じゃがいも騎士

    作者:泰月

    ●じゃがいも怪人復活
    「我が名は檜原村じゃがいも怪人改め、檜原村じゃがいも怪人カルトッフェルリッター!」
     東京都のかなり西側の集落の外れに、何かいた。
    「ゲルマンシャーク様の力で蘇った我は、イフリートに為す術なくやられた我とは違う! なにしろ、カルトッフェルリッターだからな!」
     さっぱり判らない自信に満ちている、じゃがいもの頭を持った怪人だった。
    「以前は計画を語る間も無くやられたが、今なら言える! 全国の食卓の主食をじゃがいもにして、世界征服をすると!」
     そこからどうなって世界征服に繋がるんだろう。
    「しかし最新の計画はちょっと修正した。おかずでも良しとする! 良く考えたら、その方が食卓のじゃがいも率高くなるし! ジャーマンポテト美味いし!」
     じゃがいもドヤ顔。結局じゃがいも使ってんじゃねえかなんてツッコミがあっても、きっと聞き流してた。
    「というわけで、そこのお前」
    「あ、はい」
     そこに運悪く通りかかった農家のおじさん。
    「じゃがいも食うが良い!」
    「いや、俺あまりじゃがいも好きじゃな」
    「良いから食え!」
    「ぎゃあああああっ!?」
     うっかりじゃがいも好きじゃないなんて言ってしまったが為に、無理やり口にじゃがいも突っ込まれて泡吹いて倒れる羽目になるのだった。

    ●カルトッフェルとはドイツ語でじゃがいものことである
    「じゃがいも怪人はね。前にイフリートがたくさん出てきた時にやられた、キックが自慢のご当地怪人だよ」
     赤星・緋色(朱に交わる赤・d05996)は、集まった他の灼滅者を見回し告げる。
     彼女は、かつて任務で趣いた地でじゃがいも怪人が、自慢だった(らしい)キックも通じず一方的にやられる様を見た。
     後日、なんだか可哀想だったのでもう一度出番を……なんて思ったりした。
     その思いが通じたのかは定かではないが、割とあっさり復活を果たしたようである。
    「緋色さん、ありがとう。後は私から説明するね」
     緋色から引き継ぐ形で、須藤・まりん(中学生エクスブレイン・dn0003)がいつものノートをパラパラとめくる。
    「今回復活したのは、じゃがいも怪人……今はじゃがいも怪人カルトッフェルリッターって名乗ってるよ」
     近頃増えているご当地怪人復活事件。これもその一つだろうか。
    「やっぱり目的は世界征服。食卓のじゃがいも普及率を高めて世界征服って言ってるみたい」
     復活してもやる事はやっぱり世界征服だった。
    「無理やりじゃがいも口に突っ込まれたり、地味に被害は広がってるから今の内に灼滅してきてね」
     今は東京の西の端っこの方にいるが、西に行っても東に行っても大きな都市に出る。今の内に叩いておくべきだ。
    「今回は、復活して強くなっただけじゃなくて、配下も連れてるんだよ。おっきなじゃがいも2体」
     頭がじゃがいもの怪人と、それに付き従う巨大じゃがいも×2。なにそれシュール。
    「配下の能力は、ローリングじゃがいもと花を咲かせて自分を回復する技の2つ」
     ローリングじゃがいもは要するに体当たりなのだが、毒が付く。
     花を咲かせると、かかった異常を払う効果があると言う。
    「怪人の方は、ジャーマンポテトって付くご当地ヒーローと同じような技を使うよ。今回はキック自慢に加えて、ご当地ダイナミックも強力になってるみたい。その名も、ジャーマンポテトスープレックス」
     配下と同じ、花を咲かせて自身を回復する事も可能との事。
    「今は檜原村の中の集落を回っている所だから、この辺りで待ち伏せができるよ」
     この辺り、とまりんが指したのは檜原村の集落と集落の中間地点。開けた場所であり、邪魔が入る事もない。
    「じゃがいもって、荒地でも育つんだって。だから、かな。怪人も配下のじゃがいもも、今回はかなり体力が高くなってるよ。前の弱かった頃は忘れて、油断しないで行ってきてね」


    参加者
    武蔵・篠(中学生ご当地ヒーロー・d00774)
    仲村渠・弥勒(世果報は寝て待てない・d00917)
    万事・錠(残響ビートボックス・d01615)
    帆波・優陽(深き森に差す一条の木漏れ日・d01872)
    米田・空子(ご当地メイド・d02362)
    赤星・緋色(朱に交わる赤・d05996)
    明日・八雲(十六番茶・d08290)
    成瀬・樹媛(中学生エクソシスト・d10595)

    ■リプレイ

    ●3匹のじゃがいも
     その日はいい天気だった。
     東京都檜原村の集落と集落の間のとある場所。ちょっと木陰に入った所で、下は小学生から上は高校生までの学生達が薄くスライスして揚げたじゃがいも、いわゆるポテトチップスをパリポリ食べていた。
     彼らは、別に遊んでいる訳ではない。エクスブレインの未来予知に従い、この場でご当地怪人を待ち伏せているだけである。
    「あまり怪しく見えないように、適当にぶらつく学生的な雰囲気を出しておこう」
     明日・八雲(十六番茶・d08290)のこの一言がきっかけだった。
    「とりあえず、怪人が現れるまでこれでもつまんどこーっと」
     そこに仲村渠・弥勒(世果報は寝て待てない・d00917)が出して見せたのが、皆でパリポリつまんでいるものである。
     一人、また一人、と手が伸びて気づけば皆でパリポリと音を立てている。
     学年がバラバラだったり、なんかメイドさんもいるけど、違和感は多分そんなにない。学校行事でこの辺りに来て休憩中な感じに見えている。
     身を潜めるつもりの人もいたけど、ちゃんと木陰に入ってるし。それに、目の前で食べられたらそそられるものだ。
    「中々来ませんね、じゃがいも」
     成瀬・樹媛(中学生エクソシスト・d10595)は手を伸ばしていない。過去の経験から人間不信な面がある故に、だ。
     木陰から樹媛が辺りを見回すも、野鳥の声が聞こえるのどかな風景が広がるばかり。
     ゴロゴロと何か大きなものが転がる音が耳に入ってきたのは、ポテトチップスがお腹の中に消えた少し後。
     見れば、転がるでっかいじゃがいもと、頭がじゃがいもの人。
     間違いない、こいつらだ。
    「UNLOCKED」
     万事・錠(残響ビートボックス・d01615)が小さく呟き真っ先に飛び出す。スレイヤーカードの封印を解除しながら、次々に飛び出す灼滅者達。
    「解除コード、炎熱装着(フレイムインストール)」
     サイキックエナジーに分解されていた装備が、一瞬炎のように揺らめいて武蔵・篠(中学生ご当地ヒーロー・d00774)の戦闘用衣装の形に戻って行く。
    「むぉっ!? なんだ、お前らは……!」
     いきなり人が飛び出て来て、怪人ちょっとびっくり。
    「わー、美味しそー♪」
     弥勒の率直な第一印象だが、1m越えのじゃがいもですよ。
    「出たなじゃがいも怪人!」
     進み出た赤星・緋色(朱に交わる赤・d05996)が、じゃがいも怪人をびしっと指差す。
    「あの時のイフリートは私たちが倒したよ。でもリベンジなんてさせずに私たちが完全に灼滅してあげる!」
    「成程。我がじゃがいも世界征服計画の邪魔となる者どもか」
     配下のじゃがいもを制しつつ、怪人は灼滅者達を見据える。
    「そうはいかん。我はじゃがいもを広めて今度こそ世界征服するのだ!」
    「じゃがいもは好きだがお前は好きじゃない!」
     一歩進み出た八雲が、びしりと言い放つ。
    「じゃがいもを食するに相応しいのはじゃがいもが好きな人だけだ!」
    「然様! だからこそ、食卓に広め、食わせるのだ。じゃがいもを!」
    「手当たり次第無理矢理食わせようとするなんて言語道断!」
    「じゃがいもを食べない方が悪いのだ!」
     口上をあげた2人とじゃがいも怪人の視線がぶつかる。
    (「おぉ、口上マジカッケェ!」)
     錠がそんな2人の口上に感動を覚えている一方で、帆波・優陽(深き森に差す一条の木漏れ日・d01872)はこっそりちょっぴり落胆していた。
     何故か。怪人の配下のじゃがいもがゴロゴロ転がって移動していたからである。
    (「そうよね、いくら怪人さんの御付きでもそれが普通よね」)
     彼女は、お付きのじゃがいもが転がるのではなくぴょんぴょんと跳ねて移動しているのを期待していたのだ。だが、現実にはゴロゴロ音を立てて今も怪人の周りをうろうろ転がっている。残念。
    「言っても判らぬのならば、減らず口を叩けぬよう、お前達の口も胃袋もじゃがいもでいっぱいにしてくれる!」
    「お断りですわ」
     メイド服の裾をはためかせ、米田・空子(ご当地メイド・d02362)が2つの銃身を構える。
    「復活系の怪人は、弱いって相場が決まってるのよ? だから覚悟しなさいっ」
     口上の最後を篠が締めくくって、戦いの火蓋が切って落とされた。

    ●この怪人なんて呼ぼう
    「行くぞ!」
     じゃがいも怪人が先陣を切り、配下のじゃがいもが、その斜め後方に続く。
     対する灼滅者達は、5人が転がるじゃがいもの片方へ向かっていった。
    「む……えぇい、我を無視するでない!」
    「真打は後から登場すんのがセオリーなんだろ?」
     素通りしようとした灼滅者達を追撃しようと怪人が動くが、させじとその前に錠が立ちはだかる。
    「そうそう、真打は最後にとっとくものじゃん!」
    「真打……そう、つまり、我はメインディッシュ! じゃがいも主食!」
     2人に真打と呼ばれ、勝手にいい気になるじゃがいも怪人。
    「それまでこの『通りすがりの殺人鬼』と遊んでようや。カルトっふ……言いにくいな畜生、芋野郎って呼ぶぞ!」
     あ、噛みかけた。
    「待てい! 我はじゃがいも怪人カルトッフェルリッター! 芋ではない、じゃがいもだ!」
    「うっせぇ、芋野郎!」
     叫ぶと同時、錠の足元から伸びた影が触手となり、怪人を絡め取る。
    「いくよ! ひっさーつ!」
     その隙に配下じゃがいもに叩き込まれた緋色の超弩級の一撃が、配下じゃがいもの体力をごっそりと削り取る。具体的にはじゃがいも欠けた。
    「錠にーさん、ボスじゃがの相手は任せたよー!」
    「おう、任されたぜ!」
    「ボスじゃがって我か!?」
     錠に向けた弥勒の言葉に、何故か怪人も反応した。
    「じゃがいもは生だと体に良くないからねー。火を通してから食べましょー!」
     しかし弥勒はスルーして炎を纏ったガトリングガンの銃身を配下じゃがいもに叩きつける。燃え移った炎が配下じゃがいもを焦がしてゆく。
    「冥府の入り口に、案内しますよ」
     続いて樹媛の放つ裁きの光条が的確に配下じゃがいもを撃ち抜けば、空子の放つ魔力光線が押し潰す勢いで配下じゃがいもに迫る。
    「ぬぅ。我が配下が……えぇい、どかぬか! ジャーマンポテトキィーック!」
     一斉に配下へ加えられた攻撃に苛立った怪人がジャーマンポテトキックを放つも、錠がその前に立ち後ろの仲間を攻撃させない。
    「好きなものを広めようとするのは悪いとは言わないけれど、無理矢理は駄目よ。ねぇ、カルタ君」
     シールドを周囲の仲間も守れるように広げながら、優陽から怪人に向けられるダメ出し。
    「カルタ君!? それも我か!」
    「そうよ。カルト……何リッターだったかしら。長いから。カルタ君でいいわよね」
    「我は騎士であるぞ、君を付けるな君を!」
     地団駄を踏む怪人。
    「え、略されたことじゃなくてそっちなの?」
     燃える配下じゃがいもを足元から伸びる影の触手で絡め取りながら、思わずつっこむ篠。
    「そこも気になるわね。男爵さんや女王さんじゃなくて、騎士さんなのね。何か騎士に思い入れがあるのかしら?」
    「そうそう。なんで、中途半端に日本語とドイツ語なのかな」
    「ゲルマンシャーク様の力で復活したからな! 良い響きではないか、カルトッフェルリッター!」
     優陽と緋色の疑問にドヤ顔で返す怪人。名前に特別な理由はなさそうである。
    「うーん……やっぱり名前長いから、じゃがカフェかな!」
     怪人の答えを聞いた緋色の口から出てきた、4つ目の略称。
    「店舗っぽく略された!?」
     これまた反応して地団駄を踏む怪人。全部反応する辺り、中々律儀な怪人である。
    「ええい、好き勝手に呼びおって。じゃがいもの怖さと凄さを思い知らせてくれる。行け、我が配下よ!」
     怪人の声が響くと、ゴロゴロだった配下じゃがいもの回転数が、突然ギュルルルってくらいに一気に跳ね上がった。そのまま2つのじゃがいもが、前に立つ6人の灼滅者達にぶつかり跳ね飛ばしていく。
    「ふはははっ! 早くも、我が配下の毒が回った者もいるのではないか?」
     怪人の言葉通り、篠と優陽の体に一気に毒が回っていた。
    「じゃがいもはかつて悪魔の植物と呼ばれたこともある。その恐ろしさを味わうが良い!」
     確かに、そのままにしておけば、2人は十数秒後に少なくないダメージを受けることになっただろう。
    「じゃがいもの毒は怖いからな!」
     だが、後方に控えていた八雲がつま弾くギターの響きが仲間に立つ力を与える。衝撃を癒し、毒を消してゆく。
    「お返し。丸焼きだよー!」
     弥勒の放つ爆炎の弾丸がじゃがいもに撃ち込まれ、その体をさらに燃やした。
    「これでおしまい! 小江戸キーック」
     飛び込んだ緋色が繰り出したご当地パワーを込めた両足に蹴飛ばされるじゃがいも。集中攻撃に炎のダメージも残っていたじゃがいもはその一撃で、砕け、消滅してゆく。

    ●騎士の散り様
    「ジャーマンポテトスープレックス!」
     怪人に投げ飛ばされ、錠が頭から地面に叩きつけられる。
     脳を揺さぶる衝撃に、逆さに映った景色が一瞬歪むが、直ぐに飛び起きると自らの魂を闇に傾け生命力を得る。
    「やるじゃねぇか、芋野郎。だが、あいつらが配下を始末するまで、ぜってェに耐えてみせる」
     その横では、ふぁさぁ、とじゃがいもの全身から白い花が咲いていた。
     だが、その判断は少し遅い。
     緋色の小江戸ビームや、優陽のシールドの一撃により怒りを掻き立てられていたじゃがいもは、自らを癒す花を咲かせるよりも攻撃を多用していた。
     その間に溜まったダメージは、今更回復した所で補い切れるものではない。
    「ホント、じゃがいもって万能食材だよねー。どう料理しようか迷うなー♪」
     ジャーマンポテト、フライドポテトにポテトニョッキ。カレーやグラタンは定番。味噌汁も捨てがたい。
     美味しそうなじゃがいも料理の数々を思い描きながら叩き込まれた弥勒のガトリングガンが、じゃがいもの体を燃やし尽くした。
    「さあ、後は貴方だけよ、カルタ君」
     シールドのついた手をびしっと怪人に突きつける優陽。
     八雲は回復に徹し続けたが、毒を消しきれていない者もいる。消耗は少なくない。だが、誰も倒れることなく配下を倒し終えた灼滅者達が怪人を取り囲む。
    「それとね、カルタ君」
    「だから君を付けるなと!」
    「タマネギとかベーコンなしでもジャーマンポテトでいいのかな?」
     怪人の抗議は軽くスルーして優陽が口にした疑問。確かに、ジャーマンポテトはじゃがいもだけで作る料理ではない。
    「そんなことか。じゃがいも入ってるから良いではないか。復活した我は細かいことは気にしない!」
     怪人はんなこと気にしちゃいなかった。
    「と言うわけでジャーマンポテトキック!」
    「その程度の攻撃じゃ、ボクを打ち崩すことはできないよ?」
     放たれた怪人の飛び蹴りを、間に入った篠が受け止める。
    「仲間を癒すっ、フェニックスドライブ!」
     篠の背中から立ち上る炎の翼が周囲に癒しを与える。
    「復活だかなんだか知らねェが、テメェの大和魂はどこにやった。国産の誇りを思い出せ!」
     怪人の死角から聞こえたのは、錠の声。彼の振るうナイフが、怪人を深く斬り裂く。
    「ゲルマンシャーク様の力により復活した時より、我の視野は広がったのだ。世界征服出来るのなら、じゃがいもの産地は問わぬ!」
     斬られながらも、きっぱりと言い放つ怪人。だって時代はグローバル。
    「そんな、あたしだれでもいいのよ的な八方美人で世界を征服できると思うなよ!」
     しかしその答えは八雲が否定する。同時にかき鳴らすギターから放たれた音波が怪人を直撃する。
    「じゃがカフェ!」
     よろめいた怪人に巨大刀を突きつけたのは緋色。
    「ゲルマンシャークってどんな姿? ドイツのどこのご当地?」
    「我の邪魔ばかりでなく、ゲルマンシャーク様まで狙おうと言うのか。知っていたとしても、答えるものか!」
    「やっぱり下っ端じゃ、知らないかな」
    「これ以上は何も引き出せそうにないですね」
     後方から間合いを詰めた樹媛が、炎を纏わせた大鎌で斬りかかる。
    「ボスじゃが覚悟ー!」
    「オラいくぞマッシュポテトォ!」
     弥勒が炎を纏ったガトリングガンを怪人に叩き込めば、錠も攻めに転じて高速で死角に回り込んで怪人に切りつける。
     怪人も頭から花を咲かせ耐え抜こうとするが、それで体を燃やす炎を消しても、8人の集中攻撃の前には回復が追いつかない。
     ならばと放たれたジャーマンポテトビームは、空子の魔力光線に相殺されて届かない。
    「おのれ……! 今度こそ、主食かおかずで食卓をじゃがいもいっぱいにして世界征服を成し遂げるのだ!」
    「ジャガイモ、主食の所もあるのに。おかずでもいいなんて志が低いよ!」
    「な、なんだと……!」
     志の低さを緋色に指摘された怪人に大きな衝撃が走る。同時に超弩級の一撃を叩き込まれていたので物理的な衝撃だけど。
    「俺の好きな料理には全部じゃがいもが入っている。君と分かり合えないなんて……残念だ」
     カレー、シチュー、肉じゃが、こふきいも、トルティーヤ。数々のじゃがいも料理を思い浮かべつつ、八雲の両手から放たれるオーラ。
    「終わりよ、カルタ君」
     優陽の言葉と共に、風が薙ぐ。渦巻く風の刃に斬り裂かれ、遂に怪人が膝をついた。
    「うぐぐ……折角ゲルマンシャーク様に復活させて頂いたというのに……無念!」
     その言葉を最期に、じゃがいも怪人は爆散した。

    ●戦い終わって
     辺りに静寂が戻ってきた。
     爆発が収まった後には、じゃがいもの欠片もなにも残ってはない。
    「えっ。マジで爆散かよ! 芋野郎……お前のコト、忘れないぜ」
     怪人の散り様は、錠の心に何を残したか。心が通ったら聞いてみたいと思っていたことは聞けずじまいだったが。
    「今度は暴れるのではなく、綺麗な花を咲かせ和ませる存在になってほしいな」
     優陽は戦いの中で見た花を思い、手を合わせ、カルタ君たちの冥福を祈っていた。
    「さーて、良い感じにお腹も減ったし、皆でご飯食べてから帰ろうよー♪」
     ややしんみりとした空気を変えるかのように、賑やかに弥勒が言う。戦闘前に食べてた菓子の分は、既に消費したか。
    「もちろんじゃがいも使ったヤツねー♪」
    「いいね、じゃがいも料理」
     弥勒の提案に、まず八雲が頷いた。互いに知らぬことではあるが、戦闘中、2人の脳裏に浮かんだじゃがいも料理はいくつか共通していた。ひょっとしたら食事の好みが似ているのかもしれない。
    「空子も食べたいですわ」
     いつでもハラペコな空子も、食事の提案に頷いた。
    「食べるのも良いけど、お土産のじゃがいもを買って帰りたいな」
     緋色の所望はクラブやクラスメイトへのお土産だ。
    「食べるにせよお土産にせよ、まずは街まで戻りましょう」
    「戦うには良かったけど、此処、何もないもんね」
     樹媛と篠が提案し、8人は元来た道を人里へと戻る。
     じゃがいも怪人カルトッフェルリッター。その世界征服の野望は絶たれたのであった。

    作者:泰月 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2013年2月17日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 4/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 9
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