シロコロつけるぜ2~厚木シティでの逆襲!~

    作者:相原あきと

     真球状の丸い石が大地にいくつも鎮座する場所で、その男は気が付いた。
    「お、俺はいったい……誰、なんだ?」
     男は記憶を失っており、自身の存在意義すら忘れていた。
     その丸い石が並ぶ場所――本厚木駅から徒歩10分の公園――で、男は頭を抱える。
     だが、いくら考えても何も思い出せなかった……。
     ふと何かが頭にフラッシュバックする。
     何か決め台詞のような物を言う自分。
    「シ、シロ……クマ? コロコロ? な、なんだ……もう少しで思い出せそうなのに……」
     やがて夕陽が公園の石球と男の影を伸ばす頃になっても、男は何も思い出せなかった。

    「みんな、ご当地怪人については勉強してる?」
     教室の集まった灼滅者達に鈴懸・珠希(小学生エクスブレイン・dn0064)が聞く。
    「厚木シロコロ怪人が、つい先日倒されたんだけど……また現れたの」
     厚木シロコロ怪人。
     それは厚木のB級グルメ、シロコロ・ホルモンを愛するご当地怪人であり。
     その姿はリーゼントにサングラス、マント(今回はドイツの国旗柄らしい)を羽織った二足歩行の豚。
     ちなみに二人称は「アンちゃん」だ。
    「ただ、その怪人……ちょっと厄介な事になりそうなの……」
     珠希はそう言うと本厚木周辺の地図を取りだしつつ説明を開始する。

     条件1。
     怪人に会うには厚木市中央公園に夕方行けば会える。

     条件2。
     怪人に会う時に即座に攻撃して灼滅するつもりで向うとバベルの鎖で逃げられる。

     条件3。
     怪人の記憶を取り戻す事ができれば、逃げられる事も無くその場で戦闘となる。

    「ちなみに会いに行った日の深夜24時を越えると、怪人は勝手に記憶を取り戻すの。そして記憶が戻ったら姿を消して会う事はできなくなる……」
     つまり、タイムリミットまでに記憶を取り戻させ、その場に灼滅者達が居合わせる必要があるという事だ。
     珠希はそう説明すると、ノートに何か走り書きして破ると皆に付き付ける。
    「そして記憶を取り戻す手段はコレよ!」

    『シロコロ・ホルモンを食べる』

    「怪人はシロコロ・ホルモンを楽しく食べていれば、食べてる途中で記憶を取り戻すの。お店はいくつかピックアップしておいたわ!」
     珠希が焼き肉屋に丸印が付けられた本厚木周辺MAPを渡してくる。
     公園沿いにある韓国系焼き肉店、一番街裏路地にある小さなホルモン店、駅近の有名な焼き肉屋の3件だった。
     どれもちゃんとシロコロ・ホルモンはメニューにあるらしい。
    「敵は厚木シロコロ怪人1人だけ。かなりタフだし、必殺のシロコロ破は尋常じゃない威力だから気を付けて。もっとも、前回同様ノリが良い怪人みたいだから攻撃目標の誘導とかはうまくノセられればできると思う」
     珠希はそこまで説明すると灼滅者達を見回し。
    「うまくいったら焼き肉屋で記憶を取り戻した怪人と戦う事になるから、一般人の被害が出ないよう注意はして。それじゃ、お願いね!」


    参加者
    風鳴・江夜(ベルゼバブ・d00176)
    沢崎・虎次郎(衝天突破・d01361)
    ディーン・ブラフォード(バッドムーン・d03180)
    居島・和己(は逃げだした・d03358)
    九条・泰河(陰陽の求道者・d03676)
    野々上・アキラ(レッサーイエロー・d05895)
    神橋・宮子(空想殺塵・d12280)
    桐山・明日香(風に揺られる怠け者・d13712)

    ■リプレイ


     日が暮れる公園に一人、ドイツ国旗のマントをつけリーゼントにサングラスの豚が寂しくベンチに座っていた。
    「あ、厚木シロコロ怪人さんっすよね?」
     顔を上げればそこには何とも憎めない笑顔、居島・和己(は逃げだした・d03358)だった。
    「なんだ?」
    「俺はシロコロ食べ歩きオフ会の肉食男子っすよ?」
     首を捻る怪人。
    「シロコロ怪人さんじゃないっすか! 今日は欠席かと思っちまったっすよー」
     さらに語りかけて来きたのはシロコロ愛Tシャツを着た男、沢崎・虎次郎(衝天突破・d01361)だ。
    「俺っすよ! 前のオフで一緒だったシロコロ侍っす!」
     怪人は申し訳なさそうに。
    「悪ぃ、俺ぁ今、記憶喪失で……」
    「まじっすか!? いや、でもシロコロ怪人さんが俺らのメンバーだったのは確かっすよ? そのハンドルネームに覚えも無いっすか?」
    「うう……」
     頭を抱える怪人に、他のメンバーに会えば思い出すかもと仲間が集まる場所へ連れて行くことに……。
    「ドーモ、シロコロ侍サン。食い倒れポニーです。あ、そちらは肉食男子さんと、シロコロ怪人さん?」
     待っていたいのは6人。最初に挨拶して来たのは神橋・宮子(空想殺塵・d12280)だ。
    「オレは焼肉小僧だ! 今日は楽しみにしてきたぜー♪」
     野々上・アキラ(レッサーイエロー・d05895)が笑顔で言うと、怪人は「何かあるのか?」と疑問顔。
     他の仲間たちが今回のオフ会内容を説明し、怪人を巻き込むのだった。

     まずやってきたのは韓国焼肉店。
     さっそくシロコロを注文して待つ一行。
    「俺、シロコロって初めてなんだが……ご飯のおかずに合うのか?」
     サンチュと一緒もオイシイヨ? と主人にサンチュを勧められるディーン・ブラフォード(バッドムーン・d03180)だったがそこは断った。
    「おいおいアンちゃん、好き嫌いはいけねーぜ?」
    「BB(ディーンのハンドルネームだ)は生野菜が苦手って本当だったんすねー」
     と、そんな所でシロコロが登場。さっそく焼き出すメンバー達。
     少し大きめにぶつ切りにされたホルモンが網の上で丸まっていく。
    「だらけ屋! そっちそろそろいいぞ?」
     仕切出した怪人に言われ、だらけ屋こと桐山・明日香(風に揺られる怠け者・d13712)が初めてシロコロをぱくり。
    「おー……」
    「どうだい?」
    「案外ホルモンもいけるもんだねぇ」
     明日香の笑顔にシロコロ怪人が嬉しそうに笑い、他のメンバーも頂きますと食べ始める。
     そんな中いまだに箸をつけない者が1人。九条・泰河(陰陽の求道者・d03676)だ。
    「僕、内蔵苦手なんだ……シロコロって美味しいの?」
     泰河が怪人に聞けば。
    「こいつぁ普通のホルモンと違って肉の部分も残してある、それにこの店なら辛味ダレがある。臭みも取れるってもんよ。ほれ、食ってみろ」
     恐る恐る勧められた赤いタレにつけて食べる泰河。
    「あ……臭みがあるかなと思ったけど凄くまろやかで……美味しいんだよっ!」
    「だろう? もっと食え、ほら、それもいいぞ!」
     輝くような少年の笑顔に、嬉しそうに泰河の肩を抱き喜ぶ怪人。
    「みんな、今日も1人! シロコロに魅了された同士が生まれた!」
     怪人が立って叫べば。
    「シロコロ食べ歩きオフなんだから当たり前っすよ!」
    「そりゃそーか!」
     メンバーのつっこみに皆が笑う。
    「よし! 次の店行くか!」
    「おおー!」
    「ああ、まだ全部食べてないですー」
     声をあげるのは風鳴・江夜(ベルゼバブ・d00176)。
    「おお、悪ぃ! 江夜が全部食ったら次に行こうや!」

     次に向かったのは有名焼肉店だった。
     もちろん頼むのはシロコロだが、せっかくなのでそれ以外も頼むことにする。
    「シロコロ、レバー、カシラ、カルビ、ハラミ、タン。それに塩キャベツとライスを大盛り」
    「食い倒れポニー、そんなに一気に食べて大丈夫か?」
    「大丈夫だ。問題ない」
    「いや、それフラグだぞ」
     まー実際、宮子は韓国店で注文を調整し胃袋のウォーミングアップを済ませているので計算通りだ。
     いろいろ運ばれて来て、さっそくシロコロを頬張るのはアキラ。
    「アキラは普段も食うのか?」
     怪人が聞いてくる。
    「父ちゃんがこういうの好きなんだ」
    「へぇ、良い父ちゃんじゃねーか」
     へへっと鼻の下を人差し指で擦って照れるアキラ。
    「ホルモンはけっこう食べるからさ。ハチノスとかも食うぜ!」
    「ハチ……ノス……」
     怪人の動きが止まる。
     何かの戦闘風景を幻視する怪人。
    「おい! 大丈夫か!」
     話の途中で固まった怪人をアキラが揺する。
    「い、今のは……」
    「ほら、次の店行くぜ! まだまだお楽しみはこれからだぜ!」
     笑顔全開なアキラに連られ、怪人は今の光景を振り払って店を出るのだった。


     看板に工事シートの被された牛丼屋を曲がり一番街を進む。やがて辿り着いたのは小さな店だった。
    「それにしても……江夜、そんなに食って大丈夫か?」
     早速出てきたシロコロを今までと同じペースで食べる江夜に、怪人が心配そうに話しかける。
     もぐもぐもぐ、ごくん、もぐもぐもぐ。
    「江夜?」
    「え?……あ、美味しくって夢中になっちゃって……ごめんなさい」
     その細い身体のどこに入るか不明だが、事実胃袋には自信がある江夜。3件目だがまだまだ食べられる。
    「気にするな! 食え、遠慮なく食え!」
     怪人は嬉しそうにシロコロを奨める。
    「味噌っすか?」
     店長が特別にと持ってきたタレは味噌ダレだった。これにシロコロをつけて食べろという。
    「うまい!」
     今までに無い絶妙な濃さ、臭み消え、しかし辛さより旨さが、そしてご飯が進む。
    「本当だ! 味噌ダレうめーな! これだけで生きてけるな!」
    「おうアキラ! そいつぁ真実だが、それだけじゃダメだぜ?」
     割り込んでくる怪人。
    「シロコロも良いが、勉強もしねーとな!」
    「バカにするなよ! 理科の成績、クラスで3位なんだぜ♪」
    『おおー』
     仲間達から声があがる。良い気分だ。
    「店長! シロコロ3皿追加だ! 3位祝いだ!」
     怪人が笑いながら追加注文。
    「そういやシロコロ怪人、十和田バラ焼きって知ってるか?」
     ディーンが怪人に世間話を振れば「なんだそれは?」と怪人も興味津々。
    「青森のB級グルメでさ、牛のバラ肉を使った――」
    「牛……牛肉……」

     先ほど見た工事シートのかけられた牛肉屋の看板がフラッシュバックする。

    「俺は……あの看板を……」
     メラメラとシロコロ怪人からエナジーが立ち上りはじめる。
    「怪人さん! この店のシロコロ、最高だよな~」
     後ろから怪人に肩を組んで気軽に話しかける和己。
    「そういや同じセンターから卸してるって聞いたけど、やっぱタレが違うと別モンだな!」
    「あ、ああ……」
    「でも、そろそろさっぱりとしたの食いたいな」
    「あ、私もデザート」
     明日香が便乗して注文した瞬間。シロコロ怪人がすくっと立つ。
     ついに記憶が!?
    「まだ肉食えるだろう!」
     言いたかっただけらしい。
     だが、その一言とともにシロコロ怪人の顔が晴れ晴れとする。
    「ようやく思い出したのかな……?」
     明日香のつぶやきに、怪人がこくりとうなずく。
    「なにもかも思い出したぜ……俺は――」
     そう言ってエナジーを解放しようとするシロコロ怪人――の耳に、聞き捨てならない台詞が飛び込む。
    「そっちのシロコロ焼けてんぞ!」
     怪人の目の前のシロコロを指差し虎次郎が叫ぶ。
    「おお!?」
    「火が通り過ぎちまうだろ座れ!」
    「いや、アンちゃん、俺は」
    「いいから座れ! 焦げて良いのか!?」
    「駄目だ!」
     慌てて座る怪人。そしてひょいパクと目の前のを食べて再び立ち上がると。
    「よし、聞いてくれ。俺は――」
    「まだ焼けてない肉が残っている。残すのか?」
     宮子に指摘されて「ああ? そいつぁ駄目だ」と再び着座。
    「シロコロ、レバー、カシラ、カルビ、ハラミ、タン。それに塩キャベツとライスを大盛りで」
    「待て待て、そこで頼んだら終わらないだろーが!」
     宮子の追加注文に思わずつっこむ。
    「だが私は食べたい」
     無表情にどや顔の宮子。
    「ったく、じゃあ食いながらで良い。俺の話を聞いてくれ」
     じゅうじゅうと肉の焼ける音と、気にせずシロコロを食べる音がだけが聞こえる意外と静かじゃない店内で、シロコロ怪人は皆を見回して神妙な顔つきで言った。
    「俺はダークネスだ。そしてアンちゃん達は……灼滅者、だな」
     一同が沈黙する。それは無言の肯定。
    「はは……まいったな。記憶のせいか、なんとなくわかっちまうんだが……やっぱり、か」
     上を向いて自分の言葉を噛みしめる怪人。
     楽しい仲間達だった。
     だが、それは決して相容れない同士だったのだ。
     怪人の心境が伝わり、灼滅者達の中にも何かがこみ上げる。
    「まって! 此処じゃシロコロ食べてる人に迷惑がかかるよ!」
     必死に泰河が口を開けば。
    「ああ、俺たちが出会った……公園に行くか」
     他の者もフォローする気でいたが、怪人はあっさり店を出ることに同意した。
     外に出ると2月の風がやけに冷たく感じられた。
     一番街を公園に向かって歩く9人。
     泰河が先頭を歩く怪人に並び話しかける。
    「実を言うと……内蔵系って、普通に食べた事もないし、ちょっと敬遠してたんだけど」
     怪人はずっと前を見たままだ。
    「美味しいものを食べれば……いけるかもしれないんだよっ……美味しかった。ありがとうね?」
     前を見たままの怪人の手が、すっと泰河の頭をわしゃっとなでる。蹄のごつごつした堅さが痛かった。


     夜の厚木中央公園で怪人と灼滅者達は対峙する。
    「……それじゃあ食後の運動、だね」
     江夜が静かにつぶやき、そばに相棒ルキが現れる。
    「ああ、食後の運動は大事だな」
     怪人が言う。
    「僕は……哀しいな。さっきまで一緒に美味しくご飯を食べていたのに」
     悲しそうに言う泰河。
    「悪ぃな、俺にはシロコロで世界を制覇する夢がある。アンちゃん達は……許しちゃくれねーんだろう?」
    『………………』
    「だよな」
    「……お兄さんの名前、聞いていいかな?」
     ふっと口元に笑みを浮かべて怪人が跳躍する。
     真球オブジェの上に降り立つと、マントをバサリ!
    「俺はダークネス、シロコロ怪人ツヴァイ! 俺の野望を邪魔するのなら遠慮はしねえ」
     一気に全身からオーラが解放される!
    「シロコロつけるぜ!」

    「パラノイアアクション」
     灼滅者達も即座に動き出す。カードを解放した宮子が周囲を巻き込み虚ろなる夜霧を生み出せば、和己もその瞳にバベルの鎖を集中させ短期行動予測力をアップさせる。
    「1つ、言わせてくれ!」
    「なんだ肉食男子!」
    「ドイツにシロコロねーじゃん!」
    「いずれドイツも制覇するさ!」
     にやりと笑って返す怪人は、高く跳躍し灼滅者達のいる場所へ飛び込んでくる。
     一斉に散って回避する8人、うち虎次郎が回避したまま影を鋭い刃に変えて怪人を狙う。影がわずかにマントを切り裂いた。
    「やるなシロコロ侍――ぐっ!?」
     虎次郎に意識が向いたほんの一瞬、アキラが放った導眠符が怪人の意識をコンマ数秒飛ばす。
    「貫け、アイシクルステーク!」
     その隙にディーンの冷気が怪人を貫く。
    「ふんっ!」
     気合いで浸食する冷気を割ると即座にバク転。
     怪人がいた場所に明日香が飛び込んでくる。
     逃がさないとばかりに拳を、蹴りを打ち込む明日香だが、怪人はそれを蹄で、膝で防ぎ、最後に雷を纏った明日香のアッパーを十字ブロックで耐えきる。
    「やるもんだねぇ、今度こそしっかり灼熱してやろうじゃないか」


     戦い始めて十数分が経ち、それでも両者譲らぬ攻防は続く。
    「アンちゃん、そろそろ当たっちゃくれねーか?」
     怪人が拳を連続で叩き込むが、逃げ足には自信がある和己がにししと笑いながら回避。
     さらに逃げ際に魔法の矢を打ち込むが、怪人は蹄で弾く。
    「行くぜ!」
     声に振り向けばオブジェの上に立つアキラ。
     とうっとジャンプし空中から斜めに怪人へとキックを放つ。
    「させるか!」
     飛び込んでくるアキラに向け、怪人は両足を揃えて斜め上へと飛ぶ。
    「炭火焼キーック!」
    「シロコロップキック!」
     激震!
     両者弾かれるように大地に叩きつけられ……だが。
    「アキラ、強ぇじゃねーか」
    「へへっ」
     素直に誉める怪人だが、その表情は何か覚悟を決めたようだった。
     シュッ!
     背後に回り込んだ宮子のナイフが怪人の背をマントごと切り裂く。
    「食い倒れポニーか」
    「隙だらけだ」
     さらに追撃とナイフを構える宮子だが、ピクと察して距離を取る。
    「賢明だ……だが、遅い」
     振り向きざまのシロコロ破、白い爆光が宮子を襲う。
    「くっ」
     煙をあげ片膝を付く宮子。
     だが、その身を即座に虎次郎の霊力が包み癒す。
    「油断禁モツっすよ! モツだけに!!」
    「シロコロ侍……良いタイミングだ。これなら肉の焼き加減も任せれそうだ」
    「何を言って――」
     虎次郎の返事を待たずに怪人は駆ける、標的は江夜だ。
    「ルキ」
     視線を交わし、即座に怪人へ向かっていく江夜。
     一気に距離を詰め、斬艦刀が一直線に怪人へと振り下ろされる。
     ギンッ!
     蹄が強引に江夜の刃を止め、その足下がずずんと沈む。
     しかし足の止まった怪人に雨アラレと六文銭が降り注いだ。
    「良いコンビじゃねーか」
     怪人が江夜とルキを交互に見つめ。
    「穿つ、スパイラルブレイク!」
     ディーンの槍が怪人の横腹に突き込まれ、その勢いは止まらずガガガガと怪人の足が大地に轍を作り。
    「お……ぐっ、ま、まだまだ!」
     槍を自らの手で引き抜き捨てるが、視界が歪む。
     そして次の瞬間、目の前にいたのは泰河だった。
    「泰河、か」
    「一緒に楽しく御飯食べた事……忘れないよ?」
     怪人の懐に潜り込み、真下から突き上げるように百の拳が怪人を舞い上げる。
     そして空中に浮かんだ怪人の背後に影……明日香が後ろから怪人の腰をホールドする。
    「止めだよ」
     そのまま怪人の頭を下にして、アスファルトに突き刺す!
     明日香が仲間達の位置へと戻る。
    「ここまでの……ようだな……」
     ゆっくりと起き上がるシロコロ怪人、だがすでに戦う力が残されていないのは誰の目にも明らかだった。
    「1つ、教えてくんねーか? どうして俺が記憶喪失中に、灼滅、しなかった?」
     聞いてくる怪人にエクスブレインの話をする者はいない。それに、もしその指示が無かったとしても、きっと――。
    「愚問……だったな。肉食男子、江夜、食い倒れポニー、BB、焼肉小僧、だらけ屋、シロコロ侍、そして泰河……少しの間だったが」
     派手な光が瞬き。
    「楽しかった、ぜ」
     爆発の衝撃波が、灼滅者達の頬をなでた。

    作者:相原あきと 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2013年2月16日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 2/感動した 22/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 3
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