「ねぇねぇ、もうすぐバレンタインだよね~。みんなは何か準備してる?」
そう問い掛けてきた、斑目・スイ子(高校生エクスブレイン・dn0062)は、何だか悪戯っぽい笑顔をみせる。
「駅前のデパ地下でね~、バレンタインフェアやってるんだって。放課後、一緒に行ってみない?」
デパートの地下食品売り場で開催されているというバレンタインフェア。チョコレートを中心とした様々なバレンタインギフトが揃うそこは、試食の数もとっても豊富。自分で色々味見して回れば、きっとお気に入りの一品に出会えるだろう。
「にひっ♪ みんなは誰にチョコあげる? あたしはね~、パパにいっこと、友チョコに何個か買って……あと、自分用にもういっこ♪」
父親と友人達には甘いスイートチョコレートを。自分用には甘くないビターチョコレートを探すつもりだと言って、スイ子は笑った。
「で、帰りは何か買い食いしてこ。デパ地下だからいろいろあるよ。コロッケとかー、唐揚げとかー、お惣菜パンとかー……」
チョコレートの試食が続いた後は、しょっぱいものが欲しくなるはず。買い物が終わった後は、デパ地下グルメを堪能しながら帰るのも良いかもしれない。
「よーし、それじゃ、今日はデパ地下を攻めるよ~! にひっ♪ 楽しみだね。それじゃ、また放課後にね~」
ひらひらと手を振って、スイ子は教室を去っていった。
決行は放課後。バレンタインに向け、今日はみんなでデパ地下を攻めるのだ!
●いざ、デパ地下!
渡す相手のいない乙女と八鹿も、とりあえず試食の制覇を目指して進攻開始!
「あ、私外国のチョコはパスで……外国のってヌガーが入ってること多いし……」
「ぬがー? 気合ですか?」
そんな感じに食べ進みながら、皆に配る用の義理チョコも当然確保。その数、なんと八鹿33個、乙女85個。
「クリスマスに引き続き相手が居ないって言うのが……まぁ、気にしないことにしとこ……」
「……この会話が恒例にならないことを祈るばかりですことよ」
袋いっぱいの安くて可愛い義理チョコを手に、女子二人は苦笑する。
男一人では、と尻込みしていた唯人も瑠璃羽に付き合ってもらっていざ出陣!
「ほら、これ美味しいですよ。あーんしてください」
「うん、ビターチョコの中はナッツとクリームかな? 絶妙♪」
「へぇ、なんかプロの評価みたい。んじゃ未来のパティシエさんに向こうのも試してもらおっ」
進攻はまだまだ続く。
そして、ここにもデパ地下の試食制覇を狙う一団が。
「ここが噂のデパ地下……! なるほど、女子臭がぷんぷんしやがるぜ! オーケー、準備はいいかい野郎ども!」
「ああ!」
「お惣菜コーナーもみたいけど、今日の目的はチョコだ!」
人の問いかけに、ヴェイクと桜太郎が大きく頷く。
バレンタインのこの空気ならいけると思ったのだろうか。そうして三人はがっちりと肩を組み……。
「俺ら、突撃しまーす!」
軽快なスキップで売り場に躍り出た!
「フハハハハ!! 俺らハウス、俺らハウスでございます! どうぞよしなに!」
「ここの試食は俺らハウスが制した!」
「ほら、乾先輩も!」
「ん? え、ちょ……なんで皆して肩組んで迫ってくるのよ……やだよ俺! ヤメテー! アーーーーッ」
途中にいた剣一もそのまま巻き込んで、俺らハウスのスキップは止まらない。
「どうしてこうなった……ユーマ……丹生くん、俺を助けてくれ……!」
「お茶目さんだなー」
「やだわ、こいつらちょう可愛いー」
強制スキップで通り過ぎていく剣一の助けを求める声も虚しく、蓮二ははしゃぐ友人達を温かく見送り、夕眞は携帯電話でその微笑ましい姿をすっぱ抜いた。
「さって、俺も何かお菓子欲しいなぁ……あ、ねぇねぇ、どれがおすすめですかぁ?」
きれいな店員のお姉さんを見つけて、夕眞はすかさず声をかける。
(「夕眞、お前、神か!」)
夕眞が立ち止まったお店は偶然にも探していたお店。地味に変装までして人目を気にしていた蓮二はどさくさに紛れて目的だった超限定、等身大子犬&子猫のチョコレートを無事ゲットした。
今年は手作りを予定している瑞央と茉莉花は、試食でしっかりプロの味を研究中。
「これ……美味しそう、だよ?」
「どれどれ……んっ、良い感じ良い感じ!」
楽しみつつ、買い込むのは手作りキットやラッピンググッズ。
「マリーさん……誰に作る、の?」
「それは一応、乙女の秘密ってことにしとこっかな」
可愛らしい兎の根付飾りを両手いっぱいになるまで選んだ瑞央を手伝って、茉莉花は悪戯っぽく笑ってみせた。
「ありがと、ね?」
「どーいたしまして!」
たくさんの荷物も半分こ。今日は美味しいチョコが作れそう。
放課後、偶然会った雅臣と歌織も流れでデパ地下へ。
「……へぇ、デパ地下ってこんな感じなのね」
歌織は物珍しげに視線を走らせ。
「ポテチにチョココーティングですか。こりゃ面白い! コッチはラムレーズンが効いてますねぇ」
雅臣はあちこち試食を食べ歩く。
「やっぱスイスとかフランスのチョコうめえ! このプラリネとスパイスのやつ最高!」
この時期にしか上陸しない海外のショコラ店。完成された一粒一粒に、簿荷は感嘆の声を上げた。
「よし! ねえちゃん、こっちの5段のやつくれ!」
3段と5段。迷って結局大奮発。
バレンタインフェアは特別。普段はなかなか買えない人気店や高級店の試食も目白押しなのだ!
「ぎょーさんあるもんやな、珍しいチョコとかあるかいな?」
「あ、このチョコ可愛い! あっ、あのチョコいつもすぐ完売するやつだ!」
ハイテンションに試食して回って、ふんにゃり幸せ笑顔な千巻に、楽しげに辺りを見回す右九兵衛。
「一足先にバレンタインプレゼントです……なんて」
鞠藻は試食のチョコを、あーんして方式で配る大サービス。
「手作りはもちろん嬉しいけど、こういう売ってるのは見た目も楽しめていいね」
貰った試食のチョコを味わいながら、大輔も思わず顔を綻ばせる。
「ん、このチョコ美味しい……殊亜くん、あーん♪」
「……ん、最近のチョコってレベル高いよね。紫さんの作るお菓子ほどじゃないけど」
クラスメイト達の楽しげな輪の中で、紫と殊亜はちゃっかりいい雰囲気だ。
深愛の瞳がキラリと光る。
「あっち! 広告の扱いおっきいし、混んでるからきっと人気のお店なんだよう!」
「たしかに! 人だかりできてるところは気になる!」
「行ってみましょうか?」
頷いて、イズナとひふみも後に続いた。
人だかりは、どうやら人気店の試食コーナーらしい。
「どうぞ。味が残っていると次のと交ざってしまいますしね……?」
行列に並びつつ、ひふみは深愛とイズナにミネラルウォーターのボトルを手渡した。
「それにしても、凄い人手ですね……大丈夫ですか? お荷物が持てなくなったら代わりますよ」
「うん、ありがと。大丈夫。ちょっと重くはなりそうだけど……」
多くなってしまいそうな荷物をちょっぴり気にかけるひふみとイズナ。
「大丈夫っ。世の中には宅配便というのがあるんだよう」
それにドヤっとした顔をみせる深愛。買い込む気満々である。
ぐいぐいと先陣を切って進む涼花と琴音。
「あ、涼ちゃん琴ちゃん、そこ右に」
デパ地下の見取り図を手にした仁奈が、それを的確にサポートする。
そうして回るのは、学生さん御用達の可愛いお店。そして……。
「ポイントはしっかり押さえてあるわよ」
「高級チョコの試食はっけーん!」
立ち止まったホナミと鵺白。目の前には高級ショコラ店。ホナミは不敵な笑みを浮かべる。
「そう……試食可能で一番お高いチョコレートがあるのは、ここよ。ね、食べてくでしょ?」
沸き上がった歓声に、ホナミと鵺白はさっそく試食のチョコレートを貰って帰ってくる。
「わぁ、美味しそう、です」
華凛がキラキラと目を輝かせた。美味しそうな高級チョコレート。さてはて、そのお味は……。
「わ、わ、すごく美味しいーとろけそう」
「や、これもうとろける! 美味しい! すごーい!」
「これは神だね! 今、琴の胃袋がガッツポーズだもん!」
今まで味わったことのないようなチョコレート。思わず、仁奈と涼花と琴音は高い声を上げた。
「こっちの苺チョコも、可愛いし美味しい!」
頬っぺが落ちちゃう! と、露も大感激。
「試食したらどれも欲しくなっちゃうね! これ欲しいよー!」
よほど美味しかったのか、涼花がチョコレートについたお値段とお財布の中身をちらちら確認し始める。
そろそろ、お気に入りを決めて買ってもいい頃合かもしれない。
「わたし、苺のチョコに決めた」
試食も美味しかったし、と鵺白はピンクのラッピングが素敵な小箱を手に取った。
「全部で7体……今の私達と同じ数……」
「わぁ、華凛ティーのテディチョコかわゆ!」
色々な銀紙で包まれた、くまの形をした可愛らしいチョコレート。嬉しそうな顔で買い物カゴに入れていく華凛の横で、琴音もその可愛らしさに笑顔を零す。
「どの色も可愛くて選べないんですよね……全色買って皆でティータイムしましょう」
そして露はお気に入りのマカロンを大人買い。友人達から、驚きと尊敬の拍手が沸き起こった。
そう、試食の後はしっかりお買い物。
「海外では男性からもプレゼントするっていうし……」
さっそく大輔はバレンタインギフトを選び始める。
「むー……美味しそうなトリュフなのに試食品ないなんて……」
こうなったらみんなで食べよう! と、紫は思い切って気になるトリュフをお買い上げ。
「えーっと、カカオ99%……は意地悪だから、こっちのに……あっ、高い」
海外の高級メーカーのチョコレートのお値段に驚く殊亜。
「あ、千巻ちゃんには別に四角のちっちゃいあのチョコあげるわな。遠慮せんでええ、嬉しいやろ、クカカカ!」
「アリガトウ」
言って、可笑しそうに笑い声を立てる右九兵衛に、千巻は目が笑ってない笑みで礼を返した。
「これは……色んな味が一気に楽しめる優れものです……!」
そんな中、鞠藻は20円チョコの詰め合わせをゲット。
楽しい交換会になりそうです。
デパ地下慣れしていないエルメンガルトと小次郎。
「コジローのオススメって何?」
「そうだなー……おっ、こういう繊細なカンジなのって日本っぽくねえ?」
立体になった動物チョコを見つけて大はしゃぎ。
「やっぱり、この時期は安いな」
主に女子に賑わう中堂々と、結は色々味見しながら自分用のチョコをお買い上げ。
心ゆくまで見て回って、唯人と瑠璃羽もほくほく笑顔。
「日野君はお気に入りのチョコ、見つかったのかな?」
「ん~と、秘密です」
手にしたショップの袋をそっと隠して、唯人は瑠璃羽に笑って返す。
冗談で言った一言を真に受けてチョコを準備してくれるらしい先輩に、依鈴からもお返しを。
「…………これ、ください」
しばし悩んで決めたのは可愛いくまのチョコレート。
喜んでくれたらいいな……なんて考えながら、依鈴はふわふわと笑みを零す。
白虎はお世話になっているクラブの皆に。
「お星様をイメージさせるのがいいかなぁ」
沢山入った詰め合わせのチョコレート。ついでに家族と自分の分も確保。
流希は目当ての変り種のチョコレートを何個か買って。
「こうやって見ると、中々に鬼気迫るものがございますねぇ……」
人ごみを掻き分け、何とか広い場所に出た。
「私も異性から頂きたいものですが、無理でしょうねぇ……」
なんて、ふと苦笑を漏らして短く息をつく。
「別にさあ! 普通に買いに行ってもいいと思うんだぜ!? で、でもあの中に一人では……」
「そんなに買いたいなら通販すればいいだろう、ゆっくり画像が見られて人目も気にせず買い物出来て最高だぞ」
「あっ……」
さっさと済ませろオーラ全開のニコに言われて、チラチラ振り返っていたポンパドールの目からは鱗が落ちた。
真理である。
「……な、なんだ? ラスト一個のガトーショコラはやらんぞ」
「えぇっ! 自分も食べたいっすよ!」
直人と雅は、超限定ガトーショコラを大人気なく奪い合った。
「まぁ、今日は付き合わせて悪かったな」
死守しながら、直人は別に買っておいたトリュフを差し出す。
「直人くんになら、いつでも付き合ってあげるっすよ? あーん」
いつもとは違う呼び方で呼んで、雅は口を開いてみせた。
「……は? あーんってお前……」
思いもしない返しに照れつつ、直人は雅の口へ、ぽいっとトリュフをひとつ。
「これなんてどうです? でもでも、これもいいな」
「これも美味しそうじゃないか?」
試食制覇してしまいそうな勢いの由愛の姿が微笑ましくて、葵は選ぶのを手伝ってやりながら目を細める。
「どのチョコが美味しかったです?」
「ああ、このチョコビスケットのやつかな……」
渡したい人がいるという。同じ男目線が参考になれば、と葵は真面目に、でもちょっぴり複雑な気持ちでアドバイス。
「ふふっ、そうですか」
どこか嬉しそうに笑って見上げてくる由愛の想いを、彼はまだ知らない……。
こちらは、わりと気軽に試食を楽しむ一行。
「けいちゃんも食べる? はい、あーん」
「これも美味しそうですよ。はい、あ~ん♪」
巡が優しく、そして桜は何故か真言にだけ、もぎゅりと試食のチョコを押し込んだ。
「いや、詰め込むな……んむ、美味い。こいつも悪くはないが……」
何だかんだ言いながら、真言も持っていた試食を皆に勧めた。
「うん、色々参考になったかな」
今年のバレンタインは手作りを予定している桜。試食を終えて、後は当日のチョコレート作りを頑張ろうと満足そうに笑みを零す。
「チョコ幾つ買おうかな……うん、一杯買おう!」
家族に、仲間達に。指折りチョコをあげる人を数えていた巡は、笑顔で気に入ったチョコレートを買い物カゴへと入れていく。
「俺だって……っ! 買う時には買うんだよ……っ! せんえん!」
そう勇んでガマ口をばばーんと掲げた迦南だったが……。
「ん? おおお……けいお姉ちゃんと一緒の場所で買うとオ・ト・ク☆ なんだね……?」
皆の分の会計も纏めて手っ取り早く済ませてしまおうと代表してレジに並んだけいを、期待に満ちた眼差しで見上げる。
「やれやれ、迦南は相変わらずか」
そんな迦南に、けいは苦笑を漏らした。
チョコレートの買い物もそろそろ終り。
「ああ、チョコレートもいいけれども、別の甘いモノも食べたいなぁ?」
会計の列に並んでいたけいが、くるりと振り返る。
「とてつもなく嫌な予感しかしないんだが!?」
ちらりと覗いた鋭い牙。何だか自分の首筋に視線を向けられている気がして、真言はぶるりと身を震わせた。
●買い食え! 堂々の帰還!
少し外していた雅臣が食べ歩き用に包んだコロッケを持って戻ってくる。
「お待たせしました。さぁて、ここからはデパ地下グルメを攻めますよ!」
「ありがと……あまり立ったまま食べるのは慣れないわねー」
差し出されたそれを受け取って、歌織は小さく笑ってみせた。
甘いお菓子の試食が続いた後のデパ地下グルメは絶品!
「あれーもしかしてスイ子じゃね? よーう」
「二人も今帰り~?」
「斑目か……そういえば先日はまぁ、申し訳なかったな」
酷な予測をさせてしまった、とニコは買ってあったカレーパンをスイ子に袋ごと渡してやる。
「やん、ニコってば紳士……にひっ♪ ありがと。よーし、それじゃとっておきの串焼きのお店、教えたげる」
悪戯っぽく笑って、スイ子はニコとポンパドールを手招きする。
デパ地下グルメは試食も種類もたくさん!
霊犬、きしめんへのお土産をと、やって来たエルメンガルトと小次郎も思わず目移り。
「これもくれるの? おばちゃん優しいねー アリガトアリガト!」
「これすっげーウマい! え? おばちゃん何か言った?」
「え? 彼氏と仲良くねって? うん? うん!!」
「え? ン、ウン!!」
そして、何故か試食のおばちゃんに弄られつつ、いい笑顔。
「さすがに甘いものを食べ過ぎた……」
その反動か、唐揚げやカルパスなんかを買い込んだ結は、家まで走って帰ろうと心に決める。
ポジションはスナイパー。
「今です!」
半額シールが貼られた瞬間を狙って。白虎は見事お寿司のパックを手に入れた!
何でも揃う、デパート地下食品売り場。今日見つけたお気に入りを、明日、想いと一緒に届けよう……!
作者:海あゆめ |
重傷:なし 死亡:なし 闇堕ち:なし |
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種類:
公開:2013年2月13日
難度:簡単
参加:48人
結果:成功!
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得票:格好よかった 0/感動した 1/素敵だった 4/キャラが大事にされていた 12
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