ヴァイスクライト 宇都宮ぎょうざ怪人、再臨

    作者:黒柴好人

    「2位だってな」
    「な」
     宇都宮市民ならこれで全てを理解するだろう。
     当然、先頃発表された国の調査による世帯あたりの餃子の支出金額の話だ。
     またしても宇都宮は敗北した。
     宇都宮市民にとってのアイデンティティーを2度も奪われてしまった。
     これほどの屈辱、恥辱は他にあろうか!
     市民は今、深い悲しみと懴悔の念に自らを落とし込んでいる。
    「まあどうでもいいけどな」
    「な」
     あ、はい。そうですね。
    「そんなでれすけ野郎がのさばっているから宇都宮は負けたのだギョーザ!」
    「むう!」
    「何奴!」
     ごく一般的な宇都宮の青年たちに叱咤する謎の影!
    「今一度宇都宮の味を知るがいいギョーザ!」
    「「もごほぉッ!?」」
     アンブッシュ!
     語尾にギョーザと付けるいかにもな餃子男が餃子を男たちの口の中へと叩き込んだ。
    「味はどうギョーザ?」
    「……む、う」
    「……個性的」
    「ギョッザッザ! 宇都宮は国際都市ギョーザ。今回の餃子のタネはドイツの国旗をイメージした配色にしてあるギョーザ」
     詳細はわからないが、確かにドイツ色の強い餃子になっていた。
    「このコラボはないな」
    「な」
    「黙れァちゃぶすぞゴラァ!!」
    「「ぎええええええ!!」」
     2人は巨大な餃子の皮のようなもので包まれてしまった。
     ほんわか温かくて心地よかった。
     このまま一生出たくなくなる程に、な……!
    「なんだこれ……クッ、お前は一体!?」
    「おおっと、オイラとした事が自己紹介を忘れていたギョーザね」
     よくよく見ると餃子頭に餃子マントの不思議な出で立ちの男が仁王立ちをし、堂々と名乗った。
    「オイラこそゲルマンシャーク様の偉大なる力で復活した、メッサー・宇都宮・クーゲルシュライバー・ぎょうざ・ツヴァイ・怪人でギョォォザァァァ!!」
    「長くね?」
     長いね。
     
    「時が、来たようだな」
     神崎・ヤマト(中学生エクスブレイン・dn0002)は灼滅者たちを迎えつつ、こめかみを抑えていた。
     視線は目の前に置かれたルービックキューブに落とされている。
    「難しそうな顔をしているって? ああ、難しい問題に直面しているんだ」
     ヤマトはそう言いながら灼滅者へと振り返った。
    「果たして餃子のタレを作る際の酢と醤油とラー油の比率は何が正しいのか……!」
     割りとどうでも良い問題だった。
     それはともかくヤマトは灼滅者たちに事件の概要を説明する。
    「ゲルマンシャークという謎の存在が謎の方法を使い、倒されたご当地怪人を復活させている謎がある」
     昨今、謎という単語は妙に安売りされ過ぎている気がする。
    「今回お前達に向かってもらいたいのは栃木県の宇都宮市だ。そこの名物……ご当地怪人といえば」
     宇都宮ぎょうざ怪人。
     宇都宮といえば餃子であり、逆に餃子以外の何が有名なのかと問われれば地元民でもしばしの思考時間を求める程、地元民に大変馴染み深いソウルフードである。
     それを模した怪人が宇都宮ぎょうざ怪人であり、かつて灼滅者により灼滅されたはずだった。
    「だが復活した。しかもドイツっぽい要素を付加して、だ」
     その名もメッサー・宇都宮・クーゲルシュライバー・ぎょうざ・ツヴァイ・怪人。
     知っているドイツ風単語を間に挟んだだけに聞こえるだろう。
     中二の時、必死にドイツ語辞典をぱらぱら捲った思い出が蘇る事だろう。
     つまり深い意味はない。
    「長いから餃子2とでも呼べばいい」
     わあシンプル。
    「奴の目的は以前と変わらず『餃子を無理やり食わせて宇都宮餃子の美味さを広め、ゆくゆくは餃子の力で世界を制服する』事にある。そんな押し付けがましい餃子愛はゴメンだな」
     どういうプロセスを辿れば世界征服できるのかはわからないが、わからないままの方が幸せなのかもしれない。
    「奴は現在、宇都宮駅の東口側、雑多なビルが立ち並ぶ一角に出没するようだ」
     そこで宇都宮ぎょうざを軽視しているような者を見つけるとすかさず参上し、布教ならぬ布餃子活動を行うという。
    「見た目は餃子そのものだが、戦闘能力は高いようだ。油断して餃子にされないように注意しろよ!」
     餃子を馬鹿にする者は餃子に泣く。
     宇都宮市に伝わる格言である。
     気がする。
    「コイツのせいで宇都宮ぎょうざの名が地に落ちたらもう宇都宮は色々とアレかもしれない……何としてでも倒してくるんだ!」
     ヤマトはルービックキューブを握りしめ、灼滅者たちに期待の眼差しを送るのだった。


    参加者
    天塚・箕角(天上の剣・d00091)
    佐渡島・朱鷺(第五十四代佐渡守護者の予定・d02075)
    啼鳥・小夜子(境界の小鳥・d02431)
    ライラ・ドットハック(サイレントロックシューター・d04068)
    星置・彪(藍玉・d07391)
    セシリア・スペンサー(ブレイクスルー・d10807)
    ジンジャー・ノックス(十戒・d11800)
    勅使河原・幸乃(鳥籠姫・d14334)

    ■リプレイ

    ●Welcome to Gyozerworld
     西口が陽とすれば、『駅東』は陰である。
     餃子像が移転してからはその価値すら見出すのが難しかった駅前も昨今は再開発が進められている。
     だが、混沌たる街の光景はあまり変わらないようだった。
    「宇都宮餃子は2年連続で負けたんだそうですよ」
     メインの通りを一歩でも外れると細く入り組んだ道しかなく、それはまるで迷路のようだ。
     そんな路地の雑居ビル群の一角。
    「1位はまた浜松みたいですね」
    「やっぱりね。連続2位とかもう宇都宮が餃子って古いんじゃないかな」
     辛辣な事実を淡々と語る佐渡島・朱鷺(第五十四代佐渡守護者の予定・d02075)の言葉に頷く啼鳥・小夜子(境界の小鳥・d02431)。
    「あたし餃子ってまだ一度も食べた事がないのだけど、初めて食べるなら、折角だし日本一の餃子がいいわ」
    「一度も、ですか……」
     お嬢様的発言で2人を驚かせる勅使河原・幸乃(鳥籠姫・d14334)。
    「でも確かに最初に食べるなら次点より一番がいいよね」
    「そうですね。しかし残念、ここでは一番の餃子は食べられないのですよ」
     この話を人目の付く場所でしていた場合、餃子で武装した市民が彼らを襲撃――し、ないよ?
     宇都宮市民はいつだって紳士だからね。ホントダヨ?

     一方、『囮』から少し離れた場所では。
    「……ここはこれからヒーローショーのリハーサルがある」
     だからこの道を迂回して欲しいとラブフェロモン全開で誘導し、作戦を滞りなく行えるように工作を行うライラ・ドットハック(サイレントロックシューター・d04068)。
     遭遇した一般人は胸を高鳴らせ、若干名残惜しそうにしながらもその場から離れていく。
    「ヒーローショー?」
    「……あながち間違ってはいない」
    「そういうものなのかしら。もう少し人が多くなってきたら殺界形成でまとめて離れてもらいましょ」
     そんな様子をやんわりと笑いながら眺めるジンジャー・ノックス(十戒・d11800)。
    「了解! それにしても餃子怪人が再生ね~……」
    「天塚さんは以前もぎょうざ怪人と戦ったのよね?」
     どこか思うところがありそうな天塚・箕角(天上の剣・d00091)にセシリア・スペンサー(ブレイクスルー・d10807)が声を掛ける。
    「そうそう。確かに怪人に再生ってつきものだけど、ドイツ要素なんか入ったらご当地要素半減な気がするんだけどなぁ」
    「かなりミスマッチよね。ところで、一度会った事のある天塚さんに質問したいのだけど」
    「ん?」
     苦笑するセシリアはふと、真剣な眼差しを箕角に向けた。
    「あの頭って、食べられるのかしら?」
    「……食べたいの?」
     お世辞にも美味な顔であるとはいえない気がする。
    「食べられるのか気になったりしたらマーケティングとしては成功なのかもしれないですけどね」
     とは言え、食べるのなら勿論ちゃんとした宇都宮餃子を食べたいものだと思う星置・彪(藍玉・d07391)。
    「さて、向こうはうまくやってるかな?」
     彪は十分に警戒をしながらこっそりと朱鷺たち3人の様子を窺った。

    「そもそも餃子ってご馳走ってわけでもないし、わざわざ食べにくる様なものじゃないよね」
    「そう、そこが問題です」
     小夜子の何気ない言葉に人差し指を立て、注目を促す朱鷺。
    「例えばパスタやハンバーグなどは毎回のように外食するようなものでもないですよね」
    「うん、普通はインスタントとか冷凍食品よね」
    「この餃子消費量というのは外食はカウントされない仕組みになっているんですよ」
    「外食はノーカウント……? つまり、いえ、そんな事があっていいのかしら」
     信じ難い真相をしったかのような表情で驚く幸乃。
     だが、朱鷺は肯定する。
    「食べたいけど店に食べに行くほどではない。なら冷凍食品で済ませるか餃子の皮を買って自作する。しかし、それすら怠ったという事は……」
     天を仰ぎ、大きく息を吸う。
    「宇都宮の方が意外と餃子好きでは無いのか……『宇都宮餃子に魅力が無い』んでしょうかね?」
     ゆっくりはっきりと、そう言ってやったのだ。
     時代が時代なら闇討ちされるところである!
     しかし飛び出してきたのは暗殺者の凶弾ではなく。
    「その言葉……聞き捨てならんでギョーザなぁ……!」
     餃子顔をした、文字通りの怪人だった。
    「突然話に割り込んでくるなんて、誰なの?」
     一応のお約束として尋ねる幸乃。
     それに対し、件の怪人は嬉しそうに名乗り出した。
    「オイラこそこの宇都宮を、いや! 後に世界を統べる存在になるメッサー・宇都宮・クーゲルシュライバー・ぎょうざ・ツヴァイ・怪人でギョーザ!」
    「ぎょうざ・ツヴァイ……? 『全国2位の餃子』って意味でいいのかしら」
    「ギョザ!?」
    「なんでドイツ語? えっ。宇都宮の友好都市にドイツあったっけ?」
    「こ、これはゲルマンシャーク様をリスペクトした証でもあるギョーザ! 手持ちの餃子もこれこの通り、ドイツ色ギョーザ!」
     小夜子の一言に微妙に狼狽えつつも皿の上の餃子をぱかっと割ると、タネが黒、赤、金の3色で構成されていた。
    「何でもかんでも洋風にすればいいって考えが安っぽいんだよ」
    「このままではぎょうざ・ドライやぎょうざ・ツヴァンツィヒになる日もすぐね」
    「お嬢ちゃんたち、言葉の刃がザクザクきてるギョーザよ……?」
     しかしここで挫けるような宇都宮男児、メッサー・宇都宮・クーゲルシュライバー・ぎょうざ・ツヴァイ・怪人(以下、餃子2)ではない。
    「そんな生意気言う口には、餃子をたーっぷりと詰め込んで教えなきゃいかんギョーザねぇ」
     じりじりと幸乃たちににじり寄る餃子2。
     だが、自分がにじり寄られていた事には気付かなかったようだ。
    「……Gae Buide on」
     背後からの声に「ギョザ!?」と振り返る餃子2。
     そこには、殲術道具で武装したライラたちの姿があった。
    「やほー、久しぶり。私の事覚えてる?」
    「む?」
     その中の1人、箕角が久しく会っていなかった友人にするそれのように軽く手を振り尋ねた。
     餃子2はラー油をたらしたような赤い目を大きく見開き、じっくりと箕角の顔を見た。見続けた。
    「……あー、あれギョーザねー。その節は世話になったギョーザー」
     すごく棒読みだった。
    「なにその曖昧な反応! ねえ、本当に覚えてるの?」
    「オマエあれギョーザ、オイラをこう、あれね。うん、あれしたあれギョーザね!」
    「も、もしかして頭の中まで食べられる素材になっているから記憶力も悪いのかしら!?」
     何故か嬉々として瞳を輝かせるセシリア。
    「フン、オイラはなかなか食えん漢だって巷では話題ギョーザよ」
     それは意味合いがかなり異なるだろう。
    「それはそうと、どうやらオマエたちはオイラの邪魔をするつもりギョーザね?」
    「だとしたら何だ?」
     先ほどまでのやわらかなシスター風から一転、敵と認識した者には尖った態度を見せるジンジャー。
    「オイラの目的は宇都宮ぎょうざの普及。つまり、このちょーっと小生意気なお譲ちゃんたちに餃子を食わせれば目的は達成ギョーザよ」
     囮役の小夜子たちの事だろう。
     まさに餃子のヒットアンドアウェイである。
    「さあ、大人しく餃子を食べて宇都宮の軍門に下るがいいギョー」
    「鳥かごよ、開け」
    「……ザ?」
     瞬間、餃子2の目に写っていたのは戦闘準備万全の3人組の姿。
    「言っていませんでしたか? 私たちも灼滅者なんですよ」
     朱鷺の宣言は「聞いてないよ」という表情を引き出す最高の一言だった。

    ●上手な餃子の焼き方
    「あー、Messer・宇都宮・Kugelschreiber・ぎょうざ・Zweiさん?」
    「え、何て言ったギョーザ?」
     ネイティブばりに良い発音の彪に、栃木の方言なら聞き取れる餃子2も何を言っているのかさっぱりだったようだ。
    「自分の名前なのに。で、めっさ餃子2でいいです?」
    「めっさ言うなギョーザ!」
     湯気が上がりそうなほど怒りに燃える餃子2は、彪に向けて餃子のタレのような何かを射出した。
    「タレだけ寄越してくるってどういう了見ですか!」
     あ、ちなみに戦闘始まってますよ。
    「餃子2号……君には色々聞きたい事があるんだよ」
     しかし新たなあだ名で呼ぶ小夜子が彪との間に割って入り、タレを受け止める。
     べちゃりと嫌な音がした。
    「国旗の配色の餃子のタネって何使ってるの?」
    「それは気になりますね」
     小夜子をシールドリングで回復しながら彪も好奇心を抑えられないようで。
     餃子2は実にいい質問だと上機嫌になりながら口を開いた。
    「黒はタネに胡麻を練り込んだもの、赤は紅しょうが、そして金色の部分はしもつかれギョーザ!!」
    「えっ」
     しもつかれとは小学校の給食にも出てくるみんな大好き栃木県民のソウルフードである。
     ……実際は小学校のクラス30人中29人は残すみんなのトラウマ献立だよ。
    「ドイツ要素皆無じゃない! 宇都宮を愛してるなら最初にニュージーランドのを作ってあげなよ!」
    「?」
    「なんで小首を傾げるの!? 一番最初に姉妹都市になったんじゃないの!?」
    「あー、そうなのギョーザ? へー」
     ツッコミティーアズリッパーをその身に受けながら平坦な顔で頷く餃子2。
     餃子に関係しない事はどうでもいいようだ。
    「ドイツ要素を名前に入れるのはいいけど、長すぎんのよ! 早口言葉で10回くらい言えって言われたら言えないでしょう!?」
    「失敬ギョーザね。言ってやるギョーザよ」
     箕角のもっともな言葉に餃子2は、
    「めっしゃー宇都宮くーげ」
    「3文字目で噛んでるよ!!」
    「ギャースでギョーザァァ!」
     ツッコミギルティクロスの餌食となった。
    「大体そのボールペン要素どこだよ」
     呆れるジンジャーに、しかし餃子2は釈然としないように問うた。
    「何でボールペンが出てくるギョーザ?」
    「……」
    「ああ、『メッサー』ギョーザね! 勿論知って」
    「冗談は外見だけにしなさい。私はこの仕事、真剣にやってるの」
    「ツヴァイだったかギョーザァ!」
     真顔で縛霊撃を放つジンジャー。
     この餃子、本当に餃子頭のようだ。
    「これでは2番手に落ちたのも納得ね……。まあいいわ。この勅使河原・幸乃の初めての灼滅対象になれる事、光栄に思いなさいな」
     小柄な体躯を活かし、餃子2の懐へと潜り込む幸乃。
     ロリータドレスで舞うように飛び込むその姿は可憐で、しかし手に持つ重厚感のある長物は凶悪に笑う。
     それに捻りを加えながらの強烈な刺突を繰り出した。
    「ぐうう、見切れないギョーザ!?」
    「あなたの敗因はたったひとつ。宇都宮餃子本来の味を捨てて、妙なアレンジに走った事よ」
     そもそもご当地の味を捨てたらご当地怪人を名乗る者として失格だと幸乃は諭し、
    「このドイツかぶれ!」
    「ギョザ!?」
     最後に思い切り指を突き付けるのだった。
     それに続き、セシリアとライラが矢面へと躍り出る。
    「そうそう、あなたどっちつかずで節操がないのね」
    「……宇都宮餃子とドイツ、双方の名誉を落とした罪は大きい」
    「そう、しかもそれって侮辱にしか見えないのよ。はっきりしない貴方じゃご当地の素晴らしさを伝える事なんて出来ないわよ」
    「……そもそもご当地を正しく理解しているのかが疑問、ね」
     餃子2をどんどんと言葉で追い詰めていくセシリアにライラ。
    「だ、黙るギョーザ! これはゲルマンシャーク様リスペクトあっての事。ちゃぶすぞ! でギョーザ」
     ちゃぶすとは潰すと同義である。よく小学生が意味もなく使いたがる言葉だ。
     自分に発破をかけ、反撃とばかりに餃子のような何かを使い、攻勢に出ようとする。
    「……罪を罰するため、ここで葬らせてもらう」
    「そういうわけで、出直してきなさい!」
     ライラは息を吸い込み、途中でぴたりと止め、そしてトリガーを引く。飛び出すのは爆炎の弾丸。
     無数の弾の流れの中にセシリアがあった。
     餃子と少女、果たして勝つのは後者だった。着弾と同時に日本刀を叩き込み、一瞬にして爆炎と斬撃の嵐を見舞う。
    「……こんがりと焼け目がついたよう、ね」
     もはや彼の命は餃子の皮1枚で繋いでいるようなもの。
    「ぐ、ぐぐ……だ、だが、最後に勝つのは宇都宮ぎょうざだギョーザ……!」
     しかし。
     その言葉でこれまで味方の防衛に徹していた朱鷺が動いた。
    「宇都宮ぎょうざを一番愛していなくて愚弄しているのは……」
     『桃花』を軽く当てて防御を崩し、態勢を崩したところをすかさずダイナミック!
    「ほぐう!」
    「お前だ」
     腕をバネのように効かせ、バックドロップの姿勢から立ち上がると、朱鷺は容赦なくトドメの拳で餃子2を突き砕いた。
    「ギョ、ギョウザァ……」
    「くす……せっかく拾った命、大人しくしていればよかったのに」
     そこへ、妖艶に笑うジンジャーが現れた。
    「それにしても本当に不味そうね、貴方。残飯を漁るネズミが可哀想だから、間違えて食べちゃわない様に塵の一つも残しちゃダメよねぇ!」
     地に伏せる餃子2に本当に最後の、ややオーバーキルにも思える一撃を加え。
     餃子2は「オイラが死んでも更なるぎょうざ怪人がオマエたちを……ぐあああギョウザー!」とか叫びながら爆散した。
    「いいじゃない、2位。素晴らしい事だわ」
    「さようなら、今度生まれて来る時はもっと呼び易い名前になって生まれてくるのね……」
     箕角の言葉は餃子の香りに乗り、市内に流れていった。
    「……ちなみに餃子はドイツ語でJiaoziと言う」
     以上、ライラによる餃子豆知識でした。

    ●宇都宮ぎょうざを食べよう(宣伝)
     ぎょうざ怪人を倒した灼滅者たちは、ある場所に訪れていた。
    「そのね……あたし、実はとても楽しみだったの」
    「私も楽しみにしてたのよ。好きなのよね」
     頬をほんのり上気させ小さく呟く幸乃に、表情を綻ばせるジンジャー。
    「「餃子!」」
     そして目の前にあるのは宇都宮ぎょうざ!
     そう、一行は徹夜で餃子マップを読み込んだ幸乃とセシリアの『ぶらり再発見』により穴場な餃子専門店に到達していたのだ。
    「やっぱりあの餃子頭よりもこっちの方がいいわね」
    「……わたしは水餃子派。焼き餃子はちょっと」
    「あんなに焼いてたのに!?」
     驚くセシリアに、ライラは静かに頷いた。
    「僕はラー油とかかけなくても美味しいのがいいです……」
    「彪、ラー油苦手なの?」
     注文を終えた箕角がタレを作るために伸ばした手を一瞬止めた。
     しかし安心されたい。宇都宮ぎょうざは水餃子も、そしてタレが辛くなくても美味しく食べられるものばかりなのだ。
     暫くの後、お待ちかねの餃子が店主によって運ばれてきた。
     とても良い香りだ!
    「私も餃子好きなんだ。ニラが効いてて、羽がパリッとしてるのがね!」
    「……」
    「って、もう食べてる!?」
     小夜子も驚く朱鷺の食速。
     もきゅもきゅと頬張り、無言だが満足そうにしている。
     こうして灼滅者ははた迷惑なご当地怪人を倒し、餃子を心ゆくまで堪能するのだった。

    作者:黒柴好人 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2013年2月18日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 5/感動した 1/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 10
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