鶴見岳の激突~弱者陵殉

    作者:幾夜緋琉

    ●鶴見岳の激突~弱者陵殉
    「まずは皆さん、先日の別府温泉から連なる全国各地で発生したイフリート事件へのご協力、ありがとうございました」
     ふかく頭を下げる五十嵐・姫子。
     つい先日発生したあの戦いの結果は上々……灼滅者達の大勝利で終わったと行っても良いという状況ではあった。
     そしてその結果を受けて、鶴見岳の調査と、その原因解決を行うべく準備を進めていた……のだが。
    「……残念ながら、それを妨害する動きが出てきてしまったのです。現在鶴見岳周辺には、ソロモンの悪魔の一派が率いる軍勢が終結しており、作戦の失敗により戦力を減らしたイフリート達を攻め滅ぼそうと準備を整えている模様なのです」
    「ソロモンの悪魔の目的は、恐らく自分達の邪悪な目的の為ニ使用する事と思います。ソロモンの軍勢には、今までとは比較にならない程に強化された一般人の姿もあるようなのです。彼らはソロモンの悪魔からデモノイドと呼ばれており、その軍勢の主力となってしまっている様です」
    「しかし、武蔵坂学園がこれに介入しなければこの戦いはソロモンの悪魔の軍勢の勝利に終わり、鶴見岳の力を得て更なる強大な勢力となってしまう事でしょう。敗北したイフリート達は、一点突破で包囲網を破り、鶴見岳から姿を消すことに成増」
    「ソロモンの悪魔の軍勢は鶴見岳の力さえ奪うことが出来ればイフリートと正面から戦う必要は無いと判断するのか、逃走するイフリートにはほとんど攻撃を仕掛けず、イフリートもかなりの戦力を遺すこととなるでしょう」
    「……つまり放置すればソロモンの悪魔の一派が強大な力を得るが、イフリート勢力もその勢力をほとんど失わずに逃走する……と最悪な結果になってしまいます。今、私達に二つのダークネス組織と正面から戦う様な力はありません。二つのダークネス組織の争いを上手く利用しつつ、最善の結果を引き出せるよう、介入を行って欲しいのです。
     そして姫子はメモを確認しつつ。
    「皆様には、今回の作戦については大きく3つの選択肢を説明します」
    「まず最初の選択肢……鶴見岳に攻め寄るソロモンの悪魔の軍勢を、後背から攻撃する事です。鶴見岳を護るイフリート達と共に、ソロモンの悪魔を挟撃する形と成増ので、有利に戦う事が可能です」
    「ただこれは、イフリートにとっては別府温泉のイフリートを灼滅してきた灼滅者も憎むべき的ですので、イフリートと戦場で出会うと三つどもえの戦いになります」
    「ソロモンの悪魔の軍勢を壊滅させた場合も、イフリート達は新たな的との連戦を避けて、鶴見岳からの脱出を行う事に成増。鶴見岳のソロモンの軍勢を壊滅させる事が出来れば、ソロモンの悪魔に鶴見岳の力を奪われるのを阻止する事が可能です」

    「そして二つ目の選択肢……鶴見岳のふもとに存在する、ソロモンの悪魔の司令部を急襲する、という作戦です。司令部にはソロモンの悪魔の姿が多数あり、戦力はかなり高いと思われます。しかし、普段表には出てこないソロモンの悪魔と直接対決するチャンスになるかもしれません」
    「とはいえ鶴見岳の作戦さえ成功させれば、司令部のソロモンの悪魔達は戦わずに撤退する為、無理に戦う必要はありません。また、司令部を壊滅させても、鶴見岳をソロモンの悪魔の軍勢が制圧した場合は、鶴見岳の力の一部はソロモンの悪魔に奪われてしまいます……勿論、多くのソロモンの悪魔を討ち取れば、ソロモンの悪魔の組織を弱体化させる事が出来るから、どちらが良いと言う事はありません」

    「最後の選択肢ですが、イフリートの脱出を阻止して灼滅するという事です。鶴見岳から敗走したイフリートは各地で事件を起こす事は想像に難く在りません。その事件を未然に阻止する為にも、イフリートの脱出阻止は重要です。イフリート達はソロモンの悪魔のj軍勢との戦いで疲弊している為、千載一遇のチャンスとも言えるでしょう……」
     そして姫子は纏めるように。
    「ダークネスは強力な存在で、そこに今回は介入するという危険な作戦となります。皆様に大きな被害を及ぼす可能性も十二分にあり得ますので……決して油断はなさらぬよう、お願いします」
     と、真摯な表情で頭を下げるのであった。


    参加者
    内藤・エイジ(中学生神薙使い・d01409)
    秋庭・小夜子(大体こいつのせい・d01974)
    天羽・蘭世(虹蘭の謳姫・d02277)
    糸崎・結留(アマテラス様がみてる・d02363)
    アイティア・ゲファリヒト(見習いシスター・d03354)
    ハイプ・フィードバック(焔ノ記憶・d04764)
    荒野・鉱(中学生ダンピール・d07630)
    黒蜜・あんず(帯広のシャルロッテ・d09362)

    ■リプレイ

    ●鶴見岳に掛かる影
     エクスブレインからの話を受けた灼滅者達。
     無事にイフリートが全国各地で散発させた事件を解決し、ほっとしたのもつかの間……彼らは再び、大分県は別府市へと集まっていた。
     鶴見岳……そこに現われたソロモンの悪魔の一派と、それに相対せしイフリート達の軍勢の拮抗という事態。
     二つの勢力が激突し……どの勢力が勝利を収めても、灼滅者達にとっては思しくない結果が待っている。
     エクスブレインからの依頼は、この二者激突から、時運達にとって最良の結果を引き出す事……である。
    「うーん……しかしなんだか厄介な事になってるよね……」
    「そうだな。単純にどちらが勝てば良いという訳でもないし……どちらを勝たせても不味いというのは厄介な状況だな」
    「そうっすね。この間イフリートと戦ったと思ったら、今度はソロモンの悪魔が来たっすか……しかも、こんなに大量に……」
    「うん。何て数なのかしらね……」
     アイティア・ゲファリヒト(見習いシスター・d03354)にハイプ・フィードバック(焔ノ記憶・d04764)、荒野・鉱(中学生ダンピール・d07630)らの言葉に、黒蜜・あんず(帯広のシャルロッテ・d09362)が瞑目する。
     そしてそれに天羽・蘭世(虹蘭の謳姫・d02277)と糸崎・結留(アマテラス様がみてる・d02363)、秋庭・小夜子(大体こいつのせい・d01974)も。
    「みんなで頑張ってイフリートさんを抑えたのに、イフリートさんが今度は危機に陥っているのね……ソロモンの悪魔さんは、本当わるーい企みをするものですね」
    「そうなのです。でも、これをほっておいたら大変な事になっちゃうのは目に見えているのです。何としてでも邪魔をしなければならないのですよ!」
    「そうだな。こりゃ殴って勝つしかねーだろうし。全力で行くしかねーだろう。でも、おめーらもあんまり余計なこと考えんなよー? 怪我されたらなんだ……困るしよ」
    「うん、大丈夫気をつけるのですよ!」
    「ええ、必ず蘭世たちがこの戦いを抑えるのです!!」
     そんな三人の言葉に、アイティアと、鉱、あんずが。
    「まぁ状況が良く分からないし、敵を全部ぶっ倒しちゃえば楽なんだけど……それを良くするにはもっと強くならないとね……」
    「そうっすね……厳しいけど、これはある意味美味しい状況でもあるっす。確実に敵の戦力を削いでいくっす。だからこそ、正直怖いっすけど、一度護った場所っすから、仲間と一緒に頑張るっすよ」
    「そうね。絶対に無事に帰るわ。誰も死なせたりはしない。あたしが護るもの!」
    「うん。よーし、それじゃ頑張っていこっか!! (久々の)癒やし系シスター(見習い)の本分を見せて上げるよ!!」
     最後にアイティアがニコリと微笑みながら気合いを入れた答えの一方……一人内藤・エイジ(中学生神薙使い・d01409)が。
    「ううう……寒いし怖いし痛そうだし……こんな事なら炬燵でぬくぬくしてたかったっす……」
     そんな弱音を吐く彼に、誰かが視線を向けると。
    「……あ、な、なんでもないでゲスよ!?」
     と、慌てて取り繕うのであった。

     そして灼滅者達は、改めて鶴見岳に正対する場所に立つ。
     ……うっすらと降り積もる雪を見上げながら。
    「ふっふー……冬の山は寒いけど、お空が良く見えるのですねー」
    「そうだな。みんな寒くはねーか? 結留も寒くないか?」
    「うん、大丈夫ですよー。こうしておねーさまと一緒に居るから寒くないのです!」
     結留と小夜子が仲良さそうに言葉を交し合っている中。
    「みんな、これ使うでゲスか? 寒いでゲスし、どうぞ使って欲しいでゲスよ」
     とエイジがみんなに防寒着とカイロを人数分用意してくる。
    「お、カイロ持ってきたんだ。準備いいなぁ、サンキューな♪」
     とハイプが笑いながら受け取る。
     他の仲間達も防寒着とカイロを身につけて……そして。
    「それじゃみんな……改めて作戦を確認しておくわよ。今回の作戦はヒットアンドアウェイ。これは戦況の見極めが肝心……決して深追いは禁物よ?」
     とあんずの注意を皆肝に銘じて……そして灼滅者達は鶴見岳の山中へと足を踏み入れたのである。

    ●幾重なる山の陰に
     そして灼滅者達は鶴見岳の山中を進む。
     鶴見岳に攻め寄るソロモンの悪魔を、イフリートと共に挟撃する為……灼滅者達は山中を昇る。
     無論、先にイフリート、ソロモンの悪魔に見つかってしまえばそれで作戦が台無しになりかねない。
     だからこそ姿勢を低くし、木陰などの遮蔽物に身を隠し、双眼鏡を利用して周囲を索敵。
     また、音を立てないように出来る限り注意し、山の中腹辺りまでやってきて……深い木々の中で、息を潜める。
     ……そして息を潜めて数十分が経過。
    『……ウゥゥ……』
     そんな呻き声と共に、山下の方から何処か騒がしい音が聞こえてくる。
     それはただの一般人と同様の姿形……つまりは強化一般人。
     しかしその数は十数人と多い。
    「……中々数が多いな……でも、こいつらを倒すのが役目か」
    「うん。それじゃみんな……準備はいいよね?」
     小夜子とアイティアの言葉にみんな頷き……アイティアがその場にサウンドシャッターを展開。
     その場の戦闘音を他へ遮断すると共に。
    「それじゃ行くわよ。Sweets Parade!」
    「さぁ、喰わせて貰うぞ!」
    「虹欄、天の羽と共に!!」
     スレイヤーカードを解除するあんず、小夜子、蘭世。
     他の仲間達も、スレイヤーカードを解除しつつ、強化一般人達の前に立ちふさがっていく。
    『邪魔……スルナァ……!』
     そんな呻き声を挙げながら、対抗する強化一般人達。
     前線、クラッシャーポジションに小夜子、蘭世、結留。
     対しディフェンダーポジションにハイプ、鉱、あんず……という、六人が前衛のポジションにつくという前のめりな戦陣を取る。
     そしてエイジとアイティアの二人は、仲間達が回復出来るボーダーラインあたりに陣取り、メディックポジションについておく。
    「背中は任せたぞ! うちは前しかみれねぇからな!!」
     と小夜子はエイジとアイティアにそう言い放ちながら、閃光百裂拳で殴りかかる。
     そして小夜子に続いて。
    「はぁーっ!!!」
     と結留がフォースブレイクで、蘭世がブレイジングバーストでそれぞれ攻撃を仕掛ける。
     強化一般人一人に攻撃を集中させる事で、三人の攻撃でまずは手堅くバッドステータスを重ねていく。
     一方あんずと鉱、ハイプは。
    「みんな、盾のエンチャントを三人に付けていくわよ!」
    「了解っす」
    「解った……蘭世、これを!」
     それぞれが手分けして、盾アップを付与する為にソーサルガーダーを各自が使用。
    「サンキュ!!」
     と声を返す小夜子。
     そして……対する強化一般人からの攻撃。
     その数が多い為、幾重にも攻撃の手がクラッシャーとディフェンダーの六人へ嗾けられていく。
     それら攻撃に対し、ハイプの霊犬が盾となるように動きつつ。
    『ワゥゥ……!』
     と遠吠えを挙げながら浄霊眼で、ダメージを一部回復する。
     そんな仲間達へのダメージの量を見極めつつ。
    「エイジさん、私が小夜子さんに掛けるから、結留さんにお願い!」
    「へ、わ、解ったでゲス!!」
     アイティアの指示に従い、二人シールドリングで回復と盾アップ。
     盾アップ二つを付与したらば、次のターン、鉱がソーサルガーダーで盾アップを追加付与し、クラッシャー達にそれぞれ2つの盾アップの付加を終えると。
    「よっしゃ、それじゃどんどん行くぜー!! お前等消さねぇと、帰れねぇんだよ!!」
     小夜子は気合い充分。
     そしてその言葉に呼応するように、結留と蘭世が今度は螺穿槍と戦艦斬りで更なるバッドステータスを敵に付加。
    『……ウゥゥ……!』
     一人目の強化一般人が倒れると、次の強化一般人を狙いにする。
     対する強化一般人からの攻撃は、ソーサルガーダーによる盾付加を終えたディフェンダーの面々が攻撃を幾つか庇う。
    「もう……本当面倒ね。貴方達は、メレンゲになりなさい!!」
     あんずがフォースブレイクで攻撃する一方、ハイプがワイドガードでダメージを回復。
     そしてアイティア、エイジも。
    「さぁ、(癒やし系見習い)シスターの力を見せて上げる!」
    「ヒャッハー、戦場でよそ見をしたヤツが悪いんだぜぇー!!」
     ジャッジメントレイと五星結界符で攻撃を重ねていく。
     ……そんな攻撃に対し、元々目つきが悪い強化一般人達が睨み付けてくる。
    「ヒッ!? 嘘でゲス、ごめんなさいでゲス。あっし、弱いでゲスよ!? 狙うならイフリートの方が良いと思うでゲス!!」
     そんなエイジの言葉を……周りの仲間らはジト目で眺める。
     ……とは言え灼滅者達は確実に、強化一般人達を倒して行く……。
     強化一般人の攻撃が、ディフェンダー以外に以降としたら。
    「おい、どこ見てんだ? おまえの相手はこっちだ!!」
     とハイプが怒号と共に、ターゲットを引き付ける。
     そして多数居た彼らを全部倒した所で。
    『……ウグゥゥウウ……』
     そんな呻き声が聞こえて……咄嗟に振り返る。
     そこには全身青につつまれ、手に刃を持った獣の様な姿の者が、こちらに向けて歩いてきている。
    「……! みんな、後ろ!」
     とアイティアが声を上げて、大勢シフト。
     幸い強化一般人は既に倒れていて……正対するのは難しく無い。
    「……これが、あのデモノイド?」
    「ああ……そうっすね」
     蘭世に鉱が頷く。
     肌身に感じるデモノイドの力は……とても強力。
     しかしながらこちらにまだ気がついていない様で。
    「今だ、こっちから仕掛けるぞ!」
     ハイプが叫び、灼滅者達はそのままにデモノイドへ奇襲。
     デモノイドの数は一匹、対してこちらは8人。
     半ば包囲網を築き、小夜子が螺穿槍、結留がフォースブレイクで連携攻撃を食らわせる。
     又蘭世がガトリング連射で追撃を確実に及ぼしていく。
     クラッシャー効果でダメージが倍となり、明らかにデモノイドの身体に傷をつけていく。
     そしてハイプ、鉱、あんずと霊犬の三人と一体で、デモノイドの攻撃を代わる代わる受け止める。
     無論、彼の攻撃は一発でかなりの被害を及ぼすのだが……アイティアとエイジが回復をその一人に集中させて、その被害を後に残さないように動く。
     そんな灼滅者達の連携動作は、確実にデモノイドを追い詰めていき……数ターンが経過。
    『……グゥゥゥ……』
     呻き声は、何処かに苦悶の響きが含まれるようになると。
    「後もう少しの様ね。みんな、一気に仕掛けるわよ!」
     あんずの号令に、灼滅者達が渾身の一斉攻撃。
     デモノイドは、それら攻撃を躱すことも出来ず……全弾被弾。
     そしてデモノイドは、断末魔の悲鳴と共に……その青い姿は溶けるようにして、死亡するのであった。

    ●未明の山麓
    「……ふぅ、よーっし、みんなお疲れっす」
    「ああ……どうやら周りには、もう居ない様だな。よし、みんな撤退だー!」
     鉱に頷くハイプ。
     イフリートに見つからぬ様、灼滅者達は鶴見岳から離脱。
     ソロモンの悪魔の軍勢に見つからぬよう、回避しながら山を下ると……鶴見岳は何処か美しく煌めいていて。
    「しかし……それにしても鶴見岳には、一体何があるって言うんすかね?」
    「そうだね……なんだろうね。イフリートさん達がこうして一杯居た訳だしね」
     鉱に小首を傾げるアイティア。
     ……イフリートとソロモンの悪魔の対峙。
     自分達が出来る事はやり遂げた。後は……仲間達の結果を待つばかり。
    「……みんな、無事に帰ってくるといいけどね……うん、信じて待つとするか」
    「そうですね。おねーさま、お疲れ様なのですよ」
     小夜子ににっこり微笑む結留。
     二人の仲良い雰囲気に、周りの仲間達も微笑みを浮かべ……灼滅者達はその場を後にするのであった。

    作者:幾夜緋琉 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2013年2月5日
    難度:やや難
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 10/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 1
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