復活! おでん=ヴルスト=うどん!

    作者:柿茸

    ●香川県高松市
     高松市のとある駅前。
    「うどん食べろ!」
     ラーメン派と答えた一般人の顔面にうどんがめり込む、どこかで見たことあるような光景。
     コシがあるどころか、中に肉がみっちり詰まったムキンムキンな一撃を受けて一般人が吹き飛んでいく。
     吹き飛んだ人を見て、一緒に麺類談義をしていた一般人が固まる。ムキムキマッチョ、というか関節ごとに綺麗にねじりが出来上がってるうどんが振り向いた。
    「……さ、ズィー。もしも1億ユーロあったら?」
    「う、うどんが食べたいで―――」
    「おでんに入ったソーセージも食べろ!!」
     ムキンムキンな一撃再び。
     ……以前より理不尽度がましていた。
    「おお、うどん様……ゲルマンシャーク様のお力によって復活した我が身、あなた様の布教のために捧げます!」
     もうワケが分からなかった。
     
    ●教室
    「おでん=ヴルスト=うどんって言うんだって」
     この短期間に何度見た光景だろうか、須藤・まりん(中学生エクスブレイン・dn0003)が黒板に、楕円を繋ぎ合わせたような身体の棒人間を描きながらそう言った。関節のところで楕円が交わっており、今までの棒人間よりはまだ人間らしい骨格に、いや、見えない。
    「ヴルストって、なんだ?」
    「ドイツ語でソーセージって意味だってさ」
     文月・直哉(着ぐるみ探偵・d06712)の問いにまりんが電子辞書で調べて答える。
     なんだかドイツ風っぽくなってご当地怪人達が復活しているこのご時世。もしかして香川で倒したうどん怪人も復活しているかもしれない! 頭にソーセージとかのせて! と直哉がまりんの元に駆け込んで相談して視てもらったところ、いました。復活してやがりました。
     黒板に描かれた棒人間の身体、その頭部にソーセージが一本。ご丁寧にソーセージ(おでん汁で煮込み済み)とまで書くまりん。
     そして、先程のいびつな形をした棒人間の身体部分に『ソーセージ状のうどん(中身豚挽き肉)』と書かれる。
    「つまりどういうことだよ?」
    「ソーセージの皮がうどんで出来ているって感じかなぁ?」
     つまり、身体が楕円形で繋がって出来ているのは、身体が繋がったソーセージ状でできているということですか。各関節ごとに繋がっているソーセージのあの捻れて小さくなってる部分がくるということですか。
    「どういうことだよ」
    「私もどういうことなのって思うよ」
     このうどんの皮を被ったソーセージ怪人。以前と同じく香川県高松市の駅前で悪さをしているようだ。前と同じく、高松市で電車を降りながら麺類談義をしていると出てくる。
    「1億円、じゃなくて1億ユーロあったら何をしたい? って聞いてくるよ」
     そんなところまでドイツに。
     今回は面倒なことに、うどんを食べたいという答えだけでは不足になっている。うどんと、おでんに入ったソーセージも食べたいと言う答え意外認めない。もはや脳内当てクイズの領域になっている。
     認めない答えにはムキンムキンな一撃を喰らわせるだとか。身体の中身が豚肉になった所為でコシはなくなったようだが、代わりにムキムキになったらしい。
    「まぁどう答えるかは置いといて、後はもう、いつも通り皆で袋叩きにしちゃって?」
     まりんも呆れ気味である。はーい、それじゃ敵の攻撃の説明いくよー、と投げやり気味に続ける。
    「えっとねー、使ってくる技だけど。ムキンムキンな一撃だよ」
     肉詰めされたムキムキなうどんの拳の一撃である。流石に身体がソーセージのようになってしまっているためか、以前のように遠くまで腕を伸ばすことはできなくなっているようだが、その分威力が増している。おまけに追撃の効果を持っているうえに殺傷ダメージも高めらしい。
    「なるほど。他には」
    「ないよ」
    「えっ」
    「ないよ」
     ……もしかして、とにかく殴ればいい系な脳筋です?
    「あ、一度狙いを定めた相手は戦闘不能になるまでずっと付け狙うよ」
     そしてそこはいやらしかった。
    「油断しなければ勝てると思うけど……。ただ、1発の威力が半端ないから、狙われたらすぐ戦闘不能になっちゃうかも」
     そこはどうにかする方法を考えたほうがいいかもね、とまりんは付け加える。
    「ところでまりん、うどん様って」
    「サイキックアブソーバーからは『誰それ?』ってしか返ってきてないよ?」
     直哉の質問に即答するまりん。
    「それよりもあのうどん……ええと、うどんおでん怪人の言っていたゲルマンシャークは気をつけたほうがいいかも。今回はサイキックアブソーバーの予知に引っかからなかったし出てこないと思うけど、多分強力なご当地怪人だからね」
     ゲルマンシャークに関する情報はともかく、名前を覚えられてない可愛そうなうでん、いやおどん怪人(ソーセージ)だった。


    参加者
    句上・重蔵(ニンジャ・ドッグ・d00695)
    神田・熱志(ガッテンレッド・d01376)
    エルメンガルト・ガル(アプレンティス・d01742)
    藤堂・優奈(緋奏・d02148)
    流鏑馬・アオト(ロゼンジシューター・d04348)
    大條・修太郎(紅鳶インドレンス・d06271)
    文月・直哉(着ぐるみ探偵・d06712)
    リューネ・フェヴリエ(熱血青春ヒーロー修行中・d14097)

    ■リプレイ

    ●3度目ましてうどん県!
     電車から降りて文月・直哉(着ぐるみ探偵・d06712)が宣言した。ここまで来ると運命感じずにはいられない。
    「今回の事件も、噂のゲルマンシャークの仕業だよな」
     神田・熱志(ガッテンレッド・d01376)の隣では、リューネ・フェヴリエ(熱血青春ヒーロー修行中・d14097)がオリーブの新漬けを一心不乱に食べていた。ガイアパワーとお腹をチャージ中。
    「おでんでソーセージでうどんか……美味そうで楽しみだぜ!」
    「リューネ、涎、涎」
     熱志の言葉にリューネが慌てて涎を拭う。そんな様子を見て、藤堂・優奈(緋奏・d02148)がにししと笑った。
    「まぁ分かるよその気持ち。私もアレは美味いのか、不味いのか気になってるしな。またお前か! って感じもあるけど」
     お気楽に考える優奈だが、流鏑馬・アオト(ロゼンジシューター・d04348)は既に対処に困っていた。
    「うどんかおでんかどっちかにって、ソーセージも増えたの!? どうすればいいの……」
     とか呟いている。
     そしてエルメンガルト・ガル(アプレンティス・d01742)は喜んでいた。麺類大好きらしい。
    「わーいウドンだー!」
     ん、あれ、でも違う……? と首を傾げ、少しの間。
    「わーいヴルストだー!」
     お前それでいいのか。だがその喜びの表情をすぐにキリッと引きしめる。口から紡ぎ出されるは決意。
    「しかしヴルストってものが何だか分かってんの? 腸詰だよ? オウドンの皮詰めじゃないんだよ? そんな紛い物のヴルストを名乗られちゃゲルマン出身者として抗議するしか無いね!」
     そんなエルメンガルト、ルーツは殺人鬼である。
     句上・重蔵(ニンジャ・ドッグ・d00695)はそれに頷く。
    「ご当地のうどんをアピールしたいのか、おでんに入れたソーセージをアピールしたいのか、それともドイツをアピールしたいのか……」
     判然とせんッ! 企画段階からやり直せッ! と非常に御立腹な様子。怪人に直接言ってやりたい気分である。
    「おでんにソーセージを入れる文化の無い家庭で育ったからなー。コンビニとかで見ると違和感あるんだよな実は」
     それとは関係なしに大條・修太郎(紅鳶インドレンス・d06271)がぼやいた。
    「ところで、うどんとおでんは響きが似ていない事も無いが、ヴルストの無理やり感は半端無いと思う」
     そんな呟きに以前うどん怪人を倒した事がある2人が反応した。
    「香川だとうどんとおでんを一緒に食う事はよくあることらしいぜ? だからうどんおでん怪人だったってよ」
    「私もうでんかおどんか迷ったんだよな。でも今回はウインナーもあるし……おでん=ウインナー=うどん怪人」
     ……おウどん?
    「あ、いや、ヴルストだから」
     おヴどん?
     優奈の発言、その発想はなかった。

    ●スパゲッティ、ビーフン、冷麺、酸湯子……
    「色んな麺を食ったが、やっぱ日本のラーメンは良い!」
     直哉と楽しそうに麺類談義をしながらリューネが改札を通り抜ける。
    「だろう? 俺もラーメンは好きで良く食うんだよな。ちなみに大盛りじゃなくて替え玉派だ」
     麺の伸びが防げるし、お腹具合に合わせて調節できるのも強みだぜ。
    「俺は、替え玉も大盛り派だぜ!」
     食事は質、量共に求める派のリューネとしてはそこは譲れないらしい。
     囮役の2人の後ろからはパンフを持って付近の美味そうな食べ物屋の目星を付けている優奈を筆頭に、イヤホンを耳に挿して他人のふりをしている修太郎、そしてアオト、重蔵と続く。
     さらに2人の前にはエルメンガルトと熱志が、駅前でも人気の少ないところへと先立って歩いて行く。一般人に被害が及ばないよう、囮役が行く先を誘導しているのだ。
    「後は麺と言えば……小さい頃はたらこパスタが好物だったな。パスタに絡めたバターと生たらこの絶妙なバランス! あれがたまらん!」
     虚空を見つめぐっと拳を握る直哉、だが直ぐにむむむと考え込む。
    「だが明太子パスタの大人な辛みも捨て難い。むむ、悩むぜ」
    「分かるぜその気持ち。あ、そう言えばさ」
     フランスにはうどんに似た食感の、ヌイユってのがあるんだぜ。
    「その話、詳しく聞かせてもらおう!」
     残像さえ見えかけた速度でおでん=ヴルスト=うどん怪人、もといおヴどんが横合いから2人の前に割り込んできた。
     エルメンガルトと熱志が驚愕の表情で振り返る。後ろから付いてきていた4人のうち、パンフしか見ていない優奈を除いて全員の顔が一瞬強張った。
     囮役2人に至っては全身の毛が逆立つ勢いで驚いていた。というか直哉の着ている猫の着ぐるみの毛がぶわっと逆立って……直哉さんクロネコレッドへの変身早すぎません?
     甘ロリ少女ビハインドの零が、パンフだけを見てすたすたと歩く優奈の袖を必死に引っ張る。どうした? と足を止め、零を見て、辺りを見る。
    「だがその前に聞きたい事がある。ズィー、1億ユーロあったら何をしたい?」
    「1億ユーロか大きく出たな。だが欧州ならパスタで決まりだろ!」
     ビシッと直哉がおヴどんに指を突き付けた。その腹にムキンムキンな一撃が突き刺さる。クリティカル殴打音が聞こえ、クロネコの着ぐるみがねじれ回転しながら宙を舞う。
     状況把握。確かにあのまま歩いていたら巻き込まれていたかもしれない。良い笑顔のまま自分の目の前に錐揉み回転しながら落下した直哉を見ながら、そう思う優奈だった。
    「直哉ー!」
    「クロネコレッドー!!」
    「死なないでー!」
    「さて、ズィー、そのヌイユについて詳しく。場合によっては君もスラーグンせねばならない」
    「訳が分からねえ!? 前衛薄い、というかいないぞ何やってるんだ!」
     そして阿鼻叫喚の中、真っ当なリューネのツッコミに、そうか、答える気はないのだね、とおヴどんは腕を振り上げた。

    ●ガッテンチェンジ!
     間一髪、リューネの前に江戸っ子戦隊ガッテンジャーのガッテンレッドに変身した熱志が割り込み、ムキンムキンな一撃を受け止めた。強烈な一撃に後ろへと滑りつつ、熱志は口上を止めない。
    「火事と喧嘩は江戸の花、ガッテンレッドッ!!」
     相手の攻撃を耐えてからの歌舞伎ポーズ。その隣を、優奈が自身にソーサルガーダーをかけながら前へと進み出た。
    「直哉、相変わらず無茶しやがって……」
     そんな言葉を残しながら。ディフェンダー陣に守られながら後ろに下がるリューネが反応した。
    「直哉は死んでなんかいねぇ!」
     俺達の中で、ずっと生き続けるんだ……。とか言いながらリューネは小光輪を直哉に与えてみる。
    「おでんには、おでんにはトマトだって言ったじゃないか、このソーセージ野郎!」
     膝をガクガク震わせながら直哉が立ちあがった。死んでなかった。
    「ふん! トマトなんという存在するかどうかすら怪しい具など、認めるわけにはいかんな!」
     まだ生きてたかと、直哉へともう一度殴りかかろうとするおヴどんだが、重蔵が割り込む。無敵斬艦刀を振り降ろし、真っ向からうどんの拳を受け止める。
     互いの攻撃を弾きつつ、重蔵は顔をしかめた。衝撃によるものだけではない。先ほど言っていた、どれをアピールしたいんだこいつはという思いで頭の中が一杯だった。
     でも作戦に反するから挑発になりえるその言葉をぐっと飲み込む。その頭上に赤い影。
    「皇居キィーック!」
     熱志のご当地キックがウインナーにめり込む。後ろに跳んで一回転する熱志の下を、おヴどんが蹴られてよろけた隙を見逃さなかったアオトの放った漆黒の弾丸が、アオトの青と白で彩られたライドキャリバー、スレイプニルの機銃掃射が飛ぶ。次々と細かい穴がおヴどんの身体に空き、豚肉の挽き肉が飛び散った。
    「蒼の狩猟者(ブラウ・イェーガー)が君に狙いを定めた。もう逃げられないよ」
     キリッ。とアオトが決め顔。
    「……何それ?」
    「いや、ドイツ語って格好良いよね。俺もドイツ風に名乗ってみようかな? って思って」
     修太郎の疑問に真顔で答えるアオト、中学2年生。
     そうか、と曖昧な返事を返し、修太郎は影を伸ばす。おヴどんを見据える眼鏡がギラリと光った。
    「その名前、無理やりドイツっぽくしただろうそうだろう白状しろ、おヴどん」
    「そのようなこと、あろうはずもない! あとおヴどんとはなんだ!」
     自信満々に言い返し、そしてその呼び名に憤慨しておヴどんが迫りくる影を右手で打ち払いながら修太郎に迫らんとする。
    「ともかく切り裂かれろー!」
     そこへ後ろから、エルメンガルトが斬りかかった。足を狙う一撃にうどんの皮がひき肉ごとぱっくり裂けて、中に詰まった豚の挽き肉が露わになる。
    「全力で食いつきに行くから覚悟しろ!」
     零の霊撃に合わせ間合いを詰める優奈。紅蓮に染まる日本刀が、霊撃を避けたおヴどんのウインナーの端を斬り飛ばした。
     宙に舞う切れ端を3等分して、1つは自分の口の中にホールインワン。もぐもぐと口を動かして。
    「んー、ちょっとシオタラン……」
     言いながら後衛にいる直哉とリューネに残りの切れ端を投げ渡す。2人とも口で綺麗にキャッチした。
    「ふむ、出汁が染みてなかなかだな」
     膝をカタカタ震わせながら直哉が感想を言い。
    「うーむ……私の記憶が確かならば―――」
     その隣でリューネが長ったらしい解説をし始める。お前ら戦え。
     直哉は後衛に下がってしまっている。無理に狙えない敵を狙いに行く程敵は馬鹿ではなく、先ほど狙いをつけた修太郎に向け、おヴどんは一瞬にして踏み込む。
     ディフェンダーの反応が間に合わない。飛びあがりながらのアッパーに修太郎の視界が強烈に揺れる。だが、もう一撃は耐えられないであろうその一撃に歯を食いしばりながら、ウインナーにガトリングガンを押しあてた。零距離で放たれる炎の弾丸の嵐。一瞬にして炎に包まれるそれから離れつつ、回復を求めてメディックを見る。
    「―――ということで美味しゅうございました」
    「だが燻製モノは出汁への影響も強いしなぁ……。次回は仔牛肉の旨味たっぷりジューシーなヴァイスヴルストでよろしく頼む。好物なんだ」
    「回復!」
     ガトリングガンを向けたい衝動を抑えて叫ぶと、ウインナー美味しいです組が慌てて行動を開始する。
    「狙い撃つぜ!」
     着地した硬直を狙い、スナイパーらしい宣言をしながらアオトがトラウナックルを……狙撃しろよ。スレイプニルがその隣を駆け抜け、狙い済ましたかのように先ほど切り裂かれた足の先を轢き潰した。
     その間にリューネと直哉のシールドリングが修太郎の傷を癒す。内心一息つきながら、修太郎は向き直った。
    「おい、おヴどん。ゲル何とかさんとうどん様と、お前はどっちが大事だ」
     答え次第ではもうお前にうどんを名乗る資格は無い。
    「何……?」
    「なぜなら本質は既にソーセージ。中身の豚肉が焼けて美味しそうな匂いが漂っているのに気づけ」
     実際、炎に炙られて美味しそうな匂いが漂っている。誰かがジュルリと涎をすする音が聞こえた。うどんの皮に豚挽肉が焼けてる、焼き餃子か? と言う声も。
    「き、貴様ァーッ!」
     否定できない事実におヴどんがキレた。再度修太郎に踏み込もうとするおヴどん、だが熱志が真っ向から迎え撃ち、押し留める。さらに重蔵のブレイジングバーストが襲いかかり、ウインナーと餃子の焼ける香ばしい匂いが一層強くなる。腹の鳴る音が聞こえた。
     エルメンガルトがティアーズリッパーでうどんの皮を斬り裂けば、中からは美味しそうな豚肉が。ゴクリと唾を飲み込み、匂いに負けてそのままガブリと一口。
    「あっ意外と美味しい。っていうか普通に美味しい」
     そんなエルメンガルトを邪魔だどけと押し退けようとしたおヴどんに、ビームが直撃した。クロネコレッドがニヤリと挑発するように笑う。ブチン、と分かりやすくウインナーの皮の一部がハチ切れた。
     怒りに身を任せ直哉へと進路を変えようとするおヴどんだが、前に壁となる者達がそれを許さない。
    「ぐぬぬ!」
    「何がぐぬぬだ!」
     熱志が反応する後ろ、重蔵が必死に作戦に反しないよう、挑発しようとする口を噤んでいた。だが表情にありありと、へーい! 怪人びびってるぅー! と出ている。それに気が付かず熱志はおヴどんの身体を掴んだ。
    「重蔵先輩!」
    「おう!」
     おヴどんを持ちあげながら振り向く熱志と、真顔になった重蔵の目線が合う。斬艦刀を振りかぶる重蔵。頭上高くにおヴどんを持ちあげる熱志。
    「食らえ、神田明神ダイナミックッ!!」
    「真っ二つだッ!」
     ご当地ダイナミックの落下地点先は振り上げられる斬艦刀。爆発と斬撃を同時に受けておヴどんが地面に倒れるが、素早く横に転がった。すぐ隣の地面を魔法の矢が穿つ。修太郎が再び眼鏡を光らせた。
    「ああ、訊きたいんだが」
     ゲル何とかさんは―――。
    「そうだ。お前を復活させた、ゲルマンシャークはどこにいるんだっ!!」
     修太郎の言葉を引き継ぎ熱志が質問する。
     ―――うどん派かおでん派か?
     と思ったら修太郎さんそっちの疑問でした? 熱志がこける。
    「ヴルスト派だ!」
     おヴどんのその言葉に、瞬間、修太郎の目が殺意を宿る。
    「ソーセージ推しとかうどん様に背く行為だって分かってるのか? 前のやつらはうどんしか布教していなかったぞ」
     悔い改めろ。と、パチンと修太郎が指を鳴らした。おヴどんの後ろに回り込んでいたリューネがおヴどんを持ちあげる。
    「怪人と名の付くものは爆発して散るものと相場が決まってるらしいぞ。お前はどう散る?」
     目線で合図。気合を込めるリューネ
    「エクスプロジオン・デ・ラ・オリヴィエ!!」
     リューネのご当地ダイナミックが、おヴどんを地面に叩き付け、大爆発させた。

    ●ハラヘッタ!
     爆発の煙が晴れた後。そこには何もなかった。全員がそれを確認し、一息付いたところで優奈が勢いよく言う。
    「あたし、さっき美味そうな店見つけたんだ。みんなで行こうぜ!」
    「そうだな、また美味いうどん食いに行くか!」
    「ああ、うどん、食いに行こうぜ!」
     その言葉に直哉とリューネが素早く反応した。
     アオトはおヴどんが爆散した所に向けて、ツルツルシコシコ、うどんの神様ごめんなさいうどんの事は嫌いじゃないですと拝んでいた。誰から習った。
    「香川だし、折角だから俺もうどん食べたい気持ちだな。最近きつねうどん好きなんだよな」
     修太郎も、そして熱志や重蔵もうどんを食べることに乗り気である。今度こそウドンだわーい! とはしゃいでいたエルメンガルトが、ふと気が付いた。リューネへと振り向く。
    「そういえばさっきの技名、どういう意味?」
    「オリーブダイナミックだぜ」
     なるほどなー。格好良いだろ? 格好良いですね! と様々な反応を見せる仲間達から優奈が視線をふと逸らすと、駅前の露店でウインナーが売っているのが見えた。
    「やっぱ……別々に食いたいな」
     優奈に微笑みかけられて、そうぼやかれて。零は全力でこくこくと頷いた。

    作者:柿茸 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2013年2月14日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 8/感動した 1/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 5
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