バレンタインデー~チョコレートローズの花言葉

    作者:小藤みわ

    「ねえ、チョコレートの薔薇って作ったことある?」
     顔を寄せてひそりと囁いたのは花芒・愛(中学生エクスブレイン・dn0034)だった。
     ひんやりと冷えた廊下で名を呼び引き留めた愛は、相手を階段の踊り場に引き寄せると、そっと手許のタブレット端末を向ける。
     時は如月。冬風がつんと肌を刺し、時には風花も舞う今の頃、愛のタブレット端末には、彼女の言葉通りチョコレートで形作られた薔薇のレシピが表示されていた。
     ビターやミルクのチョコレート色は勿論、ホワイト、或いはピンクにブルー。キャラメル色も可愛いよね、と愛は色鮮やかなチョコレートローズを指差して微笑む。
    「案外簡単に作れるんだって、だからね」
     そこまで言って、愛は口許に掌を添えた。一層潜めた声で、彼女は言う。
    「一緒に、作ってみない?」
     ほら、バレンタインデーはもう直ぐだから。

     チョコレートローズの作り方は簡単。
     先ずはチョコレートを湯煎で溶かし、水飴を混ぜた後、小分けにして冷やしておく。チョコレートが固まったら、ラップに挟んで花弁の形に変えていくのだ。そうして出来た花弁を一枚一枚巻き付けていけば、薔薇の形が完成する。
     ホワイトチョコレートを選び、食紅で色をつければ、様々な色の薔薇にもなり、見目も可愛らしくなるチョコレートローズ。
     チョコレートローズだけを渡しても良いし、他のお菓子に添えたり、飲み物に浮かべたりしても良いかもしれない。
     何より、薔薇の花言葉は愛情に纏わるものが沢山だ。
     薔薇そのものの『愛情』は勿論、白なら『尊敬』、黄色なら『友情』、ピンクなら『感謝』、ブルーなら『奇跡』。
     勿論ひとつの花にも花言葉は複数、前向きなものだけではなく、後ろ向きな解釈の言葉もあるけれど。それでも精一杯作ったものなら、前向きな気持ちを目一杯に伝えてくれるはずだと、愛は笑った。
     綺麗なものでなくてもきっと構わない。
     不格好な薔薇だって、沢山愛情を注いだなら、優しく綻んでくれるから。
    「材料は一通り揃えておくからね。あ、場所は……学園の家庭科室を借りちゃおうかな。うん、そうしよう」
     ね、と愛はもう一度顔を覗き込み、微笑んだ。
     勿論材料は、自分でも欲しいものがあれば買ってもらって構わないから。愛は最後にそう添えて、ゆるりと掌を振った。


    ■リプレイ


     夕暮れの家庭科室に、甘やかなチョコレートの香りが溶けていく。
     様々なチョコレートが薔薇を綻ばせる種ならば、加える水飴は花に注ぐ水雫。二つを混ぜ合わせ、蒔季は心を籠めた指先で白の花びらを象った。
     大切な兄に捧ぐ白薔薇には『私はあなたにふさわしい』という言葉を密かに籠めて。
    「急がないと手の熱でチョコが溶けるぞー?」
    「が、頑張ります……!」
     その傍ら、お伴の遊は見守りはするも手出しはしない。揶揄混じりの声援を飛ばし、遊はクラブの皆に向け、ピンクの薔薇を作り上げた。その花の出来映えに思わず感嘆を零す蒔季。
    「七パイはきっといいお嫁さんになれますね!」
    「嫁になるよりも嫁が欲しいわ切実に!」
     まあ、さておき。
     遊は愉しいひとときの礼だと、蒔季に薔薇の葉を差し出した。赤い薔薇の葉が宿す言葉は『あなたの幸福を祈る』。互いに笑み交わせば、蒔季の、薔薇に似たくせ毛がふわりと揺れた。
    「僕はいつもお世話になってる皆への感謝の気持ちで、ピンクにしようかなぁ」
    「ひめはピンクかぁ……俺は皆への尊敬の意を込めてそのままの白でいくかな」
     ひめと皐が迷いの末、夫々の色彩を選び取る。
     危ないからと、皐が溶かしてくれたチョコレート。ひめはそれを相手に四苦八苦、それでも漸くして出来上がった薔薇を、彼女は元気良く皐に差し出した。
    「さっちゃん! さっちゃん!」
    「お、ひめ完成したのか?」
     それは少々不格好ながら、一生懸命な気持ちが目一杯に詰まった花。
     一方の皐は器用に花を綻ばせていて、さっちゃんは器用だね、と褒め言葉も添えるひめ。彼女に嬉しげな肯いを返し、ひめも頑張ったなと皐は口端を緩めた。
    「私でもできるかな?」
    「だいじょうぶだよ!」
     たぶん、という一言は桜子の胸に仕舞われた。『レシピ通り』にがんばろうねと言う桜子に肯い、奏恵はレシピに眼を向ける。
    「湯煎ってお湯に溶かさないからねー?」
    「そうなの!? 水あめは、くっつけるくらいだから多めに……」
    「それ水あめじゃなくて糊だからしまっておくね!」
    「あ、これ。お菓子だから粉砂糖とか必要かなって」
    「……なぜ片栗粉……??」
     えらいこっちゃ。
     しかしながら数刻後、奏恵の手許に綻ぶまさしく奇跡の青い薔薇。さーやのお陰と笑う奏恵の隣、奏恵らしい『無邪気』を宿した桜子の橙花と、愛の淡紅が綻べば、食べるのが勿体ないねと笑い合って、
    「って、さーや疲れてる?」
     ぐったり桜子に、奏恵はゆるりと首を傾げた。
     白兎が形作るのは、黄と薄紅や様々な色合いのチョコレートローズ。隣の由乃が、どなたかに差し上げる予定はあるんですかと、どきどき混じりに問い掛ければ、残念ながらコイバナではないのだと、白兎は口許を緩める。
    「大切な友達に日頃の感謝を込めて、ですかね」
    「私も、大切な友達に、です。一緒ですね」
     由乃の掌にも綻ぶ黄と薄紅。その、友情と感謝を宿した花達を、由乃は白兎へ差し出した。
    「これからも、仲良くして頂けたら嬉しいです」
     この花は、愉しいひとときをくれた傍らの友達への贈り物。
     あれ、と一声零した白兎も同じ花々を由乃の許へ。花に添えるのは次を願い祈る気持ち。考えてたことも一緒のようですね、と白兎は愉しげに笑った。


     出来上がるまでは内緒だと笑い、希沙が綻ばせるのはホワイトと苺、抹茶のマーブルローズ。三色団子みたいと独りごちるも、愉しげに花を咲かせる希沙の傍ら、藤乃は黄とブルーの薔薇を編んでいく。
     柚子とブルーベリーを合わせた小さな薔薇に、抹茶の葉を添えれば、藤乃の花籠には一層の彩りが溢れ出す。
    「美味しそう!」
    「ふふ、希沙ちゃんの薔薇も彩り楽しくて素敵ですわ」
     黄の花籠とマーブルローズはお裾分けしつつ、一方の青薔薇は希沙専用、大きなマーブルローズは希沙から藤乃への贈り物。
     お裾分けのお返しに得た、薄紅の花と肉球痕つきの謎型チョコも添えて、写真を一枚。花と笑みと、ふたりの初挑戦が詰まった嬉しい記憶が、またひとつと刻まれる。
    「愛。ヨロシク教えてたもうー!」
    「はーい! ちなみに朱那ちゃんのお手前は?」
    「お菓子どころかご飯だって手作りしたこと無いヨ」
     うん、と肯い合う朱那と愛。
     的確に花を編み上げる蕾花や愛達を真似るも、朱那の前に綻ぶのは、どう頑張っても空色牡丹。ええいと一声、綺麗な花を作ってみせると意気込む朱那に愛は笑んだ。ミント風味の大量牡丹は今日の先生へひとつ、お裾分け。
     一方、蕾花が紡ぐのは八つの薔薇。何時かの記憶を巡らせながら模した淡紅には、闇から救われた時の感謝を詰め込んでいく。
     ──今更、あのときのお礼、とか。
     迷惑かしら、と怖じ気づく心は少しだけ。けれど胸に在る、言葉では足りない程の溢れる感謝を、何も伝えられないよりはきっと。
    「……櫻さん、も、苦戦なさってますね」
    「夕凪、俺の本気は此処からだ」
     呉羽も花造りには四苦八苦。しかし一徹の所作を見て、呉羽は思わず安堵の微笑みを零した。
     彼と一緒にコツを習い、漸くして出来た黄色と淡紅の薔薇を見詰めて安堵をもうひとつ。黄は一徹、淡紅は愛へ。今日のお礼だと手渡し、呉羽は花の様な笑みを咲かせた。
     空が目指すのは感謝の薄紅と尊敬の白、相手の髪色に因んだ赤の薔薇。
     空は三色なら小さめに作った方が良いかと首を傾げた。小さい分、作業の大変さは増しそうだけれど。
    「ううん! 日頃お世話になってるんです! これくらい頑張らないとっ!」
     その意気込みの甲斐あって、見事綻ぶ空の薔薇。喜んでくれると良いな~と、空の口許も綻んだ。
     存外手際良く花を形作る弥咲も、渡す相手の器用さを思うと中々に難しい。弥咲はホワイトローズに仄かな色味を加えると、満足げに破顔した。
    「愛、素敵なお誘い有難う!」
    「あっ、弥咲さん。わ、凄く上手」
    「ふふ、ありがとう。一徹はたくさんもらえたりするのかなぁ?」
    「当てが有ったら作ってねえよ」
     愛と不機嫌顔の一徹に笑い、弥咲が差し出すのはふたつの黄花。贈り物に瞬くも、彼女の笑みに釣られるように、愛達の双眸が緩む。
    (「……皆、何であんなに綺麗に形作れるんだろ?」)
     燐音は周りを一瞥すると、再び模倣用の薔薇飾りに目を向けた。
     手間を掛けてこそ綺麗に綻ぶ所がお菓子の良い所。贈る相手を想い、思い切り作る──その口実をくれた相棒への感謝も籠めた、燐音の花色は勿論青だ。
     喜んでくれると良い。そう願いながら、燐音は表情を緩めた。
    「愛先輩っ、如何かしら」
    「可愛い! イコちゃん天才!」
     イコが象る花びらは宛ら白白明けの雲。白から淡紅に映り変わる花びらを集めれば、夜明けに煌めく一筋の陽のような薔薇が綻んだ。銀のアラザンが朝露みたい、と愛が笑む。
     一方、愛の掌には抹茶の薔薇。おばあちゃんが好きなのと破顔する愛にイコも笑んだ。
     秘めた言葉は彩の数ほど。周りの花々を見回したイコは、そっと、大好きなひと達に出逢えた感謝を籠めた、自身の薔薇に掌を添えた。


     想希が花を贈る相手は一番辛い時に助けてくれた、彼の伯父。
     名の通り希望を想えと言ってくれたこと。
     ひとりでは駄目だと家に引き留めてくれたこと。
     その意味が、今ならよく分かる。
     だから贈り物は白と淡紅の薔薇に生花のガーベラを添えて。想希は愛を認めると、淡紅を手渡して微笑んだ。素敵なプレゼントの礼と、ラッピングの教授を願いながら。
    「これは、お世話になった方々に贈りたいと思っておりますの」
     みやびの呟きに、素敵だと愛から肯いが返った。初めこそ不慣れに見えたみやびの指先は、要領を掴めば手際の良さを見せていく。
     薔薇の香が優しく漂う、薄紅のチョコレートローズ。
     まだ恋心とは縁がなくとも、感謝の心が確りと籠められた花が、みやびの手許で綻んだ。
     みとわはホワイトチョコレートに紅の色彩を混ぜ合わせた。白の花びらに流れる淡紅のマーブル。指紋が付かないよう丁寧に形作られた花は、彼女らしい形に綻んでいく。
    (「……喜んでくれるかな」)
     トリュフケースに並べた花に、メッセージカードを忍ばせれば、ふと大切な人の驚き顔が脳裏を過る。
     途端、みとわの口許から笑みが零れた。
    (「ふふふ、我ながら良くできたものだ♪」)
     蝶胡蘭が紡ぐのは、仄かな恋心を寄せる先輩への贈り物。凝り性たる彼女の薔薇は、流石とも言えるほど精巧な出来映えだ。
     白薔薇の花言葉は『心からの尊敬』。それもありかと思いながら、一考の末、蝶胡蘭は紅を差し入れた。
     ずっと、いつまでも一緒にいられたらと、願いを籠めて。
     愛情の紅と感謝の白、二つを重ねて『和合』。
     忍が茎に一枚の花びらを寄せる度、誰かを想う心が重なっていく。
     ひとつは遥か遠い妹の為。ふたつは太陽の様に温かで曇りない、昔から変わらぬ幼馴染の為。さいごは共に在る多くの人達の為。
     ──……私は今、こんなにも多くの想いを得て生きています。
     丁寧に想い出を籠めた薔薇へ、忍は最後にそっと、緑に染めた葉を添えた。
     喜んでくれるかしら。
     どんな反応するかしら。
     花音は愉しげに、同時に不安と期待に溢れながら、幾つもの小さなチョコレートローズを並べていく。
     花は、幼馴染の彼との想い出を宿した、チョコレートモンブランに添え飾った。感謝を宿す桃色の薔薇。彼を想いながら作り上げた花音の薔薇は、優しくふわりと綻んだ。
    「梓は、順調に作れていますか?」
    「僕の方は順調だよ、藍蘭さんはどんな感じ?」
    「僕も順調ですね」
     お互いの手際を確認し合い、藍蘭と梓は目を見交わす。
     慎重に、丁寧に、ふたりで紡ぐチョコレートローズ。愉しげな様子で紅とピンクの薔薇を造る梓の傍ら、藍蘭もまた、薔薇を模すチョコレートを興味深く思いながら、紅の花を編み上げた。
     やがて藍蘭が、梓、と照れを帯びた声で呼ぶ。
    「僕の作った薔薇のチョコレート、受け取ってくれますか……?」
    「わ、ありがとう藍蘭さん。とても綺麗ですね♪」
     梓は満面の笑みを返すと、自身が造った薔薇を彼女に差し出した。梓の薔薇は、愛情と感謝を宿す花。それを見詰める藍蘭の双眸に、嬉しげな色彩が滲んだ。


     何色にでもなれるあなた。どうぞおすきな色でわたしを彩ってください。
     言葉を紡ぐのは苦手な千佳が、想いを託すのは棘を持たない白の薔薇。自分を苛む棘をあっさり溶かしてくれるひとへ、感謝の言葉を添え、大好きな気持ちを閉じ込めて。
     一方、こういった作業が好きらしい、黙々と器用に花を象る光流の手許には鮮やかな青の薔薇。自分を学園に誘い、愉しい毎日を過ごす奇跡を起こしてくれた、彼女には丁度良い花だと、そう思う。
    「はい、チカさん。いつもありがと」
     そう微笑む光流から、綺麗に綻ぶ青花を受け取れば、千佳の掌にも青のいろ。
    「みつるさん、手みてみて! あおい! きれい!」
     奇跡をはんぶんこ、と千佳が嬉しげな声を響かせた。
     甘い香りに心はふわりと踊るよう。ふたり一緒なら、嬉しい気持ちも膨らんでいく。
     華凜は日々傍らに在る人達へ、色々な想いを込めて淡紅の花を。一片一片手渡して、色々な想いを伝えたいのだと彼女は言い、欲張りでしょうかとも呟くから、紡はふるりとかぶりを振った。
     紡の言葉と気持ちは、彼女が造る陽色の花のように優しくて暖かい。だから、まるで彼女自身が花のよう、と華凜は密やかな呟きを心に落とす。
    「……貰って、頂けます?」
    「私にくれるの? 嬉しいな、ありがとう」
     一足早く届いた『ありがとう』に、紡が返すのは橙の薔薇。夫々の彩を手許に抱き、華凜と紡は笑みを綻ばせた。
     願うこともふたりで揃い。これからも一緒に刻を重ね、絆を深められますように。
     緋織は花にラズベリー、葉には抹茶で色を添えていく。傍らの眞白は、皆にいつもの感謝を籠めた薄い紅、それから青の薔薇の花びら造り。贈る相手と一緒に造るのは少々不思議にも思えるけれど、何方の作業も愉しく、ふたりは揃って笑みを零した。
     一緒のこのひとときの礼を添え、緋織が淡紅の一輪を眞白に贈る。すると眞白もまた、リボンで結わえた小箱を差し出した。
     日頃の感謝と、緋織に出会えた奇跡に感謝を籠めて──とは少し気障かと自ら突っ込みを入れながらも、彼女に贈る二輪の薔薇。思わず瞬く緋織へ、眞白は目一杯に破顔した。
    「ありがと、そしてこれからも、ヨロシクな!」
    「……ありがとう……」
     ふわり、微笑む緋織から、感謝の淡紅がもうひとつ。
     ニケは誰に花を届けるの、と千鳥が問えば、内緒、とオニキスは小さな囀りを響かせた。
     ちーちゃんが教えてくれたらね、教えてあげなくもないよと、悪戯めいた笑みを零す傍らの小鳥に、千鳥の眼が思わずきょとり。けれど言葉を返す頃には、彼にも彼女と揃いの笑みが浮かんでいた。
     摘み嗜む寄り道を少し。やがて千鳥が紡いだ淡紅の花びらはオニキスの口許で溶けていく。
    「ね、味は悪くないでしょう?」
     眼を開き、とろりと伝う甘みに瞬くも、彼女は照れを滲ませながら笑み返した。
     漸くしてもうひとつ。広大な空に宛てた桜色の薔薇が届き、花が宿した想いの言葉が澄まし顔を崩すのは、これより少し後のこと。
    (「力の限りを尽くしてショコラティエも真っ青な一品に仕上げてやる!」)
     灯夜はそう意気込むと、ふっふっふ、と不敵とも取れる笑み声を零した。
     彼女が紡ぐのはまさしく真青に綻ぶ薔薇の花。丁寧に形を整え、バランスを取る灯夜の傍ら、帷は白と淡紅が混ぜ合さった、感謝と愛情の花びらの種を作っていく。
    「帷さんはどなたにあげるのかな~?」
    「……いえ、誰にも」
     藺生は彼の顔を覗き込むと、ふふ、と愉しげに笑い、眼鏡を煌めかせてみせた。
     その藺生が形作るのは白の薔薇。尊敬を宿した白の花、何よりホワイトチョコレートに特別感を覚えるのだと彼女は笑んだ。やがて、形は不恰好ながら確りと綻んだ花を見詰め、藺生はもう一度破顔する。
    「どうせなら、全ての色の花弁を混ぜたのにしませんか?」
    「なるほど!」
    「面白そうだね」
     帷の提案には、藺生と灯夜も肯いを返した。全ての色彩を合わせた薔薇、いざ出来上がってみれば、インパクトも新鮮さも充分だ。
     そうして一頻り楽しんだ後、灯夜は青薔薇を藺生と帷に差し出した。
     これは出逢えた奇跡に感謝を籠めた、大切なふたりへの贈り物。
    「これからもよろしくね!」
     灯夜からの贈り物に、藺生の目許が瞬き、帷の口許が綻ぶ。心からの感謝を紡ぐ藺生。その傍ら、帷も礼を紡ぎ、静かに肯いを返した。──これからもよろしくお願いします、と。
     甘く優しく綻ぶチョコレートローズ。
     花に籠めた精一杯の気持ちが、どうか伝わりますように。

    作者:小藤みわ 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2013年2月13日
    難度:簡単
    参加:36人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 9/キャラが大事にされていた 4
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