「まずは、鶴見岳での戦いお疲れ様でした」
五十嵐・姫子(高校生エクスブレイン・dn0001)の話はそんな挨拶から始まった。
「みなさんのおかげで鶴見岳に封じられたと考えられる『強大な存在』の復活を阻止することができました。この結果を受けて、武蔵坂学園では鶴見岳の調査と、その原因解決を行うべく準備を進めていました」
そう話す姫子の表情はだんだんと影が濃くなっていく。
「実はこの調査を行うにあたって想定外の横槍が入ったのです。現在、鶴見岳周辺には、ソロモンの悪魔の一派が率いる軍勢が集結しています。このソロモンの悪魔の一派が、今回の作戦失敗によって戦力を減らしたイフリート達を攻め滅ぼそうと準備を整えています。ソロモンの悪魔の目的は、イフリート達が集めた力を横取りし、自分達の邪悪な目的の為に使用すると考えられます」
そう説明する姫子は一度、灼滅者たちの顔を見回す。誰もが真剣に姫子の話に耳を傾けているのを確認して姫子は再び説明を始める。
「ソロモンの悪魔の軍勢には、今までとは比較にならない程に強化された一般人の姿もいることがわかっています。その力はダークネスに匹敵する程の力を持っていると考えられます」
その言葉に灼滅者たちは顔を見合わせる。
「彼らは、ソロモンの悪魔から『デモノイド』と呼ばれていて、この軍勢の主力となっています」
姫子から紡がれる言葉から灼滅者たちは声をあげる。
「もし、武蔵坂学園が今回の作戦に介入しなかった場合、この戦いはソロモンの悪魔の軍勢が勝利することはほぼ間違いないでしょう。そして、鶴見岳の力を得て更に強大な勢力になっていくのは確実です。敗北したイフリート達は、一点突破で包囲を破り、鶴見岳から姿を消す事になります。一方で、ソロモンの悪魔の軍勢は鶴見岳の力さえ奪えればイフリートと正面をきって戦う必要はないと考えているようで、逃走するイフリートに対してはほとんど攻撃を仕掛けないようです」
姫子の言葉を聞きながら、灼滅者たちは難しそうな顔をしている。
イフリート側は鶴見岳の力を奪われるが、戦力自体はさほど失われず依然、強さを保つ。
ソロモンの悪魔側は鶴見岳の力を得て、更に強大な勢力になる。
「そうです。放置すれば、みなさんが考えているような事態になることは必至です。しかし、現在の武蔵坂学園に2つのダークネス組織と正面から戦うような力はありません。ですが、何もせずに見ていることもできません」
姫子は意を決して能力者たちに告げる。
「2つのダークネス組織の争いを利用しつつ、なんとかして最善の結果を導けるよう、介入を行ってください」
姫子の提案に灼滅者たちは静かに、しかし力強く頷く。
姫子もそれでは、とノートを開いて作戦を説明し始める。
「今回、考えられる選択肢は3つあります。1つ目は、鶴見岳に攻め寄るソロモンの悪魔の軍勢を背後から攻撃することです」
この選択肢は、鶴見岳を守るイフリート達とで、ソロモンの悪魔の軍勢を挟撃することになるので、有利に戦うことができる。
「ですが、デメリットもあります。別府温泉のイフリートを灼滅したのはみなさん、灼滅者です。イフリートにとって灼滅者は憎むべき敵ですので、戦場でイフリートと出会えば、三つ巴の戦いとなることは避けられません」
そして鶴見岳のソロモンの悪魔の軍勢を壊滅させる事ができれば、イフリート達は新たな敵――この場合は灼滅者、との連戦を避けるために鶴見岳からの脱出を行う。つまりは鶴見岳のソロモンの悪魔の軍勢を壊滅する事ができれば、ソロモンの悪魔に鶴見岳の力を阻止する事ができる。
「2つ目の選択肢は、鶴見岳のふもとにある『ソロモンの悪魔の司令部』を急襲することです。この司令部には、ソロモンの悪魔が多数いることが確認されているため、戦力はかなり高いことが想定されます」
この選択肢を選ぶことになれば、普段は表に出てこないソロモンの悪魔と直接戦うチャンスになり、ソロモンの悪魔について更に知ることができるかもしれない。
しかし、鶴見岳の作戦さえ成功させれば、司令部のソロモンの悪魔達は戦わずに撤退する為、無理に戦う必要はない。
「なにより、司令部を壊滅しても、鶴見岳をソロモンの悪魔の軍勢が制圧してしまったら、鶴見岳の力の一部はソロモンの悪魔に奪われることになってしまいます」
多くのソロモンの悪魔を討ち取っていれば、組織自体を弱体化させることは可能ですが……と姫子は付け加える。
「そして、3つ目の選択肢はイフリートの脱出を阻止して灼滅することです。鶴見岳から敗走したイフリートは、各地で事件を起こす事は明らかです。言わばこの選択肢は今後の被害を最小限に食い止める1つの手段になるでしょう」
しかもイフリート達は、ソロモンの悪魔の軍勢との戦いで疲弊しているため、千載一遇のチャンスと言ってもいいだろう。
「私からの説明は以上です。どの選択肢をとるにしても、かなり危険なものとなっています。ですが、このまま放置する事はできません。みなさん、どうか万端の準備をとって事に臨んでください」
姫子はノートを閉じて、力強く灼滅者を送り出すのであった。
参加者 | |
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天鈴・ウルスラ(ぽんこつ・d00165) |
七咲・彩香(なないろのこころ・d00248) |
鈴鳴・梓(修羅の花嫁・d00515) |
戌井・遙(星降る夜・d00620) |
セリル・メルトース(ブリザードアクトレス・d00671) |
霈町・刑一(本日の隔離枠 存在が論外・d02621) |
ピアット・ベルティン(リトルバヨネット・d04427) |
パール・ネロバレーナ(殲滅型第六素体・d05810) |
●
「――さぁ、いこうか」
セリル・メルトース(ブリザードアクトレス・d00671) をはじめ、八人の灼滅者たちは静かに立ち上がる。
「いや~漸くイフリートのことも解決かと思いきや空気の読めないソロモンの連中ですね」
霈町・刑一(本日の隔離枠 存在が論外・d02621)の言葉にまったくだ、と戌井・遙(星降る夜・d00620)も頷く。
「ソロモンに力を渡さないように全力でぶっ飛ばしてやろうぜ」
「面倒ごとになりそうですし、ここはひとつ邪魔してやりますか」
そんな爽やかに笑みを浮かべる遙と刑一は頼もしい限りだ。
「ソロモンの悪魔……絶対に負けられないの」
静かに、けれども力強くピアット・ベルティン(リトルバヨネット・d04427)は言葉を紡ぎ出す。
勇ましさならば、鈴鳴・梓(修羅の花嫁・d00515)も負けてはいない。
「漁夫の利狙いでいい気になっている悪魔さんに蹴りかましにいきましょうか」
ふふ、と声を漏らす梓は鶴見岳の頂上を見据える。
「聞こ、える?」
小首を傾げるパール・ネロバレーナ(殲滅型第六素体・d05810)の言うとおり、頂上付近がなにやら騒がしい。
「始まったでゴザルか」
天鈴・ウルスラ(ぽんこつ・d00165)はスレイヤーズカードを取り出して、封印を解除する。
「ボクは、守ってみせるの!」
七咲・彩香(なないろのこころ・d00248)も封印を解除する。全身が霧状になって、彩香の周囲がぼんやりと輪郭を失う。そして風が吹き、輪郭が再び現れた時には彩香の手には装備が、足下には霊犬のシルキーが出現する。
「――行くの」
その言葉に灼滅者たちは頷く。
イフリートとソロモンの悪魔が争う地へと向かうのであった。
●
走る。
ひたすらに走る。
冷たい空気が頬をきるのを感じながらも、体の奥では炎が宿り、体を次第に活性化させていく。
「そろもんのあくま、たくさん?」
パールの指差す先にはソロモンの悪魔の配下たちが頂上へと向かっている光景だった。その数、10。
知的な様子は一切なく肉体に絶対的な自信をもつ男たちは灼滅者の接近には気がついていない。
「起動……機動……対象確認……認識……。対象を殲滅します」
無表情なパールが解除コードを呟くたびに無表情の奥に隠れていた感情はパールの更に奥底へと隠れてしまった。
「真白なる夢を、此処に」
セリルも解除コードを唱える。ぼんやりと浮かび上がった光をセリルは手に取る。その光は細く伸びて槍形へと姿を変えた。同時にセリルの体を覆うバベルの鎖が瞳に集中する。
「一気に片つけるでゴザル」
「後ろから失礼、キミたちの邪魔をさせてもらうの」
ウルスラの情熱的な踊りに合わせて刃となった影業も舞い、配下の背後を悉く切り刻む。
血が噴き出る中でも一番ひどい配下に狙いを彩香は定める。彩香の指に嵌められた血のように赤い宝石を狙った配下に向ける。配下が振り返るのと同時に宝石から放たれた弾丸が配下の眉間に突き刺さる。
「……ところで鶴見岳の力ってどんなのだろー」
ばたりと力なく倒れた配下には目もくれず、彩香は首を傾げる。その疑問に配下が答えるはずもない。
梓が配下との距離を詰める。振り返り、自分に襲い掛かってくるものがあることを配下は理解しながらも体が反応しない。
「遅い、ですね」
口元に笑みを浮かべながらも流れる水の如く配下の懐に下から潜りこむ。
「あっ――」
配下が行動するよりも先に、梓のアッパーが配下の意識を断ち切る。
「先手必勝、どかーんといくの!」
魔力を杖の先に凝縮させたピアットが配下の顔面に杖を叩きつけた。膨大な魔力はピアットの言葉通り、どかーんと派手な音の爆発を引き起こし、配下を消し炭にした。
ようやく配下たちも状況を呑み込み始め、戦闘の構えをとる者も出始める。だが、まだ呑み込めていない配下もおり、その配下を素早く見つけ出して遙は鞘から刀身を抜く。
白の刀身を持つ冬桜。
黒の刀身を持つ黒椿。
その刃に等しく宿る炎。
二つの炎が配下の体の中心で交わった時、また一人、配下が倒れる。
「ボケッとするな!」
「行くぞ、お前ら!」
気合いを入れ配下たちも灼滅者らに挑む。
「おっと、そんなに一直線に来ていいんですか」
挙動の読みやすい一人に刑一が槍の先を向ける。槍はギリギリと音を立てながらねじれ、タメを作る。
配下は手にした短刀を刑一に投げつけると同時に姿を消す。
「わかりやすいですねえ」
刑一は槍を振り上げて、短刀を弾く。槍の先には姿を消した配下が宙に浮いている。
超高速で放たれた槍はねじれの力も借りて配下の胴体を真っ二つに引きちぎった。
これで残るは五体。そう認識したパールとセリルは互いに目配せをする。
「――殲滅、する」
「此処で断ち切る!」
パールの持つサイキックソードが一気に膨れ上がり、視界を覆う光と爆発を引き起こす。
その光に思わず目を閉じた配下の一人は同時に激痛が走る。
目を開けるとセリルの得物が配下の体を貫いている。しかし、それは貫くだけでは終わらない。先に集中した魔力の高まりが解放され、配下の体がはじけ飛ぶ。
「ちくしょう!」
あっという間に半分に減ってしまった仲間に舌打ちをしながらも、配下は刀を抜いて遙へと向かう。
「それはさせません」
やんわりとけれど冷たく、梓は影業で刀を押さえつける。
「サンキュな、梓」
親指を立てる遙からは濃い霧が生み出される。ヴァンパイアの魔力を秘めたそれは前衛に魔力を分け与える。
「力が湧いてくるでゴザル!」
配下の拳を軽々と受け流しながら、反撃の機会を窺うウルスラは一瞬の隙をついて配下の死角に回り込むと首を掻っ切る。
「あ、ああ……」
配下は口をぽかんと開けて放心する。
ものの二分とかからずに自分の仲間がただの塊となってしまうのを目の当たりにしている。
そして今、また仲間が一人、また一人と動かぬ存在へと変化していく。
そうして気がつけば、この戦場に残っているのは自分ひとり。
「う、うわあああ! 知らせないと、知らせないと!」
最後の配下は灼滅者に背を向ける。
「知らせたりなんてさせない」
静かにピアットは逃げる配下を指差す。その指先には魔力が集中し、一本の矢となる。
矢は放たれた。
逃げる配下の背を貫いた。
「この辺りはこれだけみたいなの」
きょろきょろと見回す彩香の言う通り、敵の気配は感じない。
「それでは、もう少し奥まで行って見ましょうか」
刑一の提案に皆は頷き、灼滅者たちは先を目指す。
●
数分後、より前線に近い所までやってきた灼滅者が目にしたのはイフリートとソロモンの悪魔の配下である強化一般人。そして。
「なに――あれ」
梓が静かに言葉を零す。
イフリートが対峙しているのは青色の怪物。
丸太のように太い四肢。
爛れたような青の皮膚。
二本足で立ってはいるが、到底人間とも動物とも呼べない存在。
「――デモノイドでゴザルか」
この状況で当てはまる存在といえばそれしかないだろう。やれやれと、ウルスラは肩をすくめる。
「ソロモンの悪魔は禄でもない事を考え付かせたら世界一デース」
ソロモンの悪魔軍勢には力尽きた強化一般人らが多く倒れていることからイフリートはかなり善戦しているようだ。
「みていても、しかたない」
「ピアもそう思う、行こう」
パールとピアットは武器を構えて、両足に力を込める。他の灼滅者たちも得物を握り締めて、タイミングを見計らう。
「今だ!」
遙の掛け声で灼滅者たちは二つの勢力の争いに介入を開始する。
「まずは!」
セリルが得物を構える。穂先に長い刀身が追加された得物から白い光が宿り、矢となって射出される。少し遅れてウルスラの影業が楽しげに踊る。
二人の攻撃は残った強化一般人を葬り去った。
「シルキー、行くの」
彩香と霊犬のシルキーはデモノイドに制約の弾丸と銭で攻撃をするも、その厚い肉体によって衝撃はほとんど吸収されてしまう。
「全力でぶっ飛ばす!」
力強い踏み込みと共に放たれた遙の刀はその青い体の中に刃を埋める。その痛みに気がついたのか、デモノイドは遙の方に顔を向ける。
目や鼻はぱっと見では見つからず、ただ大きな口から涎と生暖かい息を吐き出す顔。
――殺気。
遙はデモノイドを蹴った勢いを使って、刀を引き抜きつつ距離をとる。だが、丸太のように太い腕から伸びた刃が遙の背中を切り裂いた。
刃物で切られた鋭い痛みと鉄の棒で叩かれたような鈍い痛み。
二種類の痛みに堪えながらも遙は刀を構え直す。
デモノイドはイフリートと灼滅者を交互に見ながら低くうめき声をあげている。
「彼らの分も私達が焼いてあげるわ」
梓がデモノイドとの距離を詰め、抗雷撃を叩き込む。続けて刑一の持つ槍が弩の如く放たれる。
「デモノイドの体にサイキックをシュゥゥウッ! 超エキサイティン!」
ガッツポーズをとる刑一にイフリートが狙いを定めようとする。
「――ッ」
すかさず、梓がイフリートに目を合わせる。
『獲物は別だからこっちに来るな』
そんな意思を読み取ったのか、イフリートの狙いはデモノイドへと移る。
イフリートの鋭い爪牙がデモノイドの青い体に食い込む。負けじとデモノイドも刃となった腕でイフリートに組み付きその体を切り裂く。
「さーて、どんなものでゴザルかな。デモノイドとやら」
ニヤリと笑みを浮かべるウルスラは打ち鳴らした手を高く挙げる。
「Let's Party!」
流れるような舞でデモノイドにダメージを与えるが、手応えをあまり感じない。
「どいてください、なの!」
ウルスラの背後から現れた彩香が肩に担いでいるのは巨大なハンマー。それを力の限り振りかぶって、デモノイドの足に直撃させる。
ベキョン! という骨が砕けるのと空薬莢が排出されるのが混ぜあわさった音が響く。
体勢を崩すデモノイドだが、片腕をイフリートの首に回すと力ずくでその体を押し倒す。すぐさま体中の炎を燃やして、ひるんだデモノイドから脱出して距離をとる。
距離をとられたデモノイドは標的を灼滅者へと変える。
「いいんですかそんなホイホイ来て……俺はダークネスでも槍を刺しちゃう男ですよ?」
刑一がデモノイドに槍を振るう。それを撥ね退けるデモノイドだが、撥ね退けた槍の穂先から妖力のつららが産まれ、デモノイドの顎を打ち砕いた。
デモノイドはくぐもった声をあげ、イフリートは咆吼し、灼滅者は鬨の声をあげる。
イフリート、デモノイド、灼滅者、三つ巴の戦いはまだ始まったばかりだ。
●
「――ッ!」
デモノイドの剛腕が眼前に迫るセリルの前にパールが立ちはだかる。シールドを展開し、そのダメージをなんとか押さえ込もうとするが、片膝を地面につけた。
「状況認識……開始」
痛む頭を片手で押えながら、パールは立ち上がる。そして素早く目を左右にやる。
こちらの損傷率はそこまで高くない。デモノイドの攻撃も激しく強力だ。しかし、その対象をイフリートと灼滅者のどちらかに定めることはあまりできていないので、ディフェンダーである自分の力をもってすれば、仲間への被害はかなり抑えることはできる。
イフリートがこちらに攻撃を加えることもあるが、こちらは方針の通り基本的に無視を貫いている。そのイフリートもデモノイドにかなり痛みつけられている。同じくデモノイドもイフリートの反撃と灼滅者の攻撃によって少しずつ弱り始めている。
「終了……行動開始」
機械的に言葉を発しながらパールは動く。
『ゴォォォォ!』
イフリートが咆吼と共に遙へと突進する。デモノイドへ緋色の刃を突きつけた遙に避ける術はない。
イフリートの突進を避けきれなかった遙は衝撃を殺しきれずに木の幹まで吹き飛ばされる。だが、すんでの所で小光輪が遙の背中に展開されて木に叩きつけられる事態だけは避けられる。
「大丈夫ですか?」
「ああ、刑一サンキューな!」
小光輪を放った刑一に礼をいいながら、遙は力強く前へと進み出る。
「シルキーは回復なの」
シルキーはうるうるした目をパールに向けてその傷を癒やしていく。そんな様子を横目に彩香はイフリートがこちらに近づいてくるのに気がつく。
防御の選択肢をすぐに選び、身構える。だが、イフリートは彩香の頭上を跳び越し、刑一の頭上を越えて、坂道を駆け下りていく。
「追撃は他のチームに任せるよ」
ピアットの言葉に全員がデモノイドへと意識を集中させる。デモノイドもイフリートを逃がしたことはもう気にしていないのか、純粋な殺意が灼滅者たちに向けられた。
鋭い動きで間合いを縮めてくるデモノイドへの対応が一手遅れる。
暴力の嵐が前衛を襲う。
その中でも梓の体には限界が近い。メディックである刑一が回復を行ってくれるおかげで、痛み自体は少ないが、肉が裂け、血を流しながらも戦う姿はなんとも痛ましい。
それでも梓は笑う。微笑みの中には狂気が宿り、自分を魅せつけるように梓は舞い続ける。デモノイドを誘い、傷つけ、傷つけられながらも決して動きを止めることはない。それは戦いに魅入られた修羅のよう。彼女は言う。
「貴方もこの身に刻んであげるわ」
炎を燃やし、それを纏い、梓は舞い続ける。
その舞に遙が乱入する。冬桜と黒椿を自在に操る遙に、デモノイドは両手を刃化して対抗する。金属質なぶつかり合いを繰り広げながらも遙がデモノイドの体に十字架を刻んだ。
デモノイドが口から血を吐き出す。
「ピアは諦めない……ここで逃がせば、また皆が狙われちゃう。そんなこと、させない!」
バベルの鎖を集束した瞳から生み出されるのは魔力の矢。しかし、それは一本ではない。二本、三本と増える。
「行って!」
ピアットの言葉に従って、光の矢はデモノイドの四肢を貫いた。
「ここで断ち切る!」
追撃をと、飛び出したセリルに反応するデモノイド。だが、それをかく乱するために、パールがサイキックフラッシュを放って注意をそらす。そこから生まれた一瞬の隙をセリルは逃さない。遙が与えた十字架の中心に魔力の一撃を叩き込んだ。
ボシュゥと液体が蒸発する音を立てながらデモノイドが揺れる。
「これで、おしまいなの!」
彩香が正面からグレネードショットを振りかぶり、ロケットスマッシュを叩き込む。排出される薬莢の音はデモノイドの叫び声にかき消される。
彩香の背に隠れていたウルスラはデモノイドの背後に回り込むと刃の根元を押し当てる。
「拙者の『愛刀』の斬れ味、如何でゴザルかな?」
同時に力強く押し引かれた刀によってデモノイドの首は切断された。
最期の叫びはあっけなく終わり、デモノイドはその場に倒れ込む。
デモノイドの体は溶け崩れ、あっという間に無へと還る。
戦いは終わる。
灼滅者たちは互いに健闘を称えながらデモノイドのいた所に背を向けるのであった。
作者:星乃彼方 |
重傷:なし 死亡:なし 闇堕ち:なし |
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種類:
公開:2013年2月5日
難度:やや難
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 13/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 0
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