●東京都豊島区池袋
武蔵坂学園のある東京都武蔵野市。普通に生活するには充分に機能するだけの施設はある。けれどもやっぱりそれだけじゃ物足りないものも事実で、ショッピングなどと気合入れるには少々不十分。そんな時は電車をちょいとばかり乗り継げば、23区有数の街、池袋に行けたりする。
池袋には服に家電、雑貨に書籍等々の大型店舗が立ち並ぶ。そしてそれ以外にも映画館やゲームセンター、ボーリング場など遊ぶ施設にも困らない。見知った武蔵坂学園から30分ほどで、全く違うカラーのこの街に来ることが出来るのは学園の立地条件が良い故だろう。買い物にもレジャーにも困らない。
「えーっと今日は……」
電車の中で今日の予定を考える有明・クロエ(中学生エクスブレイン・dn0027)の様に適当に街の中をぶらついても良いだろう。公園なども結構多い、雑踏と町並みに疲れたら寄ってみるのも悪くない。
冬の終わりかけの休日に街に繰り出してみてもいいんじゃないだろうか。
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都内の星はほぼ見えない。その代わりにプラネタリウムがある。敬厳は中心部にあるビルへと向かう。道順も時間も大丈夫、しっかりとした足取りで建物へと入っていった。
プラネタリウムがあれば水族館もある。
「街中に水族館があるなんてすごいねー!」
ガラス越しに泳ぐラッコに屍姫は目を輝かせる。【あやかしびと】の仲間と連れ立って来た彼女は覗きこんで足を止めていた。
「わー、きれいだねー」
その彼女に気づかずに亜樹が向こうの水槽に行こうとする所で織久が彼を止める。背の高い彼は周りの友人がはぐれないよう気をつけていたらしい。二人は彼女の動きを待ってからトンネルをくぐっていく。
「旨そうって……確かに」
千優のヒラメが好き発言に美流が返す。二人は色々な生き物を指して行く。
「あ、見てみヒトデヒトデ。海の星っていわれてるんだってさ」
「海の星かー。響きがロマンチックだね!」
頷く彼女を見て美流は言う。
「今度は空の星でも見に行こうぜ?」
「うん! 行く!」
次の約束を挟みながら二人は歩く。
「無理、無理だって!」
「え、こんなに可愛いのに!」
冴はさっきまで見ていたペンギンと眼前の巨大魚を比べる。かわいいとは言いがたい。むしろ無表情っぷりが怖い。司はそんな彼にこの生き物の可愛さを熱く語る。
「ほらよく見て下さい藤代君。よく見たらきっと良さが解るはずです」
見た。無理だ。
「やだやだやだ」
冴と司の意見の溝は埋まりそうにない……。
クラゲである。かまちと七はオムライスの余韻に浸りながら、ふよふよと泳ぎ続けるクラゲの前で足を止めていた。彼らの不思議な振る舞いに時折言葉を交わしなら、二人はその様子を眺めていた。
「……衣幡、行きてぇとこねぇのか?」
「そうね、全部回りましょう。エイもウツボもヘコアユも見たいし」
「衣幡……通常女子と感覚ズレてんな……」
ペンギンのとてとて歩く姿に夕は目を奪われていた。時折すいすいと水の中を飛ぶように泳いでみせたり。彼らの多種多様な動きにすっかり心を奪われていた彼女ははたと気付く。振り返ると結城が微笑みを浮かべていた。
「あ……ごめんなさい、私ばかり楽しんで……」
「大丈夫です、満足するまでお付き合いしましょ」
【メカかぴばら研究会】の面々は大所帯で館内を歩いていた。年間パスポートを持つ司が案内に従い見ながら歩いて行く。後ろからは沙雪がはぐれないようにガッツリサポート。完璧である。もっともこれだけの大所帯ともなれば雑談にも花が咲くというもので。
「いつもなら乙女ロード一直線なんやけど……」
「乙女ロード?」
「良いですね、今度ご一緒しましょう」
「オトメロードってなんだろ?」
などというヒナとエリオには詳細を説明できない智恵理と榛名のやり取りをほのかが制す。カップルの多いここだと空気読めないにも程がある、気がする。それにペンギンのショーが始まりそうでイルルと月夜がすでに前の方に陣取っている。
「おおー! ペンギン殿、ラブリーぞよ~♪」
「ペンギンさん可愛いです! いっぱい頑張ってるです……!」
沙雪がショーから視線を仲間達に向けると、楽しんでいる面々を見て満足気に頷いている司が目に入る。ショーが終わるとエリオが口を開く。
「……魚ばかり見てたらお腹が」
「ほな担々麺でも食いに行かへん?」
智恵理の提案に一同は水族館を後にする。
「ん? なんか忘れとるような……」
ほのかの疑問はヒナに裾を引かれたところで消失した。
一方その頃。崇はいけふくろうに無駄な対抗心を燃やしていたが、さっぱりきっぱり誰にも気にかけてすらもらえなかったとさ。
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池袋には飲食店も多い。若者向けのファーストフード店も多いが、少しばかり値の張った店もある。何にせよ楽しく食事を出来るのもこの街のあり方の一つだ。
登は昼の通行人がごった返す中を歩いてとある洋食店にたどり着く。
「良かった」
彼が目指したグラタンはもうすぐそこまで待っている。
「少し遅れてしまって、すいません」
【欧州美食隊】の面々は買い物の帰りにドイツ料理を軸にした店で昼食をとっていた。紙袋を隣においた誠司の前にはフィッシュアンドチップスがなぜか置いてあったが。
「せっかくですし、お二人の郷土料理が食べてみたいです」
との奈々の声に応えたのかもしれない。しかし注文したアンカーは話のやり取りからドイツ出身らしいとしか分からない。ジャガイモでフルコースを作れないと嫁にはいけないとか。そんな風に昼食は続く。
店内に鶏ガラベースの香りが立ち込める。【吉祥】の面々は皆で食べに来ていた。かつてはラーメンの激戦区とまで言われた街である。何かしらの特色を出さなければ生き残れないのがこの街である。
「うん、期待以上の味!」
聖太が膝を打つ。
「うん、美味しいな。あっさり風味のスープに細麺がよく合う。今度妹も連れてきてあげようかな」
「ここにして良かったでしょ?」
梗香の感想に浩之は満足気に頷く。自信を持って人を誘える所はそうそうない。
「ふむ。相変わらず絶品だ。……ところでまだ食うのか?」
「え、お前ら足りるの?」
「もしかしてアナって食べ過ぎ?」
慧樹とアナスタシアは不思議そうな顔で問うた尚竹を見る。
「……ってみんな食べるの早い……」
羽衣は慌てて箸を進める。あっさりとした風味に梅の酸味がかすかにきいて、連続して食べられる。あっという間に彼女も完食して、同時に替え玉組も食べ終える。
「部活帰りに、また来ようぜ!」
「クロエー! 俺だー! 結婚してくれー!」
「え、その、ボクらにはまだちょっと早いよ」
「……このノリどうなんだ」
ロザリアとクロエのやり取りに神楽が思わず突っ込む。そんなこんなで合流したクラスの一行は土地勘のある祇翠を先頭に池袋の中を観光しがてら歩いた後、餃子屋に入る。
「よし、守咲くん、あーん」
出てきた熱々の餃子を神楽に食べさせる神華。決して他意はない。たとえその熱さをコーラで冷やすことになっても。
「この後、腹ごなしに観光でも続けるか?」
祇翠の提案に一同はうなずいた。まだ街は昼を過ぎたばかり。
●
「わぁ、何でも揃っていそうですね!」
人と建物の集う街並みを見て夏輝が感嘆の声を上げる。【武蔵野市の古風な一軒家】に必要なものならば普通に買い揃えられそうだ。
「だいたい調味料はそろったか? 次は食器とかか」
ラインナップのメモを読む昴を見て結実は、頬を少しばかり赤く染める。
「後で服も見に来ませんか?」
「あ、うんそうだな」
夏輝の提案に結実が頷く、自分の視線が洋服に行っていたのを見ぬかれていたのだろうか。
光影もまた日用品の買い出しに来ていた。この街には小さな店から大きな店まで色々と揃っている。ぶらりと彼はそれらを巡りながら必要なものを買い揃えていく。
【cross≒dresser】の面々はその名の通り、服飾に関するものを見に来ていた。ただ少しばかり変わったところと言えば。
「しっかし……オレらの性別が全員真逆って知ったらなんて言われるかねえ」
「でも気付いないなら良いか……?」
「もし店員さんが知ったらどんな顔するか見てみたいな」
「えへへ……みんな、びっくりしそうです……よね?」
果たしてどんな反応をするだろうか、そんな雑談を交えつつ揃いのブレスレットを求めて歩き始める。果たして求めるものは見つかるだろうか。
【天大門2年G組】のクラスの友人たちは朝恵の服を見に来ていた。オーダーは格好良い服でカラーベースは赤、ということで國鷹が揃えていく。刺繍入のブラウスとジャケットはモノトーンに、ミニスカートとリボンタイの色を揃えた出で立ちで朝恵が試着室から出てくる。
「えへへ、大人っぽくなれたの?」
「どうですか、紺野君?」
問われた美咲はいつもの癖でいつの間にか眠っていたらしい。
「バッチリ!」
……どうやら気づかれてはいなかったようだ。
琴音のお目当ては服。それもデート用の。家のメイドに言われて来たものの初めての買い物で、しかもそこが池袋となれば難易度は高い。時折泣きそうになりながらも彼女の冒険は続く。
八重華は迷の服を選んでいく。右も左も分からない彼女をさて置いて。
「ほれ、これ着てこい」
「わ、私に似合うでしょうか……?」
迷がそう言ってからしばらく。パーカー、デニム、スニーカーのスケータースタイルの迷が帰ってくる。
「ど、どうでしょうか……?」
「ふむ、やはり似合っている」
さっと支払いを終えて、八重華は腕を差し出した。
琥珀は小さな紙袋を手にアクセサリーを見ている。中には隣の明日香に見立ててもらった香水が入っている。今度は琥珀が彼女に選んであげる番だ。琥珀が手に取ったのは翼を象った銀の首飾り。それを明日香に渡す。
「ふふ、どう? 似合ってる?」
「とてもお似合いです! 可愛いです!」
くるりと回る明日香に琥珀は少し興奮していた。
秀憲とマキナは帽子屋にてあれもいい、これもいいと次々に帽子をかぶっていた。ハットにハンチングにベレー、コサック帽にボーラーに。……さすがに秀憲はコサックだけは遠慮したけれど。
「両方欲しいけど……こっち」
マキナは勧められたボーラーより気になっていたベレーを取る。自分のハンチングを手にした秀憲に彼女は言う。
「また来ようね、センパイ」
ジンと彩はエレベーターの中でパルクールについて話をしていた。目的の階につくと話は一旦終わる。場所は製菓用品を置いてある場所。
「ジン様は何かお好きなお菓子とかありますか?」
「そうだね……クッキーとかシュークリームとか好きだよ」
彩はそれを今度彼のために作ると約束すると必要な道具を選びはじめる。
桐子と彩斗は地下街の食べ歩きをしていた。食材の調達だったはずなのだがそれはそれ。
「こんなに美味いものが世の中にあったなんて……」
「こっちも食べます?」
食べ歩いていると、店先に犬の大きなぬいぐるみがこっちを見ていた。桐子が彩斗に目を向けると彼は頷いてレジに行く。
菫はいきなり迷っていた。ケーキ屋を探していたそのはずだ。だがここは池袋、西口東口地上地下、ややこしいにも程がある。
「あれなんかデジャヴが……」
菫は無事帰ることができるのだろうか。
日輪は自分と同じ位の女子を真似してみる。地下街でウィンドウショッピング。日輪にとってそれはただの暇つぶしで、本質は真似される方と変わらないのかもしれない。
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昼と夕方の間ほど、もっと言えばティータイム。もちろんそれには甘いモノがついてくるわけで。
【スイーツオフ】に集った面々はそれを楽しみに揃ったメンバーだ。幹事の貴明を先頭にスイーツ食べ放題の店へと向かう。その間に各々自己紹介をすませていく。
店に入ると同時に甘い匂いが立ち込める。早速一同は思い思いに取りに行く。
「あんましこういうとこ来たことなかったやけど、結構色々あるもんやね」
「悩んでいるようなら選びましょうか?」
眺めている伊織に貴明が訊く。彼らがそんなやり取りをしている間にも朔哉や律は和風のものから揃えていく。
「迷えば全部食えば問題ないし」
「すごいや! これ一杯食べていいんだよね」
全力で食べに行く男子二人。そして紅一点の楓というと。
「練乳、練乳……」
取る皿取る皿に練乳をかけていた。その様子はどこか危ない人のようにも見える。彼らが街に遊びに行くまでしばらくかかりそうだ。
夜桜、悠楚、優理の幼馴染三人組は三年ぶりに一緒に遊ぶためにここに。彼らの目の前に置かれたのはパフェ3つ。優理のだけやたら大きいが彼自身は休むこと無くスプーンを動かしている。その上他の二人からも持って行っている。
「この寒いのによくそんなにがっつけるわね」
「コイツにどんな事言っても聞かないよ」
夜桜の皮肉に悠楚が肩をすくめる。大体集合した時からそうだったし。灼滅者であっても関係そのものは変わってない気がする。
「ま、お前らとは腐れ縁みたいだからな。これからまたよろしく頼むぜ!」
過ぎゆく人々、他のテーブルに着く客。それらを眺めながらレイシーはワッフルをつついている。チョコレートがけの欠片を口に運ぶたびに笑みが溢れる。日常の幸せの味を彼女はかみしめていた。
【剣】がいる店は完全予約制の……執事喫茶。
「じょ、女子しかいなくね!?」
「俺これどうしたら良いの……」
「なるほど、このようにコンセプトを持って皆様で楽しむ場所なのですね」
「試しに予約してみたらとれちゃいました」
あまりに場に慣れていない4人である。かろうじて落ち着いているのは悠くらいなものか。ニコとポンパドールの男子二人はともかくサクラコは動きが怪しい。そんな彼らの精神安定に一役買ったのは季節のケーキと紅茶のセット。見た目も味もしっかり作ってあって慣れない彼らの緊張を解きほぐす。
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夕方に差し掛かる頃。街の顔も変わり始める。池袋のそんな道を晴臣は進んでいた。大きな書店を見つけて入れば武蔵坂学園の生徒らしき姿もいくつか。小説のコーナーには紅鳥が立ち読みのまま中の世界に没頭していた。同じように絹代は別のフロアで縛り方ばかり載った本を見て笑みを浮べている。邪魔しては悪いと晴臣は彼らから距離を取った。
彼らとは別の所で亜理栖とクロエが本棚を前にどんな本を読むかを話していた。その様子を流希はぼんやりと眺めつつSF小説をレジに持っていく。彼の一日は時間と共に変わっていく街を見届けていき、ここで終わりのようだ。
池袋はゲームセンターも豊富でここにも人が多い。千代は黙々とリズムゲームをしており、時折対戦者としのぎを削っている。ガンシューティングで引き金を引いているのは有斗でダメージを受けつつもギリギリでクリアしてみせる。
それらとは別のフロア。いわゆるプライズゲーム系の所ではこのような場に来たことがないという友を連れて来ていた。もっともその友は黙々とマイペースにクレーンゲームを遊んでいた。
別の筐体では志摩子がぬいぐるみ相手に四苦八苦していた。欲しいぬいぐるみを取ろうとして必死なのがましろには可愛く映る。そんな風に見ていたら彼女と目が合う。
「なあ夏目、どれが取りたいんだ?」
「え? あ……取ってくれるの? じゃああの犬のぬいぐるみ……」
ましろがそのぬいぐるみを取ると志摩子がうれしそうな表情を見せ、ましろもそれに釣られて笑みをこぼした。
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夜の西口公園。昴がたどり着いた時には街灯が光っていた。ここに来るのが目的だったとは言え、暗くなりすぎた。
「あの」
「?」
振り返る。そこには絵本を持った少女、切がベンチに座っていた。
「駅、どっち?」
「迷子? ……あっちだと思う」
昴が答えると切は立ち上がる。
「迷うの楽しい。けど帰らなきゃ」
「……そうだな。明日から学校だし」
そして休日は終わる。明日からまたいつもの生活が始まる。
作者:西灰三 |
重傷:なし 死亡:なし 闇堕ち:なし |
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種類:
公開:2013年2月26日
難度:簡単
参加:89人
結果:成功!
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得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 6/キャラが大事にされていた 30
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