彷徨える蒼き刃

    作者:那珂川未来

    「うわー……寒いなぁ今日は……」
    「雪でも降るんじゃねーの?」
     愛知県某所。高校生三人、仲良くバス停に並んでいる。
    「もういいよ、雪は」
     滑るしバスは遅れるしいいことないからとため息交じりに漏らした時、少年は何かを見つけた。
    「なぁ……なんだアレ……」
    「え?」
     指差す方向、大きな獣のようなものがいて――。
    「ひっ……く、くま!?」
    「馬鹿、あんなおおきなく……」
     慌て始める少年たち。言い終わるより早く、その大きな獣は彼らの眼前へ一度の跳躍で到達し、そして刃のような腕で容易く三つの上半身をなぎ倒した。
     青き体毛を膨らませるように逆立てて、残った下半身を叩き潰す。
    『がるる……』
     そう、それは統率を失ったデモノイドだった。
     埋め込まれた破壊本能に翻弄され、あてもなく歩きだす。
     見つけたものをただ殺戮する為だけに、残った命を燃やしながら――。
     
     

    「鶴見岳の戦いで、ソロモンの悪魔が使役していたデモノイドが現れました。野放しにしておくと、近隣の市町村で事件を引き起こしてしまうので、討伐をお願いしたいのです」
     五十嵐・姫子(高校生エクスブレイン・dn0001)の話によると、鶴見岳の敗北により、ソロモンの悪魔がデモノイド達を廃棄したのか、大量のデモノイドが愛知県の山間付近に出現したらしい。事の真相はまだ不明だが、放置すれば大きな災いになるので、的確に対処しなければならない。
    「現れるデモノイドは、命令などは受けておらず暴走状態のようです。単独で行動し、目についたものを手当たり次第攻撃してしまいます。暴走状態とはいえ、デモノイドはダークネスに匹敵する戦闘力があるので、決して侮れません」
     愛知県某所の地図を広げつつ、
    「デモノイドは、この田舎道を名古屋方面に向かって移動中です。解析によると、ここで高校生がバス停でバスを待っているのですが、運悪くデモノイドと遭遇してしまい、命を落としてしまいます」
     灼滅者は、この少年らを守り、デモノイドを討伐しなければならない。
    「今から向かいますと、少年らのいるバス停にギリギリで到達します。その時にはもう、デモノイドは少年らに向かって跳躍を始める瞬間なので、即座に少年たちの前へと飛び出し、戦闘に割って入ってください」
     攻撃ポイントは姫子の解析によりすでに予測が付いているので、この行動をすれば必ず成功し、少年らの命を守る事が出来る。
    「そして戦っている間、誰かが少年らを安全圏に保護してください」
    「じゃあ、それ僕がやろうか?」
     話を聞いていたレキ・アヌン(冥府の髭・dn0073)が、その役を買って出る。
    「お願いできますか?」
    「うん。いいよ。すぐに一般のお兄さんたちを連れて、安全圏に離脱するよ」
    「では、お願いします」
     頑張る。と、大役に緊張を覚えつつも張り切るレキ。
    「そして皆さんが向かうデモノイドの能力の詳細ですが、マジックミサイル、フリージングデス、シャウト、螺穿槍 、妖冷弾 を駆使してきます。体力、攻撃力共に高いので気をつけて下さい」
    「未来予測の優位はあったとしても、ダークネスの戦闘力を侮る事はできません。全員で協力して、必ず打ち取ってくれることを祈ってます」
     そう言って姫子はぺこりと頭を下げた。 


    参加者
    セリル・メルトース(ブリザードアクトレス・d00671)
    茅薙・優衣(宵闇の鬼姫・d01930)
    芥川・真琴(Sleeping Cat・d03339)
    空井・玉(野良猫・d03686)
    川原・咲夜(ニアデビル・d04950)
    神護・朝陽(ドリームクラッシャー・d05560)
    ファリス・メイティス(ブレイクシューター・d07880)
    ウィクター・バックフィード(モノクロの殺刃貴・d10276)

    ■リプレイ

     ぽつり、ぽつりと街灯の光が落ちているのどかな田舎道。この場所へ、今まさに呪い仕掛けの獣が向かっているなど信じられないほど静かで。
    「デモノイド。歪められた命、か……」
     Eirvito Gainstoulを巧みに操り、セリル・メルトース(ブリザードアクトレス・d00671)は夜空を静かに滑りながら、鶴見岳での激闘を思い出し、独りごちる。
    (「あの時全てに片をつけていればなんて、殊勝な事は言わない。まだ起つと言うのなら――」)
     其の悉くを断ち切る。そう心に決めて、セリルは闇夜の中、注意深く辺りを伺って。
    「間に合ったみたいだ……!」
     相棒のライドキャリバー・クオリアに騎乗して、空井・玉(野良猫・d03686)がバス停に並んでいる少年らを確認し、安堵を漏らす。救えるとわかっている命があるなら、それを守るのが自分の役目と、クオリアのハンドルを握る手にも力が入る。
    「よーし、がんばろっか、タマちゃん」
     俺がガンガンデモノイドたちを縛りまくるからなーと、隣を一生懸命走っている神護・朝陽(ドリームクラッシャー・d05560)が玉へそう声をかけた。同じクラブの玉との共闘に、張り切っているように見える。
    (「緊張が解れるのはありがたいけど……こういう時に見知った顔がいるのは何と言うか色々、うん」)
     玉は、そんなノリノリの朝陽をジト目で見やったあと、一言ぼそり。
    「タマって呼ぶ人は回復してあげません」
     むすっとされて、ぷいっと顔をそむけられたけれど、朝陽はいつものことだし、わかっているから全然気にしない。
    「それと部長、デモノイドは単体って言ってました」
     どこかで何かが聞き間違えているらしく、つっこまずには居られなかった玉。やや沈黙。
    「……ハハハわかってるちゅーに!」
     笑って誤魔化してみた朝陽。
     しかし相手を高く見積もっての戦略はマイナスには働かない。むしろ舐めてかかる方が危険である。なにせ相手は灼滅者八人分の強さを誇るのだから。
    「っ! 皆さん、いましたよ!」
     いち早く見つけたのは、空中にいた川原・咲夜(ニアデビル・d04950)。街灯から外れた闇の中、すでにもう、ぐっと力を溜める様に屈めて、跳躍へと移る体勢だ。
    (「何故こんなところを彷徨ってるかは知りませんが……」)
     人間を、運命を、玩具にする悪魔共へは灼滅を、彼らへは憐憫を。咲夜は決意を胸に秘めながら、
    「ここで、終わらせてあげましょう」
     指先に絡めた鋼糸に己が魔力を巡らせながら、箒の速度を最大限まで引き上げて。
     弾けるバネのように、その巨体を空へと踊らせる。ものすごい勢いで迫るデモノイドに、一般人が咄嗟に反応できるわけもない。
     デモノイドを目の当たりにして怖くないと言えば、それは玉にとっては嘘でもあって。
     けれどわかって此処にいる。力になれると思って好き好んでこの場に来たのだから――。
    「行くよクオリア。為すべき事を為す」
     跳ねあがる回転数。擦れ合うタイヤとアスファルトが赤い火花を散らし、勢いよく駆け抜ける。
    「真白なる夢を、此処に」
     セリルも白光纏い、光の矢のように一気に少年らへと。
     玉は少年らの前へと到達した瞬間、軽やかに後方へと反転すると、高校生らの前へと降り立ち、守る様にその間へと割って入って。
    『があっ!』
     デモノイドの、冷気纏う腕の刃で薙ぎ払う一撃がしたたかに奔る。
     残念ながら、デモノイド相手に今の灼滅者には初撃を防ぐだけで精いっぱい。同時に動いても、先手を取って打ち落とすのは厳しい相手だ。
     大地まで裂くかのように前衛陣を横切る凍気。クオリアが即座にかばいに入り、被害を受け持つ。クオリアの真後ろを走ることによって追い風に乗り、急速に距離を詰めた茅薙・優衣(宵闇の鬼姫・d01930)が、続く朱鎧鬼面拵縛霊手にてその太い腕の一撃を受け止めた。
     前衛に放たれた攻撃をほとんど受け止めたせいか、びりびりと来る衝撃がその腕に走る。
    「あんたの壊したいって望みを叶えさせてあげるわけにはいかないんだよっ」
     優衣は踏ん張りを利かせ、その手を弾き返すと、
    「縛れ、縛霊撃っ!」
     玉の放つシールドリングの輝きを受けとめながら、紅の鬼の刃を、その蒼き体へ叩き付ける。
     身を苛もうとする力から逃れようと、後ろに飛んで間合いをはかろうとしたデモノイド。しかし、その動きを封じる糸が、咲夜の指先より閃き、踊る。
     まるで六花のような神秘的な文様を描き、空を制する魔力の糸。デモノイドの巨体を絡め取る。
    「残念、空は魔法使いの領域ですよ?」
     絡みついた封縛糸にバランスを崩したデモノイドが、さほど距離も取れぬまま地に落ち膝をつく。刹那、天を衝くほどの紅。地に仕掛けられたそれは、咲夜の白雪とは相反するもの。
    「熱は命、ココロは焔……」
     まるで火柱のように吹き上がるそれは、紅蓮の輝きを伴いながら巻き付いて。その糸の先に在るのは芥川・真琴(Sleeping Cat・d03339)の指先。
     密集している鋼糸の網に絡め取られたところへ、天より降り注ぐ幾億の雫。
    「撃ちぬけ!」
     ファリス・メイティス(ブレイクシューター・d07880)の放った矢は数多に分かれ、儚く美しい流星群が飛来したかのような光の尾を携え、デモノイドの体を埋め尽くす。さらにそこへ、セリルの放ったマジックミサイルが打ち込まれてゆく。
    「レキさん、草灯さん、彼らをお願いします!」
    「任せて!」
     今のうちにと声をかける咲夜へと頷き返し、レキ・アヌン(冥府の髭・dn0073)はすぐに高校生たちの手を取り声かけて。けれど状況飲み込めず混乱中の高校生。咄嗟に動けない。
     サポートに来てくれた草灯や舞などがラブフェロモンで一般人の気を引いて。腰を抜かした少年を、峻とリオンが手を貸し走りだす。
    『がぁぁぁぁ!』
     軽く仰け反りながらも、殺意を膨らませる様に、全身の毛を逆立てるデモノイド。どうやら調整が上手くいっていないらしいデモノイドは、遠くへ逃げてゆく一般人よりも、目の前に立ちはだかった灼滅者に、攻撃対象を移したらしい。
    「さて、こちらに気も引けたようですし」
     デモノイドと戦うことを楽しみにしていたウィクター・バックフィード(モノクロの殺刃貴・d10276)はティアーズリッパー。優衣のレーヴァテインをかわし、次いで真琴の結界糸も素早い回避で抜ける能力は確かに馬鹿に出来ないと判断し、一手一手の剣技を変えながら翻弄するつもりで刀を振るう。
     腕の刃を鋭く尖らせ、螺穿槍を繰り出すデモノイドの攻撃を受けて揺らいだものの、火力を担う自分が倒れてはと、預言者の瞳でこまめな回復を。
     ウィクターの防具を容易く半壊させた威力に感心しながら咲夜は、目まぐるしく動く中を味方の動きの邪魔をしないタイミングを見計らい、飛行中からキャスター位置へと降り立って。一般人の被害が無となった今、空を制するよりキャスター効果を生かした方が有利に進められるのは間違いない。
     同じく飛行中からポジションを前衛位置へと置いたセリルが、ダメージ覚悟でデモノイドに肉薄。
     左右の肩からまるで光の翼を展開したかのような輝きが広がる。Eirvito Gainstoulが結晶の花が綻ぶ。
     隼のように距離を詰めると、フォースブレイクの一撃を。激しい振動がデモノイドの体を走るも、まだまだその闘志を衰えさせるには届かない。
    「そこっ!」
    「寒いのは、嫌いだから、ね……」
     前を駆け抜けたフリージングデスの刃。唯一かわしたウィクターが居合切りを打ち当てて。列攻撃とはいえ、侮れない威力の攻撃を抑制すべく、真琴が呼び出したセイクリッドクロスの輝きが、その威力を押さえこもうと広がって。
     朝陽は縛霊手を振り上げながら、おちょくる様にわざと分厚い肩を踏み台にしながらデモノイドの周りを派手に跳ね、すれ違いざまに縛霊撃を。振り払おうと激しく身を震わせたデモノイドから軽やかに降り立ちながら、相手にも負けないくらいの剛腕を生み出す。
    「クオリア!」
     デモノイドが、螺穿槍で迎撃しようと刃先を尖らせたのと、玉が叫ぶのは同時。そして、クオリアのマフラーが火を吹いたのも同時だった。
     その太い足に、クオリアのフロント部分がめり込む。かばうことには失敗したものの、その気を瞬間的だが反らすことに成功する。
     よろめきながらも、跳躍中のかわしにくい状況である朝陽へと鋭い突きが。龍のように際どくその腕を避けながら、鬼神変の一撃がデモノイドの横っ面へと。
    「ちっ……!」
     もちろん自身も避けようと努力はしたものの、相手の方がやはり上手。防具は全壊し、肩が吹き飛ぶほどのダメージだ。
     ファリスは眉を寄せる。もともとが強い分、力の上昇率も侮れない。朝陽の回復はシェリルに任せ、ファリスはどんどん溜まってゆく力を破壊させようと動く。サポートに来てくれたかれんや由良も一緒に癒しを飛ばして。
    「やらせはしません!」
     次いで、ウィクターも居合斬りの構えのまま突っ込んでゆく。
    「砕け――!」
     居合切りに指の三本を失ったデモノイドへ、ファリスは容赦なく張りつめた弦を解放する。
     天より振り落ちる光の鏃がデモノイドの体に刺さりこみ、一部をブレイクすることには成功して。
    「あはは、楽しくなってきた。叩き潰してやんよ」
     朝陽は、口から溢れた血を拭うと笑みさえ零す。
     肩の傷の中に、骨の白さえ浮き出ている。止めどなく血が流れる。
     癒しの力も縫合するだけで手一杯。殺傷ダメージは思いのほか深い。
    『がうううっ!』
     デモノイドの咆哮が戒めのほとんどを吹き飛ばす。身を苛む氷のダメージを全て吹き飛ばし、してやったり顔のデモノイドへ、咲夜は静かに言い放った。
    「――気付かなかったか? 雪が降っている事に」
     咲夜の言葉の意味を理解したかどうかは分からない。だがもうわかったとしてもすでに放たれた後。真っ白な刹那の花が、はらはらと天より降り注ぎ、そして――。
    『がっ!?』
     凍てつく力に飲まれ叫ぶ。砕いたはずの氷に再び覆われて。
    (「元人、って所に同情しない事は無いけれど……」)
     真琴はデモノイドという醜い皮の中に眠る変質してしまった魂にそんなことを感じつつ、
    「元が人なら、余計に人への危害はめー、だよね……」
     吹き飛ばされてしまったプレッシャーを再び与えようと、結界糸を広げる。その鋼の体の軋みを狙い、ウィクターはティアーズリッパーを仕掛ける。首元を切り裂く一撃。鮮血が放射状に広がって。
    「みんな、待たせてごめんね!」
     サポートの手厚い支援によって、戦場に予想よりも早く戻ることのできたレキはメディックで回復専念に回り、他の能力の高いメンバーの火力を回せるよう配慮するように動く。
     前衛陣へ、フリージングデスが繰り出される。もちろん受け持つ攻撃が必然的に大きくなるディフェンダーは、その強靭に防御力を駆使しても、気を抜けば瞬時に意識を砕かれるだろう。
     朝陽へと繰り出される螺穿槍を、優衣が受け持つ。破壊力の増した一撃は、防御力を高めている優衣とて楽観視できるものではない。
     その肩を砕くほどの勢いで穿たれて、微かに顔をしかめつつ鮮血の破裂した足を押さえる。
    (「どんな経緯でデモノイドにされたのかはわかりませんが、暴れて被害を出す前に制圧しないといけません。本人にしても望んで暴れるわけでもないでしょうし……」)
     すでに命は守った。だから此処で止めなければ。
     清らかな灯を持つ癒しの矢がファリスより放たれて。ナノナノのシェリルもふわふわハートを飛ばしながらお手伝い。
     間合いを取りつつ、優衣は決意新たに朱鎧鬼面拵縛霊手へ闘志を注ぎこんで。矢よりもたらされた命中精度の補正を利用し、デモノイドの背面へ疾風の如く回り込むと、縛霊手を巧みに使い急激に方向転換。
    「お返しに喰らえ、レーヴァテイン」
     突き刺さったままの鬼の牙。大地ごと切り裂くつもりで振り上げる。
    『がっ!』
     初めて、デモノイドの蒼き血肉が吹き飛んだ。左腕を縦に切り裂かれ、忌々しげな唸り声を上げる。
    『がうっ!』
     デモノイドが優衣を吹っ飛ばそうと、前衛陣へとフリージングデスを放つ。
    「痛いですねッ」
     預言者の瞳で、すぐに自己回復を行うウィクター。立ち続けることに専念するあまりか、クラッシャーの火力を打ち当てる機会が減っているように見受けられた。
     次なるデモノイドの一撃は冴え渡っていた。追撃を持つマジックミサイルが容赦なく傷の深いウィクターへ破裂する。
    「ぐっ!?」
     路肩まで吹っ飛ばされるウィクター。あと一歩のところで、意識を闇へと落とす。
    「ウィクターさん!」
     レキは手を伸ばし駆け寄って。すぐに安全圏へと運んでもらえるようにサポートのまちこの手を借りて。
    「此処で、断ち切る!」
     今や最大火力を有するのは自分だけ。セリルは全魔力をその矛先に乗せ、出来る限り死角を突こうと機を狙う。
     それを読んだ咲夜と玉、そしてクオリアは援護を。出来る限り攻撃を当てなければまずいとファリスも感じ、癒しの矢で照準の補佐を。
     いっそうと散り輝く六花。白光溢れる先端を、セリルは一気に突き出した。
     刹那よりも早く駆け抜ける一閃。
    『が……ががっ!』
     爆発するように吹きとんだ右腕。
     大きく仰け反るデモノイド。畳み掛ける様に攻撃を重ねてくる灼滅者を、振り払うようにフリージングデスを奔らせるけれど。
     死角に回っていたのは、彼女だけではなかった。
     その変わり果てた姿を、送ってあげる様に。
     せめて人が逝くように、眠ってもらうために。
    「おやすみなさい、よいゆめを」
     耳元で囁くように呟いて、その盆の窪へとレーヴァテインを打ちこんだ。
     焔が上がる。
     火炎に呑まれ、無理矢理改造された肉体は、崩壊のスイッチが入った途端、驚くほど容易く壊れ始める。
     瞬く間に崩れ去るデモノイド。
    「ようやく倒せましたね……」
     優衣は安堵の息を漏らす。
     消えゆく死体は、もうどうする事も出来ないが、足跡はたどれないかと調査をしようとした咲夜だが――延々と山へ続いてゆくこの道をゆっくりと目で辿る。激しく陥没したアスファルトとはまるで別世界のような、ありふれた田舎道がどこまでも。
    (「足跡を辿るのは、難しそうですね……」)
     デモノイドはここに至るまで、目立った痕跡を残していなかった。目の前に現れた人間は少年らが初めてだったのだろう。
    「彼らはソロモンの悪魔の被害者です。せめて……」
     優衣は用意していた線香を取り出すと、もう欠片ほどしか残っていない死体の前に路肩に残るわずかな雪を使い、立てる。
    「さよなら 安らかに」
     もう二度と呪いに心が凍えることはないからと、真琴はゆっくり目を閉じ、その冥福を祈った。

    作者:那珂川未来 重傷:ウィクター・バックフィード(自由主義者・d10276) 
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2013年2月17日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
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