岩内ゼーレオブホッケの開き怪人グーテンモーゲン!

    作者:旅望かなた

    「がつがつがつはふーはふーはふー! くーっ、マジアトカマクリールの開きうめええええ!」
     ホッケの開きがホッケの開きを貪っていた。
     何を言いたいのかと思うかもしれないが実際そうだったので仕方ない。
     ちなみにアトカマクリールはドイツ語でホッケの意だそうである。
     最近増えつつあるオーストラリア人観光客だろうが日本語で道案内しちまうおばちゃんも、あまりにシュールな光景にドン引いていた。
    「あ、ごちそうさまでした。おばちゃん、会計たのんます」
    「……あ、あいよ」
     伝票を受け取ってレジを打ち始めたおばちゃんの前に、積み上がる木箱。
     漂う磯の香り。
    「へ? アンタ、何考えてんだい!?」
     営業妨害の気配を感じとり、一気に言葉を強めるおばちゃん。
    「ふっ、これも全てゲルマンシャーク様が復活させてくれた私の、ホッケへの愛のなせる技……」
     ホッケの開きがオウシュウナラ(ドイツの国樹)を咥えたイケメンっぽいポーズで優雅に告げる。
    「ホッケの開きを喰らい、その報酬としてホッケを与えることで岩内町の経済活性化! 客が増える! 国際空港もできてドイツと直通便で繋がるぞ! 観光客ホイホイ! 彼らにホッケの開きの良さを宣伝することで、結果的に世界はホッケの開きが支配する!」
     世界を支配するまでのプロセスがいつぞやのご当地怪人と一緒――もしやこれは、再生ご当地怪人!
    「馬鹿こくでねぇ! 飛行機の音なんかしたらあずましくねぇべさこのたくらんけ!」
     そんな超常現象にも負けずに平手でレジカウンターをぶっ叩くおばちゃん!
     みんなもなんかこれはよろしくねぇ雰囲気だなってことを伝えたい時は『あずましくない』って言うと北海道気分を味わえるかもしれないぞ!
    「ふはははは我がゲルマニア深謀遠慮を理解できぬおばちゃんは此れでも喰らえ!」
    「きゃう!」
     炸裂するホッケの開き手加減攻撃アタック。
     割と可愛い声を上げて吹っ飛ぶおばちゃん。
    「はーっはっはっはっはっはー! 天下はホッケの為にあるー!」
     かっこつけて去っていくホッケの開き怪人。
     かくしてそこにはおばちゃんとホッケの山が残された。
     
    「そう、復活しちゃったんだよ! 岩内ホッケの開き怪人――改め、岩内ゼーレオブホッケの開き怪人!」
     須藤・まりん(中学生エクスブレイン・dn0003)がびしっと地図にペンを突きつけた。
     ちなみにゼーレってのは魂って意味である。
     ドイツ語ってボールペンですら格好いいからね!
    「えっと……岩内町……」
    「北海道岩内郡岩内町だって。電車ないから、新千歳空港まで飛行機で行って、そこから札幌まで電車で行って、札幌でバスに乗り換えて……2時間くらい?」
     前も言ったけど遠っ。
    「なんでそんなところのご当地怪人復活したんだよ!」
    「ゲルマンシャークさんに聞いてよ!」
     そうか、ゲルマンシャークなら仕方ないな。
     頷く灼滅者達。
    「ともあれ岩内町に現れた岩内ゼーレオブホッケの開き怪人は、まず手始めに美味しい食堂でホッケの開きを食べるそうなので、それまでにみんなにはホッケの開き的な挑発で岩内ゼーレオブホッケの開き怪人を誘き出してちゃちゃっと倒してほしいんだよ!」
     前回とだいたい同じなので説明もざっくりである。
    「たぶん岩内ゼーレオブホッケの開き怪人が出るより7時間くらい前に到着できるから。2回くらい食べれるよね!」
     食堂の割引券を差し出しながら、びし、と親指を立てるまりん。
    「ちなみに美味しいホッケは吊るして干した大き目のやつらしいよ!」
     今回は豆知識つきだ!
    「とりあえずホッケの開きでびたーんとか岩内とドイツは海で繋がってるんだよキックとかアトカマクリールビームとかそんな感じで要するにご当地ヒーローと同じサイキック使うから!」
    「つかアトカマクリールって長いよな!」
    「ちなみに翻訳サイトにかけてみたらちゃんと『ホッケ』って出たのもあるけど、『ホッケ=鯖』って出てきたサイトもあってわけがわからないよ!」
     謎多きかな岩内ゼーレオブホッケの開き怪人!
    「この前お土産にみんなが買ってきてくれたホッケ、ものすごく美味しかった……あ、大丈夫、みんななら勝てるから! ね!」
     ぐっとガッツポーズと共に北海道の乗換案内を押し付けて、まりんは灼滅者達を送り出した。


    参加者
    卯道・楼沙(脱兎之勢・d01194)
    乾・舞夢(スターダストガール・d01269)
    八幡・朔花(翔けるプロレタリアート・d01449)
    黒木・摩那(昏黒の悪夢・d04566)
    笹銀・鐐(赫月ノ銀嶺・d04707)
    雨積・熾(白馬の王子様・d06187)
    シュテラ・クリューガー(星の淵源・d09156)
    白山・痲亜(サイレンスエッジ・d11334)

    ■リプレイ

     あらすじ!
    「沖縄までゾンビを倒しに行って来たと思ったら今度は岩内でホッケの開き怪人だと?」
     ちなみにそのちょっと前にはやっぱり北海道でイフリート退治してきた雨積・熾(白馬の王子様・d06187)である。
    「前にも同じようなこと言った気もするが……まあいいか!」
    「ホッケ怪人っているのね」
     黒木・摩那(昏黒の悪夢・d04566)がちょっと興味深げに呟く。
    「しかもドイツ風味に復活してるし。すごいわ」
     ドイツにもバルト海や北海にホッケっているのかしら、と摩那が首を傾げる。
    「ホッケ……あまり食べたことがないのでな、正直詳しいことはわからないのだ」
     卯道・楼沙(脱兎之勢・d01194)が首を傾げるたびに、ウサミミ帽子がぴこぴこ。
    「あ、あとかまかま……ほっけのことをしらべてみたっ!」
     びし、と乾・舞夢(スターダストガール・d01269)が学習発表会の顔でメモ帳を広げる。
    「アトカ島の鯖って意味なんだって! 変なの! 北海道なのにっ!」
     元々の漁場から来てるらしいよ!
    「……ホッケ料理食べるの楽しみ。……怪人が持ってるホッケがあったらもっとホッケ料理が食べられる?」
     白山・痲亜(サイレンスエッジ・d11334)が無表情にちょっと物騒なことを呟いて目をきらきら。
    「……ホッケの怪人だし、頭もホッケの形、食べたらホッケの開きの味がしたりしない……よね」
     段々上がる物騒度。
    「食べてから、どんな食べ物だったかをしっかりと記憶したいのだ!」
     仲間達の言葉でとっても楽しみになった楼沙が、ウサミミ帽子をぴこんとさせて大きく頷く。
    「今日は目一杯ホッケの開きを堪能するぜ!」
    「え?」
    「え? 今回も観光旅行でしょ?」
     舞夢が熾に続けてさらに真顔で振り向いて言い放ってから、わくわくきらきらの顔になって。
    「夏目漱石関係は前行ったしなー、ほっけまんを退治した後の観光はどこ行こうかなー、やっぱり温泉かなっ!」
     ちなみにまりんへのお土産も忘れてないよ!
    「たらこ、にしんのおかげ、温泉……もちろんほっけもねっ!」
    「ああ悪ぃ悪ぃ、ホッケの開き怪人もついでに相手してやるよ!」
     メインの目的とお遊び要素が見事に入れ替わった瞬間であった。

     とういわけでホッケの開きが美味しいおばちゃんのお店にて。
    「超美味い!」
     熾の第一声はそれであった。
     いろいろ考えて、何かいいこと言おうと考え抜いて、でもやっぱり超美味い。
    「まずは誘き出し、だな。定番のホッケの開きに大根おろしから……」
     笹銀・鐐(赫月ノ銀嶺・d04707)が目的を忘れていないアピールをしつつ、嬉しそうにホッケの開きをほぐして大根おろしを乗せる。
    「九州や学園近くで食べたホッケ料理も美味しかったけど、北国のは脂が乗ってて旨いな!」
     その隣で八幡・朔花(翔けるプロレタリアート・d01449)も、既に箸が止まらない様子。
    「すげー! 身が厚い! ……何これうまっ! 白身がほっくほく! そのくせ骨周りはカリカリ!」
    「帰って来たぞ北海道! 帰って来たぞほっけー! うーまーいーぞー!」
     シュテラ・クリューガー(星の淵源・d09156)の独白と舞夢がすごいテンションでホッケを頬張りまくる。ほぐす、乗せる、食べる、もはや一つの演舞の如き箸捌き。
    「美味しいのだ……じゅーしーで旨味が利いてるのだ……がつがつ食べちゃいたいのだ……」
     楼沙が太らないようにちびちびと、でも美味しそうにホッケを口に運ぶ。
     太らないか、と危惧する理由はもう一つ。
    「ホッケはおいしいよね。脂がのってて、身はふわふわだし。しかも食べる時にもバラしやすいし。私は好きよ」
     でもね。
     そう言って、摩那はじっとホッケの開きと睨み合う。
    「ただひとつ問題があるのは、この大きさよね。ひとりじゃ食べきれないのよ。大き過ぎるのも考え物ね」
     アメリカンサイズ? と既にちょっと持て余し気味のホッケ(大きい)をつついて。
     美味しいのは確かなのだけれど――確かに、北海道のホッケの開きは大きいのだ。
    「そんな大きなホッケをお店とはいえ、代金代わりに押し付けるなんて、ホッケ怪人はなんてひどいんでしょう」
    「?」
     摩那の前のホッケがなかなか減らない中、すでに痲亜がぺろりと完食。
    「味噌塗って焼いた奴とかご飯が進んで仕方なかったがこれも美味い。俺此処に住んで一生ホッケ食べて暮らしてもいい気がしてきた」
     愛が溢れて止まらねぇ、と朔花が幸せそうに二枚目を注文する。当然のようにもう一枚、と手を挙げる痲亜。さらに味噌漬けを注文する鐐に、熾もそれもう一枚と嬉しそうに。
     ところで朔花はここに住んで一生ホッケ食べてたら、岩内町のご当地ヒーローに魂が改竄されてしまいそうだが大丈夫なのだろうか。
    「そう、これは必要な行為であり経費なのだ。味噌漬けにネギぽん、それぞれ縞ホッケと真ホッケも食べ比べねば……」
     鐐が大きく深呼吸し、箸をぐっと握り直す。
    「くっ、これは大変だぞ」
     主にお腹の容量的な意味で、と戦意を固める鐐。
     そしてシュテラのボルテージは上がり続けている!
    「はー、この脂ノリたまらん。しかし脂っこいしつこさはなく、すっきりした味わい……箸が進むのなんのって」
     お茶を飲んで、一息。そして注文する二枚目。
    「俺よりホッケ愛してるやつがいるなら見てみたいさね」
    「――ほう」
     振り向けば、ホッケの開き頭の男――まりん言うところのゼーレオブホッケの開き怪人がゆっくりとのれんをくぐるところだった。
    「どこかで見たような君はほっけまんっ!」
    「ゼーレオブホッケの開き怪人と呼べ! 私はゲルマンシャーク様のお力によって生まれ変わっ」
    「ここであったが百年目! キタノホッケとマホッケの違いをのべよっ! むしろ食べ比べをさせよっ!」
     完全にゼーレオブホッケの開き怪人を自分のペースに飲み込む舞夢。
     舞夢さんまだ食べるんですか!
    「貴様の言うホッケにはアラベスクグリーンリングは含まないのか!」
     さらに挑発を重ねる鐐。
    「ほう――」
     そしてきっちり巻き込まれるゼーレオブホッケの開き怪人。
     懐から取り出す二枚のホッケの開き。
    「おばちゃん、こちらのアトカマクリールとアラベスクグリーンリングを両方焼いて、別々の皿に入れて持ってきてはもらえないだろうか」
    「え、うちは持込みは……」
    「ホッケを焼かせたら第一人者というおばちゃんの腕を買ってお願いしているのだ――あぁ、そういえば岩内商店街のポイントが満タンまで溜まって景品に引き換えできるポイントカードが落ちていたんだが、おばちゃんのでは」
    「あいよ、そこに置いときな!」
     おばちゃんが買収された!
     そして十数分の後出てきたのは、ほかほかの二枚の焼きホッケである。
    「熱いうちに食べたまえ。この青い皿がアトカマクリール、赤い皿がアラベスクグリーンリングだ」
    「……赤い皿の方が、ややさっぱりした味わい……」
    「青い皿の方は、濃厚な脂がしつこくなく、けれど舌に絡みつく!」
    「マズくない! けっしてマズくないぞ!」
     まずくないどころか明らかに美味しいリアクションで反応するシュテラであった。
    「――そう」
     もはやグルメ漫画のノリである。
    「アトカマクリールはアラベスクグリーンリングに比べ、水深の深い場所に生息するため、水温の関係上脂が多い。だが、両方とも美味いのは事実!」
    「なら日本語で言え! 和の文化の至高だろうが!」
     睨み合うゼーレオブホッケの開き怪人と鐐。
     す、と親指が入り口を指す。
    「表に、出ようか」
    「ああ……あ、ちょっと待ってくれ」
     立ち上がろうとしてから、急いでテーブルを囲み直す一同。
    「開きの焼き物は皮をわざと残して脂を溜め、ご飯を落とすのだ! 先に皮まで食うなど言語道断!」
     容赦なくご飯を乗せる鐐!
    「たまらんちん話つー! あえて皮をやぶかずにほぐしたホッケ、しょーゆをたらして混ぜて、皮ごとご飯ON!」
     そして上からあっついお茶をじゃばばー!
    「てれーってー! しあわせっ!」
     非常に幸せそうな顔でホッケの開きほぐし茶漬けを頬張る舞夢。
     というわけで、ホッケ達は皮まで当然灼滅者達がおいしく頂きました。

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     楼沙の手の中に天星弓が、身体にオーラが宿る。
    「ほっけぱわー充填したので、がんがんいくよ!」
     舞夢が岩内パワー満々で飛び出した!
     しかしご当地ヒーローじゃなくて魔法使いなんだぞ!
     お腹いっぱいまで頑張った摩那が、ふぅと満腹の溜息をついてから、ホッケばらしちゃるーとばかりに槍を構えて後に続く。痲亜がガンナイフを手の中でくるりと回しさらに飛び込む。
     元製鉄の街の意地をビームに乗せて朔花が解き放ちmゼーレオブホッケの開き怪人の注意を惹き付ける。「八幡か」とゼーレオブホッケの開き怪人が興味深そうにビームを返し。
    「ちなみに味噌漬け焼きが至高だ。異論は認める」
    「ふむ、食べ方は好きにするのが一番だ。アトカマクリールもアラベスクグリーンリングも劣化が早いからな」
     バベルの鎖を瞳に宿しヴァンパイアの力を深紅の霧に乗せた鐐の言葉にあっさりと頷くゼーレオブホッケの開き怪人。ホッケさえ讃えていれば意外と理解があるのかもしれない。
     シュテラが素早くリングスラッシャーを閃かせ、シールドリングを作り出して仲間達の元に飛ばす。
    「皆に続くのだ……って、あうっ!?」
     おおっと楼沙が走り出そうとして躓いて素っ転んだ!
     そう、冬の北海道ではアスファルトが黒く露出している場所を走ると、実は凍っていてすっ転ぶという必殺『ブラックアイスバーン』が発動するのだ!
    「まずはその服、開きにさせてもらうぜ」
     脚を凶器と為し、ゼーレオブホッケの開き怪人の守りを一気に朔花が引き裂いて。
     かぷ、と死角に回った痲亜の辺りから控えめな音がして――「生」と一言呟いた。
    「か、かかかかじるな! 食べるな!」
    「……なら、わたしたちにそのホッケを渡して苦しまずに灼滅されるか、渡さないで苦しみながら灼滅されるか、好きな方を選んで」
    「どちらも灼滅ではないか!」
     もちろん、と痲亜は今度はしっかりガンナイフで切りかかる。
     ふ、とシュテラが、静かに息を吐いて。
    「Atkamakreleを食べる時はね、誰にも邪魔されず自由で、なんというか救われてなきゃあダメなんだ。独りで静かで豊かで……」
     制約の弾丸が、素早く飛び出す。孤独に美食を追及する男の顔で、シュテラは静かにその弾道を見守った。
     シュテラさん中一女子だけど。
     楼沙がこけた膝の痛みをトラウマに還元し、べちべちとゼーレオブホッケの開き怪人をぶちのめす。舞夢がさらにみぞおちに向けてフォースブレイクをぶっ放す。
     走った拍子に滑って通り過ぎそうになった朔花が、地を蹴ってジャンプ、ダブルジャンプ。そのままゼーレオブホッケの開き怪人の首筋を狙って蹴りつける!
    「本当に好きなら力に頼らずご当地品を広めろよ。それで周りに小さな幸せをお裾分けするのがご当地愛だろうが!」
    「ならばこの大量のホッケの開きをお裾分けして何が悪い!」
    「代金を払え!」
     飛び交うビーム。キック。ホッケの開き。
     ずる、と滑ったシュテラが、「岩内を舐めてたか」と呟いて体勢を立て直す。清めの風を呼び起こし、仲間達を癒していく。
    「だいたいホッケは大き過ぎます。まだホッケの大きさを舐めていた頃に、2枚も頼んだら、テーブルを占拠されて大変なことに!」
     その時は人数もいたからなんとかなったのだけれど――と、摩那は恨みを込めて一気に槍を捻り突く。
    「あれは一人じゃ無理。食べたら、他の魚が食べられなくなっちゃうし……北海道なら、ウニにイクラ、それにカニも食べたいし。厚岸のカキ、釧路のサンマ、メンメもおいしいのよ……どうかした?」
    「摩那さん量を食べないだけで結構食いしん坊だよね!」
    「美味しいものは好きよ?」
     絶望的な辛党だけどマイ唐辛子掛ける物は選んでる、と思うよ?
    「……いいなぁ」
     美味しそう、と呟いて、痲亜がすらりと影を閃かせ、ゼーレオブホッケの開き怪人を縛り上げる。
    「ふ、だがアトカマクリール以上に庶民的で美味い魚は……」
    「ホッケだけでも、世界にはお前も知らない沢山の美味しいホッケ達が存在している」
     熾が盾を広げ、一気にホッケの開きへと突撃する。滑って転びそうになったけどシールドバッシュだから体ごとぶつかっても大丈夫!
    「ここで満足してるようじゃホッケをマスターしてるとは言えんな。まだ見ぬホッケに会いたいならオレ達を倒して先へ進め!」
     叫びながら熾が突撃する横で、楼沙が「あーれーなのだー」と滑って行った。帽子は押さえているから脱げてない大丈夫。
    「その曲がった根性、叩き直してやるさね」
     バトルオーラを全力で集め傷を癒してから、朔花は一気に距離を詰めて。
    「俺に流れるのは曲がらない『鉄の意志』だ。そう簡単に俺の意志を曲げられると思うなよ!」
     懐に飛び込む。鋭い蹴りが、守りを引き裂いていく。
    「ホッケだけでお腹を占領されるのは許せないわ」
     摩那の言葉に、ゼーレオブホッケの開き怪人は「ほう」と目を細めて。
    「しかし、アトカマクリール、アラベスクグリーンリング、新鮮なフライにもちゃんちゃん焼きにもシンプルな焼き魚にもできて家庭料理も含めてバリエーションは豊富ぅっ!?」
     ざっくりと、ホッケの開きを正確に両断する刃。
    「……ホッケの開きに拘りがあるわけじゃない、美味しい料理なら何でもいい」
     痲亜さん身も蓋もない!
    「ホッケは美味いよな……貴様が愛するのもよく分かる」
     鐐が大きく息を吸い、吐き、指輪をびしりと突きつける。
    「だが、貴様は愛し方を間違えた! 俺が倒れない、それがその証拠だ!」
     紅蓮の輝きが指輪に宿り、全力のグーパンチが炸裂する。
    「オレ達を倒せないようではホッケを語る資格などない!」
     怪人の攻撃を受けながら、熾はソーサルガーターを展開し守りを固める。
     クリエイトファイアでこっそり足元の雪を溶かしてるのは秘密だ!
    「ホッケの美味しさはオレ達が受け継ぐから安心して眠れ!」
    「高炉の様に燃える俺の心の熱、受けてみな!」
     そして熾の居合斬りと朔花のキックが――ゼーレオブホッケの開き怪人を吹き飛ばす!
    「ゲルマンシャーク様……そして全てのホッケの開き、アトカマクリールもアラベスクグリーンリングも全て全て、そして強敵に――万歳!」
     吹き飛んだゼーレオブホッケの開き怪人の体が、思いっきり爆発して。
     後に残ったのは――大量の、ホッケ。
    「安心しろ、貴様の遺したホッケは皆で美味しく頂いてやる。それが俺に出来るせめてもの手向けだ……」
     そしてついでに、灼滅者達はゼーレオブホッケの開き怪人の分も支払いを済ませるのであった。

     そして当然のように灼滅者達は、たっぷり観光と北海道の海鮮を楽しんで、まりんへのお土産を確保して――冬の北海道を、後にしたのだった。

    作者:旅望かなた 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2013年2月12日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 12
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