学園都市特撮怪人、再び!

    作者:夏河まなせ

     茨城県つくば市。某研究所。
     そこは今、怪人に襲撃されている真っ最中であった!!
    『フ……ククク……ウワーハハハハハハ!! 研究成果はいただくぞ!』
    「や、やめてください、この研究は……」
    『フッ。行け、我がご当地戦闘員、シュラハトゲルマン隊よ!』
    『『ヤー!!』』
    「うわーもうだめだー」
    『この研究所は、我が接収する! 貴様らの研究に、我に力をささげる名誉を与えてやろう。有難く思うがよいぞー!』

    『我が名は学園都市特撮怪人・マクスィムム! ゲルマンシャーク様より賜った第二の命、今度こそ世界制覇を成し遂げて見せよう! 学園都市の科学力は、世界一イィィィィ!』
    「お前達を呼んだのは他でもない……」
     神崎・ヤマト(中学生エクスブレイン・dn0002)は意味もなく窓辺に立ち、司令官ちっくに顔に影を落とした。
    「――学園都市特撮怪人が復活した」
     そしてカメラ目線。毎度のことだが台詞もポーズも芝居がかっている。
    「学園都市特撮怪人について、再度説明しよう。特撮好きをこじらせて留年を繰り返し、とうとう大学を追い出されそうになって闇堕ちした親不孝者だ」
     自分が永遠に大学に居られるよう(そして永遠に特撮で遊んでいられるよう)文部科学大臣に強要しようとした寸前、灼滅戦隊ハチレンジャー……つまり灼滅者達に倒され灼滅、爆散したのである。
    「その学園都市特撮怪人が再度出現した。しかも、ヤツを復活させたのはご当地幹部・ゲルマンシャークだという……」
     ゲルマンシャーク。それは、確か――。
     灼滅者たちは、大晦日の夜、バベルの鎖が告げた漠然としたイメージを思い出す。
    「ヤツは、配下のご当地戦闘員とともに、研究所が密集した地域に乗り込むようだ。我が国の最先端の技術と知識が集まる一帯を我が物とし、そこから世界制服の一歩を踏み出そうとしている」
     ちなみに、この一帯には宇宙センターなんかもあったりする。
    「正直ヤツに、研究成果を活かすオツムがあるとは思えない。だからこそ、デタラメな使い方をされれば大変なことになる可能性がある。研究所エリアに侵入する前に阻止するぞ」
     復活した怪人は「学園都市特撮怪人・マクスィムム」を名乗り、「シュラハトゲルマン隊」という五人の手下を連れている。
    「マクスィムムとは、そのまま英単語にすればマキシマムだな。シュラハトゲルマンは『バトルジャーマン』ってところだ」
     ちなみにシュラハトゲルマン隊、黒の全身タイツに赤いヘルメット状の覆面、黄色いマフラーのドイツ国旗カラー。
    「怪人が使ってくる技も、ドイツっぽいアレンジのご当地キックやビームやダイナミックのようだ」
     それから、シュラハトゲルマン隊による、合体技サイキックもあるらしい。灼滅者の技でいえばパッショネイトダンスとよく似ている。戦闘員単体はかなりザコだがこの技だけは結構強力なようだ。
    「一人一人は小さくても、ひとつになれば……ってことらしいな。気をつけろ」
     元ネタ? ナウなヤングの俺には何を言っているのかさっぱりわからないなとヤマトはすっとぼけた。
    「そうそう、接触場所だがな。おあつらえ向きのが近くにある。今回のターゲットとなる研究所の少し北に、国際コンベンション施設がある。そこの玄関前の広場で待ち構えろ。なんでもその施設、やはり特撮の撮影スポットらしくてな。特撮怪人としては無視できないらしい。研究所に向かうのに、あえてその施設の前を通る道順を選ぶ。そこで戦いを挑めば、お約束ゆえヤツらは応戦してくれるだろう」
     施設は凹型になっており、凹の引っ込んだ部分の奥が玄関だ。その前の広場は催事の際に送迎の車を寄せるスペースにもなるので、かなり広い。多少暴れたところで心配は要らない。当日は会議や学会などの予定もないので、もともと施設に人は少ない上にみな建物内におり、迷い込む人もいないだろうと予想されている。
    「まあ、向かいの家電量販店にいる人とか、施設の上階にいる人からは思い切り奇異の視線を向けられるかもしれんが……」
     バベルの鎖が仕事してくれるので、最終的に困ることにはならない。怪人退治に集中すればオッケーである。
    「灼滅者達よ、つくば市に向かい、学園都市特撮怪人・マクスィムムを灼滅してくれ!」
     ヤマトは司令官ちっくに告げたのであった。


    参加者
    不破・聖(壊翼の楔・d00986)
    由井・京夜(道化の笑顔・d01650)
    中屋敷・鉄子(私が中の人だッ・d03777)
    荻原・茉莉(モーリー・d03778)
    神城・達樹(笠間五凶星・d03825)
    蘚須田・結唯(祝詞の詠い手・d10773)
    悠月・すみれ(シャイニィピオーネ・d12415)
    寿・叶恵(鉄工戦士キュポライオン・d13874)

    ■リプレイ

    「良い子のみんな、こんにちはー!」
     由井・京夜(道化の笑顔・d01650)はマイクを手に、にこやかにアナウンスした。
    「今日は、灼滅戦隊ハチレンジャーが来てくれたよ!」
     好奇の視線にも司会のお兄さんはめげない。大丈夫、バベルの鎖が守ってくれる。
    「この街は狙われているんだ……! ほら、みんな、あれを見て! あれは学園都市特撮怪人・マクスィムム!」
    『ムッ!?』
     指の先には、ちょうど広場にやってきた怪人本人。
    「つくばの研究所を世界制覇の道具にしようとしている悪いやつなんだ!」
    『貴様、何故それを知っている?』
     怪人はずかずかと広場に入ってくると、京夜に詰め寄った。後ずさる京夜。
    『何者だ! まさか……』
    「ぼ、僕はただの司会のお兄さんです!」
    「おーい、こっちだこっち!」
     花壇に腰かけていた中屋敷・鉄子(私が中の人だッ・d03777)が立ち上がり手を振った。メンバーで唯一、前回の特撮怪人とまみえた仲である。
    「私の顔を忘れたか! 友よ!」
    『む、むう、貴様は……』
    「やっほー、特撮怪人さーん!」
     荻原・茉莉(モーリー・d03778)も、朗らかに手を振る。
    「私は初めましてだねー。新しいヒーローにも会って行かない?」
    『あ、新しい、だと……』
    「覚えているのかいないのか……まあいい、友よ、我らがお前を倒す!」
    『何だと!』
    「助けに来てくれたんだね、ハチレンジャー!」」
     お兄さんの声に合わせ、残りのメンバーも姿を表わした。
    『ハ……ハチレンジャー……おのれ、またしても!』

     まずは鉄子がカードを解放。
    「レッドパッション! 今日はロット(赤)と呼んでもいいぞ!」

    「グリューンヴァルトとネーベルブラウ、参上!」
     カードを解放しグリーンになった茉莉の足元には、青いスカーフの霊犬タロー。
    『犬か』
    「犬だとダメ?」
    『犬の上司もいる、問題なかろう!』
     正確には犬に似た異星じ……まあいい。

     神城・達樹(笠間五凶星・d03825)はライドキャリバ―を走らせての登場。
    「ハチレンジャー・シュバルツ、見参!」

    「金色に輝く溶鉱炉………キュポライオン・ゴルド、推参!」
     エイティーン使用の寿・叶恵(鉄工戦士キュポライオン・d13874)は金の戦士を名乗る。

    「ジルバーフェンリス……断罪の刃、落とす者」
     銀の戦士を名乗るのはほっそりとした体躯に不似合いなチェーンソー剣を携えた不破・聖(壊翼の楔・d00986)。

    「咎人に、永久の安らぎを!ヴァイスメイデン!」
     蘚須田・結唯(祝詞の詠い手・d10773)。この日のために練習してきたポーズを決めた。

    「もう一人いますよ! シャイニィメタモルフォーゼ!」
     悠月・すみれ(シャイニィピオーネ・d12415)がカードを解放、シャイニィエンジェルロッドを携えた少女戦士に変身した。
    「シャイニィピオーネ、参ります!」

    「「「天が呼ぶ天が呼ぶ天が呼ぶ! 灼滅戦隊、ハチレンジャー!」」」

    『赤・緑・青・黒、金銀に白、そしてイメージカラー紫の追加戦士だな! 承知した!』
    「追加戦士がいつ名乗るかもいろいろだよね」
    『うむ、主にレッドとの関係性が』
    「隙ありっ!」
     うっかり司会のお兄さんの話に乗りかけた怪人に、茉莉がすかさず導眠符を投げた。ぺたっと張り付く。
    『のわあ!』
    「いいぞハチレンジャー!」
     とかなんとか言いながら、声援にまぎれて京夜もこっそり封縛糸を巻きつけている。
    『ええいッ、ちょこざいな!』
     一声叫ぶとドイツ国旗カラーの戦闘員が一列に並んだ。
    『まずは我が精鋭、シュラハトゲルマン隊を相手にせよ!』
     ハチレンジャーに対抗するように、しゅびっとポーズをとる。
    『ヤー!』×5。
    「気をつけろ! 聞いたことがあるぞ。一人一人は小さいけれど、一つに……」
    『見よ! 無敵だっ!』×5。
     鉄子のセリフをシュラハトゲルマン隊が遮った。
    『元ネタ見破るとは、さすがロットというべきか! あえて遮るのは大人の事情ということでご理解を!』
    「む、そうか、すま……ん?」
     鉄子が微妙に首をかしげる間に、シュラハトゲルマン隊は腕を組み、独特なポーズをとる。どこからともなく聞こえてくるBGMは三拍子のメロディ。
    「これは?」
    「ワルツ?」
     五人が一斉にステップを踏む。
    『ヤー!』×5。
     衝撃波が発生した。前衛の三人と一匹がまとめてのけぞり、火花(演出的な)が散った。
    「これはっ?」
    『ふっ、これはウィンナ・ワルツの起源のひとつといわれるドイツ南部の民族舞踊を力の源とした技だ!』
    「ドイツの人に謝れー!」
     怪人が自信満々で解説し、一同から思わず声が上がった。
    『見たか! ゲルマンシャーク様より賜った大いなる力!』
    「ゲルマンだからドイツものなんでしょうね……」
     苦しげに胸を抑えた聖に、回復を飛ばしながらの結唯の疑問。
    「多分。こじつけもいいところ……だとは思う……、有難う」
    「とにかく数を減らしちゃおう! 行くよ!」
     茉莉がシュラハトゲルマン隊のひとりに突撃した。
    「ドイツ語で技名考えてきたけど忘れちゃった! えーい、シャクメツアターック!」
     さらに、叶恵が黄金の装甲の胸に赤い炎を燃え上がらせ、同じ戦闘員に発射する。
    「悪を溶かす正義の炎、キューポラー……ビームッ!」
    『ナイーーーーン!』
    「ピオーネビーム!」
     一人が倒れた。続いて、すみれが別の戦闘員にご当地ビームを発射。しゅわっと弾ける果物の香気。
     よろけたところを鉄子がとらえ、オーラを纏わせた拳の一撃。こちらも倒れた。
    「やったね!」
    「ナイス連携だ!」
     四人はハイタッチ。女子の連携に、怪人がうんうんとうなずいている。
    『戦うヒロインも良いものだ』
     京夜は聞いてみた。
    「女性戦士にこだわる人?」
    『なくてはならん。しかしいつかは初期から男女比が逆転するのだろうか』
     何しろ今回、男性戦士は達樹と聖のふたりだけ。霊犬タローを男性換算しても三名。
    「確かに、一時的とはいえ公式で逆転したことがあるしな……」
    『しかもレッドの交替でな。時代かな』
    「こらそこ! 話を弾ませてる場合か!」
     うっかり話し込みかけた司会のお兄さんに、仲間から声が飛んだ。
    「おっと失礼。――がんばれハチレンジャー!!」
     声援にまぎれ、こっそり前列に清めの風を吹かせる京夜。
    『ひるむな、三人でもう一度だ!』
    『ヤー!』×3。
    「伝統芸能を……そんなことに利用、するな」
     すかさず聖が言い返す。
     三人にまで減らされれば威力もかなり落ちる。ほどなくして、シュラハトゲルマン隊はあえなく全滅したのであった。

    「ご自慢の戦闘員も倒れた! あとは貴様だ、マクスィムム!」
     シュバルツ・達樹が怪人に告げる。しかし怪人は余裕の笑み(たぶん)を浮かべた。
    『フ、ゲルマンシャーク様の大いなるお力により生まれ変わった我が技の冴え、身をもって知るがよい!』
     カッコつけて達樹めがけて指をさす。そして。
    『ラケーテビーム!』
    「これは、かつてのロケットビームか!」
     と、鉄子。何故ビームが英語そのままなのかは不明だ。
    「貴様の力になど屈するものか!」
     両腕をクロスさせて衝撃に耐えた達樹が、キッ、と怪人を見据え、掌に力を集める。
    「三大稲荷が一つ、笠間稲荷の力を借りて。今必殺の、稲荷ビーム!」
    『ぐぁッ!?』
    「畳み掛けよう! シャクメツビーム!」
    「もう一度、キューポラビーム!」
    「ピオーネビーム!」
    「負けるなハチレンジャー(神薙刃)!」
     わざわざ掛け声をあげない聖のチェーンソー斬り、キャリバーや霊犬タローの攻撃も含め、ありったけのサイキックが叩き込まれる。
    『ぐふう……!』
    「ここで決めましょう! ハチレンリフレクター!」
    『お、おおう?』
     結唯が手元から投げつけた五星符が怪人に張り付く。動きを阻害されてもがもがしている、今がチャンスだ。
    「よし行け中屋敷!」
    「レッドと呼べ!」
     鉄子が怪人に向かって駆けだす。十分に助走をつけると、跳躍した。ご当地キックだ。
    『ええい、そうはいくか!』
     怪人も、どうにかこうにか束縛を振り切る。
    『てりゃーーーーーー!』
     そしてジャンプ! 空中で、二人がほぼ同じ体勢になった――!
    「これはッ」
    「ご当地キック同士の……!」
     鉄子がガイアチャージで集めたつくばのパワーと、怪人のパワーが激突する!
     爆発(演出的な)が起きた。パンチラしながら鉄子が弾き飛ばされ、結唯が助け起こす。もうもうと巻き起こる土煙。
    「大丈夫ですか、中屋敷さん、いえ、レッド」
    「ああ。……やったか?」
     しかし、土煙が晴れたとき見えたものは。
    『フッ……ぬるいわ! そんな攻撃で倒せると思うなー!?』
    「あ、あれー?」
     ばっちり二本の足で立っている怪人と、なぜか怪人にがっちり抱えられた司会のお兄さんの姿であった!
    『カーカカカ! 一般市民に手が出せるかな?』
    「えーっ? そんなのあり?」
    「さっき、仲良くお話ししてたじゃない!」
    『それはそれ、これはこれだ!』
    「そんなところまでお約束通りにしなくても」
     一同は当然ながら非難轟轟、だが怪人は意に介しない。カエルの面に何とやら。
    『カーカカカカカ! 我が知略を見たかー!』
    「ああっ、なんてひどいんだ怪人! ハチレンジャーのみんな、お兄さんを助けて~っ」
     そこへ、茉莉の霊犬タロー、いや青いスカーフなびかせたネーベルフラウが小さい体を活かして奇襲をかけた。口にくわえた斬魔刀で斬りかかる。
    『むッ! 犬風情が生意気なッ!』
     怪人はその斬撃を腕で受け止めた。そしてそのまま振りぬく。サモエド型霊犬のもっふもふの体が宙を舞う。
    「タロさん! じゃなくてブラウー!?」
     が、そこはディフェンダー、吹っ飛ばされながらも耐え、すちゃっと四本の足で着地した。
     そして、怪人が犬に気を取られた隙に、シュバルツ・達樹が急接近している。
    「その人を離せ!」
    「――この距離なら外れないな」
     腕を振り上げながら突進してくる達樹。低音のつぶやきはマイクのスイッチを切った京夜のもの。司会のお仕事を妨害しないよう、マイクの手だけは動かせるように保定している、怪人の優しさというかサービス精神が命取り。
    「うぉおお!」
     怪人を射程に収め、達樹は拳を一度引いて威力を乗せる。同時に京夜の右腕が膨れ上がった。
    「閃光百列拳!」
     光る拳と、京夜の鬼神変がめり込んだ。
     どぐしゃ。
    『ぬぼわあああぁ!』
     大変いい音がして、怪人があごを抑えてのた打ち回る。拘束が外れたところへ達樹のキャリバーが滑り込み、京夜はすかさずハンドルにつかまって怪人から離脱した。マイクのスイッチを入れ、にこやかにアナウンス。
    「ありがとう、シュバルツ! ブラウ!」
    「お、おう」
    「わふ……」
     ちょっと引いてるひとりと一匹。
     さらに突入するのは、ゴルト・叶恵とジルバー・聖の金銀ふたりだ。
    「ヒーロー、好きなのは、俺も同じ……だけど」
    「だからこそ許せません! 本当に特撮が好きなら、ヒーローたちのように現実に立ち向かうべきでした!」
     叶恵の手にしたサイキックソードはアセチレン・バーナー・ブレード。
    「もうどうにもならないなら、私たちがここで終わらせます!」
    『ぐわあ!』
     ご当地の人々の営みの炎を宿したサイキック斬りを喰らい、怪人の身体が灼熱した。
     流れるように、機械仕掛けの大剣を携えた聖が肉薄する。
    「どんなに、好きでも」
     彼の意志に応え、チェーンソー剣が炎を纏う。華奢な体躯に似合わぬそれを、聖は大きく振りかぶった。燃える断罪の刃が振り下ろされる。
    「他人、苦しめるような奴は……風上、置けない」
    『ぎゃあああああ!』
     炎に包まれて苦悶する怪人。
     バチバチと火花が散り始めた。さらに進み出たのは結唯。
    「トドメです! ハチレンバ……あ」
     ジャッジメントレイを放とうとした結唯の動きが止まる。一同も(怪人含めて)止まった。
    「どうした、倒していいんだぞ?」
    「ごめんなさい、ここは合体技でトドメになるところですよね?」
    「あ、えーと……」
    『フッ、問題ない』
     一瞬微妙に凍った空気を、息も絶え絶えの怪人自身がフォローした。
    『ブルーがラスボス倒した話も存在する……』
    「あー」
     そういえばー、と司会のお兄さん。
    『もしくは、これはホワイト回だと思っても良い……』
    「じゃあ、そういうことで。――さあ、白き乙女の怒りを見せるんだ!」
    「は、はいっ。――特撮怪人さん! これを見て!」
    『むっ……それは……』
     結唯が掲げたのは、ロケット型のキーホルダー。怪人がビームの元ネタに使っていた、プラネタリウムのお土産だ。
    「私はこの街に来てからずっと、懐かしさを感じてました! ここは、古代と未来が共存する、素敵な街です!再び災いをもたらそうとするなんて! 許せません!」
     キーホルダーを掲げた手に、聖なる光を宿し、そして放つ。
    「成敗です! ハチレンバスター!」
    『ぐわああああーーーーーーーー!!!』
     清らかな光条に貫かれ、吹き飛ばされて花壇にぶつかる怪人。
    『ぐ……も、もはやこれまでか……ゲルマンシャーク様、ご意思に背く我をお許しください……』
     しかし、最後の意地を見せて立ち上がり、よろめきながら広場の中央に戻ってきた。
    「待て、マクスィムム! 最後に聞かせろ!」
     いよいよ力尽きそうな怪人に、達樹が叫んだ。
    「ゲルマンシャークとは何者なんだ!?  その目的は!?」
     その呼びかけに、しかし特撮怪人はフッ、とニヒルに笑って見せ(たぶん)ると、
    「つくばの特撮よ――永遠なれッ!」
     ちゅどーーん。
     爆発四散したのであった。

    「なんでダークネスになってんだよ! バカ~っ!」
     京夜の嘆きが空に響く。
    「まだ話し足りなーい! 最終回のこととか新作のこととかー! 軽く三日くらい徹夜で語り合えたはずなんだ~!」
    「むう……」
     鉄子はさっきからずっと首をかしげている。
    「どうしたんですか?」
     叶恵がたずねる。
    「やはり違和感があるのだ。どこがどうとは言えないが」
    「じゃあ、別の人なんでしょうか」
    「うむ……だが、別人と言い切る決め手もないように思う」
    「結局、『再生』の意味も……よくわからない、ままだった」
     聖は十字を切って軽く黙とうし、呼吸を整えながら言った。
     すみれも考え込んでいる。
    「ゲルマンシャークが健在であればまた再生したり、するんでしょうか」
    「――かくして、学園都市特撮怪人の野望は再び阻まれた!」
    「あ、マイクが」
     広場に響くのは、いつのまにか京夜のマイクを持った茉莉によるナレーション。
    「――いずれ第三・第四の特撮怪人が出てくるだろう……」
    「……本気で出るの?」
    「大晦日にロシアンタイガーだのアフリカンパンサーだのと聞いた気がするしな……」
    「いったい何者なんだ、ご当地幹部」
    「――だが我々は負けはしない!」
     傍に立ったタローが、茉莉と同じ方向を向き、きりっとポーズした。

    「――がんばれ灼滅戦隊ハチレンジャー!」
     きらーん。
     青空に、さわやかな風が吹いた(演出的に)。

    作者:夏河まなせ 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2013年2月12日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 3/キャラが大事にされていた 13
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