バレンタインデー~RB団と血のバレンタイン!

    作者:相原あきと

     彼らに統率者は無く、全てが同志だった。
     彼らは自然発生し、気がつくと自然へと帰って行く。
     メンバーに誰がいるかは不明、どう連絡を取り合っているかも不明。
     しかし、彼らはリア充が発生するタイミングで確実に自然発生する。
     ある者は覆面を、ある者は三角頭巾を、ある者は素顔で……。
     彼らの名は――RB団。

     2月に入り吹き荒ぶ風も身を切る冷たさだが、彼らは寒さに屈しない。
     屋上に炬燵を設置し、ぼちぼち集まって来ていたRB団は会議中だ。
    「我らがアルマゲドン(作注:クリスマスの事)は失敗に終わった……」
    「ああ、魔人生徒会が動かないと思ったら義勇軍とか出てきたしな」
     ちなみに炬燵には入れる限界人数がある為、RB団同士で場外乱闘が発生しているが、まぁそれはそれで放っておく。
    「だが落ち込んでもいられない! 2月14日が来るからだ!」
     2月14日、バレンタインデー。
     RB団にとっては不倶戴天のリア充達が、我がもの顔で跳梁跋扈する日。
    「だが、このままではクリスマスの二の舞だぞ?」
    「ふっ、だから今回は14日に動かず前日に動く」
    「ど、どういうことだ!?」
     RB団達がどよめく。
    「逆転ホームラン。つまり14日を迎えさせなければ良いんだ」
     ざわ……ざわ……。
     作戦の詳細を詰めると、学園内の潜在的メンバーも解るように噂を広める役割の者達が散って行く。
     残った者達はみかんを仲良く分けて食べきると。
    「ゴクン……我らの目的はただ一つ!」
    「リア充撲滅! リア充撲滅!」
    「奴らに14日を迎えさせるな!」
    「我らが求めるのは、そう――」
    『血のバレンタインなり!!!』


    ■リプレイ

    ●家庭科室
    「私のチョコじゃ……駄目、ですか?」
     ときめき展開でRB団員にデスソース等の入ったチョコを渡したのは穂都伽菫。
     食べたRB団は美少女から貰えて幸せそうに逝った。
     家庭科室を占拠したRB団に死劇物を渡す者は何人かいた。
    「べ、別にあんた達の為に作ったわけじゃないんだからねっ!」
     ツンデレじゃー!
     と喜ぶRB団が秋野紅葉からご当地産レモンたっぷりチョコを受けこちらも死亡。
     ともすれば若生めぐみのように、危険物を作る団員を説得する者もいた。
     まぁ、めぐみが渡したハート型チョコの方が効果は絶大だったが……。
     ちなみに友チョコです。
     家庭科室では毒々しく危険臭を発するチョコが次々に生み出されていく。
     そんな中普通にチョコを作る者もいる。
    「人にあげるぐらいなら、自分で食べちゃうっすよ!」
     作ったそばから食べまくるのは大食いな宮守優子だ。
     明らかにRB団の趣旨と違うが……まぁ、幸せそうだしいっか。
    「いっぱいあるから好きに使って」
     因幡亜理栖が自分用以外にハバネロを入れた材料を配ると即座に空に。
     みんな悪戯さん達だなぁと亜理栖はマイペースだが結構黒幕チックだ。
    「ここってRB団なの!?」
     迷い込んだ梅干田春秋が黒煙と異臭放つチョコを作りつつ驚愕する。
    「やるな同士よ」
     ようこそRB団へ。
    「って、僕は違っ」
     間違われました。
     目的が料理にすげ変わる者もいた。
     三段重ねのダークチョコケーキにはピンクチョコのバラ細工が咲く。
    『すげー』
     普・通の職人技に、RB団の皆も口をあんぐり。
     作った通が女の子っぽいのもポイント高し!
     職人チョコもあれば、まずいチョコももちろんある。
     ンーバルバパヤ・モチモチムールの作ったベジマイトチョコを食べたRB団は、即戦力だと彼女を絶賛。
     ちなみに某国に怒られても責任は取りません。
     ベジマイトウマイヨ?
      相方の惚れ薬をこっそり拝借しつつ歪なチョコを量産しているのはギルアート・アークスだ。
     相方の虹野ヒカリの方はと横を見ると目が合った。
    「なあアークス……何だかドキドキする……」
    「は?」
    「す、好き……」
    「な、ちょ、ちょっと待て!?」
    「ふざけてなんか、ないから……」
     火照った顔を近づけてくるヒカリ。
     その時だった。
     家庭科室の窓が一斉に砕け散ったのは。

    「S、配置完了、待機します」
    「こちら弥生。いつでもカチこめるでー」
     RB団に占拠された家庭科室を双眼鏡で監視しつつ、【戦戦研】の志願兵達からの連絡を受けるのは鹿島狭霧だ。
    「ネーベル・アインより各員へ、これより状況を開始する。開始5秒前……3、2、1、突入、突入、突入!」
     狭霧の合図に家庭科室の窓際のRB団を狙撃したのはアリ・ナッサムだ。
     最近動く的を撃って無かったし……違う、他の人に迷惑かけるのはいけないから、という理由での狙撃だ。
    「狙撃されたぞ!?」
    「ここもこれまでか、完成品を持って撤退するぞ!」
     家庭科室内のRB団が各自完成品を手にしドアへと向かおうとし――。
     ボンッ!
     ボボボボンッ!!
     手にした毒チョコが爆発を起こし倒れる団員達。
     家庭科室に潜入し危ないチョコに爆弾を仕掛けた灯屋フォルケがにやりと笑う。
    「敵しゅー! リア充が! リア充が攻めてきたぞー!」
     混乱の中叫ぶのは鰯豆チョコを作っていた天城兎だ。
    「わはははー、御用改メやでー! ムダな抵抗はせんと大人しく縄につかんかコラー!」
     天上から現れ十手でRB団をしばきまくる剣崎弥生を避けるように、兎は後ろのドアから脱兎のごとく!
     だが、廊下に出た所で立ちふさがったのは嵯神松庵だ。
    「ちっ、俺達の努力の結晶を喰らえー!」
     突貫する兎、だがふわっと交差した瞬間、兎は松庵に投げられ仰向けになっていた。
     さらに兎の口に鰯豆チョコを詰める。
    「自分のチョコを食べる、虚しいだろ?」

    「義勇軍だ! 各自両手を挙げろ!」
     混乱した家庭科室に白ラン姿で入ってきたのは如月昴人だ。
     本音をそっとしまった昴人に妥協は無く、次々にRB団製チョコを回収していく。
    「待て、この部屋には俺達RB団の方が多い」
    「そ、そうか、それなら……」
     キラーンッ、逆襲の光がRB団の瞳に灯る。

     一方、家庭科室を脱出した園観遥香は義勇軍に倒され……。
    「やられちゃいましたー。家庭科室の皆さんご無事でしょうかー」
     棒読みで仲間の居場所を吐露していた。
     死なばもろともなのですよ?

     家庭科室内の戦いは一時人数で勝ったRB団が優勢だったが、次々になぜか駆けつけてくる義勇軍にじょじょに劣勢となっていた。
    「RB団内部に裏切り者がいる、せめてそいつだけでも……」
     戦いに乗じて桐谷結が流した噂にRB団達が乗ったのは、追い詰められていた故だろう。
     彼らの視線がある1組の男女に注がれる。
     それは――。

    「やはり戦争(クリーク)となりましたか!」
     劣勢の中、リア充っぽい義勇軍を選んで笑い茸チョコを口に押し込み、次々に撃破していくのは霈町刑一だ。
     刑一に近づく事すらできない義勇軍、だが刑一は突如羽交い締めにあう。
     RB団だった。
    「なぜ!?」
    「横の子、彼女?」
    「クロエは相棒ですよ。ね?」
     クロエは答えない。
    「いや、相棒ですって! ね?」
     返事は無い。
    「くっ」
     さらに窓からRB団スレイヤーが乱入!
    「ドーモ、這寄る叢雲デス」
    「ええい、毎度邪魔を!」
     黒咬昴の登場に数人のRB団が排除へ向かうが無策の昴ではない。
    「丞!」
     割って入って来たのは藤堂丞だ。
    「やーっておしまい!」
     昴の掛け声に「その言い方はお仕置きが嫌なんだがっ」と非難しつつもRB団をBC兵器で迎え撃つ。
     ドロンッ!
     一瞬の混乱、その隙に煙玉で刑一が脱出。
     しかし。
    「必殺! すばるんジャスティマグナム!」
     射線上のRB団を薙ぎ払い、その弾丸はサバト服を壁にめり込ませたのだった。
     逃亡を図るのは何も刑一ばかりではない。
    「ひ、一目惚れしました……これ、受け取ってください!」
     シェリー・プラネットにチョコを差し出された義勇軍の男は、おずおずと受け取ってしまう。
     その隙に逃亡するシェリー。
     だが、廊下に出たところで少年とごっつんこ。
     少年――竹尾登が大量に抱えていたチョコが散らばる。
    「ごめん、でも見て! 訓練通りいっぱいチョコ見つけたんだぜ!」
     笑顔の登。
     しかし、その後ろから登を追ってきたのか大量の義勇軍がやってきていた。
     少し後、家庭科室は完全に制圧されたのだった。

    ●ハンティング
     バレンタイン当日に毒チョコをばら撒く作戦に出る者もいれば、いつも通り実力行使に出る者もいる。
     【ちょーほー部】などその典型だろう。
    「お待たせ~」
     アベックに話しかけるのは素破隼。
     完璧な女装で女性になりきった身長180.5の隼に声をかけられ彼氏がキョドる。
    「わら、僕という男がいながら女に走るとは」
     さらにスーツ眼鏡の口髭紳士……に男装したシルビア・ブギが声をかけ。
    「え゛、両刀で浮気?」
     彼女が完全に引いていた。内心ガッツポーズ。
     そんな修羅場に登場したストレリチア・ミセリコルデは大混乱。
    「ちょーほー部は清く正しい部であったはず……」
     ちなみに面白い部だと言うのが筆者の認識です。
    「お待ちなさい、彼に相応しいのは私よ」
    「と、都市伝説ーっ!?」
     口裂け女に女装した穂照海の姿にストレリチアが大絶叫。
     髭紳士が口裂け女などなどと彼氏の取り合うカオス空間。
    「信じてたのに……」
     さらに第四の使者、アイスバーン・サマータイムまでドレス姿で乱入。
     泥棒猫めと紳士が南瓜チョコを投げて命中、口裂け女は全裸で逃走、なんやかんやあってアイスバーンはゴミ箱に頭から突っ込み……結局、ストレリチアが冷静になり義勇軍を呼ぶまでカオス空間は続いたのだった。

    「ボラボラボラボラ……ボラーレ・ヴィーア!」
     吹っ飛ぶモブRB団。
    「そのリア充狩り、止まらないなら撃っちゃうよ?」
     ノイジーキッドに乗りパトロールを行う骸衞摩那斗。
     倒れたRB団を前に、笛を吹いて合図を送った義勇軍の凪誠と拳を突き出し健闘を讃えあう。
     正直、リア充もRB団もどうでも良かった誠だが、こういう感じも悪くない。
     2人と同じくRB団の鎮圧に乗り出していた鴻上巧は、現行犯を確認するとギターをかき鳴らして注目を集め。
    「人の恋路の邪魔をする、わりぃ子はいねぇかぁ!」
     巨大な剣の一振りに吹っ飛ぶモブRB団達。
    「この人達にはもはや実力行使しかないんですよね……悲しいです」
     まだ立ち上がるRB団に鋼糸が巻き付きボンレスハムと化す。
    「まだ邪魔をするならもう少しきつめに縛っちゃいますからね?」
     義理チョコを渡しつつ緋島霞が言えば、変な性癖に目覚めそうになるRB団だった。

    「我らを嘲笑っているであろうリア充共に天罰を!」
    『リア充撲殺! リア充爆発!』
    「行くぞ、同志たちよ!」
    『おー!』
     ナイト・リッターの掛け声と共にRB団が散開。
     だが、そんな無法を義勇軍が許すはずもなく。
    「不埒なRB団、このキュア☆プレッシャーが成敗してくれますわ!」
     コスチュームに赤い仮面の阿剛桜花に吹っ飛ばされ。
    「恋仲達の邪魔をする方々は許せません……恋仲になるまでの苦労を知りなさい」
     と、神乃夜柚羽が鋼糸で縛り十字にふっ飛ばし。
     さらに片倉光影が天誅と書かれた巨大ハリセンで叩きのめす。
    「な、なぜ……」
    「あたりまえだ。迷惑行為を許すわけにはいかない」
     ハリセン片手にキメる光影。
    「まさか女の子から貰ったチョコを粗末にはしませんよね?」
     捕まえたRB団にカカオ99%を詰め、吐き出さぬようガムテで口を封印するのは高倉光。もはや拷問である。
     拷問と言えば盾神織緒だ。
     チョコで満たされた巨大大釜へ、ロープでRB団を放りこむ。
    「大丈夫、バベルがあるから死にはしないさ」
     そう言う笑顔は悪鬼に見えたと言う。
    「まだ引き返せるぞ? チョコを受け取り普通人として生きるか突っぱねて非リア充として生きるか選べ!」
     選択を迫るは柳生矩子。
     もちろんRB団はチョコを貰いました。
     ちなみにRB団のハートを天然に盗みまくったのは榊原智だ。
    「あ、あの、これ……受け取って下さい!」
     去っていく智の背に、恋するRB団急増中。
     そんな同志を嫉妬する者もおり、チョコを配る綿津海珊瑚を発見すればちゃっかりGET。
     ただし相手は小1、外見は少年だが少女なのでセーフ。
    「ゲフーっ」
     ちなみにチョコは激マズでした。
    「ふふ……爆発好きのあなた達にはお似合いの姿ね」
     死屍累々転がるRB団達。
     それは荻田愛流が配った爆発するチョコのせいだった。
     というかもうチョコでなく爆弾じゃね?

     義勇軍が猛威をふるう中、RB団も負けてはいない。
    「ハッピー・バラバラにしたイン」
     リア充っぽい男の顔面に溶けたチョコをぶつけ逃走するのは西音寺響。
     彼女を待っている男に「キミの彼女からのチョコさ!」と、爆発するチョコを渡してリア充を倒すは夏炉崎六玖。
    「あーでも残念! 無くなっちゃったね!」
     風真和弥に至っては何股もしている腐れ外道を目撃し。
    「ふんっ」
     と、非モテ系の嫉妬は醜いと鼻で笑われ。
    「お前のような外道と一緒にするな!」
     ぶん殴る(RB団大盛況)。
     各自、RB団はゲリラ戦へと移っていた。
     しかし、単独行動は見つかった場合に地獄を見る。
    「あら? 悪い計画はもっと静かにやらないと駄目よ?」
    「縛る、縛る。そして、思い切り、暴れる」
     RB団を鋼糸で転がすのはナイン・ドンケルハイトとただ暴れたかった小谷リンだ。
    「男じゃなくなっても問題ないわよね?」
     青ざめるRB団。
     2人の歩いた後には素巻きRB団が残る。
    「モテない者同士、ここで憂さを晴らしましょうよ」
     実力より言葉を尽くす者もいる、紅羽流希だ。
    「お前Xmasの!?」
     再会。
     流希はRB団と肩を組んで語り合った。
     実力でも言葉でも無く、ぎゅむっとRB団に抱きつくのは神座澪。
    「捕まえたえ♪ おイタはアカンえ?」
     骨抜きのRB団、マラソン宜しく後で同志から制裁を受けました。
     羨ましいぜ、と澪のような子を探すRB団。
    「……話が、あるの」
     目が合った和服美人は顔を赤らめ路地裏へと誘ってくる。
     うひょ♪ とついて行けば義勇軍の溜まり場で……捕縛。
     だがそんな地獄にも女神はいた。
    「どうぞ?」
     笑顔でチョコを配るのは月宮昭乃。
     RB団達に崇められました。
     ちなみに和服美人は彩瑠さくらえ、男である。
     そう言えばこの主従も忘れてはならない。
    「仕方がございませんわね。今回は特別に手作りのを差し上げますわ」
     ぼこぼこにしたRB団を前にミルフィ・ラヴィットが言う。
    「ミルフィも渡すんですか!?」
     ミルフィの言葉に驚くアリス・クインハート。
    「アリスたん!……うまいっ♪」
    「ミルフィたん!……ぐはぁ(血」
     片方は地獄へ。
    「リア充が迎えて良いのは血のバレンタインだけだ!」
     モブRB団達と狩りに勤しむは相良太一。
     と、そこにワルゼー・マシュヴァンテと赤松鶉が合流。
    「こちらはリア充連中の鞄や机、あらゆる場所に激辛チョコを忍ばせたぞ」
    「私は先程、アベックが男だけになった時に3層式(中段にカラシ)のを渡してきましたの♪」
     健闘を讃えあう3人+モブ達。
     だが、取り囲むように義勇軍の一団が現れる。
    「お、お前は!?」
     義勇軍の中から1人が進み出る。
    「友よ、君達はなぜ、悪魔に魂を売ったのか!」
     リューネ・フェヴリエだった。
     バチバチと火花を散らす両軍。
    「俺は一人じゃない……」
     ネームドキャラの多さに気を良くした太一が言う。
    「俺達の――」
    『ひゃっはー!』
    「え、お前らがぶった切るの!?」
     3人は結構頑張りました。

    「リア充を爆発させるよりオレと遊んでくれよ!」
    「それじゃあ一丁手合わせ願おうか?」
     繰り出された槍の穂先が武骨なジャケットの端を貫き、同時にオーラを纏った拳が槍をレールに滑り込むように叩きこまれた。
     槍持つディーン・ブラフォードが同じRB団所属の村井昌利の所まで下がり、拳を繰り出した神代煉がジャケットを整えれば、同じ義勇軍の西原榮太郎が並ぶ。
     マジバトルタッグマッチ。
    「急に闘いたくなったので……参加して正解でした」
     榮太郎の言葉に「まったくだ」と煉が同意する。
    「そちらが本気で来るのなら、こっちも本気で戦うっすよ」
     昌利がバンテージを巻いた両拳を打ち言うと、ディーンが「そういうイベントだろ?」と嬉々として返す。
     ガチの2対2、その均衡を崩したのはフード付きローブに光のサーベルを構えたフォースを感じし者……いや、ユキ・タティーラだ。
    「これが戦場……初陣、頑張らないと」
     昌利が冷静にユキを狙うが、即座にバックステップ。避けた大地を弾丸が抉る。
     ユキとインカムで繋がり連携するのは、屋上のベル・リッチモンドだ。
    「ロシアを思い出す。あれは酷い戦場だった……」
     瞬後、ベルは気配を察して屋上を転がる。
     バシュッ!
     ビームによる狙撃だった。
    「クリスマスのご馳走の借り分、今回は協力してやるぜ」
     狙撃してきたのは彩風凪紗。優雅に紅茶を飲みながらの参戦だ。
     だが、パキっと紅茶のカップが砕け、次いで机や椅子に弾丸が降り注ぐ。
     別の屋上に2人の影。
    「まずは警告なのです……次はヘッドショット狙います」
    「顔面はまずくないか?」
    「峰打ちしますし、大丈夫なのです……」
     病葉眠兎と影宮咢、両人とも義勇軍のスナイパーだ。
     眠兎の言葉にストレス解消の、いや平和の為だと納得し再度構える。
    「影宮咢、狙い撃つぜっ」

     バトルを避け社会的にリア充に報復しようと活動するRB団もいた。
    「千里の道も一歩から! 贈るものがなければバレンタインは成立しないってスンポーよぉ」
     マネーギャザを使い小金を集めつつ即座にチョコを買い占めるのは葉月十三だ。
     また同じように、しかしあらゆるコネと財力を行使して買占めたのは銃沢翼冷。
    「後でクラブに持って行きましょう」
     一方、財力ではなく純然たる労力を消費して頑張るのは幌月藺生と黒木摩那だ。
     藺生は学校中に『バレンタイン終了のお知らせ』と描かれたビラを貼って周り、摩那はカレンダーや黒板にある『14日』を上書きしたり削除して周る。
     ちなみに教室の数は、キャンパス数×9組×学年×小中高、もの数があるが……きっと彼女達は労力を惜しまないだろう。頑張れ!

     アスファルトすら根性で掘り、かまくらの中に落とし穴を作った待宵露香は、その穴から逆に出られなくなっていた。
     リア充を嵌める新トラップ、意外な盲点だった。
     そして露香は二度目の冬眠に入った。


     【正義の味方部】の部長、清浄院謳歌と仲間2人がリア充を襲っていた角刈りRB団3人の前に立ちふさがる。
    「邪魔するな! リア充が妬ましくないのか!?」
    「確かに……羨ましい! や、わかっちゃダメなのか……?」
    「え、同志?」
     樫尾織子の言葉に仲間意識が芽生えるRB団達。
     しかし――。
    「スマンが俺のチョコのため……犠牲になってくれ」
     木崎シンの覚悟と共に懲らしめられる角刈り3人。
    「もう悪い事はしちゃ駄目だよ?」
     謳歌の言葉に頷き。
    「じゃ、俺バイトなんで」
    「病院なんで」
    「見たいTVが」
     3人は帰って行った。
     ――閑話休題。
     場所は体育館。そこにはRB団が数十人集まっていた。
    「え、お前病院じゃ!?」
    「お前らこそTVとかバイトはどうしたんだよ!?」
     さっきの角刈り達もいた。
     噂に流れてきたVt合コンにこっそり自分だけ参加しようとやってきたのだ。
     だが、その噂自体が罠だった!
     体育館の扉が閉まりライトが消える。そして――。
    「希望の戦士ピュア・ホワイト!」
     舞台にスポットライトが当てられホワイトが登場。
    「愛の戦士ピュア・アップル!」
    「光の戦士ピュア・ライト!」
    「勇気の戦士ピュア・ジェイド!」
    「平和の戦士ピュア・ネイビー!」
     白金ジュン、津軽林檎、白波瀬雅、乙宮翡翠、亜麻宮花火が次々に名乗り、最後は全員で。
    『みんなの心がひとつになって、マジピュア・オール・スターズ! 誕生ですっ!』
     ドーンッ! キラキラ☆
     炎と光のサイキックエフェクトがバックを飾る。
     蹴散らされるRB団。
     最後にマジピュア達からチョコとか貰ったのは良い思い出(ライトはくれなかった)。 

    「渡す宛てがないなら、そのチョコよこすっす!」
     が、即効で義勇軍にやられ吹っ飛ぶ山田菜々。
     残された少女は「頑張ろう」とちょっとだけ勇気がでたり。
     もちろん、こんな良い話は稀である。
    「お前も高い高いしてやろうか!」
     リア充から奪ったチョコをその高身長にかこつけて返さずに凄むのは【鴨居ーズ】の下総文月だ。
    「バレンタインより節分やろうか! 日本人だろ!」
     さらに節分の豆をぶつけるのは浜地明日翔。
     逃げていくリア充に「キヒヒ」とご満悦。
    「ヤハハ、相変わらずキモい笑い方デスネ」
     現れたのはモーリス・ペラダンと、ナハトムジーク・フィルツェーンだった。
     ちなみにモーリスのヤハハは同類だと思う。
     4人はお互いRB団として情報交換を交わしつつ、次の標的を探す。
    「モーリス、せっかくだからチョコを貰いに来たぜ!」
     そこに現れたのは同志たる梓潼鷹次だ。
    「貰えないからって男から貰うってどーだよ?」
     モーリスのチョコをパクつきつつ鷹次が反論。
    「苦情は受け付……ぐふぅ、これは――」
     鷹次の反応にモーリスも一口。
    「ンー……不味いデスネ、ケハハ」
     倒れるのだった。

    「いつも世話になってる礼だ」
     そう言って楪奎悟がRB団に放ったチョコは素手で弾かれた。
    「男から貰って何が嬉しい!」
    「くっ」
     隙を見て捕縛する予定が狂う奎悟。
     BL団なら成功する作戦も、今回は相手がRB団だ。
     だが――。
    「つかまえたーです♪」
     二階の窓から紅なこたが奇襲、RB団を縛りあげる。
     ハイタッチの2人の周りをタマが嬉しそうに駆け周る。

     RB団所属、【RMM】アンカー・バールフリットの作戦は完璧だった。
     それはRB団同志がアベックに告白し、そこを襲ってきた義勇軍に自由恋愛も認めないお前らに正義は無い!と宣言する事だった。
    「恋人がいるって知ってるけど……この気持ち、もう抑えられないの!」
    「あなたの事、好きになっちゃいました。私と付き合いませんか?」
     作戦通りに演技するのは小柏奈々と、瑠魔琴音だ。
     しかしやってくるのは――
    「リア充は爆は……なんだ同志か」
    「ひゃっはー! 撲滅撲め……同志か」
     RB団ばかり。
     義勇軍を釣るにはもう少し繰り返す必要があった……。

     世の中には愉快犯、いや無邪気犯という枠があるらしい。
    「RB団は外ー! チョコは内ー!」
     面白そうだと豆を投げるのは小学4年男子、アッシュ・マーベラスだ。
     世の中には様式美というものがある。
    「待てぃ!」
     いちゃラブ静止の声にアベックが声のする方を見れば。
    「涙が嫉妬に燃える時、RB団の出番あり! とう!」
     白いマスクマンな大浦政義が飛び降り、モブRB団が出現する。
     恐怖に震えるアベック。
     そして世の中にはお約束というものがある。
    「お待ちなさい!」
     そこに現れるは花宝院アリス。
    「三度に渡る悪行、例え神が許してもこの私が許しませんわ!」
     発射されるランチャー。
     爆発。
     哀れRB団と白マスクは星になった。

     さて、今回カップル枠は用意しなかったが、来てしまったペアもいる。
    「ロシア出身の俺にはバレンタインデーなど関係無い……のだが、今回は違う」
     襲いかかってくるRB団をすべからく返り討ちにしたミハイル・オルダノフが彼女を見つめながら言う。
    「俺には、香澄という彼女がいるのだから」
     恋人の言葉に東郷香澄の胸は高鳴り。
    「ずっと、一緒にいさせて……」
     そう告げたのだった。

    「おぅてめーら包囲すんぞ、散っ!」
     【PKN】は今回最大人数の義勇軍だ。
     部長、影道惡人の指示で作戦が開始される。
    「集団ハンティングはウチのお家芸ってな」
     ――作戦エリア東。
    「御用御用! 御用改めである!」
     氷鎗涼重はバレンタインの意味は分からないが、部長の指示通りに追い込んでいく。
     ――作戦エリア西。
    「こちら篁凜、状況を開始する」
     襲いくるRB団。
     篁凜の竹刀一閃。
     その威力にRB団が遁走を開始した。
     ――作戦エリア南。
    「幸せな人達に手を出すなんて情けない真似しないで下さい!」
    「こいつ……落ちねぇ」
     何度も立ち上がるのは田中花。
     やがて気迫負けしたRB団が逃走。
     ――作戦エリア中央。
    「これ、後輩の子からキミにだって」
     女の子からのチョコだと渡して士気を挫いているのは長姫麗羽だ。
     麗羽の活動でRB団中央部の動きが緩慢となる。
    「お前ら、北から抜けるぞ!」
     RB団神楽三成が、PKNの通信機から得た情報を元にモブRB団達を引き連れ北へ向う。
     だが、途中で目に入るのは幼女に手を出そうとするRB団!
    「ヒャッハー! RB団鉄の掟! 幼女に手を出すべからず!」
     制裁。
     しかしその隙に現れるPKN。
    「非モテで惨めな奴らだね」
     パンツ一丁巨漢デブ、黒洲厨二と、モヒカン雑魚顔の卑虎イチだ。
    「料理が出来て、小動物に好かれ、ロックを嗜む、ボクに憧れだろう?」
     そう言いつつ幼女なRB団に襲いかかる厨二。
    「いやいや、勝負は顔の良さザンスよ、俺様のように美しい方が勝つザンス!」
     とりあえずスルー&幼女を助けつつ散り散りになって北へ。
     ――作戦エリア北。
     そこでは惡人と撫桐娑婆蔵、渡ガザ美がいた。
     逃げてくるRB団。
    「あれがリーダーか! やっちまえ!」
    「あっしらの猟団長、甘く見て貰っちゃァ困りやすぜ!」
     娑婆蔵が突貫。
    「撫で斬りにしてやりまさァ!」
     だが数は力、すり抜けた数人が惡人に接近!
     そこに塞がる巨乳。
    「守りはガザ美ちゃんに任せときゃえーで」
    「げへへ、ならお前から」
    「待て、そいつは小1だ!」
     な、なんだってー!?
     鉄の掟的に手が出せないRB団達。
    「RB団は……騒がしすぎる」
     RB団をすり抜け作戦地点へと到達した西場無常が呟く。
     そして――。
    「サイコサウンド」
     その殲術実験音楽が広範囲にRB団を壊滅させたのだった。

     多くの同志が討ち取られ、残ったのは九条風、フィン・アクロイド、迅魏辺の3人だった。
     すでに義勇軍に取り囲まれ絶対絶命。
    「俺は、生理的にリア充を受け付けないだけなんだよ!」
    「嫌いじゃないんだ。気に食わないだけなんだ!」
     フィンと辺の叫びは無視され、仕方が無くフィンがある物を配る。
    「義勇軍と心中か……」
     渡された爆薬を見詰め辺が呟く。
    「聞け、義勇軍! 俺が、俺達がRB団だぜ! ひゃっはー!」
     ドーンッ!!
     爆発。
     爆煙と恨み事に紛れ最後にこんな声が聞こえた気がした。

    『リア充を狩るだけの楽しい軍団です。独身貴族の入隊をお待ちしています!』

    作者:相原あきと 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2013年2月13日
    難度:簡単
    参加:112人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 5/感動した 21/素敵だった 3/キャラが大事にされていた 37
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