バレンタインデー~思いを込めて貴方に届け~

    作者:幾夜緋琉

    ●バレンタインデー~思いを込めて貴方に届け~
     2月14日、恋人達の一大イベント、バレンタインデー。
     そんなバレンタインデーの前日。
    「ん……? バレンタインデーで……チョコレートを作るの……?」
     同級生から聞いたバレンタインデーの話。
     クリスはチョコレートを作る、という話にちょっと小首を傾げる。
    『あぁ、そっかクリス君はイギリスから来たんだっけ? イギリスのバレンタインデーって、どうしてるの?』
    「うん。イギリスのバレンタインの定番は、ばらの花束を贈る風習なんだよ」
    『ばらかぁ……へぇ、綺麗だねぇ』
    「うん……でも、せっかく日本に来たんだから、僕もその風習に染まってみる……っていうのも良いかもしれないね? せっかくだし、みんなと一緒に作れれば良いよね。みんなで集まって、色々と話ながらっていうのも面白そうだものね」
     ニコリと笑うクリスに、同級生他も頷いて……そして、学校にお願いして、家庭科室を借りてのチョコレート作りが始まるのであった。


    ■リプレイ

    ●褐色の音色
     2月13日、バレンタインデーの前日。
     誰かから聞いたバレンタインデーの話を受けて、学校の家庭科室に集まった灼滅者達。
    「すごいね……こんなに集まるだなんて、思ってもなかったよ」
     クリス・ケイフォード(小学生エクソシスト・dn0013)は、驚いた表情を浮かべていた。
    「まぁ……な、バレンタインというのは、ある意味一大イベントではあるか、一杯集まるのも当然だろうな」
    「そうなんだ。本当、一大イベントなんだね、バレンタインは」
     梗香の一言にくすりと笑うクリス。
     そんなクリスの背中をぽん、っと叩く影。
     ふと振り返ると、そこには結留と小夜子の姿。
    「ん……ああ、結留さんに小夜子さん。うん、来てくれてありがとうね」
    「クリス君、こんにちはなのですよー! バレンタインのチョコを作るって事で、やってきたのですよ!」
    「同じく、ってな。妹と一緒にチョコ作りに来させて貰ったぜ!」
    「え? ……あれ、結留さんと小夜子さんって、姉妹でしたっけ?」
    「ん? あー……うん。確かに妹というよりは、妹みたいな存在、って言うのが正しいな」
    「そうなのですよ。小夜子おねーさまなのです♪」
     ニコニコ微笑む結留……数人が気付くも、クリスは気付かない。
     ……まぁ、それはさておきとして。
     そんな彼女の一方、歌留多が。
    「ふぅむ……ばれんたいん……ですか。面白いいべんとですねぇ」
     何処か他人事の様な言葉。でも、周りの人達を見てみると。
    「ふふ……頑張らないといけませんね」
    「ええ、二人で協力して頑張りましょう。さぁ、手作り開始なのです♪」
     蘭世と紫信が髪を纏めて、エプロンを腰にぐっと巻き付けたり。
    「……色々御世話になっている人は大勢いるからな、日頃の御礼も兼ねて贈らせて貰わないとな」
    「そうですね……さぁ気合いを入れて頑張るのですよ! おー!!」
     梗香と結留も、そんな言葉を紡いだりして。
     ……着々と、バレンタインデーに向けた準備を整えていく訳で。
     そんな参加者達の動きを見渡した歌留多が。
    「まぁ……私には渡す相手も居ませんが、でも美味しく作って……自分で食べてしまえば良いでしょう。という訳で私も頑張るとしましょう」
     と、帯を結び直した。

    ●熱く燃えて
    「それじゃ、始めよっか。月菜、チョコの湯煎、出来るよね?」
    「はいっ♪ 私が、チョコを湯煎して、綺麗に溶かすね」
    「うん。それじゃ私はコーティングに使うオレンジピールの準備をするね? オレンジピール……頑張って作ってきたんだ」
    「お姉ちゃんのオレンジピール、すごく甘くて美味しいんだよね」
    「ええ。だって砂糖にじっくり漬け込んだ自慢の一品だもの。これを月菜に食べてもらえるのは、嬉しい事だもん」
     深雪と月菜の姉妹が、笑い合いながらチョコレート作りを始める……まずはチョコレートの湯煎から。
     チョコレートを湯煎で溶かすことは、チョコレート作りの第一歩。
     準備したチョコレートをしっかり溶かすことで、先ずは美味しいチョコレートの元を作らないといけない。
     蘭世と紫信の二人も。
    「湯煎かぁ……火を使う作業だから、僕に任せて下さい」
    「うん、紫信くんにお任せするね。その代わり、混ぜたり丸めたりする作業は蘭世に任せて欲しいな?」
    「ええ、解りました。ああ、そうだ。ひと工夫で、生クリームの代わりに牛乳を使うのはどうでしょう?」
    「それ、美味しそうですね……是非とも、やってみましょう」
     と作業分担を決めて、チョコレートの湯煎。
     歌留多、とクリスも、ゆまと梗香から。
    「まずはチョコレートをテンパリングします。こうやってチョコレートを細かく刻んで……大体50度くらいで湯煎しながら暖めるんです」
    「この時、湯気や水蒸気が入らないように注意するんだ。ここで入ると困ったことになるからな?」
     とレクチャーを受けながら湯煎開始。
    「ふむ、湯煎で溶かして……と。 ……と、おや、クリス殿。きぃさまの方のチョコはどうですか?」
    「ん? ……うん、多分大丈夫だと思う。まぁ殆ど僕、お菓子を作ったこともないから参考にはならないんだけどね」
    「そうですか。まぁ……でも手慣れている気がしますが」
    「まぁ……見よう見まね、って所。一応、がんばってチョコレートの作り方の本を一、二冊しっかり読んできたからね」
    「そうですか。なら真似してみるとしましょう」
     ……ゆまと梗香のレクチャーも参考にしつつ、しっかりと作り始める四人。
     そして諒と琉嘉の二人も。
    「ルカ、上手く作れる?」
    「大丈夫大丈夫! 多分トリュフなら作れるって教えて貰ったし!」
     笑う琉嘉に、ほんの僅か不安な諒。
     そして琉嘉はビターチョコと生クリームを混ぜて、湯煎する……のだが。
    「……チョコがなかなか溶けない……」
     ぐるぐる混ぜても、中々溶けないチョコレート。
     それを気付いたゆまがやってきて、的確なアドバイスでチョコレートを溶かす。
     ……結留も、小夜子も、そんな感じでチョコレートの湯煎を終える。
     そんな溶けたチョコレートに、こっそりと……月菜はオレンジの果汁を入れて、普通のチョコじゃなく、フルーツチョコにしてみたり。
    「……うん。これなら、お姉ちゃんも喜んでくれるかな?」
    「ん? 何か言った、月菜?」
    「え? あ、大丈夫だよ!」
     ちょっと慌てる月菜。
     ……そして溶けたチョコレートを使い、トリュフに仕上げようとするのと、型を使って型取ると……大きく二手に別れる。
     トリュフにする為に、少し固まり始めたチョコレートを手で丸める。
     その前に琉嘉が。
    「固まる前にちゃんと味見しないとね。甘すぎないのが姉ちゃん好きだもんね」
    「うん、そうだね」
    「というわけで味見ー、っと…………兄ちゃん、味見してみてよ」
    「ん? 味見させてくれるの? ありがとう」
     琉嘉がスプーンに掬い、差し出したチョコを、パクリと食べる諒。
    「……うん。大丈夫、あんまり甘くないね。って……ふふっ、ルカったら、鼻の頭にココアがついてるよ?」
     くすりと笑いつつ、琉嘉の鼻の頭のココアを拭き取る諒。そして逆に諒が。
    「ほら、ルカも食べてごらんよ。とっても美味しいよ?」
     と逆にスプーンに掬って差し出す。
     そして……ぱくり。
    「……あんまり甘くない……これでいいね!」
     そう二人頷き合い、そして二人はトリュフにする為にチョコをかたどっていく。
     紫信と蘭世は、さっき決めたとおりに蘭世がくるくると型どり、結留も。
    「……そういえば、結留は誰に作ってんだ? うちはとーぜん雄介になんだが……好きな男子とかいねーのか?」
    「え? わたしのチョコレートは勿論、おねーさまになのですよ! だってこの前、トリュフが食べたいって言ってたのです」
    「え? な、なんだー、うちにか?」
    「そうですよー。嬉しくないですか?」
    「も、勿論嬉しいぞ! トリュフ好きだし、本命チョコも誰かに渡せるようになれよー?」
    「勿論ですよ♪」
     と小夜子とそんな会話をしつつ……トリュフを作る。
     そして一方型取り派の面々は、大小様々なハートの形の型や、アルミホイルで自作した猫の形の型にチョコレートを流し込んで、固めていく。
     特にゆまは、猫の形に流し込んだ後は、猫の目にアザラン、尻尾にマジパンで作ったリボンをつけてみたり。
    「うーん……ちょっと歪……かな? でも、多分笑ってくれる気がします」
     と、その出来に頷いてみたり。
     そして梗香も、大小色とりどりのチョコを作る。
     小夜子はレシピをみながら生チョコを作り、光明は……こだわりのザッハトルテを、手際よく作り上げていく。
     そして型に作り終われば、冷やす。
    「さて、冷蔵庫に入れて、あとは固まるまで……座して待つのみ!!」
     歌留多がチョコレートを冷蔵庫に入れて、そのど真ん前で正座しつつお茶を飲んで……みんなにどかされてみたり。
     そして……皆のチョコが冷えれば、最後の仕上げのラッピング。
    「さーて……ラッピングは兄ちゃんの出番だね!」
    「うん。俺等の『大好き』をいっぱいいっぱい溶かしたチョコレート。あの子は喜んでくれるかな?」
    「そうだね。姉ちゃんの反応が楽しみだね!!」
     諒と琉嘉は、贈るお姉ちゃんの顔を思い浮かべながらニコニコとラッピング。
     深雪と月菜も。
    「お姉ちゃんね、包装にコレ、使おうと思うんだ」
    「白薔薇……? うん、いいんじゃないかな?」
     深雪に笑う月菜。
     二人が贈る相手は互い同士。サプライズは無いけれど、お互い心を込めて作ったチョコレートを送り合いたい……。
     梗香も、大小色とりどりのチョコを小分けにラッピングするが、その中でも一際大きいのを作るときは表情が緩んでいて。
    「なんだか、いつもに比べて嬉しそうだね?」
    「ああ……あの子は甘い物には目が無いからな。きっと喜んでくれるだろうさ」
     クリスに自然と嬉しげに応える梗香。そして更にゆまの猫さんが書かれた可愛い包装紙で包み、ブルーのリボンと鈴で飾り付けられたチョコも見て。
    「ゆまさんのは可愛いラッピングだね」
    「うん。この前、ちょっと迷惑を掛けてしまったお友達へ、お詫びを兼ねたプレゼントなんです……喜んでくれるといいなぁ」
    「きっと、喜んでくれると思うよ」
     と微笑むクリスにゆまも微笑む。
     そして、蘭世と紫信も……トリュフをラッピングしていく。
     でも、そんなラッピングの最初の一つを、蘭世は紫信に差し出す。
    「一番最初に、紫信くんに食べて欲しいのです……」
    「一番最初に僕にくださるんですか? ありがとうございます」
     蘭世のプレゼントを嬉しそうに受け取る紫信。
     ……おにいちゃん、お姉ちゃん、お友達に配るように作ったけれど、一番最初は大切な紫信へと、強く心に決めていたのであった。

    ●優しい心で
    「さて……それじゃ皆、改めてお疲れ様」
     そして、チョコレート作りが終わり……借りていた道具も一通り片付け終わった後。
     ……皆の真ん中には、おっきなおっきなチョコレートケーキ。
     持ってきたのは歌留多。
    「皆で食べる事、それこそが、料理作りの最大の醍醐味だと私は思うのです。という訳で皆で食べましょう」
    「こんなに大きなもの……うん、ありがとう。それじゃ皆で一緒に食べよう?」
     と、クリスも提案して、そしてチョコレートケーキを囲みながらのささやかな一時が始まる。
     勿論それぞれの前には、頑張って作ったお手製のチョコが並び、様々なラッピング……。
    「……うん。皆、素敵なバレンタインになれば良いですよね」
     それらを見て、みんなの笑顔を思い浮かべながら……くすりと微笑むゆま。
     そんな中小夜子と結留の二人は。
    「ほい、結留。残りの材料で、結留にも作ったぜ?」
    「あ、ありがとうございます、おねーさま。それじゃわたしからもなのですよ♪ おひとつどうぞなのです♪」
    「おお、お前も今くれるんだな。サンキュ! ……あーん、とかしてくれるとうれしいけどな」
    「勿論なのです。あーん」
    「あーん……ん、美味しいぜ」
    「ふふ、嬉しいのです♪」
     そんな二人の会話……聞いているだけで、なんだかこちら幸せに。
    「……本当、二人とも仲が良いんだね。こっちも嬉しくなってくるよ」
     とクリスの一言に、二人もまんざらじゃない感じで。
     ……そんなクリスに、梗香が。
    「とクリス君。一日早いが先にプレゼントだ。この前の依頼では世話になったしな? これは君の分だ。良ければ受け取って欲しい」
     と差し出すチョコの箱。
    「うん、ありがたく受け取っておくね。日本に来て、初めてのバレンタインプレゼント、って事になるのかな? ……ちょっと、開けてみてもいいかな?」
    「ああ、構わない」
     梗香が頷くと、その包みを開ける。
     中にはいっていたのは、薔薇の花束を似せて作ったチョコレートの意匠。
    「クリス君が言っていた、イギリスではバレンタインに薔薇の花束を贈るというのを聞いて作ってみたんだ。似せて見たんだが、上手く出来ているだろうか?」
    「そうだね……うん、上手く出来てると思うよ。ありがとう、梗香さん」
     笑うクリスに少し安心した様な表情を浮かべる梗香。
     そして……そんな楽しい時は早く過ぎ去り……真ん中に置かれたチョコレートケーキもほとんど無くなる。
    「……うん。美味しかったです。しかしお菓子って、実際に作ると洒落にならない程、色々とぶっこみますよね。どうあがいても絶望ですね。主に体重的な所ですが」
    「そうだな……ま、甘いものは総じてカロリーが高い。だがストレス解消にも鳴るから、悩みどころでもあるな」
     歌留多に光明が解答。
     ……まぁ、食べ過ぎればそれだけお腹にも被害が行く……と、それはさておき。
     ケーキも食べ終わった所で。
    「さて……と、それじゃそろそろ下校時間だし、この場はお開き、って事でいいかな?」
     クリスの言葉に参加者一同も頷く。
    「よーし、それじゃ皆、明日は頑張ろうぜー!」
     小夜子が発破の言葉を投げかけると、皆でおー、と拳を振り上げるのであった。

    作者:幾夜緋琉 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2013年2月13日
    難度:簡単
    参加:12人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 2/キャラが大事にされていた 5
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