鶴見岳の激突～拮抗の影

■リプレイ

●対抗者の影
　エクスブレインより依頼を受けた灼滅者達。
　彼らの目の前にあるは、別府市は鶴見岳……悠々たる山の稜線が美しく輝く山際。
「……さて、到着しましたね……」
「そうですね……」
　ロコ・モコナート（南国健康系娘・d09338）に頷くクラーラ・ローン（高校生サウンドソルジャー・d12662）。
　今は平穏にも見えるその地だが、実にはイフリートとソロモンの悪魔という二つの勢力の戦いが行われている。
　とはいえイフリートの軍勢の方が少なく、ソロモンの悪魔の軍勢の方が優勢に進んでいるという事ではある。
「……だが、このまま悪魔達が力を手に入れるのを見過ごす訳にはいかない……イフリート達も、簡単に逃走させてはなるものか……ここで食い止める……」
　皇・千李（静かなる復讐者・d09847）が静かに闘志を燃やすと、速水・志輝（操影士・d03666）と、クラーラも。
「……ああ。悪いが、邪魔させてもらおう……皆、死なないように気をつけろよ？」
「ええ、勿論です。ですがこれが武蔵坂の初陣……初仕事にしては少々ハードですけれど……全力を尽くさせて頂きます」
　そんな気合いを込めながら。
「さてと……それじゃ余り此処でとやかくやってても仕方ないし、みんな準備良ければ行きましょう」
　リンデンバウム・ツィトイェーガー（飛ぶ星・d01602）の言葉に、結城・星空（トイソルジャー・d02244）、火野・綾人（矛盾抱焔・d03324）、宗像・陽心（鉄なる護り手・d11736）らも。
「ああ、出来る限り隠密行動を取ることは忘れない様にな？　ソロモンの悪魔やイフリート達に気づかれる事が無ければ、少し戦闘は有利になると思うしな」
「そうだな。と……一応この辺りの写真でルートは見当しておいた。無論これは、ソロモンとイフリートのルートがどうなるかは判って居ないから、それを考慮する必要があるがな」
「ふむふむ……うーん、まぁともかく、他のチームも居る事だしその動向を注意深く察知しながら行くしかないね。よし……頑張って行くよ」
　そう言葉を交しつつ、ふわりリンデンバウムは箒で少し空を飛び、灼滅者達は鶴見岳の中へと潜入するのである。

●慢心者
　そして灼滅者達は、鶴見岳の山中を進む。
　イフリートの棲まう鶴見岳へと攻め入るソロモンの悪魔……しかしイフリートからすれば、ソロモンの悪魔も、灼滅者たちも倒すべき敵である事は間違いない。
「……さて……どこから出て来るのかしらねぇ……？」
　そんな言葉を紡ぎながらリンデンバウムが皆よりも少し高い位置から周囲を捜索し、少しでも早く察知出来るようにする。
　……そうしている間にも、ソロモンの悪魔とイフリートの拮抗の時は、刻一刻と近づいてきている訳で。
「そろそろドンパチやらかす頃だろうしな。耳を澄ませて、不意を打たれないようにするぞ」
　陽心がそう皆に告げると、灼滅者達は身を隠せるところに一旦身を潜ませて、息を潜める。
　……そうすると、遠くの方から聞こえてくる戦闘音。
　遠く離れているというのに、その音は何処か恐怖心を抱かせてくる。
「始まったか……」
「ええ……左、いえ……右でも始まってますね」
　千李にクラーラが唾をゴクリと飲み込みながら。
　まさしく今、この鶴見岳は戦場となっている……その中で、自分達のするべき事は、ソロモンの悪魔を後背から攻撃し、ソロモンの悪魔をイフリートと共に挟撃するという事。
　言わば三つどもえの戦闘を作り出し、ソロモンの悪魔を壊滅させながら、弱ったイフリートらを脱出させるというもの。
「…よし……こっちの方に行ってみようぜ」
　綾人が方向を指示し、その方向へとリンデンバウムが少し先行。
　中空に飛びながら敵の状況を事前に察知するようにして、残る仲間らが後を付いて行く。
　……そして、数分山中を歩いていると……。
「見つけた……あそこあそこ」
　とリンデンバウムが指差す先に。
　そこには一般人と思しき姿。つまりはソロモンの悪魔により強化された、強化一般人だろう。
　幸いイフリートとの戦闘にはまだなっていない様だが……油断は出来ない。余りに大きな音を出せば、イフリート達の方が察知してきてしまうかもしれない。
「それじゃ、行くぞ」
　と陽心がサウンドシャッターをその場に展開し、周囲への音をシャットアウト。
　そして初手、まだ的が気付いていない中クラーラが。
「正々堂々とは言えませんけれど……不倶戴天の私達の仲ですもの、遠慮は……要りませんよね！」
　と牽制の為にパッショネイトダンスを敵陣に叩き込む。
　突然の攻撃に、強化一般人らが混乱を来す……そしてその隙に。
「さぁ、行くよ！！」
「ああ……そこまでだぜ。イフリートにも、お前等にも……好きなようにはさせねぇ！！」
　星空と綾人がクラッシャーとして切り込んでいく。
　とは言え初撃はブレイジングバーストと、オーラキャノンの遠距離攻撃。
　続くディフェンダーの陽心もオーラキャノンによる攻撃で、敵陣を離れた所から攻撃。
　前衛陣三人がそんな攻撃を嗾けると、強化一般人の一人がそれで倒れる。
　が、まだまだ敵の数は多い……自分達の数より多いのは間違い無い訳で。
「ふふ。ようこそ、嵐の世界へ……」
　そんな多数の敵に対し、リンデンバウムがヴォルテックス、ロコがディーヴァズメロディにより遠距離範囲攻撃を叩き込むと、それに続け志輝、千李も。
「……喰らえ」
「切り捨てる……」
　鏖殺領域とオーラキャノンを重ねて仕掛ける事でダメージを叩き込む。
　……そして、強化一般人は。
『コロスゥ……コロスコロスコロスゥ……！』
　強化一般人の中の一人が、そう仲間達に言い放ち……それに遭わせて強化一般人達は一気に距離を詰めて攻撃。
　その攻撃を立ちはだかるは陽心。
　一歩後ろに星空、綾人とついて、多重攻撃に対し牽制、また。
「りゅーじんまる！！　相手はあいつらよ！」
『ワゥ！』
　リンデンバウムの指示に頷いた霊犬のりゅーじんまるが迎撃の斬魔刀を喰らわせる。
　そして次のターン、頭にクラーラが陽心に。
「回復しますね！」
　とエンジェリックボイスで陽心を回復。
「ありがとう」
　と一言陽心が言葉を紡ぎつつ、再度強化一般人達を見据えると。
「……行くぞ」
　と一言紡ぎ、先ほどの強化一般人らの攻撃手段から、攻撃手と思しき相手に向けて抗雷撃を放つ。
　そして抗雷撃に続き星空、綾人のクラッシャーが。
「くっ、人を殺す為の力じゃ……ねーのに……やらなきゃならねぇ！」
「でも……やらないと負ける。だから……やらなきゃ！」
　近接してのレーヴァテインとガトリング連射攻撃。
　そして更にロコとリンデンバウム、りゅーじんまるが。
「ほらほら、そんなんじゃ遅いよ！！」
「ふふ。まぁ強化された一般人とは言え、元々は人ですしねぇ……私達の動きに、ついてこられるかしらね？　りゅーじんまるも、やっちゃっていいわよ」
『ワゥゥ！！』
　フォースブレイクと、轟雷、斬魔刀による連携攻撃を次々と放つ。
　前衛と中衛の五人がそう攻撃する一方、志輝、千李のスナイパーは、制約の弾丸とギルティクロスで行動制限と命中率を重視した攻撃。
　又クラーラは特に敵陣の動き全体に注意を払いながら。
「ソロモンの悪魔は狡猾です。陣形に気をつけて下さい！」
　と声を張り上げ、皆に警戒を呼びかけていく。
　……そして勿論、強化一般人達からのダメージとバッドステータスの状況を見極めながらエンジェリックボイスとリバイブメロディを切り替えながら回復していく。
　……そして、その攻防を続ける事数ターン。
　灼滅者達は、確実に強化一般人を一体、また一体と倒して行き……最後の強化一般人へとトドメを刺す。
「……良し……」
　静かに志輝が告げると、周りを見わたしていたクラーラが。
「……みなさん、左方を見て下さい」
　その言葉に応じ、灼滅者達がその方向を見わたすと……そこには青い姿をした獣のような物の姿が、先へと進もうとしているのを発見する。
「あれは……ソロモンの悪魔ではないな……デモノイド、新種のダークネスだろうか……？」
「……だろうな」
　志輝に頷く千李。
　あのデモノイドがイフリートと戦ってきた後なのか、戦いに向かう前なのかは判断出来ない。
　しかしながら……このまま放っておく訳にもいかないだろう。幸い敵の数は１匹。
「今一人でいるのがチャンスだよね。みんな、力は未だある？」
　ロコがみんなに確認するように訪ねると、全員が頷いて。
「了解……それじゃ仕掛けよう！！」
　とロコのかけ声で、一気に距離を詰めてデモノイドへ掛けていく。
　デモノイドも、対抗者の登場に唸り声を上げて、威声で威嚇するが。
「……デモノイド、もはや人間ではないのか……悪魔の所業とはこの事だな……！」
　と陽心が吐き捨てつつ、鋭く抗雷撃を叩き込む。
　雷鳴がデモノイドの身体を打ち貫くと、それに続けて星空のブレイジングバーストと、綾人の閃光百裂拳がデモノイドに次々と叩き込まれていく。
『……グ、グゥゥゥ……』
　明かに苦悶の声を上げるデモノイド。
　しかしそれに負けじと、反撃の猛攻を喰らわせるデモノイド。
　高い攻撃力は、一発灼滅者達の体力をガッツリと削り去るが。
「負けません。必ず、わたくしが護ります……！」
　真っ直ぐにクラーラがデモノイドを睨み付けながら、エンジェリックボイスによる回復で対抗。
　回復手に回復の全てを任せ、前衛陣は攻撃一辺倒に仕掛ける事が出来る。
　一切容赦ない攻撃を食らわせ、次第に体力が減り行くと、デモノイドの動きにも次第に綻びが出てくる訳で。
「効いているみたいですねぇ……さぁ、どんどん仕掛けますよー」
　リンデンバウムがそう皆を元気づけるように良いながら、更なる猛攻でデモノイドを追い詰めて。
「……これ以上、仲間の血を流させる訳にはいかない……これでトドメだ……」
　千李がその刀を大きく切り込む斬影刃。
　その一撃がデモノイドの身体を一刀両断に切り分けると……青い身体はまるで溶けるかの如く、その身体は崩れ去っていったのである。

●安息未だに
　そして……デモノイドを倒した灼滅者達。
　しかしながらまだ安心は出来ない……気を抜けば、また別のデモノイドやら、イフリートやらが現れてくるかもしれないのだから。
「ここでのんびり……なんて出来ないか」
「そうだね。体力的にはまだまだ大丈夫だけど……下手に多勢と戦うことになる可能性も捨てきれない。見つからないうちに、この場から立ち去ろう」
　星空にロコがそう言って、灼滅者達はその場を後にする。
　……そして、改めて鶴見岳を見返せる場所まで来ると、至る所で戦いの音が響き渡っている。
「……他の皆さんは、無事でしょうか……作戦が終わって、上手く言っていれば良いんですけれど……」
　クラーラがぽつり呟いた言葉。
　その結果は、まもなく知れる事になるだろう。
　それが吉報か悪報かは、仲間達を信じて。
　そして次なる戦いに備え、今は静かに身を休めるべきなのだから。

作者：幾夜緋琉	重傷：なし 死亡：なし 闇堕ち：なし
種類： 公開：2013年2月5日 難度：やや難 参加：8人 結果：成功！
得票：格好よかった 14／感動した 0／素敵だった 2／キャラが大事にされていた 0
あなたが購入した「複数ピンナップ（複数バトルピンナップ）」を、このシナリオの挿絵にして貰うよう、担当マスターに申請できます。
シナリオの通常参加者は、掲載されている「自分の顔アイコン」を変更できます。