
    マリア・スズキ(トリニティホワイト・d03944)
    白灰・黒々(モノクローム・d07838)
    西洞院・レオン(翠蒼菊・d08240)
    有馬・由乃(歌詠・d09414)
    倉澤・紫苑(奇想天外ベーシスト・d10392)

    ■リプレイ

    ●山、鳴動を待つ
     別府の山も冬模様。
     雪こそないが、木々の緑も今は静かにその身を休めているようだ。
     何も知らない旅行者であれば、悠然とそこにある鶴見岳を見上げ今日の宿に帰る頃だろう。
     しかし、今ここにいるのはただの旅行者ではなく、何も知らぬ者達でもなかった。
     双眼鏡を手に、森に紛れるような色合いの服に身を包んだカーマイン・クロウリー(紅蓮の魔女・d03812)は、その印象的な燃える炎のような赤い髪を上着の下に隠している。
     このチームの灼滅者達は示し合わせ、同様に目立たない装いで息を潜めていた。
     時刻は17時より少し前。
     空は曇天、今日は夕焼けを見られそうもない。
    (「軍勢を叩きに向かった灼滅者達はどうしておるかのう……」)
     木々の向こうに見える鶴見岳の雄姿を仰ぎながら、西洞院・レオン(翠蒼菊・d08240)は密かに思いを馳せた。
     今彼らがいるのは、別府ロープウェイ別府高原駅を目前にした森の中だった。
     慎重な偵察により、この駅舎と周辺の建物がソロモンの悪魔達に占拠されていることを突き止め、今は各チーム毎に散開して時を待っている。
     出入りしている人影の動きを見るに、ソロモンの悪魔達が司令部としている場所はあの駅の中のようだ。
     付近には、他の灼滅者達の姿は見えない。
     恐らく、ある程度の距離を取って急襲の準備をしていることだろう。
     建物の周囲にいる強化一般人らしき者達の様子や、特に騒がれていないという事から見れば、恐らく作戦はここまで順調に進んでいる様子。
    (「失敗したの見て動いたということは、以前から準備していたのですかね……」)
     柳・真夜(自覚なき逸般人・d00798)は思う。
     普段の事件の際も影を匂わせるだけで、直に姿を現すこともないソロモンの悪魔。
     この司令部に一体何体いるかは分からないが、手間を掛けて作り出したらしいデモノイドを相当数投入しているとなれば、相応に周到な用意をしていたのだろうとは予測が付く。
    (「こんなところに、奴が、いる筈ない、けど……」)
     記憶の奥にこびり付いた影を思い起こしたマリア・スズキ(トリニティホワイト・d03944)のあどけない顔には、いつも通り何の表情も浮かんでいない。
     魔法使いとしての宿敵であるソロモンの悪魔。
     更に仇敵とも言える因縁の存在が、今何処で何をしているかは分からないが。
    (「私の、力が。どこまで、奴等に、通じるか。知るには、丁度良い、ね」)
     集団で動いているダークネス達と直接相対するのは、武蔵坂学園にとっても初めての事。
    (「ちょっと不謹慎だけど、こうもでっかいステージはちょっとワクワクするわね。ひとつ、はっちゃけさせて貰うとしますか」)
     倉澤・紫苑(奇想天外ベーシスト・d10392)もまた、来るべき時に向けて増していく緊張感とは裏腹に、胸を高鳴らせていた。
     背後には、今しがた抜けて来た木々の合間。
    (「イフリートの次はソロモンの悪魔ですか……ダークネスも忙しないですね」)
     小さく息をついた白灰・黒々(モノクローム・d07838)は、カラーコンタクトを着けた瞳で木立の合間をそっと覗く。
     尤も、今までもダークネス同士の戦いは続いていたのだろう。
     ただ、武蔵坂学園の知るところではなかっただけで。
    (「それにしても、由乃さんが一緒とは心強いです!」)
     頼みにしていると視線に乗せた黒々に、側にいた有馬・由乃(歌詠・d09414)は気付いて小さく微笑む。
     今回の作戦は、恐らく自分の経験中最も厳しい戦いとなるだろう。
     そう思えば、否応なく張り詰めていく神経に、由乃はそっと、兄の形見のピアスに触れた。
    (「チームの皆さんを信じて、私には私に出来る最善を尽くします。無事、全員で学園に戻れるよう見守っていて下さい」)
     暫し目を伏した間に強く念じる。

     午後17時。
    「(始まったようだな)」
     イフリート達とソロモンの悪魔の放った軍勢の戦いが始まったらしきを察し、叢雲・宗嗣(贖罪の殺人鬼・d01779)は時計を確認する。
     全体の指針により、ことを起こすのはダークネス勢力同士の戦端が切り開かれてから3分後となっていた。
     秒針が進み、或いはコロンが点滅する毎に、彼らの間に流れる空気もピンと張り詰め澄んでいくようだ。
     3、2、1……。
     3分きっかりに、皆一斉に足を踏み出した。
     踏み締めた枯れ葉や木の枝が音を立てるが、もう身を潜ませる必要はない。
     先程から視界に入っていた7人の強化一般人を目前に、灼滅者達はカードを取り出し、瞬時に殲術道具を解放する。
    「今を春べと咲くやこの花」
     由乃が流麗な詩のように紡ぎ、
    「すべての事象に白黒を」
     黒々は愛らしいかんばせに凛としたものを浮かばせ、
    「柳真夜、いざ参ります!」
     真夜は漲る生命力を表すように、力強くスレイヤーカード解放の言葉を放った。
     恐らくここに一般人はいないだろうと判断したレオンは、サウンドシャッターは使わずメディックの位置を取る。
     そこから各々のポジション、打ち合わせ通りの陣形を組むまで滞りなく。
     前衛にて軽くチェーンソー剣の先を強化一般人達に向け、クラッシャーの紫苑は悠然と微笑んだ。
    「さてさて、ショータイムと参りましょうか。熱いステージの開幕ね」
    「一凶、披露仕る……」
     刃の切っ先を向けながら、宗嗣も静かに言い放つ。
     さっと強化一般人達の顔色が変わった。

    ●強襲! 悪辣なる宴の狭間
     彼らは灼滅者達の急襲に立ち向かってくる……かと思いきや。
    「な、なんですかこの人達……!」
     彼らは手に抱えていた食材か何かの袋を放り出し、青褪めた顔で後ずさった。
     恐らく、司令部にいるソロモンの悪魔達の身の周りの世話をしている者達だろう。
     一応武器は携帯しているようだが、男女共にほっそりとして見目の良い、あまり前線に出されるタイプではないようだ。
    「……雑魚」
     ぽつりと呟いたマリアが夜霧で身を包むと同時に、斬魔刀を銜えた彼女の霊犬が駆けて黒々が間近の強化一般人にデッドブラスターを放ち、その間に由乃は自らにソーサルガーダーを掛ける。
    「うあぁっ……!!」
    「いやぁっ!?」
    「こ、ここに……こんな奴らがくるなんて!」
     毒に冒され霊犬に斬り付けられた男性の姿を間近でみていた女性は悲鳴を上げ、他の面々も混乱したように灼滅者達に背を向ける。
    「気の毒に思えるが……許すのじゃ」
     大人びた目に覚悟を宿らせ、レオンが指輪から弾丸を放つ。
     その軌道を追うように駆けた宗嗣の螺旋槍が足を縺れさせた女性の背に突き立てられ、拳に宿した雷の闘気を、真夜が続けざまに振り下ろした。
     一方で、紫苑から放たれた鏖殺領域が強化一般人達を包み込む間に、カーマインは自らのバベルの鎖を瞳に集中させていく。
     逃げ惑うだけの強化一般人を追いながらも、真夜は小さく溜息をつく。
    「これじゃ、ただの一般人じゃないですか。私みたいに」
     この状況で突っ込む者は流石にいなかったものの、彼女の呟きは尤もだ。
    「もう、拍子抜けしちゃう――」
     そう紫苑が零し掛けた時、駅舎の方からゆったりと歩んでくる人影に気付いた。
     ゆったりとしたローブを纏い、顔半分を隠した女性だ。
     何処か艶かしさを感じさせる足捌きの歩調は緩やかなのに、やけに近付いてくる速度が速い。
    (「この気配……」)
     マリアやカーマインは、彼女が『何』であるか、いち早く察したようだった。
     それは、まごうことなき魔法使いの宿敵。
     ソロモンの悪魔だ。
    「……ド、ドリー様!」
     その姿を見たひとりの強化一般人が、光を取り戻したような表情で呟く。
     ドリーと呼ばれたソロモンの悪魔は紫のルージュが引かれたような唇で微笑む。
    「あなた達の悲鳴が聞こえたものだから、何事かと思って参りましたのよ」
    「ドリー様っ!!」
     柔らかい声音に、それだけで強化一般人達は感激した様子だ。
     ドリーはそのまま歩みを進め、ほんの数メートルの距離を挟んで灼滅者達の前に立った。
     静かな威厳と、同時に妖美な雰囲気を感じる。
     彼女の背後に回った男女は心酔したような表情で、その動向を覗っている。
    「火事場泥棒のようにここを狙って可愛いこの子達を苛めるなんて、どんなダークネスかと思ったけれど……随分と大きな野鼠達でしたのね」
     ドリーは、侮蔑を込めた眼差しを灼滅者達に投げつけてきた。
    「ですが、今回のこと……イフリート達に痛手を負わせたのがあなた達の仕業だったのなら、感謝していますのよ。害獣でも役に立つ時があるのだと」
    「挑発には、乗らない」
     明らかに逆上を狙っているようなドリーの言葉を、マリアは平坦な声で切った。
     解体ナイフに蓄積された呪いを解放し、毒の風を吹き荒れさせるマリアの攻撃を基点に、次々と灼滅者達の鮮やかな連携が決まっていく。
     由乃が鬼神変で変化させた腕を振り下ろした前衛の男性に対し、黒々も宗嗣もそれぞれトラウナックルと螺旋槍で攻撃を浴びせ、その間にレオンはディフェンダーを中心にシールドリングを張り、仲間達の傷を即座に癒していく。
     レオンひとりでは回復し切れない部分は霊犬が補い、由乃はほぼ攻撃に専念することが出来た。
     死角から仕掛けたティアーズリッパーの一撃で紫苑が男性を仕留めると、次の前衛に向け真夜が鋼鉄拳を打ち込み、カーマインのフリージングデスが彼らを凍えさせていき――。
     遥かに格上の存在であるソロモンの悪魔の登場をしても、揺るぎなく自分達を圧倒する灼滅者達の猛攻に、強化一般人達は動揺していた。
     何人かは既に倒れており、ドリーの口許からも姿を現した時の笑みが消えている。
    「……奴ら、指導者がいなければ何も出来ないのだろうな」
     宗嗣が小声で呟くと、黒々も紫苑もその意図に気付いて視線を送り合った。
     クラッシャー達の攻撃の矛先は、ドリーへと向けられた。
    「みんな、ついてきて……いくよ!」
     声を上げた黒々の竜骨斬りを避け切れず、ドリーの服が裂け続く仲間達の連携に時折激しい直撃を受け、バッドステータスも一気に積み上がっていく。
    「抉り裂け……禍月……!」
     ダメ押しとばかりに、死角に潜り込んだ宗嗣の一閃でドリーのローブは更に引き千切れた。
     それを見るや、マリアはナイフの刃をジグザグに変化させ、ドリーの懐を切り裂く。
    「きゃあぁっ!!」
    「ド、ドリー様っ!」
     回復手段を持っている強化一般人達が治療しようとするが、灼滅者達の勢いには追いつかない。
    「このまま、押し切ります……!」
     由乃の巨大化した片腕が激しく唸り、ドリーの胸に深々と爪を突き立て、容赦なく引き裂いた。
    「イヤアアアアアアアアアアア!!」
     耳をつんざくような悲鳴に、生き残った強化一般人は愕然とする。
    「こ、こんな奴らに、わたくしが……。アモ……さ……」
     かはっ、と喉を鳴らしながら、悪足掻きのように腕を伸ばすドリー。
     しかし、その指先からサラサラと崩れ、形を失っていく。
     女悪魔はよろめきながら、消滅していった。
    (「アモン……?」)
     最期の呟きを間近で聞いた由乃は、それが誰かの名のように感じた。
    「そんな、ドリー様が……」
    「あぁ……」
     ドリーを目の前で灼滅された強化一般人達は呆然と立ち尽くし、或いは膝を突いている。
     周囲の気配や物音から、他の灼滅者達はまだそちらへ向かったソロモンの悪魔達と激しくぶつかり合っているようだ。
     だが――この場にいる強化一般人達の後方には人影はなく、恐らく多くのソロモンの悪魔達も急襲の対応に追われているだろう。
     司令部制圧に向けて一番槍を突き立てるには、今しかない。
     行こう。
     誰ともなく視線を交わし、彼らは虚脱状態になっている強化一般人達の間を駆け抜け、駅舎を目指した。

    ●飛び込むは、虎穴の如き魔の在り処
     別府ロープウェイ別府高原駅の構内は、外の喧騒とは無縁のように静かだった。
     電灯は煌々と点り、その明るさが逆に不気味さを煽る。
     外で女悪魔を倒してからこちら、灼滅者達はまだ誰とも遭遇していない。
     だが、ここで間違いないだろう。
     そんな予感が、何がしかの警鐘のような感覚と共に彼らの中で鳴り響いていた。
     明かりに晒され身を隠す場所はないが、足音を押さえ慎重に廊下を進む。
     するとその先にある、奥の部屋に続くと思われる扉の前に、数人の人影が見えてきた。
     あちら側にも灼滅者達の姿が見えたのだろう、表の者達とは違い、すぐに武器を構えこちらに向かってきた。
     しかしこの強化一般人達も、流れるような連携とクリティカルの連続でソロモンの悪魔を下した彼らの敵ではなかった。
     扉を守っていた強化人間達は、どうやら戦闘よりも頭脳を働かせる方が得意なタイプのようだった。
     ここが司令部の中枢であることも、関わっているのだろう。
    「皆、まだ余裕はあるようじゃのう」
     清めの風を吹かせ、レオンは仲間達の傷や消耗具合を確認する。
     心霊手術を施すような痛手はなく、それに……恐らく、大軍団の総指揮を取っている者の居室は、目と鼻の先だ。
     強化一般人達が守っていた扉から、微かに異様な気配が滲み出ているような気がした。
     この扉を開いたら――。
     灼滅者達は静かに視線を交わし、真夜と由乃が左右の握手に手を掛けた。

     扉の奥は、会議やちょっとしたイベントを行うような、広々とした部屋だった。
     部屋の奥に見える、幾つかの人影。
    「貴様らっ……」
     玉座のような椅子を挟んで立つ参謀のような強化一般人の配下のひとりが、声を荒げる。
     しかし、ゆったりと椅子に掛けた人物が左手でそれを制す。
     それは、右手に絡み合う蛇の意匠と赤い石を頂いた杖を持つ、ソロモンの悪魔だった。
     ピエロのような帽子に、口の辺りが鳥の嘴のように尖った頭部。
     その腰は身体を支えるには不自然なくらい細く括れ、奇妙な蝙蝠に似た翼と不気味な模様が浮き出た爬虫類の尾を持っている。
    「灼滅者如きがここまで来るとは。バベルの鎖も万能では無いということか」
     誰かに言った、というよりは独り言のように零すソロモンの悪魔が放つ気配だろうか?

     灼滅者達は覚えのない、大きなプレッシャーを感じていた。
     先程灼滅したドリーや、外で仲間が戦っているソロモンの悪魔達とは比較にならないような強敵であると、戦わずして察せるくらいの重圧だ。
    「あなたが……アモン」
    「いかにも、我が名はアモン。ソロモンの悪魔!」
     重苦しさを堪えて発した由乃の声に、こちらを見遣ったソロモンの悪魔の様子は珍獣でも見るように楽しげだ。
    「さて、一応聞いておこう。貴様ら、ここに何をしに来た?」
     ゆらりと影を揺らめかせ、マリアが一歩踏み出した。
    「私は、マリア。『悪魔殺し』の、マリア」
     いつもはあまり強く意思を映し出さないマリアの瞳が、冷たく冴えた光を帯びる。
     何をしに来たか? 決まっている!
    「ソロモンの悪魔……貴様らを、全て斃す為だ!」
    「……なるほど。貴様らが、我が配下を倒して回っていた『敵対組織』というわけか」
     鋭く放たれた言葉に、しかしアモンはくつくつと喉を鳴らした。
    「何がおかしいの?」
     黒々が大きな瞳で睨み付けるが、アモンが動じる様子はない。
    「やれやれ……どのようなダークネスが動いているのかと思っていたが……。バベルの鎖をどう誤魔化したかは知らないが、我ら全てを斃すとは、大言壮語が過ぎるのではないか?」
     灼滅者を襲う重圧が、さらに増す。
    「……何を……」
     紫苑は呻くように呟いた。
     アモンの放つ凄まじい威圧感に先程までの胸躍る感覚も握り潰されてしまったようだ。
    「良かろう。ドリーを突破したのだろう。出払った者達が戻るまでの間の、余興程度にはなるだろう……」
     アモンはゆっくりと立ち上がると、配下達にはそのまま控えているように指示を出す。
    「さあ、貴様らの全ての力を持って、このアモンを楽しませてみせろ」
     灼滅者達の背後にある扉が、ひとりでに閉じた。

    ●水際にて廻る座興
    「ぐっ……!?」
     アモンの攻撃から由乃をかばった真夜の口から、苦痛の声が漏れる。
     戦いが始まって数分。結論から言ってしまえば、灼滅者達はアモンに全く歯が立たなかった。
     いかに灼滅者達が息を合わせ、連携を駆使して攻撃を仕掛けても、アモンが少し翼を動かしただけで軽くいなされてしまう。
     その癖、指先で描いた円から放たれる魔法の苛烈さに、彼らはあっという間に追い詰められていく。
     8人だけでは、圧倒的に戦力が足りないのだ。
    「ここはなんとか凌ぎましょう。もう少し持ち堪えれば、きっと外で戦っている皆さんが来てくれます。それまで……!」
     由乃は清めの風やソーサルガーダー、防護符を使い分けて仲間達を癒しながら、勇気付けるように言葉を掛けた。
     この人数では敵わなくとも、他の灼滅者達も表にいるソロモンの悪魔を倒せば、続々とここに駆けつけてくれる筈だ。
     レオンと由乃が中心となって、回復や守りに徹しようにも与えられるダメージが激しすぎる。
     霊犬は真っ先に消滅し、灼滅者達も何度か倒れ掛かった。
     今全員が立っていられるのは、ギリギリのところで魂が肉体を凌駕し続けたからでもある。
    「先程の意気はどうした? 所詮は灼滅者……ダークネスの成り損ないなど、この程度ということか」
     つまらなさそうなアモンの言葉に反論する余裕など、ありはしなかった。
    (「こいつの掌の上で、転がされているだけなのか……」)
     宗嗣は歯噛みした。先程倒したドリーとかいうソロモンの悪魔とは格が違い過ぎる。
     破壊力を増した刃もさして深い傷を与えたようには見えないし、なにしろ狙えるような死角が見付からない。
    「やっぱり、ここは撤退した方が良いんじゃないかしら」
     厳しい攻撃に晒されながらも、余裕の表情を崩さないように心掛けつつカーマインが仲間達に告げる。
    「そうね……一端離脱して、外のみんなと合流した方が良いかも」
     紫苑も頷き、一同は後退の動きを見せようとする。
    「どうした? 途中退場の許可は出していないぞ」
     アモンの蔑むような言葉とともに、2人の配下が扉側に回り込んできた。
     この状態でアモンに背を向けるのは、非常に危険だ。
    「しかし、どうしたものか……そろそろ貴様らの相手をするのにも飽いて来たな」
     灼滅者達の攻撃をかわし、翼の一振りで振り払ったアモン。わずかな逡巡の後、その瞳が尋常ではない光を帯び、初めてその杖を振りかざした。
     禍々しい光を放つ赤い石は、癒し切れない痛みがその表情にも影を落としている紫苑に向けられていた。
     あの悪魔は本気だ、これ程までの力の差では、この状態から一撃で仕留められかねない。
    (「――いかん!」)
     このままでは、確実に仲間の命が失われる。
     切迫した思いと共に、レオンの脳裏に電流が走ったようだった。
     青く澄んだ瞳から、フッと光が失せる。
     同時に、彼は前列に飛び出していた。
     身に纏うオーラが膨れ上がり、アモンの杖の先を僅かに逸らす。
     杖からほとばしった魔力は黒々の脇に逸れ、床を砕いた。
    「レオンさん……」
     それまでなんとか平常を装っていたカーマインの口から、微かに上擦った声が零れ落ちた。
     肩で息をしているレオンの背を、皆固唾を呑んで見守る。
     身体の底から湧き上がってくるのは、死を超越し、生命を失った者達を統べるべく誕生した存在の禍々しさ。
     ――嗚呼、出来ればしとうなかった。
     とてつもない敵の攻撃に晒され、誰ひとり倒れさせぬという決意も叩きのめされ、目の前で命が消えかねない状況にレオンはその魂から溢れ出す闇を抑え切れなくなっていた。
    「ほう、堕ちたか……。面白い」
     アモンのささやかな嗤い声すらも、何処か遠い。
     片腕を異形に変化させたレオンがアモンへと制約の弾丸を撃ち放つ。闇堕ちによって威力と精度を大幅に増したレオンの一撃は、アモンの帽子を貫いた。初めての明確な有効打に、アモンの目が一瞬細まった。
     我に返ったように仲間達は彼を援護し、また傷付いた者に癒しを施していく。
     小柄な身体に似つかわしくないオーラを放ちながら、奮戦するレオン。戦い続けるにつれて溢れ出す力と裏腹に彼の生気は消え、新たな存在へと変じようとしていく。
     しかし、闇堕ちによって強化された彼の力を、アモンの力は上回った。
    「なかなか良い顔になったものだ。ならば、これはどうだ?」
     次の瞬間、レオンの胸板は魔法の矢に射抜かれていた。それがアモンの放った魔法によるものだと気付いた時には、無数の矢が彼を取り巻いている。
     とすとすとすっ。
     乾いた音を立て続けざまに何本も何本も、矢はレオンを貫いていった。
    「なん、と……」
     無念の思いを滲ませ、がくりとレオンは崩れ落ちた。
    「ふむ……『屍王』といえど、成り立てならばこの程度か」
     アモンの呟きが、虚しく耳に届く。

    ●風前の希望と、決死行
     やむを得ない状況とはいえ、ここでメディックのレオンが倒されてしまったのは灼滅者達にとってかなりの痛手だった。
     回復に重きを置いた由乃はまだ健在、個々も回復手段を持っているが、この状態で外の灼滅者達が駆けつけるまで持つかは不安がある。
     まだ耐え凌ごうという意気の彼らに、アモンはやれやれとでも言いたげに息を吐いた。
    「まさか、この期に及んで『仲間が助けに来てくれる』とでも思っているのではあるまいな?」
    「「……!?」」
     悪魔の片手が、ゆらりと振られる。
     すると、室内のそこかしこに魔法陣のような文様が展開されていき、その中に別の場所の風景が映し出された。
     そこに流れたのは、共に司令部を急襲した仲間達がソロモンの悪魔を前に次第に劣勢になり、次々と撤退していく映像だった。
     中には2体のソロモンの悪魔を相手にしなければならない戦場もあり、誰かが闇堕ちし、追撃をなんとか食い止めている様子も見られる。
    「この魔法は本来、各所の情報を確認して指示を出す為に使うものなのだがな。ほう、また一人闇堕ちしたぞ。こちらの部隊は撤退していくな。……さて、貴様らを助ける仲間というのは、どこにいるのかな?」
    「そんな……」
     失意に打ちひしがれたように、黒々はスクリーンを呆然と見詰める。
     加勢もなく、撤退も出来ない。
     絶望的な状況だった。
     彼らはこのまま、アモンになぶり殺しにされるだけなのか。
    「いや……」
     低くそう呟いたのは、宗嗣だった。
     次の瞬間、彼から押さえ切れない殺気が漂い始めた。
     後から後から膨れ上がる黒い衝動が、アモンから放たれているプレッシャーをじりじりと押し返す。
    「ここは俺が食い止め、殿となる……なんとしても撤退するんだ」
     ちらりと肩越しに仲間達を振り返った宗嗣の瞳は、殺しへの渇望にギラついている。
    「次は殺人鬼という訳か」
    「一凶、馳走仕る……」
     彼を観察しているような様子のアモンにニイィ、と口端を吊り上げた後、薄笑いを張り付かせた宗嗣は風になった。
     ガキィンと金属が重く打ち鳴らされる音。
     アモンの杖が槍の軌跡を逸らし、宗嗣の手元を悪魔の翼が刃の様に襲う。
     その一撃を身を屈めて回避した宗嗣を貫こうとする杖を、槍を振り回して退けると宗嗣は床を手で打ち、一旦距離を取ると再び挑みかかった。
    「行きましょう……!」
     何かを振り切るように、真夜が仲間達に声を掛けた。
     闇堕ちした灼滅者でも、多少の時間稼ぎが関の山なのは先程目の当たりにしている。
    「でも……」
    「……今は、ひとりでも多く、ここを、離脱。それが、最優先」
     瞳を揺らした由乃に、マリアは静かに首を振った。
     とにかく、あの扉を突破しなければ――。
    「どこへ行く? 退出許可を出した覚えは無いぞ」
     しかし、扉の前で武器を構えた配下達に攻撃を仕掛けようとする灼滅者達をアモンの放った凄まじい凍気が包み込んだ。
    「……ッッ!!」
     精神的に打ちのめされていたのもあってか、体力の尽きた黒々は再び立ち上がれずに膝を突く。
     すかさず紫苑と由乃が彼を抱える。
     もう、生きてここを出られる希望はないのか?
     悪魔の手遊びで、全員の命の灯火が掻き消されてしまうのだろうか?
     視界が暗く、狭くなるような感覚に襲われ掛ける中、宗嗣の腹部に杖の赤い石が突き込まれた。
     ドスッという重い音が皆の耳に届く。
    「ぐあぁ……ッ!!」
     体内に流れ込んできたアモンの魔力が爆発し、全てを破壊し尽くさんばかりに暴れ回った。
     宗嗣が崩れ落ちようとしたその時、ふたつの影が素早く動いた。
     弧を描いた赤い髪が、紅蓮の炎のようになびく。
     黒と緑を纏う疾風が、倒れていく宗嗣の影に一瞬潜んで、アモンに向かって跳躍する。
     正反対の方向を向いたまま、彼女達はほぼ同時に攻撃を放った。
     カーマインがマテリアルロッドを振るうと瞬時に配下達が凍り付き、閃光の如く怒涛の拳の嵐を放ち続ける真夜がアモンの注意を引き付ける。
     後がないことを悟り切った真夜とカーマインも、己の深きより伸びてきたどす黒い闇の手に、一か八かで身を預けていたのだ。
    「ほう……? 新たな同胞の誕生を歓迎すべきかな、これは」
    「……ッ! 戯言を!」
     ソロモンの悪魔へと堕ちゆくカーマインとアモンの間で、魔力が激しくぶつかり合う。
     ――早く。
     誰が口にしたか、それとも誰もが頭の中で思っただけか。
     判別しようもないが、彼女達は倒れた配下達を飛び越え、外への扉をぶち破って廊下へと飛び出した。彼らを追うように無数の魔法の矢が放たれるが、狂的なまでに激しさを増した真夜の闘気がそれらを呑み込んだ。灼滅者達の被害は、僅かに残った矢が真夜を切り裂くに留まる。
     たった扉一枚の距離が、今までどれだけ遠く思えただろう。
     感慨に耽る余裕などない。
     せめてアモンの名を手土産に、行かなければ、生きて学園に帰らなければ!

    ●埋み火は山の外に
     走る、走る。
     駅構内に複数の靴音が響いている。
    「ルートは幾つか見当付けてあるわ。急いで!」
     由乃の背に意識のない黒々を預け、紫苑は一行を先導する体勢を取った。
    「柳……さん」
     隣を走る真夜を見遣り、由乃は眉を下げる。
     闇堕ちした真夜は、いつもの明るく元気な様子がなりを潜め、暗い艶めかしさを浮かべた唇が恐らく彼女も知らないうちに笑みの形を作っていた。
     アモンに攻撃を浴びせ、辛うじて離脱した瞬間にも結構な痛手を負っている筈なのに。
     喜んでいる、再び強敵とまみえ死闘を演じる瞬間を待っている。
     カーマインもまた、表情は前を見据えてはいるものの、いつその姿を悪魔のように変容させてしまってもおかしくないような雰囲気を纏っていた。

     駅を出ると、辺りは既に夜闇に包まれていた。
     何処か離れた場所から声が聞こえる。
     どうやら、撤退していった灼滅者達への追撃を諦めた者達が戻り始めているようだ。
    「(こっちよ!)」
     紫苑が小声で伝える逃げ道に従って、灼滅者達は人目に付き易い開けた場所を駆け抜け、生い茂る木々の中に飛び込んだ。
    (「あれが……」)
     足許に注意して獣道同然の場所を走りながら、マリアは先程の戦いを頭に過ぎらせていた。
     初めてまみえたアモンは、とてもではないが今の自分、そして自分達の手には負えなかった。
    (「それでも……それでも、悪魔は、いつか、全て……灼滅する」)
     心に秘めた願い、決意、覚悟。
     そこに、今回味わった思いも一緒に閉じ込めて。
     彼女の、そして灼滅者達の道は、きっと果てしなく遠くへと繋がっている。

     山中の道なき道を駆け抜け、灼滅者達がやっと追っ手から逃れたと息をつける場所に辿り着いた頃には、真夜とカーマインの姿はなかった。
     もしかしたら、自らの心が完全に闇に飲まれてしまう前に、皆の側から離れたのかも知れない……。
     レオンと宗嗣に至っては、今は生死すら確認しようのない状況だ。
     しかし、半数もの闇堕ちを引き起こしながらも掴んだものは、大きな収穫だった。
     制圧を目的とした司令部の急襲という面で見れば、確かに失敗だ。
     けれど、急襲に向かった灼滅者達の働きはソロモンの悪魔達の指揮系統を乱れさせ、大軍勢を叩きに向かった仲間達の作戦遂行に貢献することとなった。
     そして、いち早く敵の懐に入り込んだこのチームの灼滅者達によって、大軍勢を指揮していたソロモンの悪魔が何者なのかという情報を掴み、学園に持ち帰ることが出来た。
     ソロモンの悪魔・アモン。
     その圧倒的な力は今の灼滅者達にとって脅威的なものだったが、人々がダークネスに脅かされない世界を手にする為にはいずれ超えなければならない壁なのだ。
     そんな思いを噛み締め、彼らは山を降りていく。
     火が消えたように静かな、かつて炎獣達が集った山を。

    作者:雪月花 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:柳・真夜(自覚なき逸般刃・d00798) 叢雲・宗嗣(黒い狼・d01779) カーマイン・クロウリー(紅蓮の魔女・d03812) 西洞院・レオン(翠蒼菊・d08240) 
    種類:
    公開:2013年2月5日
    難度:やや難
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 75/感動した 4/素敵だった 2/キャラが大事にされていた 1
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