八川・悟(闇色の夜・d10373)は、こんな噂を耳にした。
『男装の麗人が接客する喫茶店が存在する』と……。
それだけならば何の問題もないのだが、エクスブレインの話では、裏で都市伝説が絡んでいるらしい。
都市伝説は強力な催眠になって女性達を操り、男装の麗人に仕立て上げ、接客をさせているようである。
男装の麗人と化した女性達はみな美しく、歌いながら接客をする変わったスタイル。
おそらく、噂を広めた者達が何かに影響を受け、男装の麗人と言えばアレという発想に至ったのだろう。
いつの間にか、お客達まで一緒になって、歌って踊って大騒ぎ。
だが、時間を忘れて楽しんでしまうため、家に変える事が出来なくなってしまうとか。
どちらにしても、このまま放っておくわけにはいかない。
ただし、都市伝説の催眠は強力で、女性の場合は思わず男装して、歌いたくなってしまうようである。
また、都市伝説は女性達を盾替わりにして逃げようとするので、くれぐれも注意が必要である。
参加者 | |
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橙堂・司(獄紋蝶々・d00656) |
ナイト・リッター(ナイトナイトナイト・d00899) |
刀鳴・りりん(透徹ナル誅殺人形・d05507) |
アリス・スティグマ(ハートの傷のアリス・d10732) |
加賀見・えな(日陰の英雄候補生・d12768) |
葛木・しいな(斬魔の掌・d13695) |
常盤・美來(盤外の雷紋・d13764) |
クリス・レクター(ブロッケン・d14308) |
●歌って踊って
「都市伝説って色んな噂から生まれるんですね。……とはいえ、人に迷惑をかけるなら倒さなきゃ」
葛木・しいな(斬魔の掌・d13695)は事前に配られた資料に目を通しつつ、都市伝説が確認された喫茶店にむかう。
都市伝説が確認された喫茶店は男装を売りにしており、歌って踊れる楽しい空間を提供しているらしい。
だが、あまりにも楽し過ぎるせいで、時間を忘れてしまい、家に帰る気持ちすら失せてしまうようである。
そのため、トラブルも絶えず、お客の家族や友人が説得に来るような事もあるようだが、あまりにも楽しいせいで一緒になってくつろいでしまうようだ。
「……それにしても、変わった都市伝説もいるんだね。そこまで凶悪ってわけでもなさそうだけど、やっぱり放っておくわけにはいかないか……」
自分自身に言い聞かせるようにして、橙堂・司(獄紋蝶々・d00656)が気合を入れる。
資料を見る限り、都市伝説は、男装の女性。しかも、美形と来ている。
おそらくと言うよりも、間違いなく都市伝説目当てのお客がいたはずだ。
そう言ったお客は都市伝説に魅了されてしまうため、余計に店から離れられなくなってしまう。
場合によっては、お客同士が牽制し合い、ピリピリとしたムードが漂っていたかも知れない。
そんな気持ちを消し去ってくれるのが、都市伝説の歌と踊り……らしい。
「うーむ、これはいわゆるヅカ風、という事かの? べ、別に、はしゃいでなどおらんぞ?」
憮然した顔を作りながら、刀鳴・りりん(透徹ナル誅殺人形・d05507)がコホンと咳をする。
本音を言えば、ちょっとだけ楽しみにしている。
そのため、口では興味のない素振りを見せているにもかかわらず、妙にそわそわしているようだ。
「男装の麗人ネー……。麗しの花園って感じなんだろうけド。興味は全然ないネ!」
喫茶店が紹介されている記事を眺め、クリス・レクター(ブロッケン・d14308)が興味なさげに軽く流す。
だいぶ女性層には評判がいいようだが、都市伝説絡みである事を知っているせいか、どうしても気持ちが萎えてしまう。
「どんな理由であれ、可憐な女性達を操ろうとは許せないな。俺の剣にかけて救ってみせるぜ」
真っ白な歯をキラリと輝かせ、ナイト・リッター(ナイトナイトナイト・d00899)がその場で誓う。
間違いなく、女性達は喫茶店の中にいる。
出入口は表と裏の二ヶ所。しかし、普通の店と比べて窓が多いため、その気になればどこからでも逃げる事が出来る。
そうなると外で待ち伏せして都市伝説を追い詰める事など、ほぼ不可能。
最悪の事態を避けるためにも、店内で決着をつける必要があった。
「……とは言え、最近は男装麗人系の都市伝説をよく見かけるわ。……まさか何か背後で大きな動きが……無いとは思うのだけど」
途中で自らの考えを改め、アリス・スティグマ(ハートの傷のアリス・d10732)が小さく首を横に振る。
一瞬、悪の組織が悪巧みをしている光景が脳裏に浮かんだが、色々とツッコミどころが満載な上、思いのほかションボリしてしまったため、考える事が馬鹿らしくなってきた。
その時、一足先に喫茶店に潜入していた常盤・美來(盤外の雷紋・d13764)から、携帯電話に連絡が入った。
『何だか、あたし達の思っているような店じゃなかったわ。むしろ、最高に楽しいパラダイス! あは、あはははは♪』
明らかに催眠の餌食になったとわかる言動で、美來が喫茶店の良さをマシンガンの如く語っていく。
だが、一人で無謀にも敵陣に突っ込んでいったのだから、こういった結果になっても無理はない。
その代わり、すっかり毒されており、楽しく歌って踊っているようだ。
「ど、どうやら……、急いだ方が良さそうですね」
色々な意味で急がなければ手遅れになると判断し、加賀見・えな(日陰の英雄候補生・d12768)があたふたとした様子で店内に入っていく。
その途端、えなの目の前に飛び込んできたのは、他のお客達と一緒に楽しそうに歌って踊る美來の姿であった。
●歌って踊って
「みんな、いらっしゃい♪ さあ、楽しく歌いましょう♪ 時間を忘れて、我を忘れて、心を一つに、気持ちを一つに♪」
まるでミュージカルでも見ているような雰囲気であった。
都市伝説の催眠によって、美來がお客達と一緒に歌って踊っている。
その中にはスパゲティを踊るように食べる者や、カレーの味を歌うように解説する者もおり、色々な意味でカオス状態。
美來の定期連絡で送られてきたメールを見る限り、催眠に掛かったのはメニューの端から端まで注文し、デザートを食べ始めた頃だという事までは分かっているが、ここまで毒されていると逆に清々しい。
「かなり強力な催眠ヲ使うようだネ」
我を忘れて踊り狂う美來を見て、クリスが困った様子で頭を抱える。
プラチラチケットを使って、店の関係者を装うつもりでいたが、そのためには人並み外れたテンションでなければ、確実に怪しまれてしまう。
それはテーブルの上に乗って、パフェの美味しさを歌にして踊る美來を見れば、容易に想像する事が出来た。
「……でも、ちょっと……と言うか、かなり歌いたいかも……」
全身から湧き上がる衝動を抑えられなくなりつつ、司が激しく首を横に振る。
思わず体が勝手に動いてしまうほど、気持ちが高ぶっているため、それを発散したい気持ちもあるのだが、このまま感情の赴くままに動けば、美來の二の舞になる事は間違いない。
それが分かっているにもかかわらず、体が勝手に動いていた。
「のんびりしている暇はなさそうね」
次第に高まる気持ちを抑えつつ、アリスがクリスに視線を送る。
それに気づいたクリスがプラチナチケットを使い、お客達を店から出そうとした。
だが、催眠の力が強いせいで、お客達はなかなか外に出ようとしない。
「一体、何をしているんだい? ひょっとして、僕を倒しに来たのかな?」
その間に都市伝説が騒ぎを聞きつけ、余裕な態度で踊るようにして現れた。
おそらく、自分のテリトリー内であるため、催眠の効果には贖う事が出来ないと過信しているのだろう。
「おのれ! 辱めよって!」
その影響をモロに受けていたりりんは、恥ずかしそうに顔を真っ赤にして、都市伝説をジロリと睨みつけた。
「そんな事を言いつつ、君は踊っているじゃないか」
含みのある笑みを浮かべ、都市伝説が答えを返す。
りりんは踊っていた。
テーブルの上で、美來と仲良く……。
「おのれ! 卑怯な真似を!」
そのため、りりんがさらに顔を真っ赤にして、都市伝説に抗議する。
それを見た都市伝説がさらに面白がって強力な催眠を使い、りりんを歌って踊らせた。
「囮、ご苦労様。みんなの避難が終わったよ」
都市伝説の注意がりりんに向いているうちにお客達の避難を完了させ、しいなが都市伝説めがけて黒死斬を放つ。
その一撃を食らって都市伝説の催眠が途切れ、りりんが答えに困りつつ、『名演技だったじゃろ』と咳き込んだ。
「まあ、いいさ。また別の場所を捜せばいいんだから……」
しかし、都市伝説は全く動揺する事無く、そのまま裏口から逃げようとする。
「も、申し訳ありませんが、逃がしません~♪」
思わず歌ってしまいながら、えなが都市伝説の行く手を踊るようにして阻み、気まずい様子で顔を真っ赤にした。
そんなつもりはなかったのだが、体が勝手に動いてしまった。
は、恥ずかしい。いますぐ、この場から立ち去りたいという気持ちもあるが、そんな事をすれば、確実に都市伝説を逃がしてしまう。
仲間達もそんなえなの気持ちを察したのか、それとも存在自体に気づいていないのか分からないが、その事には触れないようにしているようだった。
「お前だけは絶対に許さんぞ、都市伝説!! 世界の財産であるレディーに手を出すとは、たとえ天が許しても俺が許さん!」
激しい怒りを爆発させ、ナイトが都市伝説に言い放つ。
しかし、都市伝説は『僕が何かひどい事をしたかい? 僕はみんなを救済しているだけさ』と言って、自分の言葉にウットリとした。
●男装の麗人
「こんな事をして、救済……だと!? ふざけるな!」
都市伝説のあまりに自惚れた態度に腹を立て、ナイトが全力でタックルをする。
しかし、都市伝説は素早い身のこなしでタックルをかわし、『まわりをよく見てみなよ。みんな、楽しんでいるじゃないか』と答えを返す。
「べ、別に……楽しんでなんて……いません」
思いっきり恥ずかしそうにしながら、えなが言葉を吐き出すようにして呟いた。
本当は楽しくて、楽しくて仕方がないのだが、それを都市伝説に知られたら、何を言われるか分からない。
そうは言っても、歌って踊り狂いたいというのが、本音であった。
「……ぜ、全然、楽しくないよ~」
司に至っては歌ってしまった。
まるで歌うように答えてしまった。
そんな気持ちが頭の中でグルグルまわり、途中からどうでもよくなって歌いだす。
おそらく、これも都市伝説の力なのだろう。
いつしか、恥じらいが無くなり、動きも派手で大袈裟になった。
「こ、このまま、都市伝説の思い通りになる訳には……」
わずかに残った理性を振り絞り、アリスがフォースブレイクを仕掛ける。
その一撃を食らった都市伝説が青ざめた表情を浮かべ、近くにあった窓から外に逃げようした。
「……逃がさないよ」
都市伝説の死角から回り込み、しいなが黒死斬を炸裂させる。
思わぬ不意打ちで都市伝説は攻撃を避ける事が出来ず、しいなの攻撃をモロに食らってバランスを崩す。
「ホラ! さっさと倒れなヨ!!」
その間にクリスが一気に間合いを詰め、都市伝説の死角に鬼神変を仕掛ける。
「クッ……、さすがに歌って踊ってという訳にはいかないね」
傷ついた身体を庇いつつ、都市伝説が悔しそうに唇を噛む。
ダメージを受け過ぎたせいか、かなり催眠の力も弱まっている。
「これはさっきの……お返しじゃ!」
自らの怒りを一撃に込めるようにして、りりんが都市伝説に居合斬りを炸裂させた。
次の瞬間、都市伝説の体が真っ二つに両断され、断末魔を響かせて跡形もなく消滅した。
「いやな都市伝説だったネ。でも秘密の花園ニ憧れるル女の子にハたまらないのかナ?」
都市伝説が消滅した事を確認し、クリスが飄々とした態度で呟いた。
「でも、ストレス発散になったかも」
店頭に置かれていた季節限定チョコレート商品を一通り包み、美來がやけに清々しい気持ちで答えを返す。
都市伝説の催眠によって内に溜め込んだものがすべて発散されたのか、気のせいか心も体も軽かった。
作者:ゆうきつかさ |
重傷:なし 死亡:なし 闇堕ち:なし |
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種類:
公開:2013年2月18日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 2/感動した 0/素敵だった 6/キャラが大事にされていた 0
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