日光杉線香怪人アトラクティーフの野望

    作者:本山創助


     良く晴れた昼下がり。
    「スッギー、すきすき、お線娘ちゃん♪ メラッ☆」
     ここは宇都宮市街地にあるデパートの屋上。ヒーローショーなどを開催する舞台の上で、杉の木をイメージしたミニキャラ(杉の木マン)が一列に並んでラインダンスを踊っていた。
     その中央には、萌えキャラ風ご当地マスコットがアクロバティックに踊り、歌っている。
     ――我々は、このマスコットを知っているッ!
     巨大な線香の束から伸びる女性を思わせるナマ腕とナマ足……そう。以前、強力なモグラ型イフリートにあっさり灰にされた怪人である。
     だが、少し様子がおかしい。
     頭部には金髪ロングのズラを被り、中央にあるはずの線香を束ねる紙は、すでに目元の高さまでずらされている。しかも、その紙には萌えキャラ特有の大きなキラキラお目々が描かれているではないか。これは萌えるッ!
    「よい子のみんな~。ママに頼んで、お線娘ちゃん線香を買ってね~♪ メラッ☆」
     観客達は一様にその目をハート型にし、すっかり怪人の虜になっていた。
    「一本千円でーす♪ ひと束十万円でーす♪ 分割払いも承ってまーす♪」
     売り子の杉の木マンがとんでもない値段で線香を売りさばいている。
     しかもそれが、飛ぶように売れているのだ……。


    「彼女はとても知的で魅力的でした。お線香は地味な商品ですが、きっと別の切り口からブレイクさせるはずだと思って姫子さんに注意を呼びかけていたのです。でもまさか、萌えキャラ化で復活するなんて……」
     着物姿の高原・まや(まいぺーすでまいりましょう・d11298)が、頬に手を当てて少し困惑気味に五十嵐・姫子(高校生エクスブレイン・dn0001)を見た。
    「ふふ、前回の怪人さんは強くありませんでしたが、今回の怪人さんは強そうですね」
     姫子がまやに微笑み、説明を始めた。

     今回の敵はご当地怪人、その名も、日光杉線香怪人アトラクティーフです。ちまたではお線娘ちゃんと呼ばれていますが、れっきとした怪人です。彼女はデパートの屋上でアイドルショーを開催しているので、彼女が踊っている最中に乗り込んで、灼滅して下さい。
     観客席には、二十組の親子が座っていて、全員が怪人に魅了されています。あからさまに怪人が攻撃されれば、怪人を助けようとするでしょう。うまく対処しないと怪我人が出るかもしれません。ちなみに、舞台の上でヒーローショーっぽく戦えば、観客を誤魔化せます。他にもやり方はあるかもしれません。色々と工夫してみて下さい。
     彼女はご当地ヒーローのサイキックの他に、導眠符相当のサイキックで魅了しようとしてきます。また、マテリアルロッド相当のサイキックも使います。彼女の前には八体の杉の木マンが並んでいて、身を挺して彼女を護衛します。全然強くはないのですが、数が多いのでやっかいかもしれません。

    「悪質な催眠商法で世界征服の軍資金を稼ごうとする彼女を許すわけにはいきません。見た目は萌えキャラですが、油断は禁物です。皆さん、どうか無事に帰ってきて下さいね」
     姫子はぺこりと頭を下げた。


    参加者
    空井・玉(野良猫・d03686)
    白星・樹咲楽(たおやかなる大樹・d06765)
    上倉・隼人(伝説のパティシエ・d09281)
    鏡・エール(鱗刃強襲スパイラルブラスト・d10774)
    シア・クリーク(知識探求者・d10947)
    魅咲・冴(紅の旋風・d10956)
    高原・まや(まいぺーすでまいりましょう・d11298)
    桃山・弥生(春先までは最年少・d12709)

    ■リプレイ

    ●序
     モっグラ~、みたいな~、オトコはイヤ、イヤん♪
     アナタ、だけの、ために燃えたいっの~♪
     スッギー、すきすき
     スッギー、すきすき
     お線っ娘ちゃ~ん♪ メラッ☆
     ――ちゃっちゃら~、ちゃららら~ん(間奏)

     良く晴れた昼下がり。
     デパートの屋上に設置された舞台の上で、身長一二〇センチのくらいの杉の木マン八体が、側転したり、バク転したり、千手観音したり、ラインダンスしたりしていた。
    「よい子のみんな~、こーんにーちわー☆」
    「こーんにーちわー!」
     間奏の合間に挨拶したのは、我らがアイドル、お線娘ちゃんである。元気よく挨拶を返したのは、小っちゃな子供達と、コートに身を包んだ空井・玉(野良猫・d03686)だ。
     他の客から浮かないようにと周囲のテンションに合わせてみたものの、バラバラに座っている他の仲間達はみんな割と静かに観ていたので、玉はポッと顔を赤らめてうつむいた。無性に弁明したい気分である。
    「お線娘ちゃん線香は、とっても体にいいんだよ~。世界も平和になるんだよ~。お値段もたったの十万円とお買い得♪ だからたくさん買ってね~♪ メラッ☆」
    「はーい♪ メラッ☆」
     お線娘ちゃんが片膝を上げて目元でVサインを作ると、客席の子供達もそれをマネした。見事にハートをつかまれている。
     ――どんつく、どんつく、どんつく、どんつく♪
     間奏が終わりかけている。
     関係者のフリをして忍び込んでいた桃山・弥生(春先までは最年少・d12709)は、舞台の脇に立ってこのショーの司会をしていた。
     弥生の背丈は幼稚園の年長よりも少し低いくらいだ。なので、観客席の小さなお友達は皆、弥生に親近感を持っていた。ステージ衣装の黒ビキニが弥生の真っ白な肌を際立たせ、ちょっぴりセクシーだったのも人気の秘密だ。ちなみに、ほとんど幼稚園児みたいな幼女をセクシーだと感じてしまうのは、我々の性癖がアレなせいではなく、ESPラブフェロモンのせいであることは弁明しておく。
     ちらりと腕時計を見た弥生が、客席に向けて、縛霊手でごっつくなっていた右腕を挙げた。
     客席の間を駆け抜ける、紅の影ひとつ。
     シュバッとジャンプし、くるくると回転しながら舞台に降り立つ。
    「みんな、騙されちゃダメ!」
     右手を振りながら客席に振り向いたのは、魅咲・冴(紅の旋風・d10956)だ。
     と同時に、BGMがヒーロー物っぽい音楽に切り替わった。
     ――テレッテッテレッ、テッテー♪
    「杉線香はそんな高価なものじゃない!」
     最後列中央の客席に立って叫んだのは、白星・樹咲楽(たおやかなる大樹・d06765)だ。
     一斉に振り向く子供達。潜伏中はうまくできるか不安だった樹咲楽だが、子供達のピュアな視線を浴びて、だんだんハイな気分になってきた。
    「それにお線娘ちゃん……いいえ、日光杉線香怪人アトラクティーフ!」
     最後列右端の客席に立って叫んだのは、鏡・エール(鱗刃強襲スパイラルブラスト・d10774)だ。
    「ど、どうしてその名前をーっ!」
     エールに指をさされ、お線娘ちゃんはのけぞった。のけぞったまま、次の展開をドキドキしながら待った。
    「杉線香をボッタクリ価格で売りつけて世界征服資金にしようなんて」
     最後列左端の客席に立って叫んだのは、上倉・隼人(伝説のパティシエ・d09281)だ。オレンジ色の短いくせっ毛。白のワイシャツに黒の上下。どう見ても男である。オレンジ=男。この公式はメモっておこう。
    「ぜったい、許さないんだから!」
     最前列中央の客席に立って叫んだのは、シア・クリーク(知識探求者・d10947)だ。青い髪と口元で光る八重歯が可愛らしい少年である。ブルー=男。これもテストに出るので要注意だ。
     四人は一斉に駆け出し、颯爽と舞台に飛び乗って冴の横に立ち並んだ。
     足元から立ち昇る紫の霧が、五人の姿を隠していく。
     その霧の中で、五人は一斉に光を纏い、霧を吹き飛ばした。
    「紅の旋風、スレキュアレッド!」
    「たおやかなる大樹、キュアグリーン!」
    「断ち切る緋(あか)! キュア・スカーレット!」
    「伝説のパティシエ、キュアオレンジ!」
    「かわいいは作れるっ、キュア☆ブルー!」
     霧の中から現れたのは、プードルめいたモコモコを頭と胸と手首と足首に付けた、超ミニスカートの美少女戦士達だ!
    「スレキュアエイト、ただいま参上!」
     声を揃え、ビシィッとポーズをキメる五人の美少女戦士達!
     湧き上がる歓声!
     いまだにのけぞったままで居てくれてるお線娘ちゃん!
    「――もういいかナ?」
    「なんと、お線娘ちゃんの正体は世界平和と家計の敵、線香怪人でした」
     アッサリとお線娘ちゃんを裏切る幼女司会!
    「セーンコッコッコゥ!」
     いかにも怪人ぽく高笑いするお線娘ちゃん!
    「どうして私の名前と野望がバレちゃったのか知らないけど、私、こういうノリ、大好き。さあ、かかってらっしゃい♪ 愛の戦士☆お線娘ちゃんが、みーんなまとめて成敗してあげる♪ メラッ☆」
     困惑しつつも固唾を飲んで見守る観客達!
    「ここからは、スレキュアエイトvs線香怪人のヒーローショーをお送りします」
     司会の弥生が、にっこりと微笑みながら言った。

    ●破
     少し、時間を巻き戻す。

    「みんな、騙されちゃダメ!」
     ――テレッテッテレッ、テッテー♪
     ここは舞台裏。
     冴が舞台に上がり、BGMがヒーロー物っぽくなったとき、裏方のスタッフは全員すやすやと眠っていた。
    「ごめんなさい、私達にはどうしても成さなければならないことがあるのです」
     黒の礼服に身を包んだ高原・まや(まいぺーすでまいりましょう・d11298)は、魂鎮めの風で眠らせたスタッフに謝罪しつつ、急いで裏口を出た。
     まやは、ショーが始まる前からずっと、スタッフの一員として裏方作業をやっていたのだ。
     思えば苦難の連続であった。
     弥生を司会にするために、さらに、BGMをお線娘ちゃんソングからヒーロー物に変えるために、一般人スタッフに関係者だと思い込ませて紛れ込んではみたものの、いきなり杉の木マン達に囲まれ、「関係ない奴がここで何をしている?」と言われ、お線娘ちゃんには「監督の私に無断で司会を代えようとしてるのはアナタ?」と追求され、とてもじゃないが生きた心地はしなかった。
     が、そこは、何が起きても割と平気なマイペースさと、そこはかとなくにじみ出る育ちの良さと、裏表のない『お線娘ちゃん愛』に裏付けられた口八丁によって、なんとか誤魔化して事なきを得たのだった。危ない危ない。

     さて、舞台の上では、やらせ抜きのガチバトル・リアルサイキック・ヒーローショーが展開されていた。観客は大喜びだ。
     両手のガンナイフをシュルルーンと回転させながら、スタイル抜群のレッドが敵陣のど真ん中に飛び込んだ。
     バババババババババン! と二丁拳銃の引き金を交互に引いて杉の木マンとお線娘ちゃんの足元を狙う。
    「あわわっ」
     お線娘ちゃん達は、その弾丸に両足をジタバタさせた。
    「うふっ……さあ、踊りなさい、うふふふふふ」
     ハイライトの消えた瞳で不敵に笑うレッド。司会の解説がなかったら悪役だと思われても仕方が無いほどの恐ろしさである。
    「そこで止まっていろ!」
     スカーレットの縛霊手から翼の形をした祭壇が展開され、お線娘ちゃん達を磁場めいた結界で束縛した。
    「怪人はやっぱり灰塵(かいじん)だね」
     スカーレットが上手い事を言ったその時、お線娘ちゃんの脳裏に嫌な記憶が蘇った。一瞬で灰になった、あの記憶。
    「いい気になってんじゃないわよ! ぶるるぁあああーっ!」
     アイドルのものとは思えない野太い咆吼と共に、お線娘ちゃんは、体から一本抜き取ったお線香(超ロング極太)をぐるるるるーんと回転させた。
     カミソリめいた竜巻が美少女戦士達に襲いかかる!
    「きゃああーっ」
     その無慈悲な斬撃が、オレンジのモコモコブラを切り裂いた。
    「あっ」
     頬を赤らめつつ、ハラリと落ちそうになったモコモコを慌てて手で押さえるオレンジ。客席のパパ達が、おおっ、と身を乗り出した瞬間である。
    「みんなを傷つけるものは許さないよ! ボクが……まもるもの……!」
     オレンジを庇うように手を広げるブルー。
    「日光杉並木ーック!」
     そのブルーに八体の杉の木マンが一斉に襲いかかった。
    「大樹、守ります!」
     ブルーの隣に並ぶグリーン。
     一六本の足によるドロップキックを全身に受け、ブルーとグリーンは派手にぶっ飛んだ。
    「怪人強し。どうしますスレキュアエイト!」
     司会の弥生がマイクで盛り上げつつ、こっそり祭霊光をブルーに浴びせる。
     その光をスポットライトの様に浴びつつ、ぷるぷる震えながらも懸命に立ち上がるブルー。
    「うぅ……ここまで苦戦するなんて。……でもね、ボクたちは5人じゃない! だってスレキュアエイトだもの!」
    「あ、アナタたち、英語や算数が苦手なワケじゃなかったのね! てっきり馬鹿なんだと思ってたわ!」
     驚愕のポーズと共に固まるお線娘ちゃん。
    「馬鹿って言うな! あれを見ろ!」
     モコモコが落ちないよう胸元に手をあてつつ、オレンジがもう片方の手で客席を指さす。
     そこには、颯爽と舞台に駆け上がる二つの黒い影が!
    「本日の服装は世を忍ぶ仮の姿的なアレと言う事で手を打ちたい、キュアブラック」
     コートをババッと脱ぎ捨て、黒い僧服で合掌する玉。
    「おまたせっ! 遅れて来た真のヒロインキュアブラックただいま参上よっ♪」
     長い黒髪をなびかせながら、黒い礼服姿でお線娘ちゃんポーズをキメるまや。と同時に、防護符をとばしてオレンジの切れたモコモコを修復する。
    「そしてわたしも実は闇に闇を重ねるキュアブラックです♪ ただの司会者だと思ってましたか~?」
     最後に加わったのはもちろん、スパイとして司会を務めていた黒ビキニの弥生である。手に持っていたはずのマイクは、いつの間にかチェーンソー剣に変わっていた。
    「ま、まや、それに弥生、アナタ達、これを仕組むために私を騙したのね! クヤシーッ!」
     お線娘ちゃんは地団駄を踏んだ。
     が、そんなのはお構いなしに、玉のマテリアルロッドが杉の木マンAをぶち抜いた。
    「か、KAFOOM!」
     黄色い粉をまき散らしながら爆発する杉の木マンA。
    「さっきはよくも――」
    「――やってくれたわねっ!」
     ぐるぐる回るブルーのマテリアルロッドが、杉の木マン達をスココココーンと叩き、オレンジの大鎌が、巨大なリボンをはためかせながらズババババーンと切り倒した。
    「か、KAFOOM! FOOM! FOOM……」
     杉の木マンは一網打尽だ!
    「アナタ達、絶対に許さないわ!」
     お線香をぶん回しながら、お線娘ちゃんはスレキュアエイトのど真ん中に飛び込んだ。
     そのシャレにならない高い攻撃力によって、前衛陣の体力はゴリゴリと削られていった。が、回復が間に合っていないと判断した玉がシールドリングでブルーとグリーンを癒やしつつ守りを固めたことによって、形勢はハッキリとスレキュアエイトに傾いた。
    「偽アイドルは杉線香を愛する皆さんに謝れっ!」
     グリーンを包む緑色のバトルオーラが、炎を纏った。
    「シュルディグング、シュルディグーング!」
     あからさまに馬鹿にした調子で意味不明な事を言うお線娘ちゃんの顔面に、グリーンの拳がめり込んだ。
     お線娘ちゃんの頭が、ぼわわっと燃えた。

    ●急
     金髪のズラは、とっくに床に落ちていた。
     ぷん、と杉の香りが漂った。初代お線娘ちゃんを知るまやにとっては懐かしい香りである。
     お線娘ちゃんの頭から立ち昇る煙が、皆の頭上で黒い雲となった。
    「雷雲……それは……未知な稲光……アナタが……見る……絶望ッ!」
     お線娘ちゃんの目(を描いた紙)がピカッと光った。
    「雷、様、降、臨ッ!」
     ガガーンという爆音と同時に、頭上の雲から雷が落ちた。
    「そんな攻撃、通らない!」
     雷の標的となったスカーレットが、バトルオーラを全開にしながら叫んだ。
     緋色のポニーテールがブワッと広がり、雷とオーラがビカビカッと明滅して相殺された。とはいうものの、オーラと静電気の渦がそうさせたのか、スカーレットはアフロヘアーになってしまった。明日になるまでずっとアフロである。
    「ま、まさか、私の必殺技が……!」
     愕然とするお線娘ちゃん。
     その頭の炎は、目を描いた紙にまで達していた。
    「……これ、切ったらどうなるんだろ」
     玉のリングスラッシャーが、お線娘ちゃんの眉間にスコッと刺さった。
     お線香を束ねる紙とともに、お線娘ちゃんの体を包んでいたお線香の束が、バラバラっと床に落ちた。
    「おおおーっ!」
     客席がどよめいた。
     中から出てきたのは、なんと、金髪碧眼の美しい女性だ!
    「グーテンターク」
     本格的にドイツっぽくなってきたお線娘ちゃん。いや、アトラクティーフ。
     ピチピチの競泳水着のようなものを着ているせいで、豊かなボディーラインがくっきりと際立っていた。
    「……いいわ、取引しましょ」
     気丈に振る舞っているアトラクティーフではあるが、その体力はもう雀の涙程度しかない。敗北は目に見えていた。
     すっ、とアトラクティーフの前に立って話を聞こうとするレッド。
    「私を逃がして。そのかわり、イイ事教えてあげるから」
    「何?」
     レッドが微笑んだ。
    「私がなぜ、ドイツっぽい名前なのか、その理由よっ!」
    「いい。知ってる」
     まったく表情を変えずに即答するレッド。
    「うふっ……観念しなさい」
    「いやああーっ!」
     スレキュアエイトにタコ殴りにされ、宙を舞うアトラクティーフ。
    「お、おぼえてなさーい! メラッ☆」
     青空を背に、アトラクティーフはぼかーんと爆発した。
     客席から拍手がわき起こった。
     客席に向かって一列に並ぶスレキュアエイト。
    「この世に悪がある限り!」
     全員が左手を腰に当てる。
    「正義の癒やしで立ち向かう!」
     右手を目の位置でピース。
    「それがみんなのご当地アイドル――」
     若干前傾姿勢になりつつ上目遣いで。
    「スレキュア☆エイト!」
     最後はウィンク!
    「ありがとー!」
     手を振って舞台を降りるスレキュアエイト。
     こうして、ヒーローショーは、無事に幕を閉じた。

    「餃子食べよ餃子! ぎょー! ざー!」
     帰り道、大通りをぶらぶらしながら、樹咲楽が言った。樹咲楽はもうお腹がペコペコだった。いつもハラペコだが、今は特に減っているのだ。
    「そういえばオレンジ、パパ達の視線を独り占めだったね」
     樹咲楽がニヤニヤしながら隼人をつついた。
    「うー、誰かツッコめよ!」
     照れつつも、またオレンジやりたいなー、と思う隼人の脳内で、ヒーロー物っぽいナレーションが展開された。
     ――この世に悪がはびこる限り、スレキュアエイトに休息の日は訪れない。がんばれ、スレキュアエイト。負けるな、スレキュアエイト。地球の平和を、癒やしの力で守るのだ!
     じゃかじゃん♪

    作者:本山創助 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2013年2月9日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 5/感動した 2/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 10
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