復活! シュテルカー・サバカレーヨ!!

    作者:天風あきら

    ●仇敵再び!
     潮と醤油の香る町、千葉県銚子市。そこに今再び、燦然と立つ男がいた。
     年の頃は三十歳前後。何物にも染まらない黒いマント、右手には木槌、左手には……カレー皿。
     ……嫌な予感がビシバシする。
    「否! 私をかつての怪人サバカレーヨと思うな!!」
     やはり地の文にツッコミを入れてくる男。
    「私の名はシュテルカー・サバカレーヨ! 銚子に、そして世界にサバカレーを広めて世界を制すため、偉大なるゲルマンシャーク様の力で蘇ったのだ」
    「ノイ!」
    「ヌレ!」
    「セン!!」
    「ベー!!」
     歓声を上げる戦闘員ヌレセンベー達。……『ノイ』?
    「はっはっは、まあ静まるが良い。我が力によって新しく生み出された『ノイ・ヌレセンベー』達よ」
     やはり全身タイツに、まん丸い煎餅の着ぐるみから頭と肘の先、膝の先だけを出した青年達が四人。あまり動きやすそうではない。彼等も、両の手にカレー皿を持っている。
     そして彼らがいる場所は、とある海鮮物加工場の跡地だった。周辺には、チンピラ風の男達がごろごろと転がっている。ここを根城に些細な悪さをして周辺住民を困らせていたのだが、サバカレーヨ……いや、シュテルカー・サバカレーヨ達によって乗っ取られてしまったのだ。
    「ゲルマンシャーク様に敬意を示すべく、この度のサバカレーにはドイツ製ウィンナーが一皿に二本ついている! わぉ、お得!!」
     再び歓声を上げるノイ・ヌレセンベー達。しかしなんてミスマッチかつ勿体ない。
    「さあ、ノイ・ヌレセンベー達よ! 共にこの銚子を、世界を、サバカレー臭で満たそうではないか!!」
    「ノイ!」
    「ヌレ!」
    「セン!!」
    「ベー!!」
     何とも珍妙な一団に、今、街が蹂躙されようとしている……!
     
    ●頭の痛い未来予知
    「……サイキックアブソーバーから、聞き覚えのある声がしたんだ」
     篠崎・閃(中学生エクスブレイン・dn0021)は、少々眉を寄せてこめかみを押さえながら言った。
    「千葉県の銚子市に、かつて皆の手で倒された怪人サバカレーヨが、再び現れたんだ。それも『シュテルカー・サバカレーヨ』となって」
     ……閃が頭を抱える理由もわかった。
    「奴は、『ゲルマンシャーク』と呼ばれる存在の力によって蘇ったらしい。ゲルマンシャークについて詳しいことはわかっていないけれども、強力なご当地怪人である可能性が最も高い」
     更に、閃は概要を語る。
    「そして配下の戦闘員も一人増え、『ノイ・ヌレセンベー』となって奴に付き従っている。皆には、再びサバカレーヨ……いや、シュテルカー・サバカレーヨの灼滅を頼みたい」
     皆が頷くのを見届けて、閃も一度頷いた。
    「ダークネスにはバベルの鎖による未来予知があるけれど、僕が予測した未来に従えば、その予知を掻い潜って奴らに迫ることも可能だろう」
     そして閃は、敵戦力について語りだす。
    「シュテルカー・サバカレーヨは、以前のサバカレーヨと同じ……木槌での近接攻撃と、左手のカレー皿を投げつける遠距離攻撃を行う。前者には武器封じ、後者には毒とずぶ濡れと同じ効果があり、どちらも単体相手だ。……何故、広めようとしている食材に、毒が含まれているのかは相変わらずわかっていないけど」
     以前の依頼でもツッコまれたことだが、それは依然として不明なようだ。
    「ノイ・ヌレセンベー達は、ただの強化一般人だということも同じだよ。シュテルカー・サバカレーヨにカレー皿を供給したり、シュテルカー・サバカレーヨと同じくサバカレーを投げつけたりする。このカレーはシュテルカー・サバカレーヨの力で生み出されたもので、基本的に途切れることはない。例外も同じく、先にノイ・ヌレセンベーが全滅した時。逆に、先にシュテルカー・サバカレーヨを倒せば彼らはやはり正気に戻るだろう。ただの強化一般人だからね」
     そこで閃は話を切り替えるため、一息ついた。
    「今回、彼らが現れるのは港の外れにある海産物加工場の跡地。前回と違って、周囲に人気はないよ。奴らが丁度、そこから外へとサバカレーを広めに街へ繰り出そうとしている時に、遭遇するだろうね。隊列も同じく、シュテルカー・サバカレーヨはノイ・ヌレセンベー達を盾にするように中衛に、ノイ・ヌレセンベー達は前衛にいるはずだよ」
     そして閃は、付け加える。
    「ふざけた相手だけれども、決して油断しないで。怪人も配下もパワーアップしている上に、配下も一人増えている。……気を付けて」
     閃は再び灼滅者達を銚子へと送り出した。


    参加者
    左治木・紫音(蒼空の太陽へと誓え・d00590)
    花凪・颯音(グリムイータ・d02106)
    華鳴・香名(エンプティパペット・d03588)
    橘・清十郎(不鳴蛍・d04169)
    椎名・亮(イノセントフレイム・d08779)
    ラシェリール・ハプスリンゲン(白虹傾国の白孔雀・d09458)
    森沢・心太(隠れ里の寵児・d10363)
    輝鳳院・焔竜胆(死哭・d11271)

    ■リプレイ

    ●お約束と反則
    「さあ我が配下達よ! いざ行かん、銚子の街へ!!」
    「ノイ!」
    「ヌレ!」
    「セン!!」
    「ベー!!」
     悪の怪人シュテルカー・サバカレーヨと戦闘員ノイ・ヌレセンベー達が、廃工場から意気揚々と歩み出したその時。
    「ちょーっと待ったぁぁ!」
    「!?」
     いきなり高所から叫ぶ声。慌てて怪人達が周囲を見回すと、いつか工場だった日の面影を残すコンテナの上に複数の人影が。
    「いつも心と口にバーニングを! スパイシーレッドカレー椎名亮!!」
     熱くキメる椎名・亮(イノセントフレイム・d08779)。
    「灼滅戦隊のホワイト、好きなカレーはホワイトカレーだ!」
     カリーヴルストを手に、格好良さを心がけるラシェリール・ハプスリンゲン(白虹傾国の白孔雀・d09458)。
    「好きなかれーはほうれん草かれー、でも今はあんた達の真っ青な顔が映るかれーがいいな、ブルー」
     にこやかかつちょっと説明が長かった花凪・颯音(グリムイータ・d02106)。
    「好きなかれーは、山の幸かれー。ぐりーんかれー、森沢心太!」
     健康に良さそうな、ちょっぴり田舎くさい森沢・心太(隠れ里の寵児・d10363)。
    「料理人の丹精込めた魂を食らえ! ブラックカレー、橘清十郎!」
     霊犬にも黒いマフラーを巻き、全身を黒と影業で染め上げた橘・清十郎(不鳴蛍・d04169)。
    「特に私に好みはありませんが……無難な人気のお家のカレーイエローです」
     ポーズを決める姿も可憐だが、その印象は後に覆されるであろう紅一点の華鳴・香名(エンプティパペット・d03588)。
    「紫芋と香り良き香草のカレーなるハーモニー……至福を届ける紫の戦士、ヴァイオレットカレー・左治木紫音!」
     美味しいのかよくわからない色合いの左治木・紫音(蒼空の太陽へと誓え・d00590)。
     そして彼らは口を揃えて叫ぶのだ。
    「灼滅戦隊スレイヤー、カレーに見参!!」
     どかーん。
     亮と紫音の噴き出した炎と、ラシェリールのどす黒い殺気と、心太の闘気を変換した雷と、清十郎の真っ黒な影業とが視覚効果を、そして紫音の掻き鳴らすギターが華を添える。格好良いけど、何か間違ってる、でも格好良い。
     そんな彼らに、シュテルカー・サバカレーヨは嫉妬した。
    「むきー! 戦隊モノなのに最初から七人もいるなどとは、卑怯ではないか!!」
    「最初のツッコミどころはそこかよ! しかもお前にツッコまれたくねーよ!! こっちだって実はちょっぴり恥ずかしいんだ!」
     他のメンバーがよいしょとコンテナから降りる中、亮が早速ツッコミを入れる。
    「しかも全員がサバカレーをディスって他のカレーを崇める所業! 許す訳にはいかんな……!」
    「そこって怒るところなの? やっぱり」
     紫音が苦笑いしながら首を傾げる。
    「……すまん、さすがに私にはレベルが高すぎる。存分にはっちゃけてくれ……」
     コンテナの横から生暖かい目で見守っていたのは、輝鳳院・焔竜胆(死哭・d11271)。皆がコンテナを降りた頃合いを見計らって、ひょっこりと顔を出す。
    「うぉ、まさかの八人目がいただと……!?」
    「私を一緒にするなと言っているのだが? 演技できんから」
    「う……と、ともかく! 貴様ら、我らの野望を阻止しに来たのだろう!? ならば叩き潰すまで!! 存分に相手してやろう!」
    「随分一方的だなおい」
    「まぁ、間違ってはいないが」
     ツッコみながらも、それぞれに武器を構える灼滅者達。今、双方のカレーへかけた情熱を競う戦いが幕を開ける……?
     
    ●やっぱり直ってませんでした
    「行くぞ、ノイ・ヌレセンベー達よ!」
    「ノイ!」
    「ヌレ!」
    「セン!!」
    「ベー!!」
     すちゃっとサバカレー皿を構えるシュテルカー・サバカレーヨとノイ・ヌレセンベー達。
     そして一気に投げつけられたサバカレーは、亮、ラシェリール、颯音、紫音、焔竜胆の顔面にカレーが直撃する。
    「うぉっ、あっちー!」
    「毒か臭いかわからんがクラクラする……」
    「……うぇ、生臭いしべたべたするんすけど!?」
    「そんなカレーの使い方があるかー!」
     颯音は服が体に纏わりつくのを防ぐように服を引っ張るが、その時見えた胸元や腹が妙に艶めかしくて誰得状態。
     大わらわする中、一人立ち尽くすのは焔竜胆。顔面から落ちたカレーが、華麗な衣装をべたべたに汚していく。
    「……貴様、この衣装にいくらかけたと思っている?」
    「──ひいっ!?」
     静かに燃える怒りの炎。先程から、どうもシュテルカー・サバカレーヨ達は彼女が苦手らしい。
    「ボロ布を着た奴より美しい奴に殺されたほうが相手のため……そうした私の想いが、貴様らには通じないということだなぁぁ?」
    「ノイ……!」
    「ヌレ……」
    「セン……!!」
    「ベー……!」
    「お、おい怖気づくなノイ・ヌレセンベー達よ!? そう言う私もちょっぴり怖い……い、いやげふんげふん」
     とにかくその場を持ち直そうと必死なシュテルカー・サバカレーヨ。
    「隙ありぃ!」
     怯んだ怪人たちに対し、亮は手のひらから炎を噴き出して彼らの足元を焼き尽くした。
    「ノイ!」
    「ヌレ!」
    「セン!!」
    「ベー!」
     あちあち、とでも言わんばかりに、ノイ・ヌレセンベー達はその場で飛び跳ねる。
    「千葉県民の味、サバカレーを毒カレーにするとは……鬼畜の所業だ」
     ラシェリールもまた、殺気でノイ・ヌレセンベー達を包み込む。
    「ノイ~……!」
    「ヌレ……!」
    「セン……」
    「ベー……!!」
     またも震え上がるノイ・ヌレセンベー達。
    「ええい、怯むな、怯むなぁ!」
    「ちゃんすです!」
     シュテルカー・サバカレーヨの檄が飛ぶ中、この隙を逃すまいと心太が雷を宿した拳でノイ・ヌレセンベーの一体を殴りつける。
    「ヌレ!?」
     その場に仰向けに倒れこむノイ・ヌレセンベーの一体。手足ばたばた。……起き上がれない。
    「おいまさか直ってなかったのかよその弱点!」
    「ノイ!」
    「ヌレ……」
    「セン!!」
    「ベー!!」
     亮のツッコミが飛び、ノイ・ヌレセンベー達は助け合いながら倒れた仲間を起こす。
     本当に馬鹿じゃないのか。
    「成程、確かに頭の痛くなる相手だ……」
     清十郎はこめかみを軽く抑えつつ、分裂させた小光輪をラシェリールに飛ばす。体力はもちろんだが、毒をも癒され身体が軽くなる感覚を得て、ラシェリールは首だけ振り向き肩ごしの目線で礼を表した。
    「鯖味噌、へんな物食うと腹壊すぜ?」
     清十郎の霊犬・鯖味噌が心得たと言わんばかりに主を見やり、その場から六文銭による射撃を行った。あくまで食べない。
     びしびしと当たる銭に、痛み跳ねるノイ・ヌレセンベー達。
     そして静かに目を閉じ、眼鏡を押し上げる香名。
    「それではヒーローの『演技』も済んだ事ですし……こっからはブチ殺し合いだァッ!!」
     突如豹変した彼女が放った殺気は、ノイ・ヌレセンベー達を震え上がらせるには十分だった。
    「……!」
    「はっ、声も出ねぇってか!? 情けねぇなあ!」
     香名がそんなノイ・ヌレセンベー達を嘲笑う。その姿はヒーロー……よりも悪役くさい。
    「私の衣装を汚した罪……その身でもって購ってもらおうか!」
     言うが早いか焔竜胆は、手にしたロケットハンマーで地を突いた。その衝撃はびりびりと大地を伝わって、ノイ・ヌレセンベー達を痺れさせる。
    「はっ! そんなものか!!」
    「……ノイ!」
    「ヌレ!」
    「セン!!」
    「ベー!!」
     その掛け声は、気概の表れか。しかし、所詮は戦闘員。既にノイ・ヌレセンベー達はぼろぼろだった。
    「皆、もう少しだよ。頑張ろう!」
     紫音の掻き鳴らすギターの音が、皆の毒を癒していく。
    「くぅ、なめられたものだ我々も! ノイ・ヌレセンベー達よ、我らの力を示そうではないか!」
    「ノイ!」
    「ヌレ!」
    「セン!!」
    「ベー!!」
     一斉に投げつけられるサバカレー皿。
    「あっつい!」
    「うぇ、生臭……」
     折角癒された傷が、毒が、再び灼滅者達を苛む。
     しかし、それは敵も同じ。
    「皆、そろそろ良さそうだ。行くぞ!」
     と、亮は先程心太が殴り倒したノイ・ヌレセンベーに対して、ガトリングガンを掃射。手加減を加えた攻撃は、相手の体力を削りながらも命は削らない。
    「ヌレ……!」
     ばたん、と再び倒れ伏すノイ・ヌレセンベー。起き上がる……いや、手足をばたつかせる気配すらない。が、命には別状ないはずだ。
    「ノイ!?」
    「セン!?」
    「ベー?!」
     しかし残された他のノイ・ヌレセンベー達は慌てふためいて、倒れた者の下へ駆け寄る。ごにょごにょと何か相談。
     そして。
    「ノイ!」
    「ヌレセン!!」
    「ベー!!」
     思わずがくっと脱力する灼滅者達。
    「一人欠けたら、そうなるのか……」
     呟きながらもラシェリールは、残ったノイ・ヌレセンベーの一体をマテリアルロッドで殴りつけた。
    「ベー!」
    「こいつも欠けたら、どうなるんっすかね?」
     同じく、マテリアルロッドで手加減して殴る颯音。
    「すみません、少し眠っていてください」
     更にスタンガン程度に電撃を弱めて、相手の首筋に手刀を打つ心太。
    「ベー……」
     するともう一人も倒れた。
    「ノイ・ヌレ!」
    「センベー!!」
    「もはや原型残してねーじゃねぇか!」
     頭を掻き毟る亮。
    「……鯖味噌、とりあえず回復行くぜ」
     清十郎が鯖味噌と共に、前衛の毒を癒す。
     そして香名も手加減を加えた攻撃。龍砕斧の一撃で、残ったうちの一体のノイ・ヌレセンベーが大きく傾いだ。
    「ノイ・ヌレ!」
    「センベー!?」
    「オラ、どーしたんだぁ~い? 手加減してやってんだから、もっと喜べよ。ヒャーハハハハハ!!」
     狂乱したように笑う香名。うーん、やっぱり悪役っぽい。
    「はははは、私もいざ参る!」
     香名とはまた違った、獰猛な笑みを浮かべつつ槍の石突で敵を突く。
    「センベー……!」
     そして倒れるノイ・ヌレセンベー。
    「ノイ・ヌレセンベー!」
     悲痛な叫び。……悲痛っぽく聞こえない叫び。
    「残るはキミだけだよ!」
    「ノイ・ヌレセンベー……!」
     紫音のバイオレンスギターで殴りつけられ、揺らぐ最後のノイ・ヌレセンベー。
    「おのれおのれおのれ! ノイ・ヌレセンベーよ、まだまだこれからだ!!」
    「ノイ・ヌレセンベー!」
     すちゃ。サバカレー構え。投げ。
    「あちちち!」
    「べたべたする……」
    「くっ……これで終いだぜ! ノイ・ヌレセンベー!!」
     亮のガトリングガンが火を噴くと、最後のノイ・ヌレセンベーが沈んだ。
    「ノイ……ヌレセン、ベー……」
     死屍累々。いや、灼滅者達の手加減攻撃のおかげで死んではいないが、その中にシュテルカー・サバカレーヨが一人立っている様はなかなかにシュールだった。
     
    ●残された者
    「さあ、これで残すはお前だけだ、シュテルカー・サバカレーヨ!」
    「くっ……」
     流石に一対八の状況に、焦るシュテルカー・サバカレーヨ。
    「復活したてで悪いが、もう一度灼滅させてもらう。再生できるものならしてみるがいい!」
    「出来るものならやってみろぉ! ──ぐっ」
     先程と違い、本気の攻撃でラシェリールが殴りつけ、敵の体内爆破を誘発する。
    「詰めが甘いなシュテルカーサバカレーヨ! ドイツ製ソーセージ? ふっ、ドイツといえばカリーヴルスト! これを乗せてこそ真のドイツ風サバカレーだ!」
    「くっ……それではカレー同士が打ち消し合ってしまうではないか!」
    「いやいや、これが却って絶妙なハーモニーを浮かべるものさ」
     反論にも余裕の笑みを浮かべるラシェリール。
    「何度も蘇るなんてどえむっすね、一杯殴ってあげるっすよー」
     何気に酷いことを言う颯音が、裁きの光を放つ。あまりの輝きに、よろめくシュテルカー・サバカレーヨ。
    「ぐっ……」
    「さばかれーよさん。しゅてるかーってどういう意味なんですか?」
    「私をただの『サバカレーヨ』と呼ぶな! ──ふ、『シュテルカー』は英語で言えば『stronger』、つまり『より強い』という意味だ! ちなみに『ノイ』は『new』、即ち『新』だったのだ!! それを貴様ら、よくもノイ・ヌレセンベー達を……!」
    「なるほど。やっぱり、げるまんしゃーくさんに名前を付けて貰ったんですか?」
    「ふ、ゲルマンシャーク様は偉大なるお方。私ごときの名前なぞ、私一人で考えるに十分だ!!」
    「じゃあ、げるまんしゃーくさんってどんな人ですか?」
    「サバカレーヨをこんなにも強力に復活させたゲルマンシャークとは一体どんな奴なんだ!?」
    「だからとーっても偉大なるお方だと言っておろう!」
    「いったい奴の目的は何なんだ!?」
    「ふっ……私などには計り知れぬことだ、とだけ言っておこう」
     もしかしてお前もよく知らないんじゃないのか。
     どちらにしろ、 どうやら、情報は引き出せそうにない。
    「それじゃ、もう眠ってください。ぐりーんさんだー」
     と、心太は纏わせた雷よりも明らかに物理ダメージの方が大きそうな拳を、シュテルカー・サバカレーヨの顔面に叩き付けた。
    「ごふっ!」
     吹っ飛ぶシュテルカー・サバカレーヨ。
    「行くぜ鯖味噌!」
     指先に集めた癒しの霊力を撃ち出しながら、清十郎は鯖味噌を促す。鯖味噌も主人の意を酌んだのか、浄霊の眼差しで仲間を癒した。
    「オメーにもう価値は無ぇよ、いつまでも皿にこびり付いたカレーみてぇにこの世に留まってねぇで、とっとと灼滅されてくたばんな!」
    「ぐぉぉ!」
     香名の強烈な言葉と共に繰り出された、影を伴う一撃。ずざざ、とシュテルカー・サバカレーヨが後ずさる。
    「これで、終いだ!」
     焔竜胆の炎を宿したロケットハンマーが、シュテルカー・サバカレーヨに炸裂する。
    「うぐぉぉぉ……!」
     その攻撃は、シュテルカー・サバカレーヨにとって致命的な一撃。
    「いいか貴様ら……私を倒しても、また私の遺志を継ぐ者は必ず現れる! 必ずだ!!」
    「キミが何度でも立ち上がるなら、ボクたちは何度でも裁こうじゃないか!」
    「お前何度裁かれたいんだよ! サバだけに三回か? 勘弁してくれ、面倒くさいし」
    「忘れるな……ゲルマンシャーク様、万歳!」
     どーん。
     その場で爆散するシュテルカー・サバカレーヨ。……どこに詰まっていたのか、サバカレーをびたびたと撒き散らして。
     
    ●最後の最後まで迷惑な奴だった
    「あ、あれ……」
    「俺、何でこんなところに……」
    「げ、なんだこの格好」
    「うわ、カッコ悪ぃー!」
     正気に戻ったノイ・ヌレセンベー達は、慌てて濡れ煎餅の着ぐるみを脱ぎ始めた。……着替えはどこにあるのだろう。
    「うえー、またサバカレーだらけ……」
    「早く風呂に入りたい……」
    「駄目だ、ツッコミどころが多すぎて、ツッコミが追いつかなかったぜ……」
     そんな愚痴が飛び交う中、
    「……カレーまみれだな……でも、戦隊物ノリも楽しいな」
    「さ、お土産にサバカレー缶と濡れ煎餅買って帰るか」
     そんな軽口を叩いて笑うラシェリールと清十郎。
     ……灼滅者は、へこたれないのだった。

    作者:天風あきら 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2013年2月11日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 3/キャラが大事にされていた 13
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