ノリで復活、ノリノリシュトルム!

    作者:一兎

    ●ノリノリが帰ってきたYO!
     べちゃ、べちゃ、べちゃべちゃり。
     水分たっぷりの足音を鳴らして、その人影は有明の港に現れた。
    「フフフ、まさか遠く、ドイツでノリ巻き製造機が作られてたなんて、知らなかったんだNE」
     全身をベトベトの海苔で包んだ人影は、ニヒルな笑みを浮かべる。もちろん、濃厚な海苔が阻んで、その顔を見る事は出来ない。
     しかし、海苔のない露出した部分が一箇所だけあった。その両腕である。
     海苔に覆われていない両腕には、黒光りする、円柱状のローラーがついていた。
    「ゲルマンシャーク様のパワーで蘇ったミーに、もはや死角はないNE。このナイスなローラーで、今度こそブラザーたちとの再会を目指すYO!」
     ぎゅぃぃぃぃぃぃん!!
     海苔まみれの怪人は、両腕に対となったローラーを、高速回転させる。
    「まずは、漁港から制圧するNE。賢いミーはわかったんだYO。ストアーに出回る前に、ブラザーを回収すれば、とってもスマートなんだって事がNE!」
     さぁ、大勢のブラザーたちが待ってるYO!
     そうして蘇った海苔怪人、ノリノリシュトゥルムは漁協を目指す。
     全国のブラザーたちを巻き込む日を目指して。

    ●ノリノリの再生怪人だYO!
     かつて佐賀県有明の地に現れた、一人のご当地怪人がいた。
     その名をノリノリと言い、全国の海苔を集め、家庭から磯の香りを奪い、ゆくゆくは世界征服を狙った。ノリノリの海苔怪人である。
    「ノリというか、そういうお約束にはノッてくる。怪人らしいといえばらしい。そんな怪人だったのです。……確かに灼滅したはずなのですが」
     かつての未来予測を行ったエクスブレイン、五十嵐・姫子(高校生エクスブレイン・dn0001)は、首を捻る。
     姫子が言うことには、それが今回、再生怪人の一人として蘇ったのだという。
    「言動も相変わらず、変わった喋り方をする怪人で、ほとんど同じものに違いないでしょう。本人も、ゲルマンシャーク様の力で蘇ったと言ってますしね」
     新たな名、ノリノリシュトゥルムと名乗りを挙げて。
     ちなみにシュトゥルム(もしくはシュトルム)とは、ドイツ語で『疾風』や『嵐』といった、それらに関する意味がある。
    「以前、現れたものと違いもあるようで。例えば、名前だったり。両腕のローラー、それから狙う場所ですね」
     もっとも変わった部分は、やはり両腕のローラーらしい。
    「海苔怪人らしく、海苔を使った攻撃をしてくるのがノリノリでした。海苔を飛ばしてくる攻撃に、体の海苔の一部を爆裂させる攻撃。それから、地面に撒いた海苔を接着剤にして、相手を捕らえるノリノリトラップ」
     その三つに加えて、ノリノリ自身のタフさが、かつて戦った灼滅者たちも苦戦させた。
     だが、今度のノリノリシュトゥルムは、3つの攻撃のうち、ノリノリトラップを使えないという。
    「というのも……海苔に粘着性がなくなったようで、使おうとしても、使えないんだそうです」
     蘇り、新たな力を手に入れたかと思えば、なんとも情けない話である。
    「ですが。新たな攻撃、ノリノリストームを使ってきます。これは両腕のローラーを高速回転させて、真空の竜巻を作り上げる。必殺技とも言える攻撃なので、油断しないようにお願いします」
     もはや海苔である事を捨てているのではないか。
     灼滅者たちの内心を知ってか、知らずか、姫子は思い出したように、あっと呟き。
    「そうでした。ノリノリシュトゥルムは、有明の漁港に現れるそうです。幸い船はほとんど出ている時間のようなので、余裕をもって戦えると思いますよ」
     それからもう一度、お願いしますと言って、頭を下げた。


    参加者
    姫乃木・夜桜(右ストレート・d01049)
    大動山・鳴(侵掠すること山の如し・d01926)
    流鏑馬・アカネ(霊犬ブリーダー・d04328)
    久遠寺・友(見た目はクールビューティー・d04605)
    リヒト・シュテルンヒンメル(星空のミンストレル・d07590)
    九条・桃乃(原罪の悪夢使い・d10486)
    シュネー・クリスタ(温もりの綿雪・d11788)
    悪野・英一(悪の戦闘員・d13660)

    ■リプレイ

    ●ノリにノッていくYO!
    「そんな気はしていたけどNE。本当に邪魔が入るとは思ってなかったYO!」
     バベルの鎖の予知とかではないと、自ら明らかにして、ノリノリシュトゥルム(以下ノリノリ)は感じていた予感を灼滅者たちへと訴える。
     灼滅者たちに言われても、どうしようもないのだが。
    「だけど。ユーたちは残念だったNE。パワーアップしたミーの力を思い知るといいYO!」
     それでも、ノリノリは余裕の態度を崩さず。自らの体を覆う海苔の一部を切り離し、海苔で出来た配下を作り上げる。
     数は、以前と同じく2体。
    「悪……それは己の信じる浪漫……そう、ロマン。そして己が信じる道。ご当地を愛する怪人として生まれながら、そのロマンを忘れた怪人。断じて許すわけにはいきません!」
     それらの様子を見ていた悪野・英一(悪の戦闘員・d13660)は、悲しみと怒りに拳を握る。
     悪だからこその美学がある。それを強く信じる英一にとって、悪とは正義だった。その正義を海苔のように黒く汚されたのだ。
    「イーーー!!」
     今こそ、下克上の時。戦闘員は怪人に打ち勝つため、スレイヤーカードを起動する。
     しかし、この英一という少年、地顔はなかなかに二枚目なのだが、こうなると顔が隠れるので、ある種残念であった。
    (……何をしているのかしら)
     そうやって、ヒーローのお約束に場が熱く盛り上がる一方。
     九条・桃乃(原罪の悪夢使い・d10486)は、いつまでこのノリについていけそうか考えていた。
     桃乃の場合、なんとなく面白い見た目のダークネスが出てきた認識でやってきたのであって、態度に見せない程度で戸惑いもあった。
     だが、考えていても時が止まるわけではなく。
    「久しいのぅ。ノリノリ、いや、今はノリノリシュトゥルムと言ったか。じゃがな、わしらがおる限り、食卓の平和を壊させはせんぞ!」
     口上を繋げるように、大動山・鳴(侵掠すること山の如し・d01926)が叫ぶ。
     かつてのノリノリを灼滅したメンバーの中に、鳴はいたのだ。因縁の強さにおいて、鳴以上の男もいない。
    (まぁ、これなら。わからないでもないわね)
     この因縁という点では、桃乃も納得がいく事だった。
     しかし、桃乃のように考える少女がいる中、逆のベクトルを持つ少女がいた。
    「渡り鳥は、海に落とした小枝に羽を休める」
     じっと黙っていた久遠寺・友(見た目はクールビューティー・d04605)は、突然に語りだす。
    「そして進むべき方向へ吹く風を待ち、自分の心に従い正義に向かって飛ぶ。……人、それを『飛翔』という!」
     ヒーローに詳しい者なら、誰もが知っている台詞だった。当然、ノリノリも例外ではない。
    「ユー、それを知っているとはタダ者じゃないNE。名を名乗るYO!」
     そして、次にどんな言葉が飛び出すのかも。
    「貴様に名乗る名前はない!」
    (もう、なんでもいいわ……)
     友がノリノリに対して素早く言い返す間にも、桃乃の中でのヒーロー像は、よくわからないものとなっていた。

    ●ノリノリの前哨戦だYO!
     テンションこそヒーローモノのノリで始まった戦いだが、復活したノリノリの力は本物であった。
     配下が、ただ海苔を飛ばすだけでなく。大元であるノリノリに迫る攻撃をかばうようになったのも、進歩の一つだろう。
     だが、逆に言うと。配下さえ倒してしまえば、ノリノリは無防備になる。
    「まずは守りから引き剥がす」
     海苔の飛び交う戦場の中、リヒト・シュテルンヒンメル(星空のミンストレル・d07590)は、リングスラッシャーを操り、怪人の頭上に光輪のプリズムを作り出す。
    「僕は、悪に対しても最低限の敬意は持ってるつもりです。が、今は敬意も捨て去ります。光よ!」
     次の瞬間、プリズムから七色の光が放たれ、ノリノリと配下たちに降り注いだ。
    「熱いYO! 焼きノリになっちゃうYO!?」
     あまりの熱さにノリノリが、地面に転がりながら悶えた。さらに、この機を逃さず流鏑馬・アカネ(霊犬ブリーダー・d04328)がガトリングガンを、配下に向けて構え。
    「それならいっそ焼き海苔にしてやる。吹っ飛べ!」
     叫びにあわせるように、ガトリングガンが炎の弾丸を吐き出していく。
     海苔の体をかすめていく弾丸に、口を持たない配下の一体が炎上する。
    「日本語? 英語? ドイツ語? どれなんだろ……はっきりしないと、ムズムズするんだけど……」
    「どうせ関係ないに決まってるでしょ! いいからやるわよ!」
     その脇を、赤いマフラーをたなびかせシュネー・クリスタ(温もりの綿雪・d11788)が、右腕に闘気を纏いながら姫乃木・夜桜(右ストレート・d01049)が駆け抜けた。
     シュネーの疑問に、夜桜はつき返すように答えて、拳の闘気を雷に変える。
    「天が呼ぶ、地が呼ぶ、あたしの右手が唸る。受けろ、エレクトロアッパー!」
     続けてシュネーも、マテリアルロッドに宿る魔力を冷気へと変える。
    「んー、それもそっか。本場ドイツの雪を味わえ! シュネーツェアシュテールンク!」
     夜桜の拳は一体の配下の中心を捉えて、宙に打ち上げ。
     シュネーの振りぬいたマテリアルロッドが、炎上する配下へと叩き込まれた。
    「どう、これでアンタの守りはなくなったわよ?」
     拳を振りぬいた姿勢のまま、夜桜はノリノリを見据える。その頭上で配下が爆散。
    「悪ノリはやめて、大人しく降参したらどうかな。今ならさっぱり灼滅させたげるよ?」
     炎ごと凍てつかせた配下からマテリアルロッドを引き抜き、シュネーが続けて言う。引き抜いた衝撃で凍った配下が砕け散った。
    「Why? Give up?」
     しかし、悶えるのをピタリと止めてノリノリは立ち上がる。
     その表情は海苔に覆われて見えないが、不敵な笑みを浮かべて。
    「冗談じゃないNE。ミーにはまだ、このナイスなローラーがあるんだYO!」
     ぎゅぃぃぃぃぃん!!
     ノリノリのテンションに連動するかのように激しく回転を始めるローラー。それと同時に渦巻く黒い旋風が、灼滅者たちに襲いかかった。

    ●ノリノリの必殺技だYO!
     黒い渦の黒さの秘密は、粉塵のように舞い上がった大量の海苔である。
     しかも、空気に掻き回される内に乾燥した海苔は、ガラス片のように細かいカッターと化し、灼滅者たちを切り裂くのだ。ノリノリストームは、ノリや冗談ではすまない脅威の必殺技であった。
    「わっふがる、お前は皆の傷を癒しておくれ」
     がるっ。とアカネの言葉に従い、霊犬のわっふがるが傷ついた灼滅者たちのもとへと駆ける。
    「そっか、やっぱり怒ってるんだね。わっふがるも……!」
     わっふがるは、その鳴き声から名づけたという。嬉しい時はわっふと鳴き、怒った時はがると鳴くから、わっふがるなのだ。
     そしてサーヴァントである霊犬の感じる怒りは、主の感じる怒りでもある。
    「YO! YO! YO!」
     アカネが怒りの視線を向ける先、ノリノリは最高にハイテンションを維持して、攻撃を続けている。
     これまでに数々の攻撃を加えたはずで、相当のダメージを蓄積させているはずにも関わらず。その動きは小賢しい。
     そして再び。
    「この一撃でラストにするNE! ユーたちの誰かを倒せば、ノリでミーのビクトリーになるんだ、YO!」
     地鳴りの如き音をたて、ローラーの回転が始まる。
     それでも物怖じする灼滅者たちではなく。一人、鳴が真っ向から立ち塞がった。
     鳴は、視線を一度仲間たちへと向け、次に己の霊犬、皐月へと向けてから、両腕を正面に突き出す。
    「黒い海苔が視界を埋め尽くすこの時じゃ……見えたぞ! 勝機は今じゃぁ!」
     左腕を右回転、右腕を左回転、二つの腕の間に生じる力任せの圧倒的豪快空間は、まさに筋肉的神薙刃の小宇宙。
     鳴の両腕から放たれた旋風と、黒い海苔の旋風がぶつかる。
     しかし、鳴の腕はあくまで人の腕。360度回転するわけでも無限駆動を続けるわけもなく、しだいに押されていく。
    「HAHAHA、ちょっと焦ったYO。でも、ユーの腕じゃ無理があったNE!」
     勝利を確信したノリノリ、だが鳴の秘策はここからだった。
    「今じゃ、皐月! 力を借りるぞ、リヒト!」
     その時、鳴の繰り出した旋風の中から二匹の霊犬が飛び出した。皐月とリヒトの霊犬、エアレーズングである。視線には、この合図も込めていたのだ。
     二匹の霊犬は宙で交差するように、ノリノリの黒い旋風を飛び越え、飛び降り様にローラーに刃を振り下ろす。
     これには余裕だったノリノリも驚いた。
    「WHAT!? ミーのナイスなローラーがなくなっちゃったYO!?」
     ごとりと鈍い音をたてて、地面にローラーの残骸が転がる。
    「ノリノリストーム、敗れたり! 後は皆、任せた!」
     ただ、ローラーは消えようと。一度放たれた黒い旋風は勢いを残している。すでに抗う力もない鳴が、それに呑まれようとした時。
    「イーーー!(欠員は一人も出させませんよ。ここまで来れば、全員で元気に帰りましょう)」
     迫る旋風を前に、一人の戦闘員、英一が体を大の字にして割り込む。叫びの音は一つしかないが、込められる意味は無限にも近い。
    「イ゛ーー!!(おぉぉぉぉぉぉ!!)」
     英一の魂は熱く燃えていた。どれだけ派手に吹き飛ぼうと、奇跡的にヒーローを追い詰めたとしても、決してスポットライトを浴びる事がないのが戦闘員だったが、意地で負ける気はなかった。
     果たして、戦闘員スーツは所々裂傷とともに裂けたが、英一という戦闘員は高々とサムズアップしてみせる。
     耐え切ったのだと。

    ●ノリノリのラストだYO!
     ローラーをなくしたノリノリに、灼滅者たちは畳み掛ける。
     普通、ヒーローというものは必殺技を封じられた時、新たな必殺技を生み出す。だが、ノリノリはヒーローではなく怪人だった。
    「二人に比べれば、やはりあなたは対した器ではないようですね。必殺技をなくした悪役ほど哀れなものもない……」
     そう言い、リヒトは手を振る。すると宙を舞う光輪が、七つに分裂、それぞれが違う七色の輝きを放ちながら、ノリノリの周囲を旋回する。
    「私は、ああいうものに興味ないけれど。エンターテイメントの一つである事は認めるわ」
     最初に、状況を理解し難いとしていた桃乃も、知らず惹かれるものを感じていたのかもしれない。
    「ユーは、ノリが悪いんだYO!」
     そんな桃乃に、ノリノリはあくまでノる事を勧める。
    「えぇ、私には私のエンターテイメントがあるもの。あなた、手品はわかるかしら?」
     だが、桃乃もそれを変えるつもりはない。人は違って当たり前、トランプのカードのように、それぞれが違う形であって、違う数字であるのだ。
    「小さな事でも、人を騙すのは簡単なの。人の目はたえず動く物を追いかける。そして、意識しないところで仕掛けは動く……」
     そのまま、手品という建前で桃乃は攻撃を繰り出す。たった一枚のトランプを飛ばしただけだったが、トランプには物理的な衝撃となる魔力が込められていた。
     七色のリングスラッシャーに惑わされるノリノリが、その攻撃に気づいたかどうか。
    「最後に一つだけ、聞きたいのだけれど。そのローラー、ゲルマンシャーク様から貰ったのかしら?」
     トランプの存在に気づかないノリノリは、これに強く言い返して。
    「HAHAHA、ミーから情報を引き出そうとしても無駄だYO。ミーも会った事ないからNE!」
     決して威張れる事でないが、それでもノリノリは自信満々に言ってのけた。
     そして答えを聞いた桃乃は、判断を下した。この怪人は、ゲルマンシャークについて何も知らないと。
     瞬間、ノリノリの体に衝撃が走る。
    「トドメはお願いするわね」
     桃乃が、用は済んだと後ろに下がると入れ替わりに、シュネーがを光輪を飛ばした。
    「ボクの得意分野は氷だけじゃないってとこ、見せてあげる。正義の炎で焼き海苔になれ!」
     宙を舞う光輪は燃え上がり、ノリノリの体に食い込んだかと思うと、勢いでノリノリの体を持ち上げた。
    「何も知らなくて、ノリで事件を起こそうってわけね。よっぽど性質悪いじゃない!」
    「それが、ミーの人生なぶごはっぅふYO?!」
     夜桜がそれを追いかけ、罵倒を浴びせながら次々と拳を突き出す。空中の物理法則を無視して何度も蹴りや殴りを叩き込むと、最後に一発、右ストレートを放ち。
    「オーライ、オーライ、オーライっと。よしここ、ビンゴ。……いやね、別に飛び込む気はなかったけど。こうなりゃ勢いよねっと!」
     やっと重力に従い落下するノリノリの行き先には、友の掲げるバスターライフルの先端があった。
     ノリノリはこの時、敗北を確信した。だから悪役らしく叫ぶ。
    「ミーが死んでも、全てのブラザーたちとゲルマンシャーク様の野望は潰える事はないYO! 野望が何か知らないけどNE!……Lebe wohl(レーべ・ヴォール)!」
     友は、突き刺すように銃口を捻じ込み、引き金を引く。
    「イー!? イ゛ェァァー!!?」
     ノリノリシュトゥルムは爆散した。

    ●ノリで終わる海苔の話
     爆散した勢いで、港の一帯には大量の海苔が撒き散らされた。
     当然、ノリノリを前にしていた灼滅者たちにも海苔が降り注いだが、事前に聞いていた事や、経験者の鳴がいるおかげで対応も素早かった。
     ちなみに、一番近くに居た友に海苔は付着していない。トドメにバスターライフルでまるごと吹っ飛ばしたのだから、半ば当たり前とも言える。
    「そうだな……別に、いいんじゃないか? 艶かしくて。一部のマニアには受けるぞ」
    「マニアって何よ!? あーもう、ぐじゅぐじゅして気持ち悪い……!」
     逆に、バスターライフルで吹っ飛ばした先にいた夜桜には、べっとりと海苔が降りかかっていた。
     ただ、ノリノリが爆散する瞬間、明らかに違う叫び声も混じっていたわけで。
    「あら、何が起きたら、あぁなるのかしら」
     ちゃっかりと、一番の巨体を持つ鳴の陰に隠れていた桃乃は、海の方を見て、呟く。
     今頃の佐賀県の海水温は、だいたい15度前後である。普通に寒い。
     その寒い海の水面に、英一の体が浮いていた。マスク越しでわかりづらいが、顔のある方が上を向いている。
    「おーい、だいじょぶかい?」
     海苔にまみれたマテリアルロッドの先っぽでそれを、シュネーが突っつく。
    「……ッイー!? ィがぼごば??!」
     大丈夫そうだった。
    「ガッハッハ! 終わりよければ全て良し! 風邪を引く前に食事処を探すとするかの。みんなで漁師飯じゃ!」
     不安の種はもうないと、鳴は笑って海に手を伸ばし、軽々と英一を引き上げる。
    「あたしも、わっふがるを洗ってあげたいな」
     今度はわっふと鳴く霊犬を抱き上げ、アカネも賛同して。
    「僕もせっかくですし。海苔巻きとか、食べてみたいですね」
     リヒトも、希望を述べながら英一の救出を手伝い。
     一部海苔にまみれた灼滅者たちは、ノリとかでなく笑うのだった。

    作者:一兎 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2013年2月12日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 6/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 7
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