標の路は雪に消え

    作者:

    ●独歩
     オォオオオオオオオオ―――――
     一面を雪に覆われた道。どこまでも白く、どこまでも眩しく。
     嘗て人で在ったものは、今は既にそのかたちを露ほども残さず、人ならぬ足跡を道へと刻む。咆哮は、静かな山村の風景の中を風音の様に渡った。
     関東や関西にも雪が及んだ今年の冬。高原に広がる冷たくも清澄な白い世界に、化け物は何を思うか南へ真っ直ぐ延びる道をひたすら前へと進んでいた。
     遠くを山が囲む以外は、一面にただただ雪原。過去の雪掻きの名残か、道路脇に所々人の背程の雪山があるくらいで、周囲には生き物の影も無い。
     静か過ぎる程に美しい夜、やがて一直線の田舎道の果てに集落の光が見えても、獣の歩みは止まらない。
     何を目指すか、化け物は、ひたすら南へと進んで行く。
     
    ●無常の獣
    「まだ戦いの傷も癒えきっていない所でしょうけど……事件を察知したわ。『デモノイド』よ」
     現れた唯月・姫凜(中学生エクスブレイン・dn0070)が告げた言葉に、教室がにわかにざわめき立った。
     記憶に新しい鶴見岳の戦い。ソロモンの悪魔が使役していたその獣は、青き肉体に恐るべき力を秘めた殺戮の化け物。
     ―――かつて、人であったもの。
    「ごめんなさい、どうして人里に突然デモノイドが出たのか、詳細まではわからない。今はとにかく愛知へ向かって、ある集落へ到達する前にデモノイドを倒して欲しいの」
     愛知県。目的あって放たれたのか、廃棄されたかどうなのか――その仔細は不明ながら、1体のデモノイドはある高原に現れた。
     その動きを見るに、どうやら主も無く暴走状態の様だという。
    「鶴見岳の時の様に、何かの指示に従って……という感じではないわ。いずれ理由あって彷徨っているのだとしても、放置できる戦力で無いことくらいは実際に戦ったあなた達なら解る筈」
     その言葉に頷くのは、先の戦いでデモノイドと一戦交えた灼滅者達だ。
     ダークネスにも匹敵する力を持つ存在。その脅威が今、小さな集落目掛けて直線の田舎道を歩いている。
     味方でない存在を刈るデモノイド。夜であり、道に人の影が無いのは幸いだが、集落へ到達してしまえば無意味な殺戮が繰り広げられることは明白だ。
    「戦場になるのは一面雪に包まれた田舎道よ。集落へ向かう3キロくらいはある道を、デモノイドが単独で進んでいるわ」
     概要を記すノートの隣に地図を広げ、姫凜はデモノイドの進行ルートを指で辿る。
    「ただ歩いているだけだから、集落に辿り着く手前1キロくらいまでに仕掛けてさえ貰えれば、開戦のタイミングはいつでも大丈夫」
     姫凜が指し示したデモノイドの現在地は、愛知県東部。南を目指す化け物の目的の一切は不明だ。
    「集落がゴール、でも無さそうなの。集落を荒らすだけ荒らした後、更に南へ進路を取るデモノイドが見えたから……ただ、その先は私にも解らないわ」
     でもね、と言葉を継ぐ姫凜は眉根を寄せ、真っ直ぐと灼滅者達を見た。
    「目的がどうあろうと、このままだと確実に多くの人が死んでしまうの。例えデモノイドが嘗ては人であった存在でも……もう、今の彼らは人じゃないのよ」
     言いながら地図へと落とした姫凜の紅の瞳に滲むのは、悲しみと悔しさ。
    「彼だったのか彼女だったのか……姿すら異形の命。結果的に灼滅するものって解っているわ。でも……」
     デモノイドを、人として救出することはもうできない。獣の中に今も人の意志が在るのか無いのか……それすら、知る手立てなどないけれど。
    「それでも、あなた達だから言うわ……助けてあげて。ダークネスが生み出した歪んだ命の柵から、せめて灼滅することで解放してあげて欲しい」
     顔を上げ、いつもの様に灼滅者を送り出す姫凜の視線は強く、決して泣いたりはしない。
     しかし、今真っ直ぐ灼滅者を見つめる紅の瞳は、どこか切な気に揺れていた。


    参加者
    アッシュ・マーベラス(アースバウンド・d00157)
    東当・悟(紅蓮の翼・d00662)
    オリヒメ・ブルースター(宵藍の星使い・d04534)
    皐月森・笙音(山神と相和する演者・d07266)
    蟲飼・蛾(レピドプテラ・d08020)
    黒蜜・あんず(帯広のシャルロッテ・d09362)
    レセフ・リヒテンシュタイン(オカ魔導師・d13834)
    キング・ミゼリア(ヴァカチンの至宝・d14144)

    ■リプレイ

    ●白き世界に
     遮るものの無い地を、風はどこまでも自由に吹き抜ける。
     南を目指し真っ直ぐに続く白の道には轍。柵無き道から歩を外さぬ為か、一定間隔に古い外灯が寂しく配置されている。
     その美しき白界の中を、醜き獣は進んでいた。
    「……なんて姿……人間を何だと思ってるの?」
     遠目にも解るその青く醜悪な姿に、蟲飼・蛾(レピドプテラ・d08020)は吐き捨てる様に瞬間湧き上がった思いを吐露した。
     ダークネス・ソロモンの悪魔に導かれるまま、闇に身を染めた人間達の成れの果て・デモノイド。白妙の世界に浮かぶ、それは人にも灼滅者にも、放置できない大きな脅威だ。
     どれほど心苦しく思おうとも、戦い、灼滅しなければならない現実に変わりは無くて。
    (「……帰る場所を見失った魂を、還すで」)
     鶴見岳での大きな戦火の最中に一度件の獣と拳を交えた東当・悟(紅蓮の翼・d00662)の深く黒い瞳は、今はただ静かにその姿を見つめている。
    「デモノイド……見るのは、鶴見岳の戦い以来かしら……」
     黒蜜・あんず(帯広のシャルロッテ・d09362)は、葡萄色の大きく愛らしい瞳に獣を捉え、呟いた。
     既に在りし日の人のかたちを失ったその身体は、所々が壊死を始めているのか腐り落ちたかの様に欠落し、その肉肌を晒している―――それは、鶴見岳では見られなかった光景だ。
     霊犬・阿吽をやや先行させる皐月森・笙音(山神と相和する演者・d07266)も、先の戦いを知るからこそ、その変化に気付いている。
     その身体に、油断できない強さを持つことも。
    (「……人が意思に反して作りかえられたのがデモノイドだとするなら、あの破壊衝動は当然の怒りなのかもしれない」)
     その正体も、強さも、存在の何もかもが許されるものでは到底無い。歪められた命の摂理を正すべく――すらりと引き抜く笙音の日本刀【速媛】が、月明かりに鈍く光を放った。
    「その凶行を止めるのは、僕らの義務で、精一杯の慈悲だ……!」
     心から放った笙音のその声に、遂に灼滅者の存在に気付いたか。ゆらりのらりと歩いていた獣が、突如猛進とも言える速さでこちらへと向かってくる。
    「うっわ来た! 初陣だよ、どーしよ……!」
     迫り来る獣に、今日を初陣としているアッシュ・マーベラス(アースバウンド・d00157)は、おろおろと瞳を彷徨わせた。しかし、その心情下に在っても、確りと役目は理解している。
     目前に近付いた影に、覚悟を決め解錠の言葉を叫ぶのだ。
    「―――っ、ここで怖気づくわけにはいかないっ! 『PK-Unlock』!!」
     力の解放――スレイヤーカードから解き放たれた武器を手に駆け出す仲間を背を見つめるレセフ・リヒテンシュタイン(オカ魔導師・d13834)は、魔女風の三角棒を手で押さえた。
     背から吹く風は追い風と言うには、あまりに冷たく強い。
    (「怖いわ……でも相手は、憎き悪魔の手先……」)
     男性にしてはしなやかな指先には、美しく飾られた爪。ぐっと押さえた帽子は、揺れ動く瑠璃の瞳を隠すように輪郭へ影を落とす。
     倒さなければならないものを知っている。恐怖する心は、守りたいと願う決意へと変え、今は戦うだけだ。
    「……お姉さん踏ん張らないと!」
     手に馴染む杖を握り直し、決意言葉に見上げた先には―――青の獣へ肉薄し踊りかかる仲間の強き瞳が輝いた。

    ●カウントダウン
    「キミはここで行き止まりさ。これ以上は進ませない!」
     オリヒメ・ブルースター(宵藍の星使い・d04534)の声が、高原の静けさを割り風の様に渡る。しかし笙音の巡らすESPサウンドシャッターによって、その声は灼滅者達に届いても外界へと響き渡ることは無い。
     巨躯を力任せに振り払う獣の薙ぐ一撃が、前列に並ぶ3人の灼滅者を衣類ごと切り裂いた。
    (「俺が倒れたら、奴の罪になる。……絶対に、倒れるもんか……!」)
     飛び散った緋色の飛礫。やはり軽くは無い一撃に一瞬よろめいた悟は、しかし瞬時建て直し、夜の齎す闇を駆けて死角から殺人者の一撃を繰り出す。
     切り裂く青い身体から迸る真紅が、じわりと白の大地を染め上げた。デモノイドの視線落ちたそこへ、直後光の輪が飛来し、温かな光を放つ。
    「大丈夫よ、みんなッ。どんな傷でも、アタシの愛で癒してあげるわッ!」
     キング・ミゼリア(ヴァカチンの至宝・d14144)の紫紺の瞳は、眼鏡に遮られ見えないが――降り注ぐ癒しの光は確かに仲間を見守り、見極めて輝く。
    (「余計なコトは、考えちゃ駄目―――灼滅しなさい、キング」)
     風体こそコミカルに、仲間へ駆ける声は底抜けに明るいが、その心には今、微かな影が差していた。
    (「デモノイドの、元の姿に思いを抱くのは……無意味なコトよ」)
     思い隠し注ぐ魔力。レセフを包んだ守護光は、敵の刃を防ぐ盾となる。
     一方、光に向かう獣の視線を好機と飛び出す蛾は、標を付けた畑と道の境界ぎりぎりを音も無く駆け、ふわりと飛び上がった。
     きゅる、と軽くも鋭き妖気の槍を振り上げて、凝縮させた切っ先の冷気を氷塊へ。
     そのまま、獣へ振り落とす。
     ドドド! と襲い来る氷の雨を掻い潜り、隕鉄が主とは逆に下から突き上げる様に日本刀に乗せた霊瘴放てば、冷たき2つの連携打にデモノイドがかふ、と醜き口から白い息を吐き出した。
    「歪んだ命の柵、あたしが取り払ってあげる! メレンゲになりなさい!」
     攻撃は止まらない。継いで獣へ接近し勝気に笑んだあんずは、とん、と軽く『魔法の泡立て器』――間違い無くマテリアルロッドなのだが――を獣の崩れかけた体へと押し当てた。
     当たりは軽くとも、そこに秘められた魔力はデモノイドの肉体内部を侵蝕し、爆発する。
    「ギャウワァアアアア………!!」
     腐るように崩れ弱っていた部位への攻撃は、確かな効果を齎したか。放たれた恐ろしくも凄まじい叫び声に、アッシュが地を打ち衝撃波で追い討ちをかけた。
     仲間の攻撃に獣が苦しむ今が好機と、笙音は闇深める霧を広げる。
     前列一帯を癒しながら覆い隠す虚ろの霧を阿吽が潜り駆けた時、雪の冷気に紛れて、後方から舞い降りた魔の冷気が獣をひやりと包み込んだ。
    (「人の命を弄ぶ行為を、絶対に赦しはしないけど……」)
     柔らかく舞う藍の髪を背に散らして、オリヒメは静かに瞑目する。―――フリージングデス。
    (「巻き込まれた命は、もう元には戻せない。なら、せめてこれ以上の被害を出さないように」)
     じわじわと体熱を奪う魔力の冷気に、俊敏だったデモノイドが鬱陶しそうに体を振った。
     体の一部が、凍り付いているのだ。
    「チャンスね! 狙い撃つわよ!」
     手に持つ杖を掲げたレセフの明るい声と共に、空を駆け抜けるエネルギー弾。
     凝縮された魔力の矢、マジックミサイルだ。
     オォォオオオオオオオオ―――――……
     矢継ぎ早に繰り出された攻撃に、デモノイドが大きく咆哮を上げた。痛みに上がる声は在っても、その体力は、未だ尽きるには遠いらしい。
     ―――それでも、倒す。だって、この命は。
    「……ボクにできる範囲でやってみるっ、そして無事に帰ろうっ!」
     葛藤渦巻く灼滅者達の中、最年少のアッシュの声が、自分を、そして仲間を鼓舞する様に戦場に一際明るく響いた。
    「もちろん、みんなでっ!!」
     戦いは、未だ始まったばかりだ。しかし―――癒しを持たない怪物に、確実に滅びの時が近付いていた。

    ●君を知る
    「一撃、入魂ッ!」
     後方に配置し攻撃を受けない蛾は、時折癒しにも手を貸しながら、確実に狙い済ました一撃をデモノイドへと繰り出していく。
     爪立て、空を切り裂く様に影を繰り出した時、切り裂く虚空から生まれたかの様に伸びた漆黒の影が獣を包み込んだ。
     舞い上がった中空からスタン! と軽やかに着地して、振り返った蛾は青き獣を仰ぎ見る。
    (「……元は、人間だったんだよなぁ……」) 
    「SMAAASH!!」
     ロケット噴射に乗せてバッティング様に木製バットを振り被るアッシュへと対しているデモノイドは、無残なまでにボロボロだった。戦い始めにも壊死していると見られる崩れた体表面は見られたが――。
     此処までの長い戦闘。灼滅者達の攻撃を受け、壊死からの腐食も進み、開戦時には縦横無尽に振るわれていた巨大な腕は、片方が戦闘中に突如付け根から崩落し、今は無い。
     恐らく、このまま放置しておいても、間違い無くこの生命体は死に絶える運命だ。
    「あなたたちが悪くないのは分かっているの」
     あんずが、何度目かの身から迸る炎纏う一撃でデモノイドの傷口を抉った。まるで断末魔の様に耳に突き刺さる悲鳴には、ぎゅっと唇を引き結ぶ。
    「……だけど」
     もう、その命を救う手立ては無い。唯一あるとすれば、灼滅にほかならないと知っている――返す刃で二撃目の炎を見舞ったあんずに連なり、レセフの流星の様な魔法光線が降り注いだ。
     その着弾に、デモノイドが怒り狂う様に1本になった刃の腕を振る。悟を庇い前へと立った笙音は、切り裂かれた腕の痛みを堪えて【速媛】を握り直すと、ふわっと音もなく舞いあがり、上段から残る獣の腕を叩き切った。
     重力に任せて落ちた異形の腕、ドボドボと流れる様に落ちる鮮血。姿こそ異形でも、それは人の血とオリヒメは知る。
     しかし、癒せるのは仲間達だけなのだ。
    「清らなる、星の加護を……!」
     善なるものを救う聖なる光条が、盾として仲間を守ってきた笙音を柔らかく包み込む。青い瞳は穏やかだが、理知的な光を宿している。
     感情的ではなく、ただ静かに、オリヒメは告げた。
    「……もう元には戻せないから、せめて、罪を重ねないように――」
     灼滅を、と、その言葉は一瞬で間合いを詰めた悟が獣を貫く一撃の音に掻き消えた。
     ―――穿つ一撃は、螺穿槍。
    「……利用された魂、これ以上汚させへん。戻されへんさかい……解き放つで!」
     びゅる、と抜き放つ瞬間に槍へと飛び散った血を地表へ逃して。体中についた傷からは、決意燃やす心を表す様に灼熱の炎が噴き出し、その体を覆う様に渦巻いている。
     そして、悟の尽きぬ闘志を引き継ぎその命へ終焉を齎したのは、キングだった。
     獣の青い体躯は、血に赤く染まっている。赤きオーラを纏い大きく切った逆十字が、デモノイドへの最期の一撃となった。
     ―――雪原は静かだった。それまでの耳を劈く絶叫や悲鳴様の咆哮とは異なり、しかしまるでノイズがかった様な、人と言うには不明瞭なデモノイドの声の中に。
    「………ワ、タシ……、カエ……リ、……タカッ………」
     最期に見せた、人の声の色。
     帰郷を望む最期の言葉が、獣が『彼女』であったことを、灼滅者達へ教えてくれていた。

    ●白銀は路を閉ざして
     グズグズ、と融ける様に、崩れる様に、デモノイドがかたちを失い、消えていった。
    「な、何とかなった……」
     へたり、とアッシュはその場に力なく座り込んだ。しかし、程なく足元を覆う冷気に我に返り、がばっと急ぎ立ち上がる。
    「今更だけど、半袖半ズボンじゃやっぱり寒いっ!」
     1人漫才の様な、明るいアッシュの声に、灼滅者達は笑う。しかし、程なくして沈黙降りた雪原には、再び風が吹きつけ、さらりと表面の軽雪を舞い上げた。
     ピンクの髪が、一緒に風に舞う―――蛾の流れる髪を眺めていたオリヒメは、風止むと同時、視線を空へと送った。
     良く晴れた冬の夜空は、視界遮るものも無く一面に星のパノラマ。放射冷却のためか、氷点下と思える肌に張り付く寒さが全身を包んでいる。
     南の空に見えるのはオリオン。――散っていった命が目指した方角、その先は一体何処へ続いていたのだろう。
     散り際の『帰りたかった』という言葉から推察するなら、この路は故郷へ続いていたのだろうか。
     答えは永遠に失われ、今はただ思い馳せるしかないけれど。
     かさり。悟がポケットから取り出した小さな何かに気付いたあんずは『何?』と声をかけた。
     広げた手にことりと置かれていたのは、飴。
     戦いから日常へと戻る合図だと。そう言って差し出された悟の飴を、お菓子好きのあんずは嬉しそうに口へと運んだ。その様子に微笑みながら、悟も1粒、その甘さを開けた口から放り込む。
     ――いつもの飴は、確かに甘いのに。いつもよりも味気無く思える粒をころりと口の中に転がしながら、悟は足元へと視線を落とした。
     戦いは終わった、日常に戻ったのだと心に言い聞かせるけれど――最期の、獣が人の言葉で告げた思いが、頭から離れてはくれなくて。
     悟はぎり、と拳を痛いくらい握り締めた。
     笙音は先程からじっと、道の先を見つめている。
     視界一面を覆う雪がやがて融け、道を鮮やかな春色が飾っても――散った命が、その世界の変化を目にすることはもう無い。
     最期に彼女が見たのは、故郷へ通じる標の道を覆い隠す、心寂しき雪景色。
     笙音は最後に静かに瞳を伏せ、黙祷を捧げた。その脇から歩み出たキングは、胸に差した薔薇の花を道に消えた嘗ての女性へと手向け、祈る。
     外気はますます冷え、吐き出す息から熱を奪っていく。もう行きましょうと促すレセフの言葉に、悟は握った拳を緩め、来た路――デモノイドが目指した南へと、歩き出した。
     今日のことは忘れない。ダークネスが命に齎した歪みを、この胸の痛みを、絶対に忘れてはいけないと思った。
     戦い終えた道に、心に。落ちるのはただただ、命のせつなさ。
     ―――何度、季節が巡っても。もう二度と、君には会えないから。

    作者: 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2013年2月20日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 3/感動した 11/素敵だった 4/キャラが大事にされていた 1
     あなたが購入した「複数ピンナップ(複数バトルピンナップ)」を、このシナリオの挿絵にして貰うよう、担当マスターに申請できます。
     シナリオの通常参加者は、掲載されている「自分の顔アイコン」を変更できます。
    ページトップへ