その女、侍女服に身を包み、優雅なる一礼をして。
「私の、ご主人様になってくださいませ」と告げる。それも、どうしようもない男にだけ。
家の中に案内すれば、そこには何人もの侍女達。甘い甘い生活が待っていると思いきや、一挙一動を見つめられ、マナーに反すれば鋭く指摘されるまるで上流階級の家庭教師。
けれど女に褒められたい一心で、男は必死にマナーを身に着ける。やがて女は男に就職活動を勧め、侍女達は全力のサポート体制でそれを支える。男はそれなりの企業に就職を決め、侍女達皆を養えるようになろうと決意する。
そしてそう考えた男は、もれなく侍女達によって『食べられて』しまう。
「私の育てたご主人様――今回も、美味しゅうございました」
料理だって、出来合いのものよりも、材料を揃えて自分で作った方が美味しゅうございましょう?
――そして翌日から、屋敷はまた新たなご主人様を迎えて。
一つの死体がかつて彼女達の『ご主人様』であったと、省みる者などいない。
「ゆ、赦せないわ! こんなひどいこと……!」
「マジめっちゃ酷いよね……!」
天城・桜子(淡墨桜・d01394)と嵯峨・伊智子(高校生エクスブレイン・dn0063)が、握り拳に思いっきり力を入れて。
「ダメな男の人を連れてきて、更生したら殺しちゃうなんて……!」
「せっかくイイオトコを増やしておいて殺すとかもったいない!」
「え」
「え?」
なんだろうすごく肝心なところが噛み合わなかった気がした。
「……と、ともあれ淫魔事件よ! 伊智子に予知させたから、ちゃんと話聞きなさい!」
「そーそー伊智子頑張ったからちゃんと話聞きなさいってことで!」
小学1年生の女の子に思いっきり便乗する伊智子である。
「侍女姿の淫魔がね、路地裏でたむろしているような、それも性格もダメな感じの男の人に声をかけて屋敷に連れてきて、完璧に教育し直して、でもって教育し切ったら……え、えっと……」
「えっちいことして精魂吸い尽くしちゃいまーす」
「そ、そそそそうなのよ! 酷いでしょ!」
顔を真っ赤にして言い募る桜子に、ちょっとみんな思わずほっこりしそうになった。
でも話は割と猟奇事件である。
「この人達は一回に付き一人しかご主人様を作らないんだけど……今、その座は空白よ」
それが、何を表すか。
少なくとも、犠牲者は止められぬ。
「……屋敷の場所は、特定できなかったらしいの。だから、『新しいご主人様として』屋敷に連れてこられ、それを追うのがいいでしょうね」
屋敷から出て新たなるご主人様を探すのは、淫魔一人。けれどもはやその支配下に入り、一般人には戻れぬ侍女達も、館に残しておけば事件を起こす可能性が高い。
数は、淫魔が一人。侍女が、六人。
「全員が、サウンドソルジャーと同じサイキックを使ってくるわ。各ポジションに一人、そして淫魔はジャマー」
下がる事をしないのは潔いのか、それとも自信の表れか。
「許せないのは、本当だわ。だから、お願い。彼女達を、灼滅しましょう」
そう言って、桜子は「頼むわよ」と灼滅者達を見渡した。
参加者 | |
---|---|
天城・桜子(淡墨桜・d01394) |
アシュ・ウィズダムボール(潜撃の魔弾・d01681) |
六六・六(不思議の国のアリス症候群・d01883) |
一之瀬・祇鶴(リードオアダイ・d02609) |
逆霧・夜兎(深闇・d02876) |
鳴神・月人(一刀・d03301) |
美憂・さな(使用物品・d03467) |
深瀬良乃奉寺・深雪(フェイスフルマリオネット・d09822) |
大仰な金属の飾りが付いた、ちゃらちゃらした服。
舌なめずりするように、道行く女を眺める瞳。
片方は携帯電話を弄び、もう片方はポケットに突っ込まれた手。
鳴神・月人(一刀・d03301)は、完璧に軽薄なるナンパ男を演じていた。
――そこに、約束されていたかのように影が近づく。漆黒の髪、漆黒のロングワンピース、そして純白の長いエプロン。年若いとは言い難き女は、けれど豊満なる体を禁欲に包む事で、むしろ色気を膨らませている。
「ダメ男を調教して自分好みにして最後は食べるとは……なかなか良い趣味してるじゃないか……」
楽しい仕事になりそうだな、と唇を吊り上げる逆霧・夜兎(深闇・d02876)の隣で。
むぅ、と物陰で、女に声を掛けられる月人を見ながら頬を膨らませる天城・桜子(淡墨桜・d01394)を、深瀬良乃奉寺・深雪(フェイスフルマリオネット・d09822)が怒りを抑えそっと宥める。彼女も主持つ身、この淫魔を許してやる心境には遠く。
「ダメな感じの男の人か。……俺も対象に含まれるのかな」
うーん、と首を傾げたアシュ・ウィズダムボール(潜撃の魔弾・d01681)の三つ編みが揺れる。本来優しく人当たりも良い性格の彼だが、持ち前の空想好き故にクールと見られることも多く。
(「いや、対象にされたいわけじゃないけど! でも侍女ってちょっと憧れるよね……」)
……クール?
(「いやいや俺は灼滅者。きっちり撃破させてもらう! でも……ご主人様って呼ばれてみたいかも……」)
クー……ル……?
なお彼が空想を繰り広げている間にも、とっくに月人は女に誘われ「喜んで」と返事をし、あとは館に向かうばかり。
「あ、ちょっと待ってもらえますか。エロいねーちゃんなうっと」
携帯電話をぽちぽちと弄って、仲間達にメールを送信。
歩き出した二人を、ようやく追える程の後方から。
「あわれなメイドさんだね? ……寧ろ、冥土?」
ため息混じりにに呟いて、六六・六(不思議の国のアリス症候群・d01883)は猫のように足音を殺し歩き出す。
「全く、なんて回りくどい方法を使って一般人を襲っているのかしら」
殺人鬼として殺しの技法に精通する一之瀬・祇鶴(リードオアダイ・d02609)は、けれど感覚自体は割と一般的である。だからこそ、肩を竦めて。
「彼女達の拘りは私には全く理解できないけれど、まぁ理解するつもりもないから問題はないわね」
そう、一息に切り捨てる。
「餌とするために主を求めるなど……全く以て許しがたいことでございます」
豊満なる胸を包み切れぬメイド服は、けれど本業メイドの証。主を求め続けずにはいられぬ美憂・さな(使用物品・d03467)には、同じメイド服に身を包めども女の所業は許せぬと見えて。
(「冷たい視線を感じる気がするけど……気のせいだよな。俺を見てるのなんて尾行してる仲間くらい……あ」)
ちょっと合った視線に怒りを感じ、慌てて月人は目を逸らす。
「如何いたしましたか?」
「いや、こんな美人と歩いてるもんで、周りの視線が気になって仕方ないだけっすよー」
微笑む淫魔を誤魔化す方が、幾分楽にすら思えるのであった。
――二人の姿が館に消えて、灼滅者達は一気に距離を詰める。
扉に近づけば、びしりと肉を打ち据える音がして、猶予はならぬと一気に扉を蹴り開けて。
「!?」
先頭きって飛び込んだ桜子が、目を白黒させる。
女の手には長く伸びる鞭が握られ、月人の服は一筋裂けて赤き蚯蚓腫れが覗いていた。
「私の……ええとウチの部員…………いやもう鳴神さんにえっちい事はさせませんっ!」
なんかとんでもない所に遭遇して、桜子はガンナイフと解体ナイフを斜めに構えて飛び出そうとする。
けれど。
「ちゃんとついて来れてたんだな、助かったぜ」
月人が明るい口調で言ってついと跳びすざったので、何とか冷静さを取り戻す。そう、バベルの鎖あればこのくらいは痛みすら感じない。
「……バベルの鎖が、感知できなかった……?」
そう、そして不審げに呟く淫魔の鎖は、サイキックアブソーバーの予知が断つ。
それでもすぐに我に返り、淫魔は懐から取り出したベルを鳴らす。澄んだ音と共に、次々に扉が開き現れるは六人の侍女。
「囮お疲れ! 完璧な駄目男だったわよ?」
元気を取り戻した小学1年生の後輩に笑顔で言われ、月人は思わずこけそうになった。くす、とその様子に桜子は笑って。
「ツートップね、鳴神さん。背中を預けるわよ」
即座に侍女の一人の死角に入り込む。こほんと咳払い一つ、月人は槍を握り直し一気に同じ侍女へと狙いを定めて。
「にゃーお」
ひと鳴きすれば、六の姿がチェシャ猫カラーのエプロンドレスへと、殲滅者としての姿へと変わる。
「ああ、おもしろくない。そんな食事、たのしくないよね?」
ひょいと作り出した魔力の矢を、一見無造作に、けれど確かに傷ついた侍女の急所に向けて解き放ち。
アシュの掌に作られた漆黒の弾丸は、さらに彼女に毒を贈って。
祇鶴がゆるりと眼鏡を外す。リボルバー式ライフルの富嶽、可憐に鈴鳴る鋼糸の震電、「この鈴の音が聞こえるかしら?」と祇鶴は表情を変えぬまま問うて。
「それがあなたがこの世で聞く最後の音色よ。素敵でしょう?」
鋭く鋼糸を引き締めて侍女を捉えれば、りんと先端の鈴が鳴る。涼やかに、軽やかに。
ふわりと深雪がコートと帽子を脱げば、普段着とするメイド服が露わに。
「真摯に侍女を務める者を愚弄する、慎みの欠片も無き行い……決して見過ごせません。丹念に『お掃除』させて頂きますわ!」
一気にWOKシールドの出力を開放して祇鶴、夜兎のナノナノ『ユキ』、そして己に誘惑からの守りを形作る。
けれどそれでも、癒し手を誘惑するが得策と見たか。
ジャマーの侍女と淫魔がさらに二人が、誘惑の色濃き歌声を解き放つ。
体力に乏しき体は揺れる、けれどさらに恐ろしきは心を蝕む催眠の力。ぎりりと歯を食いしばり耐える深雪に、ユキのふわふわハートが飛んだ。二重のキュアとシールドがもたらすBS耐性、それによって何とか耐え抜いて。
重なるように高らかなる歌声。メディックの侍女が癒しを傷ついたジャマーの侍女へ、クラッシャーの侍女は、狙いをさなへと定める。
くらりと頭を揺らす催眠を、けれどさなはメイドの心で耐えた。
「そのたるんだ性根を躾け直してさしあげましょう」
緑の刃に花咲く鎌を、さなはしっかりと構えて。薙いだ軌跡は黒き波となり、前方に位置した侍女達を飲み込んだ。
「ああ、オレも、調教されるより、するほうが好きなんだ」
ニィと嗜虐的に笑い、挑発の言葉を吐きながら糸を操る。
「ただでさえ数多いのよ、脚を止めなさいっ!」
桜子が一気に二振りのナイフをクロスさせ、死角から腱を薙ぐ。「そっち! トドメよろしくっ!」との桜子の声に頷き月人が滑り込んでのアッパーカットを決めれば、切られた腱が仇になって避けきれず、侍女はぐらりと倒れそのまま消える。
――闇に深く魅入られ過ぎれば、ダークネスとならずとも救えぬ。それでも死の前に悟れるならば。
「侍女というものがいかなるものか……もう一度学び直しなさい」
さなが侍女の精神を逆十字に引き裂いた。夜兎が伸ばした大口開く影はディフェンダーの侍女が受け止めて、「健気だな」と夜兎はトラウマに顔を歪める侍女を楽しげに眺めた。
「さあ、この弾丸が尽きるまであなた達は耐えられるかしら?」
祇鶴が富嶽を構えれば、「薙ぎ払っちゃえ、一之瀬さん!」と元気な応援。普段は表情変えぬ唇すら微笑ましさに僅かに緩み、引き金を引けばクラッシャーの侍女の胸に向け一気にビームが貫き通す。
再び、ユキのハートマークが深雪に宿り、傷と催眠が癒えた深雪はほうと息をつく。クラッシャーから傷を受けたさなへと、飛ばすはリングスラッシャーより力を分けたシールドリング。アシュがくるりと槍を回し、妖しの力を凝らせた氷を解き放つ。
合唱の如く催眠の歌が深雪を襲う――けれどその音波が届き切る前に、割り込んだ六が幾分かをその身で受け止めて。
「…・・もー、六ちゃん、いたいのいやなの? わかる?」
ち、と六が床を蹴って、息を吸い体勢を整える前のクラッシャー侍女へと向かう。メディック侍女が癒しの歌をと声を張り上げる、直前。
絡みついた糸を、指に絡めてぴぃんと弾けば。
「あわれな、じゅんあい。ふかしぎまーち」
体中を切り裂かれ消えていく侍女越しに、淫魔を見た六が微笑みを浮かべる。
「純愛と、仰せで」
それは光栄、淫魔はゆるりと微笑んだ。
再び夜兎の手から、糸がするりと放たれる。きりりと縛られたディフェンダー侍女を、庇うことできる者は誰も居らぬ。
素早くそこに、さなが切り開く深紅のギルティクロス。催眠を得意とするのは、敵のみに非ずとばかりに。
ユキがぽわぽわハートマークを浮かべて深雪に向かって首を傾げる。彼女が頷けば、ふわんと飛んでくるハートマーク。ハートとメディック、二重のキュアの力が、今の灼滅者達には生命線。主の夜兎は、故に背中は安全とばかりに糸を閃かせ突っ込んでいく。
さらに祇鶴の糸が、リンと鈴を鳴らし駆け抜ける。きりきり、きりきりり、縛り上げる。
「逃げ回るなッ!」
叫んだ桜子が、ガンナイフをディフェンダー侍女へと突きつけて。
「大人しく……当たりなさい!」
引いた引き金、追尾の弾丸。月人が素早く踏み込んで、そこにアッパーカットを叩きつける。
それを危うしと見たか、淫魔がすらりと桜子を指させば侍女達が頷く。メディック侍女の天使の歌声に重なるように脳を揺らし我が物にする誘惑の歌が重なって重なって――、
「き、っつぅ……! さすが、やるわね……!」
けれど、負けるわけにはいかぬとの意思が、催眠を抑え込む。
「伊智子の予知を無駄に出来ないでしょう……!」
脳を支配されかけながら、それでも誇り高き少女は予知をもたらしたエクスブレインに、朗報を持ち帰らんと渾身のシャウトにて気合を入れ。
「大丈夫ですか、桜子様」
「ええ、深瀬芳乃奉寺さん、回復あっりがとー!」
くるりと回るシールドリングは、盾となり癒しとなり。再び桜子は武器を構え、前へと向き直る。
六の手がひょいひょいとナイフを弄び、そしてその姿勢からすぐさま攻撃に移る。
「そだてて、たべる。しょく、もつ……れんさ。だよ? でも……」
死角から、侍女の証のメイド服を切り裂いて。
「きみはさみしいね?」
いとおしい、其れが……きみの、あいじょう?
ふふと淫魔は笑って。「愛おしゅうございますわ」と胸を撫でる。
「それが愛か、それが恋か、それが真実か。彼らから私への愛は重要ですけれど、私から彼らへの愛は重要ではありませぬ」
だって、彼らは私を食べないでしょう?
愛を抱いた殿方が、どのような味なのかわからないでしょう?
「ああ……そうか、自分で育てた……」
ふ、と六は笑みを浮かべる。――寂しい、笑みだった。
「そんなものより、美味しい者は、いない」
「ええ。同じ教育をさせていただきましても、画一ならざる成長をなさいます。人とはまこと、面白きものですね」
きりり、と深雪の眼が吊り上がる。決して、赦せぬと。
「従者が主を喰うなど、僭越も良い所ですわ」
初めて、彼女は影を操った。僭越なる侍女を、喰らい尽くせと。
「前に出るなとも上に立つなとも言いません。しかし従者は主の為に働く者、なのに己の堕落が最優先とは……」
「働いて下さったのは、ご主人様方ですけれど」
淫魔が、喰らい尽くした人数を誇るように、笑って。
既に艶然とそこに立つ者は、淫魔しかおらぬのに。
「さあ、楽しませてくれよ」
「楽しむ事ができますれば」
夜兎と淫魔が瞳を見かわし、ダンスでも始めるかのように手を伸ばして。
けれど交錯するのは、影の刃と歌声に他ならぬ。
「使用人業に就く者として、貴女の様な方は見過ごせません」
「――潔癖ですわね」
さなの解き放つ黒き波を、その身に受けながら淫魔は笑んで。
「これ以上、あなた達には食事は出来ないわ。お詫びとしてこの弾丸をそのお腹にぶち込んであげましょう……感謝なさい?」
言葉と共に、一気に銃声。
「やっぱりスタイルが良いと、的が大きくて当てやすくていいわね」
満足げな祇鶴の口調に、羨望が混じっていたかは定かではない。
そしてそれに抗うように、歌声。アシュが必死に身を挺し、淫魔の眼前に身を躍らせる。
そして、そのついでに。
「……えっちいことって何?」
尋ねたアシュに、淫魔は蠱惑的に笑う。
「新たなご主人様になって下さるなら、わかりましてよ?」
「でも残念。君たちは俺の好みじゃない」
やっぱりこう優しくてお姉さんっぽいのが、なんて浮ついた言葉とは裏腹に。
突き立てたガンナイフの刃、そのまま引いた引き金。銃声に淫魔の体がぐらりと揺らぎ、それでも歌を絞り出す。
けれど、その喉を貫いて。
「悪いわね。あんたの目論見は私が切り刻むわ」
挑戦的な表情から、一気に憤怒を顔に刻み。
「それより何より――教育上よくないのよ! 私の!」
己の教育に己で配慮。灼滅者の人生は斯様に苛酷。
「ああ、だから、そろそろお別れだ」
もはや回復の必要はないだろう。
だからユキへと指示を飛ばし、しゃぼんだまと鋭き糸が柔と硬の一撃となり淫魔へと傷を刻む。
「元々、帰属意識など無いのでしょうけど」
ですが本職の侍女には迷惑千万、と。
「故に矜持を以て『お掃除』しますわ」
まるで、床に落ちたるごみを摘まむように。
影が無造作に、けれど確かに淫魔に喰らいつく。
「騙す形になって悪いな」
槍の妖気を氷に変えて、月人が飛ばす。「お互い様だとは思うが」と言い添えて。
「君はあいしたい、の? あいされたいの?」
刃と共に放たれた六の問いかけに、淫魔は口を開こうとして。
けれど、消え去る。何も、遺さぬまま。
「……もう、遅かった?」
何度目の溜息か、数える気にもならなかったけれど。
長い溜息が、六の口から零れて。
「お粗末様でございました」
さながメイド服の裾を握り、丁寧に一礼した。
「よし、っと! ありがと、みんな!」
己の予見した淫魔を退治できたという、達成感に溢れて桜子は振り返る。
「鳴神さんはデレデレしてたので帰ったらお話があります」
「なんでだよ!? 俺は作戦通りに演技してただけだろ!?」
上手過ぎた、からかなぁ、とみんな温かな目でそれを見つめて。
「いいダメ男っぷりでしたね、鳴神先輩」
さらに眼鏡を掛け直した祇鶴が追い打ち。
「やっぱり素質がある人がやると現実味があって、いい囮になっていたわよ?」
そしてトドメ。
流石はスナイパーとばかりに心の急所を狙われて、がっくりと月人は膝をつく。
――けれど、もう。
犠牲者としても加害者としても、この館の扉をくぐる者は、いない。
作者:旅望かなた |
重傷:なし 死亡:なし 闇堕ち:なし |
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種類:
公開:2013年1月30日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 0/感動した 1/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 10
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